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シルバーウルフ "WOLF REVOLUTION 〜First Wave〜"
2000年7月26日(水) 東京・六本木ベルファーレ
メインイベント 67kg契約/5回戦 
元全日本ウェルター級王者
魔裟斗
(シルバーウルフ)
1R1分15秒

KO
オーストラリアSライト級,ウェルター級王者
クレイトン・コリヤー
(オーストラリア)
×

 過去に例を見ないディスコハウスでの興行は斬新な演出とセミまでKO続きの熱戦もあって、おそらく初めてのキックボクシング観戦と思われる大半の観客もすっかりヒートアップ。ここまでは満点の出来で進んできた。

 そして迎えたメイン、魔裟斗の登場。入場テーマ曲の"SANTA MARIA "、特攻服をあしらったガウンを纏って登場は全日本時代と同じだ。今日の観客のお目当てが、なんといってもメインイベンターでありこのイベントの主催者である彼だ。それはこの日一番の歓声からしても間違いない。ビシッと締めて彼らを満足させて帰ってもらうのが魔裟斗のメインイベンターとしての、そして興行の主催者としての仕事だ。そして、クラブという”ハコ”であってもこの興行は「キックボクシング」のそれである。試合内容で魅せてこそ、だ。

 魔裟斗の構えやスタイルに、特に全日本時代から劇的に変わったところが見られるわけではない。グローブを胸と顔の間の辺りに構え、前に出した左足で小刻みにリズムをとる辺りなどそのままだ。
 オランダ修行時に蹴りの軌道が独特で面白いと評されたりもしたが、特に元々得意としていた独特の左ミドルは出だしがよりスムーズになり、戻りがコンパクトになって元の体勢に戻るスピードが格段にアップした感じで、この辺りはフリーになったのを機に新しくトレーナーについた元ルンピニージュニアライト級1位のヌアトラニー・ウォー・タウィーギアットの指導の賜か。身体の軸もブレず、安定感が増している。
 なにより、全日本時代の彼は一発一発を狙いすぎて身体に力が入りすぎていた傾向があったのだが、それが解消されてリラックスした構えになっている。

 国内二冠王の肩書きを持つ対戦相手のクレントン・コリヤーは、積極的にワン・ツーを飛ばしていく。国際式の経験があるのか、オーストラリアという国のキックボクサーの傾向なのか、キックよりもパンチの手数の方が多い。ただ、かなり力んでいるように見える。メインの重圧からか、海外で試合をするのは初めてという緊張からか、それとも魔裟斗の放つプレッシャーが予想以上に大きいのか。

 とにかくパンチが大振り気味な上にステップもどことなくバタバタしていて、魔裟斗が何気なく出すローにバランスを崩す場面が再三見られる。魔裟斗がミドルや前蹴り、右ストレートといった多彩な攻撃で的を散らすと、コリヤーは早くもついていけなくなる。
 魔裟斗は、かつて課題だった攻撃の単調さもクリアしたようだ。落ち着いているせいかメリハリがある。
終わりはふっとやってきた。
 魔裟斗は後退するコリヤーをじわじわとコーナーまで追い詰める。コリヤーがバランスの悪い左ミドルを出したところでガードが下がった。そしてそのがらあきになった顔面に魔裟斗の左フックが飛び込んでいく。その直後、オーストラリア人は垂直にキャンバスに落下した。
 会心の一撃にガッツポーズする魔裟斗を尻目にコリヤーは10カウント以内に立ち上がることが出来ず、魔裟斗は開幕第1戦を堂々のKO勝ちで飾る事に成功した。

「前の試合のみんながKOしてたんで、最後の自分がコケたらシャレになんないですからね。とにかくKOで勝てて嬉しいです」。試合終了後、見る人全てを魅了する人懐っこい笑顔で試合を振り返る魔裟斗。今後もこの形式の興行は続けて行きたい、とイベンターとしての意志も明らかにした。
「今まで後楽園だと足を運びづらかった、僕らと同じくらいの年代のお客さんにたくさんきてもらいたいですね」
「K−1のヘビー級の連中にも負けないような試合が俺達にも出来るんだってところを見せたい」
 興行が無事終わった安堵感が見え隠れする表情で、意気込みを語る魔裟斗を見ていると、やはりこの人はキックボクシングが好きなのだろう、と感じさせる。そして自分の魅力が最大限に発揮出来るソフトがキックボクシングであるということもわかっている。

 今後はシルバーウルフ主催の興行だけでなく、タイや他団体のリングにも上がる準備はできているという。彼の所属するウェルター級は現在日本のキック・シーンで最もホットな階級。ライバル足り得る人材はいくらでもいる。友好関係であるチーム・ドラゴンの小比類巻貴之はルーキー時代に唯一の敗戦を喫した相手だし、シュートボクシングの土井広之とは引き分けで決着戦の必要があるだろう。
 またMA所属で現在の日本の中量級トップ・伊藤隆との対戦も面白い。もちろんタイやヨーロッパの強豪との対戦も興味がつきない。
 新しい主戦場を得た魔裟斗の前途に多くの可能性が拓ける事を望んでやまない。

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レポート:新小田哲  写真:菊地奈々子

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