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(レポ&写真) [HERO'S] 7.6 代々木:KID勝利。所、ペケーニョから金星

HERO'S "Sammy Presents HERO'S 2005 ミドル級世界最強王者決定トーナメント開幕戦"
2005年7月6日(水) 東京・国立代々木競技場第一体育館  観衆:10,697人(満員札止め)

  レポート:井原芳徳  写真:小林秀貴  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第12試合 スーパーファイト 70kg契約 5分3R
×イアン・シャファー(オーストラリア/リングス・オーストラリア/69.8kg)
○山本“KID”徳郁(日本/KILLER BEE/67.1kg)
3R 1'23" TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)


 KIDはサウスポーの構えから左のミドルとローを巧みに打ち分ける。その後2度ローブローをもらい、シャファーは減点1。再開後しばらくスタンドの打撃戦が続き、KIDは右フックをヒットさせるとそのままテイクダウン。重いパウンドを落とし続け、シャファーの右まぶたを腫れ上がらせる。
 2Rは大半がスタンドの打撃戦。KIDは左右のローを的確にシャファーの左足に当て続け、パンチ合戦になっても深追いせず、危なくなるとうまく回って防御する。パンチだけに頼らない、打撃の技術の進化ぶりには目を見張るものがあるが、終盤には片足タックルから水車落としでテイクダウンに成功。アマレスのテクニックもきっちりと見せつける。
 3RもKIDが前蹴りとローで主導権。そして右アッパーを放つと、シャファーのこめかみあたりにヒット。かすめた程度にも見えたが、これが見事威力を発揮し、シャファーは後ずさり。さらにKIDが一気に左右のフックで追いつめると、シャファーはロープを背に崩れ落ち、KIDがシャファーの胴体を踏みつけたところでレフェリーが試合をストップした。

 大歓声の中、バック転で喜びを表現するKID。しかしマイクを持つと「風邪薬を飲み過ぎて体調が悪かった」と咳払い。バックステージでのインタビューでも、10日前から風邪をひき、3〜4日前に熱が出るという、万全ではない状態だったことを明かした。にんにく注射でなんとか乗り切り、試合直後の尿検査では血尿が出たほどだったという。
 一方、前田日明HERO'Sスーパーバイザーは「山本君は37.5度ぐらい熱があって、本調子じゃなかったけど、今日は無駄な動きが多すぎた」とピリ辛の評価。「仲間内だけで練習するのじゃなく、一流のコーチを置くべき」とKIDにアドバイスを送っていることを明かした。
 前田氏は9月の準々決勝〜準決勝の組合せについて、KIDとレミーガの対戦に興味を示した。レミーガもKIDとの対戦には前向きだが、KIDはまだ他の選手の試合を見ていないといい、「帰ってからよくビデオを見て全選手を研究したいです」と話していた。

第6試合 ミドル級(70kg)トーナメント開幕戦 5分2R(延長1R)
×アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(ブラジル/修斗ブラジル道場/修斗ライト級世界王者/68.5kg)
○所 英男(日本/STAND/67.5kg)
3R 0'08" KO (バックハンドブロー)

2R 判定0-0 (岡林19-19/芹澤19-19/和田19-19)

 開始早々、ペケーニョ(ノゲイラの愛称。ブラジル語で「ちび」という意味)が胴タックルでテイクダウン。一瞬バックを奪いかけるが、そのまま崩れてタックルのがぶりの状態になると、早くも必殺ギロチンチョークが炸裂。しかし所は極められる直前に左手指をアゴの下に挟み入れており、かろうじて防御に成功。前田日明HERO'Sスーパーバイザーから対策を伝授されていた所は「落ち着いて対処できた」といい、長時間耐え続けた末に脱出すると、会場から大歓声が巻き起こる。
 その後はペケーニョがアキレス腱固め、所が下からの腕十字を狙う等、攻守が目まぐるしく入れ替わる。組技のテクニシャンの両者の持ち味が存分に発揮される展開に。
 2Rはペケーニョが上になるが、所が下から腕を狙うとペケーニョが一旦立ち上がり、また上に乗るという展開が繰り返される。3度目のアリ猪木状態となったところで梅木レフェリーがブレイク。すると所は左フックを皮切りに右ストレート、飛び膝と反撃。しかしペケーニョはそのまま足を抱えてテイクダウンし防御。そのままペケーニョが上をキープし終了のゴングが鳴る。

 判定は3者とも1Rペケーニョ、2R所にポイントを付け延長に突入。すると3R開始早々、意外な形で突然結末が訪れる。所は左ジャブを振った後、すぐさま右のバックハンドブロー一撃。これが見事ペケーニョのアゴに炸裂し、倒れたペケーニョに所が追い打ちのパンチを浴びせたようとしたところでレフェリーが試合をストップした。
 会場は割れんばかりの大歓声。所はコーナーによじ登り大喜びし、さらにすぐさまリング下に降り、前田氏の元に感謝の挨拶をしにいく。「判定負けでも二重丸」と戦前予想していた前田氏も、快心の勝利の所を満面の笑顔で迎え入れる。HERO'Sに新たなヒーローが誕生した瞬間だった。
 インタビュースペースに現れた所は、下馬評を覆す勝利に「信じられない」と一言。相手の攻撃を凌いで、延長戦に持ち込むのも作戦通りだったという。バックハンドブローは骨法仕込みとのこと。
 敗れたペケーニョは、試合前の膝の負傷のため満足な練習ができず「50%ぐらいしか力を出せなかった」ことを明かした。2Rで体力が切れ、冷静さを失った所でバックハンドをもらってしまったのが敗因だという。最後のレフェリーストップには「まだ意識があった」と不満を口にしたが、所に対しては「心からおめでとうと言いたい。とても素晴らしい選手だった」と素直に賛辞を送った。

