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(レポ&写真) [JMC] 5.6 ディファ:増田、ラジャダムナン王者に勝利

ジャパン・ムエタイ・センター "RIDE ON TIME"
2008年5月6日(火/祝) 東京・ディファ有明

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


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第10試合 メインイベント(3) ライト級 3分5R
×グーピー・ウォー・スティラー(タイ/ラジャダムナン・ライト級王者、WBCムエタイ世界ライト級7位)
○増田博正(スクランブル渋谷/前全日本ライト級王者)
判定1-2 (梅沢48-49/小林50-49/櫻井49-50)

 グーピーは1R、左右のフック、膝蹴り、右ミドル等を勢い良く手数多く当て優勢。しかし増田もカウンターで右フックを当て、グーピーを苦笑いさせる。
 2Rも途中までグーピーの勢いがあったが、減量苦の影響もあってか早くも失速。2R、3Rと進むごとに、グーピーの右ミドルの打ち終わりを狙い、増田の左右のストレートがヒットする場面が増える。増田も「グーピーの肘は大振りで、後半は見えて来た」「後半は自分の距離を作る事が出来た」と振り返る。
 4Rに入ると、グーピーは首相撲からの膝蹴りを多用。だが増田は距離ができるとパンチを着実に当て、何度かグーピーをぐらつかせる。5Rも同様にクリーンヒットを見せる。
 判定は1-2で増田に軍配。増田が見事ラジャダムナン・ライト級の現役王者から白星を奪う快挙を成し遂げた。

 この日の5Rの試合は、タイ国スポーツ局のルールに基づいて制定されたWBCムエタイルールが採用された(3R制では同ルールに準じた肘無しルールを採用)。ムエタイといえば膝蹴りとミドルキックの評価が高いというイメージが一般的だが、同ルールの基準に従い、パンチも蹴りも同等に評価された。増田本人もこのルールを意識した攻撃を心がけ、勝利をつかみ取った。
 とはいえ1-2という採点が示すとおり、試合は接戦だった。増田も「終わった時点では微妙だと思った。今回はWBCムエタイルールに救われた」と話し、試合のレフェリーを務めたWBCムエタイのアネック・ホントンカム審判部長も「甲乙付けがたい内容だった」と評した。グーピーを派遣したタイの有力プロモーター・アンモー氏は「グーピーの判定負けという採点には納得がいかない」と不満を述べた。

 しかし、この試合で増田がタイのトップクラスと渡り合えることが示されたことは確か。アンモー氏も「クロスゲームであったことは間違いない。いい試合だった。サウスポーの増田をグーピーが攻略できなかった。グーピーは右ミドルが単発だった。増田がラジャダムナン、WBCムエタイのランクに入るのは確実だ。WMCにもこの結果を報告したい。ラジャダムナンで王座を賭けて再戦させてもいい」と話した。グーピー本人も「今回は減量に苦しんだだけ。決して難しい相手じゃなかった。是非再戦したい。今度やれば100%勝てる」とリベンジに自信を示した。

 WBCムエタイルールの話に戻ると、今大会の半月前にはJPMC主催で、アネック審判部長によるルール・ジャッジ講習会が開かれ、その講習会に参加したレフェリー、ジャッジが今大会の試合を裁いた。大会当日の朝も、アネック氏指導によるビデオを見ながらの勉強会が行われ、大会後も全試合のレフェリング・裁定についての反省会が行われた。

 アネック氏はWBCムエタイの採点基準をこう説明した。

(1) ダメージを与える事、相手を弱く見せる事が重要。どんなにたくさん攻撃をもらっても、一撃でそれ以上のダメージを相手に与えられれば良い。攻撃の手数で評価するアマチュアボクシングとは異なる。
(2) 両方の拳(パンチ)、肘、膝、足(キック)による、2×4イコール「8つの武器」の攻撃が同等に評価される。ムエタイでは膝、足が高く評価されていると思われがちだが、通常は拳より足のほうが大きなダメージを与えられるためにそう思われるだけで、拳で足以上のダメージを与えればそれも正当に評価される。
(3) 投げ自体は評価材料にならない。ただし両選手の「8つの武器」の攻撃が同等の場合、投げた選手のほうが相手を弱く見せたとして評価される。

 基準は明快で、しかも意外と日本のキックボクシングの採点基準と近い部分も多い。しかしこの日は増田の試合以外でも、セーンチャイ vs. 駿太でも判定1-2、平本悠 vs. 炎出丸でも判定1-1と評価が分かれた。今回はルールを運用するジャッジが基準を消化しきれず、逆に考え過ぎて混乱した感もある。今後も運用を続けることで基準が浸透し、改善されることを期待したい。また、あくまでこれはWBCムエタイの基準で、タイの他の組織の基準と異なる部分が多かれ少なかれあることにも注意が必要だろう。

