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[修斗] 5.5 後楽園 (全試合レポ&写真):KIDの日、血の結末

イーフォース・ジャパン "プロフェッショナル修斗公式戦"
2002年5月5日(日)東京・後楽園ホール

レポート:石動龍 写真:井原芳徳

メインイベント ライト級 5分3R
○ステファン・パーリング(アメリカ/ジーザス・イズ・ロード/3位)
×山本"KID"徳郁(日本/PUREBRED大宮/8位)
1R 0'30" TKO(額からの出血によるドクターストップ)

 アマチュア時代から連勝街道をひた走るKIDが初の国際戦、そして初の三回戦に挑む。相手のパーリングは現在ランキング3位。かつて阿部裕幸をKOした、ライト級きってのハードパンチャーだ。一戦ごとに成長を見せ、単なるストライカーから脅威の打撃力を持ったシューターへと変貌しつつある。

 総合デビュー以来最強の相手を迎えたKIDは、入場時から上半身裸で臨戦態勢。3月の試合が相手選手の来日拒否で中止となったせいもあるだろう。ゴングがなると飛びヒザで突進。だがパーリングは冷静にそれをさばくとアップライトに構えてKIDの動きを待つ。

 ふたりの距離が遠い。パーリングのジャブをKIDは後に飛びのいてかわし、打撃の間合いに入ろうとしない。一瞬顔を見合わせた後、タイミングを計ってKIDがタックルで突っ込む。しかし、そこに待っていたのはパーリングのカウンター。昨年8月のミルコ・クロコップ×藤田和之のVTRを見るかのように、KIDの額にパーリングのヒザが吸い込まれた。

 この時既にKIDは自分の額が切れたことに気付いていた。そのまま強引にグラウンドに持ち込むと、額を隠すような素振りをしつつ、パーリングに殴り掛かり短期決着をつけようとする。

 だが出血の量が尋常ではない。鈴木レフェリーは試合を一時ストップし、ドクターチェックを受けさせる。勝ちを確信したパーリングは両手を上げ喜びをあらわす。主催者席に座っていたエンセン井上がすぐリングに駆け上がり、まだ暴れようとする“弟”を強く抱きとめる。あまりにも衝撃的な結末に、しばらく会場が騒然としていた。

◆医務室で治療を受けた後、控え室でのKIDのコメント
「パンチも見えてたし、負ける気が全然しなかったです。ただあっちの運があっただけで、俺が運悪かっただけ。次やったら絶対勝てるし、何回やっても勝てます。(額は応急措置をしたのですか?)かすり傷。運の問題だけです。(初めての敗北のショックは?)負けた気がしないし、あのままやってたら絶対勝ってた。(今すぐにでもパーリングと戦いたい?)今やりたい。顔面の皮全部剥ぎたい。負ける気しないです。
(切れた瞬間は気付いていた?)『ちょっと切れたなあ』って。でも全然効いてなかったし。(血が流れた瞬間止められると思った?)ポタポタってなって『あっ、やべえ』って思って、(血を)見た瞬間『一発殴ってKOして勝っときてえ』と思ったら止められたから。あと1分ぐらいあったら良かったのに。(試合前の作戦は?)やる前に作戦考えてないし、その場で勝手に考え付くし。たまたまタックル行っただけで。(再戦は訴える?)当たり前ですよ。倍返しです。絶対やり返す。(ノゲイラ戦よりパーリングとの再戦が先?)はい。(ノゲイラ戦は?)考えられない。」

◆パーリングのコメント
「今日の勝利を神に感謝するのみです。ヤマモトはとにかくアグレッシブな選手でした。カウンターのヒザは狙いどおり。彼が力一杯向かって来るのが見えたので、自分は下がってヒザを入れました。試合終了後にヤマモトから『もう一度戦ってくれ』と言われましたが(マネージャーの)レイ・クーパーが決めることなのでどうなるかはわかりません。私としては(1年半前に敗れた)ノゲイラとぜひ再戦したいです」

セミファイナル フェザー級 5分3R
○秋本 じん(日本/SHOOTO GYM K'z FACTORY/1位)
×アルフィ・アルカレズ(アメリカ/ニックワン・キック・ジム)
1R 0'22" ヒールホールド
※アルカレズはこれまで「アルフォンソ・アルカレイツ」と表記されてきたが、公式発表は上記。英語ではAlfie Alcaraz

