(レポ&写真) [プロ柔術関西] 6.11 大阪 (2):青木、早川に対戦要求
ホーリーエクイップ "プロ柔術関西 大阪夏の陣:第2部" (→第1部記事) 2005年6月11日(土) 大阪・大阪ビジネスパーク円形ホール
Text & Photo 井田英登 【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
第7試合 [ダブルメインイベント]アダルト黒帯メジオ級10分一本勝負 ○青木真也(パレストラ東京) ×渡辺直由(トライフォース) ポイント5-0
去年の「GroundImpact Gi-05」では、渡辺にポイント8-0の惨敗を喫した青木。捲土重来を誓ったリベンジマッチを前に、マルセロ・ガッシアの道場へ留学を敢行。「前回は柔術を甘く見ていた」という柔道エリートの奢りを捨てての挑戦となった。
低い姿勢で迫る渡辺に対し、距離をキープして下がる青木。焦れて渡辺がタックルを仕掛けた瞬間が青木の勝負所だった。そのままカウンターで押し倒しマウント奪取。いきなりの三ポイント先取だ。スイープを狙ってくる渡辺を躱して立ち上がる青木だが、その足にしがみついて放さないあたりに渡辺の柔術家としての粘りを感じさせる。
応じてグラウンドに戻った青木は、アキレス腱固めを仕掛けアドバンテージを奪取。起き上がって渡辺のガードを素早く踏み越してハーフへ。一回ガードに戻させておいて、再びまたぎ越してさらにアドバンテージを重ねる。半年の間に、すっかり柔術特有のポイント戦略を自家薬籠のものとしているのが、この一連の攻防でも見て取れた。さらに、スタンドに戻ると小内刈りでテイクダウンでさらに2ポイント奪取。柔道家としての強みも見せつける。
後半、渡辺のクロスガードに捕まって膠着アドバンテージを取られたものの、渡辺のオープンガードをダブルアキレスに捉えてさらにポイント奪取を狙うなど、終始アグレッシブな攻めを見せた青木が、渡辺の“凡人の意地”を突き放す形でリベンジを果たした。
青木は勝利が決した直後「次は早川だ!」と、客席で観戦していた早川光由を指して絶叫。勝利者インタビュウでマイクを向けられた際にも「本当はこの大会で早川さんとやりたかったんですけど、僕なんかではモチベーションが上がらないということで、受けてもらえなかったんですけど、次は是非僕とやってください」と挑戦を表明。
皮肉にも師にあたる中井祐樹を思わせる目の故障で、プロライセンス発行がなされず、期待された修斗での活躍が難しくなった青木。この天才児が日本のトップに君臨する早川狩りという新しい標的を打ち出した事は、柔術ファンのみならず格闘技ファン全体にとって喜ぶべきニュースではないだろうか。思えば早川は、中井を二度までも敗ったパレストラの宿敵でもある。今後、青木の追撃がいつ早川に届くのか、推移を見守りたい。
【この記事に関するお詫び】
この大会の4日後、青木選手のプロ修斗公式戦出場が発表されました。青木選手の目の怪我である「網膜裂孔(もうまくれっこう)」に関しては、激しい運動を避けて安静にしていれば治るという程度の認識でおりましたが、今回さらに詳しく調べましたところレーザーによる治療で短期間に完治するという事がわかり、認識を新たにしました。(北澤ボクシングジム公式ホームページのコラム (5/9))当初の記事では、中井氏との対比を書いたことで、“修斗のリングに永久に上がれない”ような印象で読まれかねないというご指摘をいただきました。その部分確かに配慮不足だったなと思います。また復帰時期についても、取材不足できちんと確認しておらず、「当面柔術で闘うようだ」という予断で記事を製作してしまいました。青木選手ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。(井田)
第6試合 [ダブルメインイベント]アダルト紫帯レーヴィ級7分一本勝負 ○三島☆ド根性ノ助(コブラ会) ×鹿又智成(パレストラ八王子) 1'40" 送り襟締め
この日の興行は関西の選手を中心に編成されたこともあり、本来総合中心のコブラ会からもナンバー2の花澤、今年のアブダビ日本代表に食い込んだ三原、そして柔道22年のキャリアを誇る宮崎と三名の選手が参戦、会場を盛り上げた。三島には当然“大将”として興行を締めくくるインパクトのある試合が望まれる所だ。
ただ、この日第二部の入場式では、道着の胸に抱いたスヌーピーのぬいぐるみにマイクを預け、「頑張りマチュのでヨロチク」というミエミエの腹話術で挨拶。観客のドン引きを誘っただけに、きっちり試合で締めてくれるのか、若干不安が残ったのも事実。入場テーマもこの日はおなじみの「福岡ゴジラ」ではなく、筆者の知識には無いアニメ風の歌に、スーパーマンの装束で登場。さらに不安は募っていくばかりだったが…。
一旦試合となれば、やはりこの人の強さは際立ったものだった。
鹿又の突進に逆らわず引き込んで、巴投げ風に両足で跳ね上げてのリバーサル。そのままバックに張り付いて、あっという間に連続技での6ポイントを奪取してしまう。必死に首を守ろうともがく鹿又だが、バックからの送り襟締めでフィニッシュ。そう言えば、三島のバックボーンは柔道。着を使った攻めはお手の物であった。2002年のカンペオナートでのリベンジを期した鹿又の挑戦だったが、この日の両者の出来を見る限り、まだその機は熟していなかったようだ。