第10試合 ミドル級(70kg)トーナメント開幕戦 5分2R(延長1R)
○レミギウス・モリカビュチス(リトアニア/リングス・リトアニア/68.1kg)
×村浜武洋(日本/ZERO1-MAX/68.1kg)
1R 1'14" KO (左フック)


 細かい出入りの動きの村浜に対し、レミーガはサウスポーの構えから重いパンチ、左ミドル、膝蹴りを叩き込む。じわじわとペースを引き寄せると、最後は左フック一発で豪快に村浜をマットに沈めた。
 試合後はリング上でZSTの旗を広げて勝利をアピール。所英男と揃って準々決勝進出を果たすことに成功した。

第7試合 ミドル級(70kg)トーナメント開幕戦 5分2R(延長1R)
×ヤニ・ラックス(スウェーデン/チーム・スカンジナビア/修斗ウェルター級欧州王者/70.0kg)
○高谷裕之(日本/フリー/修斗ライト級世界2位/70.0kg)
1R 1'56" KO (左フック)


 体格で勝るラックスが、序盤から高谷を首相撲でガッチリと捕まえ、アゴを狙っての鋭い膝蹴りを放つ展開が数度繰り返される。いい当たりを何発かもらってしまったという高谷だったが、落ち着いて突き放すと、ラックスの左フックに合わせカウンターの左フックをアゴに炸裂。真後ろにダウンしたラックスにさらに追い打ちのパンチを仕掛けようとしたところで、岡林レフェリーが試合をストップした。
 ラックスはストップ直後すぐさま立ち上がり、ストップが早いことをアピール。インタビュースペースでも、「この試合はMMAだろ?」と不満を口にしていた。
 勝った高谷。修斗ライト級(-65kg)では減量に苦しんだが、HERO'Sミドル級(-70kg)は減量が楽で、コンディションは良かったという。直前に修斗のライバル・ペケーニョが負けたことに関しては「(ペケーニョに)あんまり興味がなくなりました」と話していた。

第8試合 ミドル級(70kg)トーナメント開幕戦 5分2R(延長1R)
○ホイラー・グレイシー(ブラジル/グレイシー・ウマイタ/69.6kg)
×吉田幸治(日本/フリー/69.9kg)
判定2-0 (平20-19/岡林19-19/芹澤19-18)


 1R、ホイラーがタックルでテイクダウンに成功するが、吉田はクロスガードでガッチリ防御。こう着状態に陥り、ブレイクがかかる。スタンドに戻ると、左フックでホイラーを吹き飛ばすが、寝技に付き合わずスタンド勝負を望む。だが終盤にホイラーがテイクダウンに成功。三角絞めであと一歩のところまで追いつめる。
 2Rはホイラーのワンサイドゲーム。序盤にテイクダウンに成功すると、ハーフガードからコツコツとパンチを落とし続け、中盤にマウントを奪取。吉田は逃れようとするが、逆にバックを取られてしまい、最後はスリーパーが極まりそうになったところで終了のゴングが鳴った。
 吉田はボクシング&柔道の元トップアスリートだけあり、総合への適応度の高さは感じさせたが、初戦でホイラー相手はさすがに荷が重すぎたようだ。

第9試合 ミドル級(70kg)トーナメント開幕戦 5分2R(延長1R)
×シャミール・ガイダルベコフ(ロシア/スコーピオンジム/70.0kg)
○宮田和幸(日本/フリー/68.9kg)
1R 2'49" チョークスリーパー

※アースラン・マゴメドフが事前の健康診断により出場不可能となり、ガイダルベコフに変更

 宮田は2度目のタックルでテイクダウンに成功すると、あっさりとサイドポジション。防御の技術の乏しいガイダルベコフのバックを奪うと、最後はチョークを極め危なげなく準々決勝に駒を進めた。

◆ 9/7(水)有明コロシアム大会の準々決勝〜準決勝戦進出者
宇野 薫、須藤元気、山本“KID”徳郁(以上シード選手)
所 英男、高谷裕之、宮田和幸、レミギウス・モリカビュチス、ホイラー・グレイシー


第11試合 スーパーファイト 契約体重なし 5分3R
○ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ/106.0kg)
×若翔洋(日本/TEAM PAON/144.6kg)
1R 1'36" TKO (レフェリーストップ:右ストレート)