 アルカレズは全米レスリング・インカレ代表の経験もあり、99年9月のUFC22では、現UFCライト級チャンピオンのジェンズ・パルヴァーと対戦し、体重差をもろともせずに引き分けている。ドラッカの世界ライト王者でもあり、シュートボクシング3.31後楽園大会ではSBスーパーフェザー級王者の前田辰也と対戦し、判定3-0で勝利をおさめている。
 対する秋本は修斗史上初の現役議員シューター。当選後初の試合にこちらも注目が集まる。
 気合十分の表情で向かい合う両者。熱戦を予感させるがゴングが鳴ると同時に秋本が突進して飛び膝蹴り。そしてすぐに引き込んでヒールホールドへ。足を刈られて倒れこんだアルカレズにはタップ以外の選択肢はなかった。

◆秋本のコメント
「あっという間に終わらせないと勝てないと思ってました。あれしか狙ってなくて、繰り返し練習していたんですよ。最近ジムでもみんなが驚くぐらい(足関節が)うまくなって、本当に成長したというか。
(もしヒールが失敗していたら?)5分3Rの間ずっとヒールを狙ってましたね。何でもいいから密着して。向こうにはレスリングでもボクシングでも勝てないだろうから、とにかく何でもいいから突っ込んでいって密着すれば足関のチャンスがあるだろうと。それに賭けてましたね。
(次の目標は?)そうですね、次はやっぱUFCに行きたいですね。今日の相手は、アメリカでUFCに出たり、すごい実績がある選手なので。ジェンス・パルヴァーともいい試合したし、そういう選手に勝ったということで、僕もUFCに出る資格があるんじゃないかと。で、チャンピオンは今、大石さんだし。最終的には、修斗のチャンピオンが僕にとっては勲章だけど、自分の可能性を試したいし、そういう意味ではUFCとか世界のトップレベルの強い人がいるならそういう人たちと世界でやってみたいです。
(今日の試合に出たことで町議会議員活動に影響は?)とりあえず自分は無所属なので、自分の組み立ててで仕事ができるんです、例えば練習時間を確保して夜中仕事することも可能だし、昼間に仕事して夜に練習することも可能だし。結構、融通が利くというか、サラリーマンみたいに拘束されるよりは結構練習できるんじゃないかなあって。
 両方とも僕の小さな頃の夢が叶ったんですよ。修斗、というかプロレスラーだったんですけど、そういうものと政治家になりたいというのは子供のころからの夢だったので。今両方できているのですごく幸せでやりがいがありますね」

第5試合 ミドル級 5分3R 
×和田拓也(日本/SHOOTO GYM K'z FACTORY/7位)
○デイブ・ストラッサー(アメリカ/フリースタイル・アカデミー/8位)
判定1-2 (28-29,29-28,28-29)

 ストラッサーは3月のフックンシュートで勝利している選手。開始から和田が執拗にタックルでテイクダウンを狙う。ストラッサーは時折テイクダウンされるも、巧みなディフェンスで和田に攻めさせない。
 2R終了まで同様の展開が続き、迎えた3R、突如和田が失速。スタミナが切れたのか完全にタックルを切られてしまい、ストラッサーはカメになった和田の顔面にパンチの連打を浴びせる。そしてそのまま試合終了。判定は割れたが2対1でストラッサーに軍配が上がった。

第4試合 ウェルター級 5分2R 
○村浜天晴(日本/WILD PHOENIX)
×朴 光哲(日本/SHOOTO GYM K'z FACTORY)
2R 3'17" 膝十字固め

 開始早々村浜の鋭い左ストレートがヒット。朴をぐらつかせ、打撃の成長を発揮する。朴は組み付いて反り投げを狙うが、村浜がつぶして上を取る。下になった朴はスイープを狙って村浜の足を抱えるが、バランスよく耐えた村浜はがら空きの朴の顔面にパンチを落としていく。
 2R、打ち合いからタックルで村浜がテイクダウンを奪う。しかしタックルの際に村浜のグローブがロープに絡まってしまい、試合が一時中断される。なかなかロープがほどけずに苦心する村浜と鈴木レフェリーの仕草に場内から笑いが漏れる。再開後も上下さかさまの体勢で朴のバックを奪うなど、一筋縄ではいかない“村浜ワールド”にリングが染まっていく。
 そしてその体勢からお互いに足関節を狙うが、朴がアンクルホールドから上を制し、さらにバックを奪いかける。だがその時、村浜の一発逆転の前方回転膝十字が炸裂。なすすべなく朴はタップし、村浜がプロ16戦目にして初の一本勝ちを挙げた。

