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k-1K-1 World GP 2001 世界地区予選U.S.A.大会
5月5日 米国ネバダ州ラスベガス/カジノ・ザ・ミラージュ・グランドボールルーム特設会場

「モーリス・スミス39歳、涙の北米予選制覇」

▼やはりモーリス・スミス最強伝説はまだ終わってはいなかった。
 5月5日ネバダ州ラスベガスの巨大カジノ、ミラージュを舞台にK-1 World GP 2001北米地区予選大会が開催された。マイケル・マクドナルドら8人からなるトーナメントに参戦したモーリスは39歳という年齢的なハンデをものともせずぶっちぎりの強さで優勝を飾った。

 今回のトーナメントは現在世界16個所で開催されている各地予選大会の一環であり、今大会の優勝者は、8月11日再度ラスベガスで開催されるWORLD GP予選大会に北米代表としてエントリー、すでに出場が内定しているピーター・アーツら世界トップ選手と東京ドーム決勝大会への切符を争うことになる。

 かつて“黒いボーイング機”と呼ばれ世界最強のキックボクサーと恐れられたモーリスも今年39歳。K-1参戦も一昨年の8月に行われた「K-1 SPIRIT 99」でのアンディ・フグ戦を最後に途絶えている。誰もがこのままK-1シーンから姿を消すものとして信じて疑わなかった。しかし、一度は世界の頂点に立ったこのベテランは、もう一度現役選手として思い切り力を試したいという思いがあったのである。昨年から、世界規模に拡大されたK-1グランプリこそ、キック選手としての花道にふさわしい。そう信じて今回、トップ選手としては異例の地方予選エントリーを決めたのであった。

 今回予選にエントリーされた8選手の半数以上はまだ日本未上陸の選手。本来ならば、モーリス級の選手とは格がちがう。しかし、モーリスは一回戦から非常に慎重な戦い振りを見せた。参加選手中最年長である事を十分意識して、体力に勝る若い選手とは絶対に打ち合わず、闘牛士のように下がってリングを回る。打ち気に逸って飛び出してきた相手に、カウンターを浴びせながらポイントを稼いでいく戦略で危なげなく一回戦をクリア、二回戦は2Rの立ち上がりエンジンの掛かり切らないグンター・シンガーに右フックで襲い掛かり、24秒でKO。K-1の醍醐味をアメリカのファンにアピールした。

 一方、決勝戦には今、現役K-1選手として頭角を現しつつあるマイケル・マクドナルドが予想通り勝ち抜いてきた。マクドナルドはかつてアンディ・フグが秘蔵っ子として東京の正道会館で育ててきた若手であり、昨年10月には極真戦士ニコラス・ペタスをも破った実力者である。鍛え上げられた筋肉はまさに“グラジエーター”と呼ぶにふさわしく、強力なミドルキックを武器にKO勝利こそ逃したものの、一回戦、二回戦ともダウンを一個づつ奪って文句無しの決勝進出を決めた。

 すでにこの対戦を予測していたように、モーリスは序盤からここまでセーブしていた体力をフル回転させての猛攻に出る。先制でパンチを放って、マクドナルドの出足を止めると、クリンチしての膝でポイントを稼ぎ、突っ込んでくると得意のローでリズムを崩す。とにかく一発一発の強力なマクドナルドに、自分のリズムを作らせずに試合を支配しようとする。対するマクドナルドもアンディ譲りの踵落としを繰り出しながら必死にベテランの動きを撹乱にかかる。かくて、実力伯仲した戦いは完全な同点に終わり、この大会初の延長戦に持ち込まれた。しかし、ここで集中力が切れたのは意外にも若いマクドナルドの方だった。延長に入っても以前のラウンド以上に威力を増したパンチを振い、クリンチの離れ際にも二発三発とフォローのパンチを放つモーリスの積極的な動きに、これまで絶対に下がらなかった腰が引けはじめる。必死に放った左フックがヒットしても、にやりと笑って受け流すモーリスの底無しの魔力がついにマクドナルドを押さえ切った瞬間だろう。判定は10-9.5と超微妙ながら、ベテランに傾いた。

 熱戦をリングサイドで見守った石井館長も「モーリスの老獪さが光ってましたね。やはり正念場の気力の差でしょう」と絶賛、来る8月のラスベガス大会への期待を寄せた。
 リングを降りたモーリス・スミスはバックステージを訪ねたレイ・セフォー、そして先ほど激戦を戦ったばかりのマイク・マクドナルドらに囲まれて、普段クールなこの男には珍しく感激の涙をこぼした。聞けば今年を最後にキック選手としては引退を決意しての参戦だったという。次回のラスベガス大会で優勝できなくても、最後に東京ドーム大会で引退ワンマッチを行いK-1卒業ができれば最高だと言う。果たして、黒いボーイング機がもう一度太平洋を渡ることは出来るだろうか。長く格闘技界の発展に力を注いできたベテランだけに、最高の花道を飾ってほしいものだ。



K-1北米地区予選(3分3RK−1ルール)

<一回戦>
第4試合
○デューク・ルーファス vs. トーマス・クチャゼウスキー×
1R 2:26 TKO(2DOWN)
第5試合
○マイケル・マクドナルド vs. ジャン・クロード・リューイ×
判定(2-1)
第6試合
○モーリス・スミス vs. ペドロ・フェルナンデス×
判定(3-0)
第7試合
○ギュンター・シンガー vs. ポール・ラロンド×
2R 0:57 TKO(レフェリーストップ)

<準決勝>
第9試合
デューク・ルーファス vs. マイケル・マクドナルド○
判定(3-0)
第10試合
○モーリス・スミス vs. ギュンター・シンガー×
2R 0:24 KO

<決勝>
第13試合
○モーリス・スミス vs. マイケル・マクドナルド×
延長判定(2-1)

レポート&写真:井田英登

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