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[AX] 5.4 後楽園 (レポ&写真):辻結花・星野育蒔が激闘

女子総合格闘技AX "AX Vol.3" 2002年5月4日(土・祝)後楽園ホール

 レポート&写真:井原芳徳  【大会前のカード&概要紹介記事】

▼約半年ぶりのAXは、格闘技の聖地・後楽園ホールに進出して開催された。「いろんな女子の格闘技を披露したい」という木村浩一郎プロデューサーの意図の元、柔術マッチや組技のエキシビジョンも行なわれ、AX公式戦もメインに近付くにつれハイレベルな攻防が繰り広げられ、見ごたえのある大会となった。
 だが、試合前のルールの説明や、ルールを書いたビラの配付が無かったのが残念だった。客層は男子の総合格闘技を熱心に見ているようなファンは比較的少なく、スマックの会場でもよく見かけるような女子プロレスファン、選手や関係者の身内が多かったので、なおさらルール説明が求められる状況だった。柔術では肝心のパスガードの場面ですら観客が静まり返っている。
 木村プロデューサーは「女子総合の競技としての確立」をうたい、スマックガールを離れAXを始動した。マッチメイクも実力重視で、奇をてらった演出を行なわない。だが、本当にいろんな物をそぎ落として競技そのものを見せることが、競技の確立への近道だろうか?
 まずは観客にルールをわかりやすく説明することが大事だろう。生っ粋の格闘技マニアが少なかった状況というのは、逆に言えばマニア以外に格闘技をアピールする絶好のチャンスだったはずだ。観客に「柔術は難解な競技」というイメージを与えてしまったとしたら本末転倒だ。
 そして既に筆者がAX旗揚げ戦のレポートでも書いたように、女性的な美しさや柔らかさを活かすような演出を何か考えるべきだろう。エンタテイメント性と競技性というのは必ずしも相反せず、うまく活かせば相乗効果をもたらすものであることは、男子のいろんな格闘技イベントを見ても明らかだと思う。
 AXが半年休眠している間、スマックは「渋谷系女子格闘技」から「格闘エンタテイメント」に生まれ変わり、ディファ有明に多くのファンを集め定着しつつある。運営もレフェリングも渋谷時代から格段に進歩した。老舗の修斗も女子のプロ公式戦を日本でもスタートし、男子と同じルールでシビアな競技性を追求している。そんな中、両団体の中道に位置するAXは、いろんな面で取り残されている気がする。
 次回大会は場所は同じく後楽園ホールで6月26日(水)開催される。7月26日(金)の後楽園大会も決まっている。夏にかけて巻き返しをはかれるか? 木村プロデューサーをはじめとしたAXのスタッフの奮起に期待したい。



メインイベント AX公式ルール 56kg契約 5分3R
○辻 結花(総合格闘技・闇愚羅)
×ジェット・イズミ(J-NETWORK/アクティブJ)
判定2-1

 ジェットの打撃をかいくぐった辻が、タックルでテイクダウンに成功し、腕十字を狙うという展開が繰り返される。1R、2Rとも辻が極めそうになる場面があったが、ジェットの巧みなディフェンスと、女子ならではの関節の柔らかさのせいもあり、フィニッシュにいたらない。2R終盤あたりから両者がグラウンドで休む展開が増える。
 3R、これまで劣勢のジェットが右ストレートでダウンを奪い、挽回するかに見えたが、最後はジェットが上になったところで試合終了。岡林レフェリーだけがジェットを評価したが、三宅と小林の両ジャッジは辻を評価し、辻の勝利となった。

■辻のコメント
「(3Rのダウンは?)そんなに効いてへんかった。相手がダウンを取られたかと思いました。(判定勝ちについて?)満足してません。KOか一本で勝てるようにならないと。潜在意識で、判定勝ちでもいいや、と守りに入ってしまう部分があるんで、そこをなおさないと。(打撃が怖いことが原因?)そうではないです。(星野選手の試合は見た?)ちらちらっと。タックルがうまなってましたね(笑)。」
(写真:できたてほやほやの修斗のプロライセンスをコーチから受け取り笑顔を見せる辻。「シューティング娘。の辻ちゃん」のデビューはいつ?)

