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kick 新日本キックボクシング協会 "SPEED KINGS" 3月26日 後楽園ホール
第14試合 メインイベント 日本フライ級選手権/5回戦 
日本フライ級王者
深津飛成
(伊原)
判定3-0

50-48
50-47
50-47
日本フライ級1位
建石智成
(尚武会)
×
※深津が2度目の防衛に成功。

建石は新日本のフライ級ランキング1位、ソリッドなパンチと強いローキックを持つ。ここまで10戦して8勝と比較的層の薄いフライ級の中では随一の成績を誇り、デビュー3年でここまで駆け上がってきた。

両者は98年の6月に1度対戦しており、その時は深津が4度のダウンを奪った末に5度目のダウンでKO勝ちしている。だから今回も楽勝防衛のムードが漂っていたが、そうはいかないのが新日本キックのタイトルマッチなのだ。新日本キックには、チャンピオンである者とそうでない者とに厳然たるヒエラルキーが存在する。出場機会も、メディアへの露出も、そして出場報酬も王者になると格段に跳ね上がる。それだけに全ての選手が目の色を変えて王座を目指し、王者は何としてでもこの座を守ろうとする。タイ人やランキング戦では味わえない緊迫感があるのはその為だ。そしてこの一戦も期待に違わぬ(そしてある意味期待を裏切る)激戦となった。

試合はミドルの交換から始まった。建石の繰り出すワンツーをバックステップでよけ、さらにミドルにはワンツーを返す深津、得意のパンチのコンビネーションを反撃するがそこに建石の左がジャストミートし開始1分で深津いきなりのダウン。思ってもいなかった展開に観客は戸惑いの悲鳴と歓声。立ち上がったものの意外とダメージが深く、ここで終わらせようと襲いかかる建石に対し深津必死のクリンチ。建石抱きついてくる王者の頭に縦肘を打ち付けるがブレイク。建石チャンスとばかりに左のロングフックからボディへのワンツー。応戦する深津と激しいパンチの打ち合いになり、左フックで顔面を狙うがここに今度は深津の右がカウンターで入り建石がダウン。ポイントを取り戻した王者が怒濤のラッシュ、後退する建石をロープに詰めるがゴング。いきなり波乱の幕開けにざわめく場内。

2R、深津の左と建石の右の相打ちからスタートすると、テンカオを出す建石に深津は珍しいバックブローをヒットさせる。建石が左フックから右ミドルをヒットさせると、深津強烈な左ミドルで建石の脇腹をえぐる。ここから一進一退、というには目まぐるしすぎるパンチの交換が始まるが、ここで「当たり」を引いたのが建石の方。ミドルをヒットさせるが不用意にガードが下がり開いた顔面に深津の左ストレートがヒット、建石この試合2度目のダウン。なんとか立ち上がってきた建石に深津前蹴りから右フック、右ロー、ボディ、顔面へのアッパーとたたみかけ、さらにワンツーで建石を再三ぐらつかせる。しかし建石も粘り2Rもゴング。

3R、ダメージは残っているはずの両者だがそれを必死に押し殺して互いの攻撃に反撃する。深津のローに建石ワンツー・スリー。深津右ミドルも建石右ローの連打、そしてパンチから右ハイをヒットさせるとたまらずぐらつく深津。チャンスと見た挑戦者がボディで巧みにポイントを散らしつつ右肘、右フック、ローをヒットさせる。さらには左フックから右フックにつなげて深津のアゴにヒットさせる攻撃も有効だった。深津もこの間打ち合いに応じ、手数では互角だったからかポイント上ではイーブンだったが、建石の有効打が目に付いたラウンドだった。

4Rになっても両者の手数とスピードは落ちない。建石のパンチからのミドルをガードした深津が右ボディを突き刺す。左フックを連打してくる建石に深津踏み込んで右フック、左ボディとつなぎ、さらに顎へのアッパーから左ボディと的を絞らせない。さらにショートレンジの左フックを振り抜くが、これには建石も反応し相打ち。深津の左ハイをヒットさせるが建石すかさず右ロー、しかし深津も左フックを合わせる。このラウンド通してカウンター狙いが多かった深津、建石の右に左フックヒットさせるとアッパーから左フックとたたみかける。しかし建石もテンカオ、左フックで反撃したところでゴング。このラウンド手数、有効打ともにイーブン。

最終ラウンド、ミドルの蹴り合いから深津アッパーからミドル、さらに左フックの連打につなげる。建石のローには左右フックを返し、パンチ連打にも同じくパンチで応戦。建石アッパーから右フック、深津は右肘から右フックをボディに入れる。中盤から足を使い始めた建石を深津追いかけて左ミドルをヒットさせる。建石左ボディで反撃するが疲労か、ダメージか後退し始める。その建石に深津はローを連打、建石最後の力を振り絞って左ハイ、アッパー、右フックを繰り出すもここでゴング。
結局判定は50-48が1人に50-47が2人といずれもフルマークで深津を支持、王者が2度目の防衛を果たした(注:1Rは両者ダウンを喫したためポイントは相殺で10-10となる)。

内容に納得のいかない深津はリング上から「すみませんでした」と叫んだ。

1Rのダウン以降記憶が定かでないという深津は何度も同じ質問で試合内容を確認した後、「決してなめてはいなかったが、相手は研究してきていた。ダウンをもらって焦った。今日は相手が強くて俺が弱かった」と反省したが、日本人クラスでは最強とも言える相手に結果的に完勝しただけに当分は王座は安泰だろう。

一方の挑戦者。「勝てると思ったんだけど・・・前回対戦した時よりは差は詰まったと思う。今度もう一回チャンスをもらえる時まで、誰にも負けないで欲しい」と淡々と語った。

建石は手数でもスピードでも一発の威力でも、そして戦術でも王者に決して引けはとらなかったと思う。しかし勝てなかったのは、結局は場数を踏んだ王者との底力の差ではなかったか。昨年の3月からランカークラスと2戦しかしていない建石に対し深津は実に7戦を消化してこのタイトルマッチに望んでいる。しかもその内5戦までもがタイ人選手。今日の対戦相手よりも強いパンチや蹴りと丈夫なボディを持つ相手ばかりだった(それだけに今回の建石も健闘したといえるのだが)。内容的には差のないように見えた今回の対戦だったが、実は深津の成長と建石の成長には大きな隔たりがあったと言えるのである。

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レポート:新小田哲 写真:薮本直美


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