先日のPRIDE武士道でのグラウンド戦で一本負けを購おうと言う訳ではないだろうが、今三島は寝技モードで燃えているとのこと。次の試合もどうやら打撃なしのグラップリング戦になるらしい(それも相当意外な舞台のようだ)。正式な発表を待とう。
第5試合 アダルト紫帯レーヴィ級7分一本勝負 ○タクミ(パレストラ大阪) ×Barbaro44(クラブバーバリアン) ポイント2-2,アドバンテージ1-0
総合系選手同志のマッチメイクとなったセミだが、Barbaro44はレスリングベースながら柔術的キャリアは昨年の全日本準優勝と申し分ない。オープンガードを駆使し、パスを狙いに来るタクミの袖を引き、カウンターのリバーサルできっちりポイントを先取する。負けじとタクミも引き込み、オープンガードから腕十字へ。腕を抜こうとしたBarbaroのバックに張り付いて、2ポイントを取り返してイーブンに戻す。試合終了直前にかろうじてタクミが、パスガードを狙ったアドバンテージで僅差の勝利を手にした。
第4試合 アダルト茶帯レーヴィ級8分一本勝負 ×冨樫健一郎(パレストラ広島) ○宮田卓郎(名古屋BJJクラブ) ポイント0-4
パンクラスで闘う宮田と、シューターである富樫の対戦。総合ファンにとっては“禁断の対決”の構図だが、柔術畑からすれば二年前の全日本でのリマッチ(この時は富樫がポイント勝利)というべき一戦。
極めの強い選手同士の対戦だけあって、随所にサブミッションでの攻防が顔を出す。まず先手を取ったのは富樫で、引き込んだ下のポジションから、茶帯では解禁のヒザ十字でアドバンテージを奪取する。だが、これを切り返した宮田がバックマウントを奪って、4ポイント先取。
追う立場となった富樫が再三タックルを仕掛けていくが、引き込んだ宮田が腕十字を狙う展開や、逆にガブって潰された富樫が下からのヒザ十字を狙う展開など、常に一本を狙う攻防が繰り広げられる。最後の一秒までオモプラッタで攻めるなど、ポイント勝利に飽き足らない宮田のアグレッシブさが試合をリードした感があり、非常に見応えのある試合となった。
第3試合 アダルト茶帯プルーマ級8分一本勝負 ○村上サンカ君(PUREBRED京都) ×佐藤和弥(パレストラ八王子) 7'12" 腕ひしぎ三角固め
リングネームにもあるように、三角を必殺のフィニッシュホールドとする村上。逆の立場から言えば、警戒ポイントは一点ということでもある。しかし、ペケーニョのギロチンや、ミルコの左ハイ同様、どんな警戒をしてもハマってしまうのが“必殺技”と言うものなのかもしれない。
アドバンテージ1-1で並んだ7分前後に、この教訓が具体化した。試合終了直前のこの時間帯に、佐藤は膠着注意をもらってしまった。村上のクロスガードに捕まっての膠着なので、両者イエローが順当ではないか? と考えるのが、MMAを見慣れた筆者のような人間の感想。
しかし柔術の場合、攻めている側が攻めきれていないという理由で、マイナスアドバンテージをもらってしまうルール設定。二度目の注意は、即敗戦要素になる。勝負に出なければならなくなった佐藤の心理につけ込んだのか、その次の瞬間すっと村上の足が佐藤の首に食い込む。
気がついた時には三角に固められ、佐藤はタップアウト。三角一つを武器に連勝街道をひた走る、村上のスペシャリストぶりが発揮された試合だった。
第2試合 アダルト紫帯メイオペサード級7分一本勝負 ○三原秀美(コブラ会) ×佐藤信宏(名古屋BJJクラブ) ポイント2-0
今年のアブダビ代表に選出、一回戦負けで終わったとは言え、世界の大舞台で貴重な体験を積んで来た三原。
随所に見せる足の効きはさすがで、引き込みを嫌って立とうとする佐藤の足を巧みに引っ掛け、同時に掴んだ袖を引いてグラウンドに引き戻す。そして下からの三角締めを仕掛けてアドバンテージを重ね、そこからさらに上下を入れ替えてリバーサルポイントを奪取。このポイントが効いて勝利を決定的にした。
第1試合 シニア黒帯ペナ級6分一本勝負 ○鈴木陽一(アライブ) ×福本吉記(クラブバーバリアン) ポイント9-2
この日の「サプライズカード」として当日発表になったは、名古屋のアライブと富山のクラブバーバリアンの主催者対決。シニア戦ということもあって、黒帯ながら試合時間は6分と若干短縮されている。だが、体力の衰えを知力と練習量で補うのがベテランの味。非常に動きの豊かな面白い試合になった。
福本が引き込めば、身を任せた鈴木が、タイミングを外して素早く立つ。福本がタックルでポイントを先取すれば、鈴木が素早くリバースでポイントを取り戻す。このアタックアンドカウンターのスムースさを生んだのは“技の見切り”の早さだろう。一つの動き、一つのポジションに拘泥しないのが、オヤジマッチの面白さの源泉と見た。
特に鈴木の“見切り”は絶妙で、極るきるまで粘る事をしない。アームを取ってもアドバンテージを取れば離し、下からの十字も形に入れば深追いしない。アドバンテージを取って、すぐ次へ。うっかりするとエキシビジョンに近い動きになるが、パワーに物を言わせたり、ねちっこく一つの技にこだわるのは若者のやる事。軽やかに、諦めよく、すいすいとマットを舞っていく。若干頭の寂しくなったオジさん二人の攻防は、“達人の味”を醸し出していた。
終盤、若干スタミナの切れた39歳の福本のバテ具合に乗じて、さらにリバーサルとニーインザベリーを決めた40歳の鈴木が逃げ切り、華麗なシニア戦を飾った。
(→第1部の記事)
Last Update : 06/13 03:18
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