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(レポ&写真) [全日本キック] 11.12 後楽園:小林引退表明。大輝勝利

全日本キックボクシング連盟 "Solid Fist"
2006年11月12日(日) 東京・後楽園ホール  観衆:2080人(超満員札止め)

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第8試合 メインイベント(3) 62kg契約 3分5R
×小林 聡(藤原ジム/WKA世界ムエタイ・ライト級王者)
○ジャルンチャイ・ケーサージム(タイ/ラジャダムナン・WMC・プロムエタイ協会・オームノーイ・ライト級王者)
判定0-3 (和田48-50/豊永48-50/梅木49-50)


 フックやアッパーをクリーンヒットさせる場面もあった小林だが、2R以降の大半の時間はジャルンチャイの首相撲につかまり劣勢。膝蹴りが小林の太腿や腹に、当たるというよりピンポイントで突き刺さる度、超満員の観衆からため息が漏れる。
 小林は2Rには右まぶたを切られ、3Rには額にコブができ、スタミナも落ちてくる。攻めあぐねる小林を見る観衆からも、次第にあきらめムードが漂ってくる。
 5Rにはパンチを度々当てジャルンチャイをヒヤリとさせるも、小林も前蹴りや左フックをもらってしまいポイントを奪えず。中盤の失点が響き、判定負けとなった。

 試合後、小林はグローブをセコンドに外させると、ジャルンチャイが4本のベルトを誇示し記念撮影をするのを見守る。そして四方に頭を下げ、相手を讃えた後マイクを持つと、驚きの言葉を口にする。「不甲斐ない試合をしてすみません。言いたいことがあります。今日の試合を最後にしようと決めてリングに上がりました。15年間、ありがとうございました」と話し、リングを降りた。

 バックステージでの小林はノーコメント。セコンドについていた師匠の藤原敏男会長は、月曜の藤原祭りの記者会見で、何らかのコメントを発表する予定(→該当記事)。全日本キック側は小林と藤原会長の話し合いの経過を見守る構えだ。

 小林は前日計量ではいつになくナーバスで、冗談を一言も口にしなかった。来年3月で35歳。4年前のサムゴー戦以降、若手の踏み台にされ続けたが、外国人選手相手に勝ち癖をつけた後、満を持してムエタイ四冠王と対戦。経緯を考えれば、引退表明はありえない出来事では無かったせいか、観客から「辞めるな」といった声はほとんど飛ばなかった。もちろん飛んではいたが、これほどの大選手の引退表明にしては、意外なほど飛ぶ声が少ない。むしろ多くの人は「ついにこの時が来てしまった」という喪失感の大きさからか、声さえも出せないといった雰囲気だった。
 これまで小林を取材し記事に綴って来た記者達も、インタビュースペースで小林を待っている間、みな無言。小林の試合後、過去にも近い雰囲気になったことは何度かあったが、今回ほど沈んだ空気になったことは無い。悪い喩えと承知で書かせて頂くが、まるでお通夜のような状態だった。

 小林の通算戦績は69戦46勝(34KO)21敗2分。

 


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第7試合 メインイベント(2) 68kg契約 3分5R
×ゲーンカート・チューワッタナ(タイ/ラジャダムナン ウェルター級1位、タイ国プロムエタイ協会ウェルター級1位)
○大輝(JMC横浜GYM/全日本ウェルター級王者、ラジャダムナン ウェルター級8位)
判定0-3 (梅木49-50/豊永48-50/勝本48-50)


 大輝のラジャダムナン王座挑戦に向けての重要な一歩となる試合。と書けばよくある話だが、デビューわずか2年足らずで、この位置にたどり着けた選手は過去にいない。そしてこの1位の選手との対戦という関門を、難なく突破してしまうのだから恐れ入る。

