BoutReview Logo menu shop   Fighting Forum
Report
 
k1 99.10.3 K-1 GP'99 開幕戦 大阪ド−ム
 
第6試合 K1 ル−ル3分5R 
アンディ・フグ
1R 1'51"
KO
(3KO:右後ろ回し蹴り)
天田ヒロミ
×

鉄人の巨大な壁


 
  Japan GPで衝撃的なデビューを飾り注目を集めたノブ・ハヤシが残念なことに負傷欠場、急遽お鉢が回ってきたのが3位に付けていた天田ヒロミだ。K-1デビュー以来6戦5勝、負けた1敗もJapan GPでの武蔵との僅差の判定負け。さらにいきなりK-1の大舞台でミスターK-1とグローブを交えるチャンスが回ってくるのだから、その根っから明るいキャラクターにはツキを呼び寄せる力も宿っているのかも。
 アンディ・フグはこのところK-1 Japanシリーズで日本人選手に胸を貸す大御所の役割を演じている。宮本正明や中迫剛がその巨大な壁に挑み、そして跳ね返されてK-1本戦の敷居の高さを思い知らされている。今回もまた日本人選手がその壁に挑戦する図式となったわけだが、果たして昇り調子の新鋭天田がどこまで通じるか。


  ンチのコンビネーション・ラッシュで相手を仕留めるのが、最近の天田の持ちパターンとなりつつあるが、それはこの試合でも健在。今回は右のローキックも交えたコンビネーションで、勢い良くフグに突進していく。「(最初に出した左ジャブで)顔打ったらいきなり当たっちゃった。いける、と思ったらボディ忘れて顔面ばっかり狙いすぎましたね。もうちょっと落ち着いてたらなー、あーあ。」しかし天田のこの動きそのものは決して悪くなかった。フグが顔面に不慣れだった数年前なら、これでひょっとしたらひょっとする大番狂わせの可能性もなきにしもあらずだ。
 しかしあいにく今のフグは完全にK-1ルールに対応した鉄壁のファイター。天田のパンチラッシュをいつもの両腕ガードでがっちりとブロックするその表情は、「やれるだけやってみろ」と言わんばかりの自信に満ちあふれている。あのガードを固めたときのフグは、一見一方的に打たれながら後退しているように見えるが、自らの弱点である顎の脆さをカバーすべくグッと顎を引いて、その状態から上目遣いに相手の動きを視野に捉え続けている。相手の攻撃が途切れたりコンビネーションの乱れや隙を捉えた瞬間、フグは攻勢に転じる。勢い込んで突進する天田はフグの最大の武器である左ローで奥脚の右太股を痛打され、K-1デビュー以来初のダウン。


  この一撃で右脚にダメージを蓄積した天田に、容赦ない鉄人の追い打ちが迫る。再び左ローでダウン、続いて最後は後回し蹴りの大技を受け、スリップ気味だったがレフェリーはこれをダウンと宣告してフグの3ノックダウンによるKO勝ちが確定した。

 残念ながら、格の違いが明らかになるばかりの一戦だったという印象は拭いがたい。試合直後のインタビューでもフグの様子は余裕綽々という感じで、要するに試合の前も後も、自分が負ける可能性など微塵も考えたことがなかった風情がありあり。天田のラッシュに反撃したシーンでも多くの観戦者が「フグがヒートアップした」と感じた一方で、実はフグ本人は至極冷静に、いつもどおりに、自分の「仕事」をこなしていただけなのではないだろうか。

 「まだまだだねー。」最近天田をお気に入りにして行動を共にすることの多い帝王アーツは、試合内容についてコメントを求められると苦笑まじりにそう答えていた。やはりこのカード、まだ蹴り技の攻防すら完璧にこなせるようになっていない天田には早すぎたのかも知れない。
 しかし試合後の天田が、彼我の力量の差を素直に認めた上でめげた様子なく力強くこう宣言していたのは頼もしい限りだ。「もっと強くなって帰ってきます!」


次の試合:7.佐竹vs武蔵
全試合結果に戻る
 

レポート:高田敏洋 カメラ:井田英登