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[UFC 38] 7.13 ロンドン (レポ+追加情報):フリーマン、試合前日に父を亡くす

UFC "UFC 38 - Brawl at the Hall"
2002年7月13日(土)英国ロンドン・ロイヤルアルバートホール  観衆:4,657人

  レポート:井原芳徳 (写真は後日掲載予定)

▼ (7/16 up) 米国の格闘技ウェブサイト・MaxFightingが15日に伝えたところによると、セミファイナルでフランク・ミアに快勝したイアン・フリーマンが、大会前日に父親を亡くしていたことが明らかになった。一部では死因はガンと伝えられている。

  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板・UFCスレッドに投稿をお待ちしています]



メインイベント ウェルター級チャンピオンシップ 5分5R
○マット・ヒューズ(米国/ミレティッチ・ファイティング・システム/王者)
×カーロス・ニュートン(カナダ/ウォーリアー・マーシャルアーツ・センター/挑戦者)
4R 3'27" TKO(レフェリーストップ:サイドポジションからのパンチ連打)
※ヒューズが二度目の王座防衛

 1R、ヒューズがニュートンのタックルをつぶしテイクダウンに成功。だが、下になったニュートンはすかさず腕十字を狙う。ヒューズは一昨年12月のUFC-Jでも同じ展開でデニス・ホールマンに秒殺されており、あわやという場面だ。しかし、ニュートンの足のフックが緩く、ヒューズに脱出を許してしまう。この後は完全にヒューズのペース。インサイドガードからパンチを落としてサイドポジションに移行すると、密着状態をキープして肩パンチや肘を落とす。3月の桜井“マッハ”速人戦を思い出させるヒューズの動きは着実で、けれんみがない。
 2Rもヒューズはすぐにニュートンを組み倒しサイドをキープ。一度スイープを許すが、差し合いを制して再びサイドをキープ。ニュートンの顔面に肘とパンチを放ち、目の下を出血させる。
 3Rもヒューズのサイドキープ作戦は変わらない。後半にはマウントポジションを奪い、左手でニュートンの腕を殺したまま強烈な右パンチを顔面に連打する。それでも決まらないと見るや、今度は腕十字に移行。だがニュートンは素早く起き上がってバックマウントを奪う。一発逆転のチャンスかと思われたが、非情にもラウンド終了のベルが鳴る。
 結局ニュートンのチャンスはこれが最後。4Rもヒューズが早々にテイクダウンに成功すると、あっさりパスガードに成功し、ニュートンの顔面に肘を押し付けるネチっこい攻撃を続ける。そしてサイドポジションから顔面パンチを連打。ニュートンの両腕はヒューズの体の重圧に封じ込められ、身動きができない。ヒューズが5発目を当てたところでレフェリーが試合をストップ。ヒューズが手堅い戦法でニュートンとの完全決着と二度目の王座防衛に成功した。



セミファイナル ヘビー級 5分3R
○イアン・フリーマン(英国/トータル・マーシャルアーツ)
×フランク・ミア(米国/ヒカルド・ペレス・ブラジリアン柔術)
1R 4'35" TKO (レフェリーストップ)

 フリーマンはヘビー級王者のジョシュ・バーネットと一週間トレーニングを積み、地元イギリスでの試合に備えてきた。セコンドにはサッカーのイングランド代表チームのユニフォームを着たバーネットの姿も見える。
 試合ではそんなフリーマンの練習の成果が存分に発揮される。右フックを振り回すフリーマンにミアはタックルを仕掛けるが、倒せないとみるやすぐに引き込みに移行。だがフリーマンにとってはこの展開は望み通りのものだったようで、フリーマンはミアを金網に詰めてハーフガードの体勢をキープし重いパンチを振り落とす。ミアの柔術仕込みの柔らかい動きをパワーで封じ込める。
 いったんスタンドに戻ると、今度はミアの首を抱えてアッパーを連打。再びグラウンドになるとミアがヒールホールドを狙うが、フリーマンは上半身を上げてミアの顔面にパンチを連打。ミアはヒールに固執したあまり、フリーマンのパンチを大量にもらってしまい体力を消耗する。ミアはヒールを外してクロスガードに。フリーマンは外して立ち上がり、アリ猪木状態に。再びフリーマンは上になりパンチを落とす。
 ミアの消耗が色濃くなってきた。フリーマンはパスガードに成功するとサイドポジションから肘とパンチの連打。ミアは目尻をカットし顔面が血に染まる。フリーマンがいったん立ち上がりアリ猪木状態になり、レフェリーがブレイクを命じる。だがミアは足腰がフラフラで立ち上がることができない。結局レフェリーストップがかかり試合終了。地元のフリーマンの勝利に会場は大いに湧いた。



第5試合 ミドル級 5分3R
○マーク・ウィアー(英国/チームX)
×ユージン・ジャクソン(米国/グラディエーター)
1R 0'10" KO(右ストレート)

 173cmのジャクソンに対し182.5cmと長身のウィアー。黒人であり、かつスリムな体型は、シュートボクセのアンデウソン・シウバそっくり。そしてウィアーもアンデウソン同じくストライカータイプで、開始早々その脅威の打撃技が披露される。
 間合いを詰めたウィアーは、カカト落としのように伸びのある右ハイを放つ。命中はしなかったものの、そのままジャクソンは右フックを振りながら突進。だがそこでウィアーが右ストレートを放ち、ジャクソンのアゴにクリーンヒット。ジャクソンはマットに崩れ、ウィアーが上からパンチを数発落としたところでレフェリーが試合をストップっした。ウィアーはこれで総合格闘技17戦17連勝。34歳と遅咲きながら、これからUFCのタイトル戦線に絡む選手となることは間違いないだろう。