 長い5R制の試合。1Rはムエタイ同様様子見。大輝は慎重にローを当て、ゲーンカートは時折構えをスイッチしつつ、前蹴りを有効に使う。大輝はパンチをもらい、2Rには少し鼻血を出すが、大きなダメージは無く冷静だ。
 3Rになると両者とも手数が少し増える。ミドルの打ち合い、首相撲の攻防でも、大輝は全く引けを取らない。随所で右ローをしっかり当てるのはさすが。両者とも派手な攻めは無いが、技術水準の高さは伝わってくる。観客は静かに、固唾を呑みながら二人の攻防を見守る。

 試合が動き出したのは4R。序盤、首相撲の攻防で、ブレイク後もゲーンカートが膝蹴りを連打。すると大輝は怒りのスイッチが入ったかのようにパンチを連打する。それでも表情は穏やかなまま。このギャップも大輝の魅力かもしれない。中盤過ぎには右フックを2連発でクリーンヒット。終盤には左右のミドルで追い詰め、会場はようやく大きな歓声に包まれる。

 ムエタイでは4Rまで優位な選手が、5R目に相手の攻撃をいなすのが一般的。だが大輝は追撃の手を緩めない。ミドルと膝を何発も当て、ゲーンカートは手も足も出ない。終盤の攻めが有効となり、大輝は判定勝ち。デビュー以来連勝記録を12に伸ばした。

 1位の選手を破ったことで、王座挑戦も現実味を帯びてきた。ラジャダムナンの有力プロモーターのチューチャルーン・ラウィーアラムウェン氏(通称・アンモー氏)も「将来的にタイトルに挑戦できるのでは」と発言。だが「あと2〜3戦、強い選手と経験を積んで欲しい。ランカーでも元王者でもいい」と話しており、来年2月の全日本キックのタイ遠征での挑戦の可能性は薄そうだ。とはいえ焦ることはない。大輝は近い将来必ずラジャの王者になれる。その確信を、この日の大輝を見た全ての人が感じたのではないだろうか。


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第6試合 メインイベント(1) ライト級 サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
○大月晴明(AJKF/WPKC世界ムエタイ・ライト級王者)
×山本雅美(北流会君津ジム/NJKFライト級1位)
3R 判定3-0 (豊永30-28/勝本30-28/野口30-29)


 過去最高といっていいほどの客入りとなった今大会。硬派に試合だけを見せるイメージの強い全日本キックだが、この日は違った。トリプルメインの前に照明を落とし、1分弱のライトアップショーを行い、南側最後列のドアには入場ゲートを設置し、選手が登場するとスモークを発する演出を施した。
 山本雅美はいつものように氣志團のヒット曲「ワンナイトカーニバル」に乗ってリングイン。お忍びで観戦していた氣志團の綾小路翔さんに手を振る。ボヨヨンロックで登場した大月晴明は、キックボクシング版トップチームともいえるマスク☆マンズと、裸のボディビルダーを大量に引き連れる。大月の復帰戦への期待度もあいまり、まさに入場だけでお金の取れるような雰囲気だ。

 ゴングが鳴ると、大月はガードと上半身を低くし、片足をポンポンたたいて雅美を挑発する。右フックが空を切るたび会場はどよめくが、雅美はガードを高くしてアゴを引き、冷静に防御。パンチに肘を合わせようとする動きも度々見られる。雅美は1R終盤に左フックをもらって倒れ、レフェリーはスリップと判断するが、これはポイントに相当する攻撃か。

 2Rになると少しだけ大月のパンチの当たる量が増えるが、なかなか連打にはつながらない。中盤からはオーソドックスにスイッチする場面も。3Rにはようやく手数が増えるが、雅美の防御は堅く、ボディにもひるまない。雅美もパンチを当て返し、安易にポイントを与えない。

 試合前の期待度から比較すれば、やや淡泊な攻防のまま試合は終了。雅美が健闘したというより、大月が久々の試合で感覚が戻っていなかったという印象が強い。勝ち名乗りを受けた大月は勝利者賞をもらわず足早に退場。マスコミの取材は受けなかったが、控室からは「自然に出るパンチが少なかった。マススパーみたいになった」という声が聞こえた。復帰2戦目での爆発を期待しよう。

