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Report
k1 99.12.5 K-1 GP'99 決勝 東京ド−ム
第1試合 スーパーファイト 3分5R 
前田 憲作
(日本/チームドラゴン)
1R 1'33"
KO
ブラッド・ヘミング
(オーストラリア/アルティメットFセンター)
×

K1軽量級戦線の夜明けはまだか?


 年8月のK-1Japanで、約2年ぶりの復帰戦をKの舞台で飾った前田憲作。結果はTKO勝利であったものの、調整不良のまま来日して試合中に肩を故障した対戦相手側がアッという間にタオルを投入するという、何とも消化不良な勝利になってしまった。
 その前田が再びKの舞台に登場する。しかも場所は5万を越す大観衆の集う東京ドーム。これはヘビー級の充実に伴って、中量級、軽量級にも徐々にファンを育てようとする石井館長の布石と見ることも出来る。映画俳優としての顔も持ち、スター性充分の前田には、そのために必要な才能の全てが揃っているからだ。
 だがヘビー級以上にコアな観客の注目を集め、国内にも優秀な選手の揃っている中軽量級の打撃格闘技では、まずは試合内容こそファンの支持を集められるかどうかの試金石である。そのためには前田がこの体重クラスならではの白熱した打撃戦を展開し、満場のファンに勝利の栄冠は無論のこと、それ以外にアピールする「何か」を感じさせることが必要だった。だが、、、


Round 1
試合写真 対戦相手のブラッド・ヘミングはオーストラリア国内ではここまで無敗の戦歴を持つ選手。試合が始まるとその構えからパンチ主体の選手であることが伺える。前田は腰を落とし、両腕のガードを固く掲げて、パンチ型の選手に対抗する構えを見せる。
 ところが一旦両者の距離が接近し首相撲の体勢になると、ヘミングには首相撲に対処する基本的技術が殆ど備わっていないことが明らかとなる。頭を下げ、腰を引いて両腕で空いた空間をブロックするような姿勢。首相撲から連打で出てくる膝蹴りの衝撃をこのアームブロックで支えることは出来ないし、そもそも首相撲で相手の膝が届く位置まで頭を低くしたり、上体を丸めて相手の膝が走る為の空間を身体の前に作ってしまうことは極めて危険だ。
 予想通り試合開始後1分も経たない内に、前田の右膝がボディに入ってヘミングが最初のダウン。そしてその30秒後に全く同様の体勢から今度は左膝で2度目のダウン。レフェリーは早くもここでヘミングのKO負けを宣した。



 
試合写真 容は確かに圧勝である。それに試合のブッキングに対して前田には何一つ責任はない。しかし「スーパーヘビー級のK-1に対抗して、軽量級ならではの技術を見せたいです」と語る前田にとっては、大舞台でその軽量級の面白さをアピールするにはあまりに役不足の相手となってしまった。「もうちょっと長く試合したかったですね。」
 かつてK-1には中量級のK-2、軽量級のK-3というジャンルがあった。(この大会の翌日の記者会見で、石井館長は中軽量級の充実を徐々に図っていく方針を示したものの、それらのクラスに対してK-2,K-3という呼称は用いない、と述べた。)しかし一撃必倒のヘビー級によってメジャーの道を開いたK-1には、コアな格闘技ファンとは別種のファン層が育ち、その結果高度な技術戦を持ち味とする中軽量クラスはファンの嗜好と微妙な乖離を生じて、結局Kの中軽量級は宙に浮いたまま先細って行った皮肉な経緯がある。いわば中軽量級はまだK-1にとっては時期尚早だったわけである。
 K-1が徐々に爛熟期を迎えつつある昨今、中軽量級のブッキングはそろそろ目の肥えてきたファンに対して、新たな探りを入れている段階を示唆している。だがこのカードは果たして開催側の目論見を満たすものとなったのだろうか。

 前田は10月にタイのラジャダムナン・スタジオで勝利を収めている。「以前はタイではなかなか勝てなかったので、自信になりました。」「今後はレベルの高いオランダやフランスの選手ともやってみたいです。」
 前田のメジャー指向はK-1とある意味似通ったカラーを感じさせるものである。だからこそ余計に一度は細ってしまったKの中軽量級を再び活性化させる起爆剤としての活躍に期待がかかっているのだ。
 前田憲作というキックボクサーがその輝きをK-1のリングで存分にアピール出来る日が来ることを願ってやまない。

(高田 敏洋)


▲ 結果一覧
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取材:高田敏洋、中村直子  写真:井田英登

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