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(レポ&写真) [全日本キック] 10.25 代々木:山本真弘、60kgの頂点に

全日本キックボクシング連盟 "浪漫 〜 Kick Return 〜 Kickboxer of the best 60 Tournament 決勝戦"
2007年10月25日(木) 東京・国立代々木競技場第二体育館  観衆:3,600人(主催者発表)

  レポート:井原芳徳、本庄功志(あらし戦・優弥戦) 写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


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◆ Kick Returnトーナメント

第7試合 決勝戦 60kg契約 3分5R(延長1R)
×大月晴明(AJKF/WPKC世界ムエタイ・ライト級王者)
○山本真弘(藤原ジム/全日本フェザー級王者)
判定0-3 (豊永47-50/朝武47-50/和田47-50)

※2R左フックで大月1ダウン
※山本が優勝。賞金500万円獲得

 3月に引退した小林聡ゼネラルマネージャーがプロデュースしたKick Returnトーナメント。小林GMが現役時代にKO負けした相手・大月が、準決勝で小林の弟弟子・前田を撃破し決勝に進んだが、もう一人の小林の弟弟子・真弘が、2人の先輩の敵を討った。
 1R、互いにサウスポーの構えからフェイントをかけて様子をうかがう展開。2Rに入ると、大月は準決勝の前田戦と同じく、構えをスイッチ。何度も構えを変え、真弘のかく乱を狙う。だが真弘は落ち着いて対処し、「やっているうちにタイミングをつかんだ」という、大月の右ハイに合わせた左フックでダウンを先取。大月は「フラッシュダウンだけど見えなかった」といい、これでポイントに差がつく。
 本来なら大月は、代名詞の爆腕で反撃をしたいところだったが、8月の一回戦のカノンスック戦で右拳を負傷。今大会の1週間前に痛み止めの注射を打ち、準決勝の前田戦で2ダウンを奪った代償として「たぶん骨折していると思う」ほど痛みが増幅。決勝前にも痛み止め2本を打っていたという。今大会までスパーリングも満足にできなかった。

 大月は左のパンチと右のローで活路を見いだそうとする。ローで真弘の表情が変わる場面もあったが、流れが変わるほどではない。真弘は「5R耐えられると直感的に思った」といい、大月も「効いていたと思うけど、さすが藤原ジムの選手は鍛えられていると思った」と振り返る。
 真弘は大月のお株を奪うようなパンチの連打で4Rにもチャンスを作る。大月も5Rに左肘をクリーンヒットさせるが、真弘はすぐに立て直し、逃げ切りに成功。対日本人無敗記録を25戦にまで伸ばし、60kgの頂点に立った。
 大会後の真弘は「8Rはキツかった」と言いながらも、表情は明るく、5R目のファイトはとても8R目とは感じさせなかった。決勝も準決勝もダウンを奪ったパンチは、相手のハイキックの直後に当てたもの。「流れの中で出た。狙ったものじゃなかった」という。体力面でも技術面でも、日々の厳しい練習の成果が自然と出たことが今回の優勝につながったといえよう。
 大会前の対策に関しても、準決勝の石川についてのみ集中し、大月対策は同門の前田が対策をしているのを横目で見ながら学習したという。大月が大会後、「藤原ジム勢の執念に負けた?」という質問に、「それはありますね」と苦笑いを浮かべながら答えていたのが印象的だった。

第3試合 Bブロック準決勝 60kg契約 3分3R(延長1R)
○大月晴明(AJKF/WPKC世界ムエタイ・ライト級王者)
×前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級1位・元王者)
判定3-0 (和田30-26/豊永29-26/朝武30-26)

※2R、3R、右フックで前田に各1ダウン

 試合はローの打ち合いから始まり、1R後半から互いのパンチが交錯するように。2Rに入ると、それまでサウスポーだった大月がオーソドックに切り替え、前田をかく乱。互いのパンチのヒットが増えてきた残り1分、大月が右フックでダウンを奪う事に成功する。3R開始早々にも右ストレートでダウンを奪取。バッティングの影響か、左目尻を出血した大月だったが、その後も前田に反撃を許さず完勝した。

