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[プレミアムチャレンジ] 5.6 東京NK (レポ&写真):美濃輪に続き、近藤までも…

パルテノン "PREMIUM CHALLENGE"
2002年5月6日(月・振休) 千葉・東京ベイNKホール

レポート&写真:井原芳徳

<大会の特徴>
 ファンがプロ選手に抱くスター性などを「プレミアム」という言葉に結集。それを保持する「ガーディアン(守護者)」に「エクスプローラー(探求者)」と呼ばれる各団体の成長株の選手が挑戦する。
 試合はポイント制を採用。スロー(投げ)2点、ホールド(関節技・絞め技を30秒維持)4点、ダウン4点。決着方法はKO、TKO、ギブアップ、ポイントアウト(一方の選手が8ポイント累積した場合)など。10分の試合終了後ポイントに差がない場合、「オーディエンスジャッジ」に持ち込まれ、観客の代表者3名が単に技術だけでなく個性やアピール度も総合して判定する。それでも決着がつかない場合は3分の延長戦を行う。
 ルールはパッド着用での肘打ち・膝蹴りが可能な「スタンダード」と、グローブを着用せず、顔面パンチ・肘打ち・膝蹴りが禁止の「F&G(フルコンタクト&グラップル)」の2種類。【→詳細およびカード紹介記事】

<プレミアムマッチ> (上の選手がガーディアン、下の選手がエクスプローラー)

第4試合 スタンダードルール10分1R
×近藤 有己(パンクラスism)
○百瀬 善規(禅道会)
オーディエンスジャッジ0-2

 百瀬はパンクラス3月後楽園大会で美濃輪育久と引き分けている。幼少から柔道に親しみ、95・96全国インターハイ5位の実績を持つ。禅道会空手を通じて総合格闘技の世界に足を踏み入れ、昨年9月、わずか1年強の経験で同会の大会で優勝してしまった。そして道衣のないパンクラスルールでも、美濃輪戦は事実上勝ちに等しい内容だった。だがこの時の美濃輪は風邪のまま試合に臨んでいた。そのため、昨年12月の郷野聡寛戦の勝利以降4連勝中と絶好調の近藤有己なら、百瀬の猛威を食い止めることができるだろうと多くの人が思っていたに違いない。

 開始すぐ、近藤のミドルをかわした百瀬は、勢いのある胴タックルで近藤をロープまで押し込んで、さっそく最初のテイクダウンを奪うことに成功する。近藤は足を開き、百瀬が体勢を入れ替えた隙を狙い立つことを目論んでいたようだ。しかし百瀬は簡単にパスガードをすると、横四方の体勢から近藤をがっしりと押さえ込む。パンクラス随一の腰の強さを誇る近藤がブリッジでもがいてもびくともしない。なんとか脱出に成功しそうになったが、百瀬はすばやく近藤のバックを取る。体重では近藤が86.8kg、百瀬が89.6kg。さほど差はないが、百瀬には何か違う星の重力がかかっているかのようだ。近藤の一個一個の動きへの反応も素早い。打撃のキャリアはそれほどないはずなのに、スタンドの攻防になっても、絶妙の間合いをキープし、近藤にパンチや膝を打つ距離を作らせない。そして再びバックを取ると、豪快なスープレックスで近藤をマットに叩き付けてる。さらにコーナーに近藤を追い詰め、まるで巨大な壁のように立ちふさがる。

 この時点でもう筆者は「今日の近藤はとてもじゃないが勝てないな」と確信した。「戦う」ことにおいてどの競技にでも、間合いの取り方や重心のかけ方とかに共通のセオリーがあるとすれば、百瀬は長年の柔道のキャリアの中で完全にそれを血肉化したのだろう。だから総合にも短い期間で違和感なく溶け込んだ。そして2戦目となる道衣なしの総合でも、前回の試合から1か月半ぐらいしか経っていないのに、前の美濃輪戦以上に強くなったような印象を受けた。23歳という若さのせいだけではなく、格闘家としてのポテンシャルの高さが恐るべき成長の背景にあるのではないだろうか。

