ムエタイは長い間女人禁制とされてきた。今でもラジャ・ルンピニーのメジャースタジアムで男子と同じリングに女子選手が上がることは許されていない。しかし女子選手の増加、そして世界市場とオリンピックを見据えたWMCの思惑もあり、タイの女子選手にも次第にチャンスが増えてきている。ソイダーオは18歳という若さでそのWMC女子フライ級、つまりタイの女子選手の頂点に立つ選手なのである。
吉沢は数少ない新日本キックの女子選手、日本では滅多にリングに上がることはなく、もっぱらタイが主戦場。ソイダーオともこれまで2回対戦している(ソイダーオの2勝1KO)。
吉沢がまず軽いローから首相撲に持ち込むが逆にソイダーオ膝蹴り、ブレイク後ソイダーオ右ミドル。その、女子選手離れした蹴りの鋭さに場内がどよめく。この右ミドルを連発して優位に立つソイダーオ。吉沢左右のローで反撃するが右ミドルだけはないソイダーオ、ジャブ、右ローも強烈。2Rになっても状況は変わらず。左右のミドルで打開策を図る吉沢だがこれをソイダーオ右ストレートからの右ミドルで黙らせ、思わず後退した吉沢に左ハイ、左右ミドルで追撃。3Rから若干ソイダーオの手数が少なくなるが、吉沢も圧力を気にしてかなかなか前に出られない。なんとかミドルとローで反撃のチャンスを伺うも、4R終盤にまたも左右のミドルとフックをもらってしまう。
このままソイダーオの圧勝ムードで終わるかと場内も感じ始めた最終ラウンド。中盤吉沢の放った左フックでソイダーオ棒立ちになりロープ際まで後退。勢いにのる吉沢、左フックを面白いように叩き込みKO寸前まで追い込むが惜しくもゴング。
失礼な言い方になるが、ここまで2人が見せてくれるとは思わなかった。敗れはしたが後半見せ場を作った吉沢は「相手のミドルは変則的で見えなかった。攻撃をつい見過ぎてしまって、もっと早く行けばよかった。左フックを試合で使ったのは初めて。当たったんでびっくりした(笑)。次に日本でやるときはもっと強くなってから。月末またタイに行きます」と明るい表情で語った。
結果的にソイダーオの圧勝という形に終わったが、最終回の吉沢の攻撃を見る限り次はわからないだろう。メジャーを目指すのは男子だけではない。この2人がこれからの新日本キックの女子部を盛り上げて行くことを期待する。
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