第2試合 Aブロック準決勝 60kg契約 3分3R(延長1R)
×石川直生(青春塾/全日本スーパーフェザー級王者)
○山本真弘(藤原ジム/全日本フェザー級王者)
判定0-3 (豊永27-30/野口27-29/和田27-29)

※1R右フックで石川に1ダウン

 1R終盤、真弘が石川の右ハイをスウェーした直後、右フックでダウンを奪取。2Rは石川も膝、肘、ハイ等で巻き返したが、連続技や大きなダメージを与える攻めにはなかなかつながらず。3Rも山本が左ハイや左ストレートで石川を追いつめ、危なげなく決勝に駒を進めた。真弘は試合前の石川への挑発について「盛り上げるために悪役がいたほうがいいと思った。本心じゃなかった」と大会後明かした。

第1試合 リザーブファイト 60kg契約 3分3R(延長1R)
×ファイヤー原田(レグルス池袋/J-NETWORKライト級4位)
○梶原龍児(チームドラゴン/WFCA世界ライト級王者)
4R 判定1-2 (朝武9-10/野口10-9/豊永9-10)

3R 判定1-0 (朝武29-29/野口30-30/豊永30-29)

 リザーブファイトながら、この日一番の盛り上がりを見せる好勝負に。ファイヤーはゴングが鳴ると同時に、ダッシュで距離を詰めると、ローキックを当て続け主導権。梶原も下がりながらパンチを当てるが、力が十分に入らない。3Rにはファイヤーがパンチで真っ向勝負に挑み、クリーンヒットで逆に上回ってみせる。
 戦前の大方の予想を覆し健闘するファイヤー。延長ラウンド開始直前、「行くぞ!」と叫び己を鼓舞するが、パンチの手数で若干下回り、判定を聞くとマットに膝から崩れ落ちた。

◆ スーパーファイト

第6試合 日本VSタイ国際戦 55kg契約 3分5R
○藤原あらし(S.V.G./全日本バンタム級王者)
×ワンロップ・ウィラサクレック(タイ/WSRフェアテックスジム/M-1バンタム級王者)
判定3-0 (野口50-49/朝武49-48/豊永49-48)


 ワンロップが日本人に敗れた。“STOP THE ワンロップ”。これが日本人バンタム級〜フェザー級の選手の合言葉だった。ワンロップは、今回の相手のあらし、キックリターン優勝者・山本真弘を含め、名立たる日本人相手にキラーぶりを見せ付け、切り裂き魔として君臨。試合ではいつも、恐ろしいほどの強さが感じられた。だが今回は、ワンロップの“弱さ”を初めて見たように感じた。
 1Rこそ普段の殺傷能力のある前蹴り、一発で試合を終わらせかねないヒジなどで、積極的に攻撃するワンロップ。しかし、前日の計量では200gオーバーで減量苦を思わせるコンディション。前の米田戦から、1ヶ月という試合間隔の短さ。それらの影響でスタミナに不安があったかどうかは不明だが、短期決戦を狙っているように見えなくもない。
 しかし、あらしは初対決時にヒジで大ダメージを受けた反省があってか、ガードはいつも以上に固い。ワンロップは1、2Rとプレッシャーをかけ続けるも、目立ったダメージを与えることができない。
 そして迎えた3R。ここから試合の流れが大きく変わる。序盤、あらしの左フックがヒット。また、得意の左ミドルのエンジンが加速し、ワンロップは後手に回る展開。しかもミドルがボディに当たりだすと、明らかに動きが落ちる。狙いどころを悟られたワンロップは、相手のボディストレート、飛び込んでの右ボディと、集中的に腹部を狙われてしまい、完全にペースを失う。