 だが近藤もこのまま負けるわけにはいかない。百瀬はプロの舞台になれていないせいもあるだろう。少し疲れを見せたところで、近藤がパンチと膝を命中させテイクダウンに成功。ハーフガードからパンチを落とし、得意の体勢に持ち込んだ。そして百瀬の足関節を捕まえ、シュートサインが出る。近藤が大逆転かに思えた。だが百瀬はリバースすると、一気にマウントポジションに移行する。そして容赦ないパンチの連打。会場に大挙詰め掛けた禅道会陣営から「百瀬」コールが巻き起こる。近藤も残り時間わずかのところで脱出し再び上になったが、百瀬に密着されたまま何もできずにゴングの音を聞いた。

 ポイントが両者ゼロのため、オーディエンスジャッジに持ち込まれると、1者がドロー裁定で、2者が百瀬を評価したたため、百瀬の勝利。百瀬の金星に会場は驚きと喜びに包まれる。百瀬自身も喜びを隠せず、コーナーポストにのぼり両手を上げていた。

◆近藤のコメント
「差し合いで負けたのが敗因ですね。抑え込みは巧かったです。今日は精神的にも肉体的にも技術的にも、準備ができてたんですけど…。(百瀬の打撃は?)うまいとは感じなかったけど僕のリズムが取れなかったので、いいパンチが出せなかった。勝負の世界は負けが強くなるための一歩になると思う。いい意味で忘れられない敗戦ですね。(ガーディアンでありながら負けたことは?)ガーディアンというのはやっつけられるためにあるんで、ガーディアンとして負けたことに関しては特に何もないです」

第3試合 F&Gルール10分1R
○イリューヒン・ミーシャ(リングス・ロシア)
×藤井 克久(スタンド)
5'45" ギロチンチョーク

 何度も組付くミーシャに対し、藤井がロー、離れ際の膝といった打撃で奮闘。途中藤井のニーパッドの紐が切れるトラブルが発生し試合がストップ。再開後、藤井がローの連打の後突進。だがこれが裏目に出て、ミーシャの引き込んでのギロチンに捕まる。ミーシャは太い腕で強引に締め上げ、藤井は失神。レフェリーが試合を止めた。

第2試合 スタンダードルール10分1R
○石井 大輔(パンクラスism)
×富士 大輔(U-FILE CAMP)
3'28" 肩固め

 富士はプロボクシングのミドル級ランカーで、戦績7勝5敗。だがボクシング以外の試合にこの日出場したことで、ライセンスをはく奪されてしまう。それほどのリスクを犯してでも挑んだ試合だったが、石井にあっさりコーナーにつめられると、マウントからパンチと肘の連打をもらってしまう。一度離れるが、またコーナーに押し込まれ、マウントパンチを食らった後に肩固めを極められタップアウト。富士はほとんど何もできないまま完敗した。

第1試合 F&Gルール10分1R
○クリストファー・ヘイズマン(リングス・オーストラリア)
×小澤 幸康(チームKAZE)
6'24" アームロック

 ヘイズマンが序盤からバックを取り、スリーパーでロックポイント(4点)を獲得。その後も押し気味に試合を運ぶが、次第にスタミナロスし始める。小澤はコーナー際での差し合いを制しテイクダウンに成功。形勢逆転かと見られたが、ヘイズマンが仕方らのアームロックを見事に極めタップアウト勝ち。

<チャレンジマッチ> (上の選手がガーディアン、下の選手がエクスプローラー)

第5試合 スタンダードルール10分1R
×矢野 卓見(烏合会)
○所 英男(チームPOD)
オーディエンスジャッジ0-3

 今年3月のコンテンダーズの再戦。この時は矢野が格の違いを見せつけたが、打撃ありでは勝手が違う。所は飛び蹴りなどで果敢に攻め、矢野をコーナーにもたれさせると、上から強烈なパンチを落とし着実にダメージを与える。矢野も下からのアームロックや三角絞めを狙うが、終盤はスタミナ切れ。最後までアグレッシブに攻めた所がリベンジを果たした。