 開始早々、若翔洋は相撲の要領で組み付いて投げを狙うが、アーツはこらえて突き放すとパンチと膝を当てる。すぐさま組み付いて防御した若翔洋は今度はテイクダウンに成功。だがその先の攻め手が無く、アーツの守りも固く、ブレイクがかかる。すると再開後すぐ若翔洋が無防備に前に出てしまい、アーツの左右のストレートが炸裂。ダウンした若翔洋にさらにアーツがパンチを叩き込んだところでレフェリーが試合をストップした。

第5試合 スーパーファイト 76kg契約 5分2R(延長1R)
○菊地 昭(日本/KILLER BEE/修斗ミドル級世界王者/75.7kg)
×井上克也(日本/和術慧舟會RJW/パンクラス暫定ウェルター級王者/75.5kg)
1R 1'41" TKO (レフェリーストップ:バックマウントパンチ)


 修斗とパンクラスの初の現役王者対決として総合マニアの間で注目されたこの試合だったが、意外なほどのワンサイドゲームに。菊地は開始早々、パンチを振りながら片足タックルで組み付きテイクダウン。するとすぐさまバックマウントを奪うことに成功。ロープ際で位置は悪かったが、1分以上パンチをコツコツ当て続けたところで、危険と判断した岡林レフェリーが試合をストップした。
 「こんなもんかなぁ?と思いましたね」と試合を振り返る菊地。王者対決よりもK'zからKILLER BEEへの移籍初戦ということで負けられない気持ちが強かったという。「ベルトも持って来るつもりだったんですけど、忘れてしまいました」とあっけらかんとした口調で語っていたのが印象的だった。

第4試合 スーパーファイト 契約体重なし 3分3R
○レイ・セフォー(ニュージーランド/レイ・セフォー・ファイトアカデミー/101.0kg)
×キム・ミンス(韓国/リングス・コリア/112.0kg)
2R 0'30" KO (2ダウン:右ハイキック)


 総合デビュー戦のセフォーに配慮してか、各ラウンド、ロープエスケープまたはダウンは1回のみ有効の特別ルールが採用されたこの試合。1R、セフォーが上下に打ち分ける打撃で主導権をキープ。2R、構えをスイッチした直後、パンチを放ちながら突進してきたミンスに、カウンターの右フックを叩き込みダウンを奪取する。さらに再開直後、右ハイキックで豪快にミンスをマットに沈めた。

第3試合 スーパーファイト 86kg契約 5分3R
○秋山成勲(日本/フリー/85.8kg)
×カール・トゥーミィー(オーストラリア/チーム・エクストリーム/84kg)
1R 0'59" 腕ひしぎ十字固め


 秋山が相手のパンチをかいくぐって素早く組み付くと、奇麗な外掛けでテイクダウンに成功。すぐさまマウントを奪うと、一瞬の隙を逃さず腕十字を極めた。一個一個の動きがスピーディーで、総合の動きがかなり体に染み付いていてきていることを感じさせる勝利だった。

第2試合 スーパーファイト 契約体重なし 5分3R
○ボブ・サップ(アメリカ/チーム・ビースト/144.9kg)
×アラン・カラエフ(ロシア/リングス・ロシア/180.0kg)
1R 3'44" KO (左ストレート)


 序盤、カラエフがサップをパンチの連打で追いつめ倒し、あっさりとマウントを奪いチャンス。だが腕十字を狙うと失敗。その後互いにマウントを奪う展開を繰り返すが、どちらも詰めの技術が甘く、サップが2度目のマウントを奪ったところでこう着状態に陥りブレイクがかる。すると早くもカラエフがスタミナ切れでなかなか立ち上がれない。なんとか立ち上がるも、再開直後の打ち合いでサップの左ストレートを浴びマットに沈んだ。

第1試合 スーパーファイト 82kg契約 5分2R(延長1R)
○ホドリゴ・グレイシー(ブラジル/チーム・ホイス・グレイシー/81.2kg)
×國奥麒樹真(日本/フリー/79.9kg)
判定3-0 (平20-18/梅木20-19/礒野20-19)


 体格と寝技で勝るホドリゴが國奥を圧倒。両ラウンドともバックマウントを奪い、國奥をあと一歩まで追いつめる。最終的には國奥は脱出し上になるが、その先の攻めが無い。スタンドのパンチを当てる場面もあったが、見せ場がほとんどないまま終了のゴングを聞いた。

オープニングファイト 85kg契約 5分2R(延長1R)
○竹内 出(日本/SKアブソリュート/パンクラス・ミドル級1位/84.7kg)
×三浦広光(日本/TOKIN/パンクラス・ミドル級5位/83.7kg)
2R 3'35" TKO (レフェリーストップ:マウントパンチ)


 まだ客入れ中の5時前に突如スタートしたこの試合。序盤のパンチ戦で三浦が左目尻をカットし、ドクターチェックを受ける。再開直後、三浦はパンチラッシュで反撃する。2R、三浦がテイクダウンに成功するが、竹内が下から足関を狙うとスタンド勝負に戻る。その後竹内がテイクダウンすると、そのままマウント。ロープ際で位置は悪かったが、パンチを落とし続けるとレフェリーがストップした。

Last Update : 07/07 05:49

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