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(レポ&写真) [全日本キック] 1.4 後楽園:大月、小林をKO

全日本キックボクシング連盟 "SURVIVOR"
2005年1月4日(火) 東京・後楽園ホール  観衆:2,100人(超満員札止め)

  レポート:井原芳徳、永田遼太郎(白鳥戦) 写真:井原芳徳 【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


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第7試合 WPKC世界ムエタイ・ライト級タイトルマッチ 62s契約 3分5R
×小林 聡(藤原ジム/王者)
○大月晴明(AJジム/挑戦者)
3R 2'31" KO (3ダウン:パンチ連打)

※大月が新王者に

 ボヨヨンロックとキッズ・リターンのテーマ。大月と小林の入場曲が順番に流れる時がついにやって来た。新春の後楽園ホールは超満員。通常全日本キックの後楽園大会では、リング周りに腰ぐらいの高さの鉄柵が据え付けられるのだが、この日はその場所も座席になっている。バルコニーにも人がギッシリ。キック・総合の大物選手も多数観戦に訪れ、リングサイドには大みそかのPRIDE男祭りで激闘を繰り広げたヴァンダレイ・シウバの姿も。凝った演出は無くても、キックボクシングが好きな2,100人の熱気が、そのまま演出装置となっているような心地よい雰囲気だった。

 君が代吹奏の後、試合は静かにスタート。両者お見合いのまま、出方を伺う。観客は固唾をのんで見守るが、時折パンチが交錯すると、どよめきに一転。次の瞬間、どちらかがマットに倒れているんじゃないか? そんなスリルが何度も繰り返される。しかし二人とも倒れず、何事も無かったようにお見合いの状態に戻り、再び出方を伺う。
 小林が大月のパワーに押される展開も予想されたが、小林は重いパンチやミドルをもらってもびくともしない。逆に右ローを着実に当て、2R中盤には右フックをクリーンヒットさせる場面も。さらには大月を突き飛ばしては、上から踏みつけるようとしたりと、ラフな一面も見せる。
 一方の大月は、連続KO勝ち記録が14で止まった10月の試合でバックブローを放った際に、右肘のじん帯を痛めた影響もあって、右腕のパンチはフックに限定。バックブローはおろか、ストレートも打てない状態だったという。代わりに蹴りの比率が増し、特に右ローを有効利用。次第に小林の左腿が赤くなる。そしてこの右ローの集中打は、フィニッシュに持ち込むための作戦だった。

 3R中盤、大月は左フックの後、すぐさま右ロー。小林の意識を下に向けガードを開くと、全身でダイブするような渾身の右ブーメランフックを小林のアゴに炸裂させる。勢い余って数メートル前に飛び出した大月が後ろを振り向くと、そこには前のめりでマットに崩れ落ちていく小林の姿が。場内は割れんばかりの歓声と悲鳴に包まれる。
 小林はなんとか立ち上がり、パンチで必死に応戦するが、イケイケの大月を食い止めることはできない。左右のフック、ハイ、ローの波状攻撃を受け、背中を向けて逃げるように2度目のダウン。それでも小林はファイティングポーズを取るが、口は半開きで目は虚ろ。すぐさまフックの連打を浴びロープに追いつめられ、レフェリーに止められた。

 終わってみれば大方の予想通り、大月の完勝。しかしその過程は多難だった。右肘だけでなく左膝、左腰も負傷。満足にスパーリングもできなかった。いつもなら大月はKO勝ちをした直後、腕を糸巻きのようにグルグルさせ、手を大きく広げリング上を走り回るパフォーマンスを繰り広げる。だがこの日それをやったのは試合が終わって数十秒経ってから、まるで思い出したかのように。
 バックステージの大月は安堵の表情で「怖かった。早く試合から解放されたかった」と振り返ったが、それほど切迫感のあったということだろう。「勝っても負けても引退しようと思っていた。怪我も多いし、モチベーションを上げるのが大変」と驚くような発言をしたが、「(元同門の)山本元気が辞めさせてくれないんですよ。『一緒にタイ人とやってボコボコにされよう』って」とも冗談めかして語っており、しばらく休養すれば、またリングに戻って来てくれそうな雰囲気だ。これで戦績は18戦18勝(16KO)無敗。キリよく20戦ぐらいまではがんばってほしいところだが…。
 対する小林。インタビュースペースに現れると「ダメージ全然無いっすよ。だって勝手にレフェリーが止めるんだもん」とぶっきらぼうに答える。「俺の人生、別にこれで終わりじゃない。やられたらやり返すのは当たり前でしょう」「今日の負け?穴があったら入れたい、いや、入りたい」。この日は人前で涙を見せず、ジョークで野良犬節を貫いたが、逆にいつも以上に悲壮感がにじみ出ているようにも感じられた。