■ジェットのコメント
「タックルのテイクダウンでポイントを取られてしまったと思う。打撃、タックル、寝技の流れを身につけられるようにならないとだめですね」

セミファイナル AX公式ルール 58kg契約 5分3R
○星野育蒔(米里倶人満)
×岡 裕美(フリー)
2R 3'09" アームロック

 試合前からヴァンダレイ・シウバばりの気迫のこもった表情を見せる星野だが、心の中は「落ち着いていた」といい、打撃のフェイントを仕掛けてからのタックル、テイクダウン、パスガード、上になってのボディパンチ、腕関節技といった一連の動きをスムーズにやってのける。昨年末に辻結花に敗れてから本格的にレスリングに取り組み、柔術で青帯を取得し試合も経験したことが、総合の試合の中でも随所で活きている。

 かといって地味にまとまってしまわないところが「天然格闘少女」星野ならでは。2Rには猪木アリ状態でマットに寝ころんだまま、飛び上がって顔面スレスレのアリキックを繰り出し、さらに相手の足に自分の足を絡めてグラウンドに引き込むという野生味あふれるファイトを見せる。

 そして最後は豪快な払い腰から、スマック時代から得意とする股で腕を挟む形のアームロックを極め見事一本勝ちをおさめた。

 試合後は何度もチャンスを逃しなかなか極められなかったことに反省しきり。いつもどおりハイテンションで、リングでもインタビュースペースでも、「もっともっと練習しないと」と身ぶり手振りを交えて語り、なかなか興奮が冷めなかった。

 だが、この日の試合がデビュー1周年にあたるという話を振られると、どうやらその瞬間にそのことを思い出した様子で、一転して沈黙。いろんなことを思い出したのか、心なしか目をうるませ、一言二言つぶやいた後、「うれしい」という言葉を見つけた時の様子が印象的だった。
 メインイベントの熱戦を見て「うらやましい。悔しい。」と思った星野。次の試合の相手には辻かジェットを希望したが、次回6月26日(水)後楽園大会では、キックボクサーのウィンディ智美と対戦することが決まっている。

第5試合 AX公式ルール 5分3R 
○久保田有希(チーム荒武者)
×ドレイク森松(フリー)
1R 1'23" 腕ひしぎ十字固め

 体格に勝るドレイク相手に、久保田は物おじすることなくローとストレートをたたき込む。ドレイクも久保田をロープに押し込んで豪快にテイクダウンし反撃の口火を切ろうとしたが、久保田は素早く下にもぐりこんで腕十字で一本。久保田が実力差をまざまざと見せつけた。試合後、リングアナウンサーのマサシに「次の試合の予定は?」と効かれたが、久保田はとクールに「・・・考えます」と一言だけ話し、観客の笑いを誘っていた。

第4試合 グラップリング・エキシビジョンマッチ 5分1R
−藤井恵(GIRL FIGHT AACC)
−Sayaka(GIRL FIGHT AACC)
勝敗なし

 藤井が弟子のSAYAKAとスピーディーなエキシビジョンを披露。マイクを持つと「もっと多くの女性に格闘技の楽しさを知ってもらい、また、試合に出る喜びや緊張感を体験してもらいたい」と語り、女子だけのアマチュア大会を秋に開催することを発表した。

第3試合 AX公式ルール 5分3R
×佐藤 歩(パレストラ福島)
○加藤悦子(湘南格闘クラブ)
判定0-3

 佐藤は柔術をベースとする選手で、4月の修斗後楽園大会では星野育蒔と非公式戦ながら対戦し僅差で敗れている。10キロ重い加藤のパンチや膝蹴りに苦しみながら、グラウンドで足や腕の関節を狙う。2Rになると疲れが見えはじめ、グラウンドに引き込んで体力回復をする場面もあった。互いに決め手に欠いたが、打撃で上回った加藤に軍配が上がった。

第2試合 ブラジリアン柔術 紫帯 7分1本勝負
○寺島瑠依(PUREBRED大宮)
×林 恵子(チーム・イチケン&ALIVE)
ポイント7-0 アドバンテージ1-0

 寺島がリバーサル2回、パスガード1回でポイントを稼ぎ、最後はバックのアドバンテージを奪い完勝した。

第1試合 AXアマチュアルール 5分2R
○藤城生実(クロスポイント)
×照井和瑛(フリー)
判定3-0

 1R藤城が右ミドルでダウンを奪い、打撃で攻勢。照井のヘッドギアの下の顔からは鼻血が見えていた。

Last Update : 05/25

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