第4試合 ライト級 5分3R
×レイ・レメディオス(英国/トータル・マーシャルアーツ)
○須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ)
2R 1'38" スリーパーホールド

須藤、鮮烈のUFCデビュー

 お馴染みライトアップされたオクタゴンへの花道に、三度笠と黒い着物を身にまとい登場した須藤。笠を脱ぐと、その下には天狗のお面をかぶっており、須藤は見栄を切りながら客席に花吹雪をまき散らす。セコンドにつく東京元気大学の川越和人、宮本優太朗もブルーの作務衣を身にまとい、さながら助さん格さんといった雰囲気だ。中世ヨーロッパ風のロイヤルアルバートホールが、オリエンタルなムードに包まれる。
 観客は地元のレメディオスに声援を送る。両者とも身長・体重に差はないが、レメディオスのほうがやや線が細い。開始早々、須藤はお得意の背中を向けてのバックステップを披露。さらにはノーガードでレメディオスを挑発する。レメディオスのミドルキックも伸びがあるが、須藤は難無くこれをディフェンスし、レメディオスを金網に押し付けてからテイクダウン。インサイドガードになると須藤は相手の背中が金網に付くよう持ち上げ移動させる。須藤の一つ一つの動きが着実だ。
 須藤は一度立ち上がってパンチを落とし、再びインサイドガードに戻る。また立ち上がろうとした時に、レメディオスの足を抱えてジャイアントスイングを狙ったようだがこれは失敗。レメディオスをスタンドに戻してしまうが、須藤はすぐに組み付くと金網に詰めて、今度は飛びつきの三角絞めを狙う。だが須藤のこの技を知っていたレメディオスは外してインサイドガードに。須藤はしつこく三角を狙うがレメディオスはディフェンス。レメディオスが立ち上がり猪木アリ状態になったところで1R終了のベルが鳴る。
 チャンスは逃したものの、1Rの主導権を握り続けた須藤。客席からも須藤の一挙手一投足に対する溜め息が聞こえてくる。須藤は早くもロンドンっ子のハートをしっかりつかんだようだ。
 2Rもノーガードでレメディオスを挑発し、パンチを見せてから組み付くと、レメディオスの腕を抱えて豪快にマットに叩き付ける余裕の動き。そのままサイドポジションを取ると、レメディオスは金網を足で蹴って体をずらすが、須藤もその動きに対応し上のポジションをキープする。そしてレメディオスが同じような動きで半身だけ脱出しかけたところで、須藤はクルッとレメディオスのバックを周り、胴締めスリーパーを極める。レメディオスは為す術無くタップ。完封と言っていい内容で須藤がUFCデビュー戦を飾った。
 試合が終ると須藤は太極拳風のポーズを決め、さらに「We Are All One」という文字をあしらった国連の青い旗を掲げ勝利と世界平和をアピールする。日本人らしく観客への礼も忘れない。リングアナウンサーに「サムライ」とコールされた須藤は、リング上で勝利者インタビューで「UFCのチャンピオンになる」と高らかに宣言した。



第3試合 ライトヘビー級 5分3R
×ジェームス・ジキック(英国/チーム・シャムロック)
○フィリップ・ミラー(米国/ウィリアムズ・コンバット・グラップリング)
判定0-3 (28-29,28-29,28-29)

 1、2Rともミラーがしつこいタックルでテイクダウンを奪い、ハーフガードを制するという展開が繰り返される。だが両者とも2R中盤あたりからバテ始め、動きが緩慢に。3Rこそジキックがサイドポジションから腕十字のチャンスを得るが、パワー不足で極めることができない。終盤にはスタンドでジキックが伸びのあるパンチで攻めるが、これまたパワー不足で攻めきれない。一方のミラーもパンチをもらうと足下がフラフラ。イギリス人選手の登場する試合ということで、PPV中継の枠の最初に放送されたが、レベル的には前座程度の試合だった。


第2試合 前座戦 ライトヘビー級 5分3R
×エルビス・シノシック(オーストラリア/マチャド柔術)
○レナート・ソバル・ババル(ブラジル/ファス・バーリトゥード・システム)
判定0-3 (27-30,27-30,26-30)

 通好みのカードだが、イギリス人の試合ではないため前座扱いに。PPVではメイン終了後の余り時間に放送された。
 試合はレスリングベースのババルが柔術ベースのシノシックをグラウンドで封じ込めるという、まるでメインとセミを暗示するかのような内容となった。ババルはインサイドガードで密着しパンチを連打。1R終盤からシノシックは額をカットし出血。2R。3Rも同様の展開で、3Rにはシノシックが左眉尻をカットしドクターチェックを受ける。試合開始時にはシノシックの短髪が鮮やかな黄緑色に染められていたが、終了時には血と混じって茶色っぽくなっていた。



第1試合 前座戦 ライトヘビー級 5分3R
×クリストファー・ヘイズマン(オーストラリア/リングス・オーストラリア)
○エヴァン・タナー(米国/USAスターズ)
判定0-3 (27-30,26-30,26-30)

 マティシェンコの負傷欠場のため急遽UFC初参戦を果たしたヘイズマンだが、調整不足と不馴れな金網での試合ということが相まって、いいところなし。タナーに倒されると金網を背にしたたまの体勢でパンチを顔面に落とされ、身動きが取れない。マウントを取られても下から密着するばかりだった。



※ウェルター級5分3R トニー・デソーザ(ペルー)vs. ギル・カスティーリョ(米国)はカスティーリョの体調不良により中止。

Last Update : 07/16

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