 4Rもあらしのラウンド。ワンロップはプレッシャーを受け続け、ガードが甘くなった顔面に右フック、右アッパーを被弾。ワンロップは単発で左ミドルを出す程度で下降線を辿っていく。
 最終ラウンドに入っても、流れを戻すことができないワンロップ。相手の飛び込んでの右アッパー、蹴りにパンチを合わされるなど、攻め込まれ防御に徹したワンロップが実に小さく見える。終盤になると、試合のポイント差に焦るようにパンチ、ヒジのコンビネーションを積極的に振るうも、すでに勝負あり。フルマークの判定負けで、あらしにリベンジを許した。
 快挙を成し遂げたあらしは喜びを爆発。マイクを持つと、「勝ったら一言言いたかった。なめるなよ!日本人だって強ぇーんだよ!」と叫び、観客から大きな喝采を浴びる。前回のタイトルマッチでは“最強の挑戦者”寺戸伸近に圧勝し、今回は日本人初のワンロップ越えに成功。55kgは、まだまだ彼を中心に回っていきそうだ。

第5試合 K-1 WORLD MAXルール 70kg契約 3分3R(延長1R)
○山本優弥(青春塾/全日本ウェルター級王者)
×尾崎圭司(チームドラゴン/K-1 MAX日本代表決定トーナメント'07 3位)
判定2-0 (野口30-30/和田30-29/勝本30-29)


 全日本キック初登場の尾崎。入場ではダンサーを引き連れ、代々木第二体育館という大箱でも見劣りしないオーラを放つ。
 試合は優弥が積極的に右ローを放ち、それを軸にハイ、パンチへ繋ぐなど勢いのある展開を作っていく。尾崎も回転系の技を交えながら応戦。打ち合いになると、優弥の勢いが尾崎を下がらせる。劣勢に立った尾崎はクリンチが多くなり注意1。
 3R、優弥が左ハイを牽制し、右ハイ。大量の水が飛び散り、衝撃の強さを物語るも尾崎はひるまずに前へ突進。中盤には優弥の強烈な左ミドルで、会場には鈍い音が響く。3Rから優弥のローが効き始めるが、優弥自身も尾崎のローで足にダメージがある様子だ。
 両者手を休めず攻め続けるも、際でヒットを多く重ねているのは優弥。ラウンド通じて、相手の軸足の外側、内側を痛めつけ動きを止める攻撃。尾崎は「テコンドーが一番強いというのを見せたい」と言っていたが、足にコツコツ効かせ、パンチでプレッシャーをかけるという優弥の攻めに、「これがキックだ」というのを筆者は感じてしまった。
 3分3Rを全力で走り抜けた両者。ヒット数から僅差の判定で優弥が勝利し、来年行われるK-1 WORLD MAX日本代表トーナメントに大きく近づいた。

第4試合 日本VSロシア国際戦 75kg契約 3分3R(延長1R)
○中村高明(藤原ジム/全日本ミドル級王者)
×キセレフ・キリル(ロシア/KOYUジム)
3R 0'32" TKO (ドクターストップ:右肘打ちによる左眉のカット)


 ゴングが鳴ると、中村は飛び膝とパンチの連打でいきなりダウンを奪取。さらに膝でもう1ダウンを奪うが、3ダウン目を逃してしまう。2Rはやや攻めあぐねたが、3R開始早々に右肘一発で試合を終わらせた。マイクを持ち「今朝8時5分、娘が誕生しました」と発表すると場内は暖かい拍手に包まれた。

◆ オープニングファイト

第2試合 ライト級 3分3R
○卜部弘嵩(西山道場/ISUMI GYM/2007年全日本新空手K-2軽中量級王者)
×相馬一仁(DEION GYM)
判定3-0 (30-26/30-26/30-26)
※1R、2R、相馬に各1ダウン

第1試合 バンタム級 3分3R
○瀧谷渉太(WSK/桜塾/2007年全日本新空手K-2軽量級王者)
×原岡武志(STRUGGLE)
1R 2'49" KO (3ダウン:右フック)

Last Update : 10/29 11:14

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