第4試合 スタンダードルール10分1R
○今泉 堅太郎(SKアブソリュート)
×ラサール☆おさみ(烏合会)
ポイント2-0

 ラサールは町田生五月の本名でキングダムを中心に活躍してきた選手。一方今泉は修斗クラスAのランカー。プレミアムでしか実現しないような異色マッチとなった。今泉がサンボ仕込みの投げで2ポイントを獲得する。ラサールもスタンドでの離れ際で膝やパンチを当てるなど奮闘したが、ポイントを奪える攻撃はできず。今泉も終盤おんぶの体勢からスリーパーを狙ったが極められず、結局ポイント差で勝利した。

第3試合 スタンダードルール10分1R
○今成 正和(チームROKEN)
×岩間 徳三郎(禅道会)
3'24" ヒールホールド

 キングダム離脱後は矢野卓見との練習の機会が増えた今成。ヒゲの生え方もどこか矢野を彷佛とさせる。ミドルを放つ格好で突進し岩間をテイクダウンすると、素早くマウントポジションを奪うが、岩間はリバース。しかし今成は下から三角絞めを狙い、30秒この体勢を維持し「ホールド」による4ポイントを奪取する。さらに得意の足関を狙おうとすると、岩間は離れて猪木・アリ状態に。岩間は禅道会仕込みのローを、寝転ぶ今成の足に的確にヒットさせる。防戦一方に見えた今成。だが、これは今成の仕掛けた罠だった。岩間の10数回目のローをつかむとヒールホールドに極める。岩間はしばらく我慢したが、今成の極めは強く、岩間はタップ。「足関十段」の本領を存分に発揮したファイトで、観衆を大いに湧かせた。

第2試合 スタンダードルール10分1R
○芹沢 健一(RJW/CENTRAL)
×佐藤 伸哉(P's LAB東京)
7'17" TKO(タオル投入)

 腰のテーピングが痛々しい芹沢だが、持ち前の勢いの良さで佐藤を圧倒。サイドポジションをキープするとパンチ、肘、膝のラッシュでダウン(4ポイント)を奪う。さらに上に乗った状態で佐藤の顔面へ膝蹴り連打。グロッキー状態になった佐藤を見たセコンドがタオルを投入。芹沢が恐さを見せつけた一戦だった。

第1試合 スタンダードルール10分1R
×港 太郎(チームK.I.B.A.)
○熊谷 真尚(禅道会)
オーディエンスジャッジ0-3

 熊谷が港のハイキックに合わせてタックルでテイクダウン。パスガードしてマウントパンチを連打する。だが港はパンチで熊谷がバランスを崩した隙をついて脱出。再び熊谷がテイクダウンすると、今度はインサイドガードから的確なパンチを連打。港は終盤こそ下に潜り込んで足関節をつかもうとする場面があったが失敗。結局試合を押し気味に進めた熊谷がオーディエンス代表の支持を得た。

<プレマッチ>(エクスプローラー同士の対戦)

第4試合 スタンダードルール10分1R
×加藤 泰貴(ロデオスタイル)
○割田 佳充(チームPOD)
ポイント0-4

 スタンドでの派手な殴り合いが続く。残り30秒、右フックでダウンを奪った加藤が4点を獲得し勝利。PODの選手らしい勝負強さを発揮した。

第3試合 スタンダードルール10分1R
○佐々木 恭介(U-FILE CAMP)
×森 素道(SKアブソリュート)
オーディエンスジャッジ3-0

 佐々木がサイドからのアームロック、4点ポジションからの膝蹴り、さらにマウント、バックとポジショニングでも上回る。オーディエンスジャッジは佐々木に軍配。3月のDEEP名古屋大会に続く勝利をもぎとった。

第2試合 スタンダードルール10分1R
×出口 直樹(ストライプル)
○渡邊 将広(フリー)
オーディエンスジャッジ0-3

 渡邊は昨年JTC60kg未満級優勝者で、試合終盤に背後からスリーパーを狙い続ける。ポイントを奪うにはいたらなかったものの、オーディエンスジャッジで勝利を手にした。

第1試合 スタンダードルール10分1R
×小池秀信(フリー)
○野沢洋之(フリー)
1'37" KO

 元パワーオブドリームでタイタンファイトの常連だった野沢が、序盤から小池に殴り掛かって吹き飛ばす豪快なファイトを見せ、最後はトップポジションからのパンチ連打で快勝した。

Last Update : 06/21

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