 なお、WBCムエタイルールの日本の試合は、本来ならJPMCのプロモーターライセンスが無いと実施できないが、まだライセンス制度がスタートしていない上、WBCムエタイに挑戦したい選手をバックアップするという本来のJPMCの目的に従い、特例として採用が認められた。バンコクのWBCムエタイのパトリック・クシック事務局長からも5月2日付けで、今大会でのWBCムエタイルール採用を認可する文書がJPMCに提出された。


第9試合 メインイベント(2) フェザー級 3分5R
×セーンチャイ・ジラグリアングライ(タイ/WBCムエタイ世界フェザー級15位・ラシャダムナン元Sバンタム級5位)
○駿太(谷山ジム/MA日本フェザー級王者)
判定1-2 (小林49-50/櫻井49-48/梅沢49-50)

 序盤、セーンチャイがプレッシャーをかけ、左右のフック、右ローを当てるが、駿太も左右のローで応戦、2R、一瞬の隙を突いて右肘打ちを放つと、セーンチャイの左まぶたを切り裂くことに成功する。セーンチャイは出血が激しく、3Rにもドクターチェックを受ける。失点分を取り返そうと、必死で組み付き膝蹴りを当てる。駿太はつかまる時間が長くなり、4R・5Rはセーンチャイがポイントを取っても不思議では無い展開だったが、駿太も膝蹴りやパンチで応戦し、セーンチャイに決定打を許さない。
 この試合も判定が割れたが、セーンチャイを送り込んだアンモー氏は「肘で切られた分のポイントをセーンチャイが取り返せなかった。負けたのは仕方ない。駿太も増田もタイ人にとってはやりにくい相手だ」と評した。アネック氏も「グーピーもそうだが、セーンチャイも5Rのラスト1分で動きが落ちたのが良くなかった」とポイントにつながらなかった理由を説明している。

 
 
第8試合 メインイベント(1) ウェルター級 3分5R
○テーパリット・シットクグウォンイム(タイ/谷山ジム/元ラジャダムナン・ライト級王者)
×大輝(JMC横浜ジム/元ラジャダムナン・ウェルター級10位)
判定3-0 (小林50-48/センチャイ50-48/梅沢49-48)

 テーパリットはパンチ、ミドル、ローといった基本技をはじめ、ジャンプしての縦肘を放つ等、多彩な技で観客を沸かせる。大輝も落ち着いて左ミドル等で応戦。単発で終わらず、その後にパンチを放つ等、大輝もテクニックで魅せる。

 しかし大輝はコーナーに追い詰めてからの攻撃に手を焼く。後半戦のテーパリットは疲れを見せながらも、右フック、右肘、ミドル等の手数で上回る。逆に大輝の攻撃は次第に単発に。結局大輝はテーパリットを攻略しきれないまま試合終了。全日本キック離脱後2連敗となってしまった。
 大輝の師匠の寺岡義洋JMC代表は、大会の準備で忙しく練習を見る時間が減ったことを明かすが、「逆に今迄は付きっきりになりすぎていた。自分で考えて試合をするいい機会になると思う」と話し、この連敗を糧に大輝が成長することを期待した。将来再戦を組む事にも意欲を示している。

 
第7試合 セミファイナル(2) 67.5kg契約 3分5R
○泰輝(タイ/JMC横浜ジム/元ラジャダムナンSライト級10位・現Sウェルター級)
×坂本 章(橋本道場/MA日本ウェルター級5位)
4R 1'30 KO

 1Rは坂本もサウスポーの構えからインローを当てるなど応戦できたが、2Rに入るとエンジンの入った泰輝の右ミドルのヒットが増え、坂本の体がくの字に曲がるように。次第にサンドバッグ状態になり、4R、坂本が肘で応戦したが、最後は泰輝に膝とパンチでとどめを刺されKOした。アネック氏はこの日勝利した泰輝、駿太、増田をWBCムエタイのランキング委員会に推薦する考えだ。

第6試合 セミファイナル(1) 54kg契約 3分5R
△平本 悠(橋本道場/MA日本バンタム級4位)
△炎出丸(クロスポイント・ムサシノクニ)
判定1-1 (センチャイ49-48/ロバート47-50/櫻井49-49)

第5試合 ライト級 3分5R
×鈴木 敦(尚武会)
○野間一暢(JMC横浜ジム)
判定0-3 (センチャイ46-50/小林47-50/北尻46-50)

第4試合 スーパーウェルター級 3分3R
×NITRO大輔(TARGET)
○武田一也(JMC横浜ジム)
判定0-3 (27-30/27-30/27-29)

第3試合 ライト級 3分3R
○TOMOHIKO(RANGER品川)
×佐藤 琉(JMC横浜ジム)
3R 0'14" 反則 (バッティングでTOMOHIKOが額を切りドクターストップ)

第2試合 フェザー級 3分3R
×佐々木悠也(尚武会)
○小林 覚(クロスポイント吉祥寺)
2R 2'24" KO

第1試合 ライト級 3分3R
○谷山俊樹(谷山ジム)
×原田博允(WONDERLAND)
判定3-0 (30-29/29-28/29-28)

Last Update : 05/09 12:38

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