 とはいえタイから訪れたチューチャルーン・プロモーターは、この日印象に残った選手として大月の名をあげた。「普通じゃない選手。テクニックもパワーもあり、試合運びもうまい。ボディと顔面へのパンチの打ち分けも見事だ。ジャルンチャイとやれは五分五分じゃないか?タイで試合をして欲しい」と熱烈ラブコールを送った。
 大月は前回の試合はタイで行い、KO負けを喫したが、その時は本調子では無かったことを明かしている。今大会前には「タイで自分の強さを知りたい。ボコボコにされて限界を感じたら教える側に回る」とも話しており、タイ再上陸に意欲的。早ければ来年2月の全日本キックのタイ遠征にエントリーするかもしれない。

◆雅美「非常に悔しい。判定は取ってはいないとは思ったけど、取られてはいないと思っていたので、30-28が2人いたのにはびっくりした。効いたパンチは一発もない」


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第5試合 セミファイナル 61kg契約 サドンデスマッチ
○チューティン・シットクヴォンイム(タイ/谷山ジム/元ラジャダムナンSバンタム級&フェザー級王者)
×増田博正(スクランブル渋谷/全日本ライト級王者)
3R 判定2-0 (勝本30-29/野口30-30/和田30-29)


 首相撲からの膝蹴りと肘打ち主体の攻防。増田は元王者相手にも首相撲で負けない。とはいえ元王者が突発的に繰り出す肘はスピード抜群。3Rにパンチの連打を浴びると、増田は失速し、前蹴りやミドルも浴び劣勢に。決定打はもらわなかったものの、思うような試合運びはさせてもらえず、大物食いはならなかった。

第4試合 スーパーウェルター級 サドンデスマッチ
×後藤友宏(TEAM GO/10位)
○佐藤皓彦(JMC横浜GYM/5位)
4R 判定0-3 (野口9-10/和田9-10/梅木9-10)

3R 判定0-1 (野口30-30/和田29-30/梅木29-30)

 変則的な右ハイ等、豪快な一撃で湧かせる佐藤に対し、スーパーウェルターとしては小柄な後藤は、着実な右ローで応戦。2Rのローの打ち合いではやや優勢に立つ。佐藤は3R、肘打ちと首相撲からの膝蹴り主体にスタイルをシフトするが、決定打に欠き延長へ。後藤はフックを当てる場面があったものの、佐藤の前蹴りと膝をもらい、クリンチが増えイエロー1。これが響き健闘むなしく黒星となった。

第3試合 ヘビー級 サドンデスマッチ
×安部康博(建武館/3位・元王者)
○山宮恵一郎(GRABAKA/6位)
3R 2'26" KO (3ダウン:左フック)


 開始しばらく、安部の右ミドルをもらい攻め辛そうな山宮だったが、左ボディの後に左フックをクリーンヒットさせ、ダウンを奪取。その後もダウンを奪い、2Rはやや攻めあぐねたが、3Rにローブローをもらった後、ショートの左でダウンを奪うと再び流れをつかみ、パンチで立て続けにダウンを奪い、キックルール初のKO勝ちをおさめた。山宮のキック戦績は4戦4勝に。

第2試合 スーパーウェルター級 3分3R
×藤元洋次(NSG)
○クリストフ・プルボー(スイス/スクランブル渋谷)
判定0-3 (28-30/28-30/28-30)

第1試合 ヘビー級 3分3R
○洪 太星(極真会館)
×コンボイ山下(超越塾)
判定3-0 (30-27/30-28/30-29)


■オープニングファイト

第3試合 ライト級 3分3R
×中向居尚輝(S.V.G.)
○野間一暢(JMC横浜GYM)
判定0-3 (27-30/28-30/28-30)

第2試合 フェザー級 3分3R
△甲野裕也(S.V.G.)
△上杉隼土(超越塾)
判定0-1 (30-30/29-30/30-30)

第1試合 フェザー級 3分3R
×九島 亮(AJジム)
○永野裕典(和術慧舟會DUROジム)
判定0-2 (30-30/29-30/29-30)

Last Update : 11/17 12:14

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