第6試合 全日本ライト級王座決定戦 3分5R
○白鳥 忍(高橋道場/1位)
×サトルヴァシコバ(勇心館/2位)
判定3-0 (50-48/50-47/50-46)

※白鳥が新王者に

 最近の白鳥を見ていると以前に比べ攻撃に緩急をつけてきたなあという印象が残る。この日も静かにプレッシャーをかけヴァシコバをコーナーに追いつめると1ラウンド終了間際に左右の連打であっさりダウンを奪う。ヴァシコバはゴングに救われる形で1ラウンドのピンチを切り抜けた。
 白鳥の成長をもっとも感じたのは、ここで無理にラッシュを狙わないこと。デビュー当時、KOマシンと化してた頃に見せた強引にパンチでねじ伏せるようなことはしない。しっかり己のチャンスを見定めて攻撃に転じる。だから今の白鳥には常に余裕みたいなものを感じる。ヴァシコバのセコンドから「奥足のローが当たる」とアドバイスが飛んでいたが、そんなわずかな突破口も封じてしまうほど欠点らしい欠点が見当たらないのだ。
 結局、後半に入っても形勢は変わらず白鳥が判定勝ちを収めた。これで全日本ライト級のタイトルを獲得した白鳥の次の目標は、1年半前のトーナメント決勝でカットによる無念のTKO負けを喫した宿敵、大月晴明の首一つ。メイン終了後の大月のコメントは「今やったら白鳥に負けちゃいますからやりません」と消極的だったが、この二人の対決ならこの日超満員に詰めかけたファンもまた足を運ぶはず。今年の初夏の辺りにぜひ実現を期待したい。K-1ミドル級だけじゃない。今、全日本ライト級が熱い!

第5試合 全日本ヘビー級王座挑戦者決定戦 サドンデスマッチ(3分3R・最大延長2R)
×コンボイ山下(超越塾)
○郷野聡寛(パンクラスGRABAKA)
判定0-3 (25-30/25-30/25-30)

※郷野が王者・西田和嗣への挑戦権を獲得。挑戦時期は未定

 郷野は86kg、コンボイは83kg。差は3kgだが、それ以上の体格差がある。右ローを放ちつつ前へ出るコンボイに対し、郷野はスウェーバックしながらフックやバックハンドを何発も当てる余裕の展開。どう仕留めようか落ち着いて考えながら試合を運んでいるようにさえ見える。そして1R終了間際、初めて放った左ハイでダウンを奪取。その後も危なげなく攻勢をキープし、3R終了間際にも左フックでダウンを奪い、文句なしの勝利をおさめた。相手との力の差が大きすぎて、キックルールでの実力が十分計りきれなかったが、全日本キックのファンに、存在感を十二分に示せた試合内容だった。

第4試合 フェザー級 サドンデスマッチ(3分3R・最大延長2R)
○石川直生(青春塾/3位)
×森山直樹(はまっこムエタイジム)
1R 1'40" KO (左ストレート)

第3試合 ウェルター級 サドンデスマッチ(3分3R・最大延長2R)
×三上洋一郎(S.V.G./8位)
○金 統光(藤原ジム/10位)
判定0-2 (30-30/29-30/29-30)

第2試合 ウェルター級 3分3R
○小塩大輝(JMC横浜GYM)
×HIROAKI(峯心会)
判定3-0 (30-26/30-26/30-26)

第1試合 60kg契約 3分3R
○安川文健(AJジム)
×デンジャー高山(AJKF)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)

■オープニングファイト

第3試合 フェザー級 3分3R
×ウルフ原田(DRAGON GYM)
○橋本城典(DEION GYM)
判定0-3 (29-30/29-30/28-30)

第2試合 バンタム級 3分3R
○前田浩喜(JMC横浜GYM)
×トシヒロ公正(藤原ジム)
判定3-0 (30-26/30-26/30-26)

第1試合 ライト級 3分3R
×岩切博史(月心会)
○寺崎直樹(青春塾)
判定0-2 (30-30/29-30/29-30)

Last Update : 01/07 21:51

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