 久々に“GEININ魂”を爆発させた村浜は、仲間達に祝福されると人目をはばかることなく涙を流す。長らくクラスBに甘んじてきた実力者の、この一戦にかけた決意のほどを伺わせた。村浜は5月10日付けでクラスA昇格を果たした。

◆村浜のコメント
「(極めた瞬間)足は腕と違って、いまいちバリバリとか(関節がきしむ音は)聞こえないんすけど、入ったとは思ったんですね。最初(朴の挙動が)タップじゃなくてパンチかと思って『もっと絞めな』と思ったら、ゴングが鳴ったんでホッとしました。
(いよいよ念願のクラスAですか?)もう行ったんじゃないですかねえ?。6勝目で連続2勝なので、もう行かしてもらいます。
 現役生活はちょっと先が短いような気がするんですけど、ここにきてまだまだひと伸びいけそうな気がするので。とりあえずトップ目指してもうちょっとGEININ魂を発揮して。今日はちょっと笑いがいまいちだったのでもっと笑いとりたいなあと。アクシデントで笑いとってもしゃあないじゃないですか(笑)。これからは立って良し、寝て良し、喋ってよし、動いて良しのコンプリートファイターを目指しますんで。けっこう転んだりもするんですけど、温かい目で見守ってください、という感じで締めたいと思います」

第3試合 ウェルター級 5分2R 
×倉持昌和(日本/無所屬)
○富樫健一郎(日本/パレストラHIROSHIMA)
1R 4'31" 腕ひしぎ十字固め

 鋭いパンチと首相撲からのヒザで富樫が攻める。倉持は組み付いてコーナーに押し込む。やや膠着の後、富樫が腰投げで投げ飛ばす。すると投げられた勢いを利用して倉持が上を取る。
 下になってしまった富樫。だがここから柔術紫帯の本領を発揮。スイープ狙いから三角絞め、さらにオモプラッタと波状攻撃を仕掛ける。一度は逃げられるが再び三角絞めから腕十字をがっちり極め、倉持はタップアウト。富樫がベテラン倉持から鮮やかな一本を奪った。これで冨樫は戦績4戦2勝2分。

第2試合 02年度新人王トーナメント ミドル級1回戦 5分2R
×伊藤 忍(日本/パレストラTOKYO)
○福本洋一(日本/和術慧舟會千葉支部)
判定0-3 (18-19,18-19,18-19)
※1R、2度の急所蹴りにより福本に減点1

 1Rに二度のローブローを放った福本に減点1が課せられる。互いに声を上げ必死に戦うが、極め手に欠く。だが最後まで集中力を切らさずに攻め続け、ポジショニングで優位に立った福本が嬉しいプロ初勝利を飾った。

第1試合 02年度新人王トーナメント バンタム級2回戦 5分2R
○漆谷康宏(日本/RJWセントラル)
×赤木康洋(日本/ALIVE)
2R 1'57" チキンウィングアームロック

 開始直後に赤木がハイキックで突進。漆谷はガードして組み付くが、その際アクシデントに襲われる。肩が上がらない状態となり、パワフルな赤木に対し下になる展開が続く。インターバル中にセコンドの宇野薫から「やめるか?」と棄権の提案をされたというが、漆谷はあきらめることなく2Rに臨む。

 再開後も漆谷は上を取られる。しかし「下からの極めだけを狙っていた」と語ったとおり、一瞬の隙を逃さず赤木を三角絞めに捕らえる。がっちりロックし、タップしない相手を見てアームロックに移行。赤木も回転して逃れようとしたが最後はレフェリーが試合を止めた。
 漆谷はこれで戦績を5戦4勝(1S)1敗とし、5月10日付けでクラスA昇格を果たした。

◆漆谷コメント
「ファーストコンタクトで肩が上がらなくなって・・。ずっと下からの極めだけを狙ってました。本当はカウンターでタックルを合わせたかったんですけど、今日は受身にしか回れなかったんで、次は攻め続けて一本取れるような試合がしたいですね」

Last Update : 05/23

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