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(レポ&写真) [パンクラス] 3.29 後楽園:近藤完勝。シウバ前線一気に北上

パンクラス "Sammy Presents PANCRASE 2004 BRAVE TOUR"
2004年3月29日(月) 東京・後楽園ホール  観衆・2300人(超満員札止め)

  レポート:井原芳徳  写真:大原健司  【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

メインイベント ライトヘビー級 5分3R
○近藤有己(パンクラスism/王者)
×スティーブ・ヒース(米国/シーザー・グレイシー・アカデミー)
1R 4'01" チョークスリーパー


 近藤が猪木アリ状態からヒースの顔や脇腹に何発も蹴りを放つたびに、満員の観客から掛け声が飛び、イケイケムードで試合を展開。ヒースのしつこいタックルにも倒れず、逆に潰してハーフガードを取る場面も。そして3分過ぎ、ハーフからマウントに移行し、パンチを効かせてバックを奪うと、すかさずスリーパーを極め、見事タップを奪った。近藤のチョークでの勝ちは00年3月の韓天潤戦、02年12月の栗原強戦以来3度目。
 リングサイドで試合を見ていたジョシュ・バーネットも近藤の勝利を祝福。いろんな選手のファンが集う昨今のパンクラスの会場だが、「近藤にこそヴァンダレイ・シウバと戦って欲しい」という思いは共通。会場は心地よい一体感に包まれていた。

 「次はシウバだ!」といった歓声の飛ぶ中、近藤はマイクを持ち、しばらく考えた後、ファンに向かって淡々とメッセージを送る。
「まだその…、自分の方から確かなこと言えませんけど、きっとパンクラスが僕の望みをかなえてくれると思います。その時は、日本人の誇りを持って精一杯やりたいと思います」。シンプルながらも確信に満ちた、近藤らしいアピールだった。
 バックステージでも近藤は「3ヶ月以内にやれたらいいですね。この瞬間から、シウバ戦に向けて準備しようと思います」と発言。尾崎允実パンクラス社長は「(PRIDEを主催するDSEの)榊原社長とは先週話をしました。前向きな話をしています。あとは先方の状況次第です。舞台はこだわってません」等と発言。春の訪れとともに、桜前線ならぬシウバ前線は一気に北上したといえよう。

◆近藤「ちょっと固かったですけど、その中で常に自分を見つめて、バランス良く闘えました。経験値が上がったと思います。(相手の情報が無かったせいで固かった?)いつも精神状態が違いましたね。相手をナメている自分もいるし、それを戒めている自分もいるし、めちゃくちゃ強いんじゃないかと思っている自分もいて。バランスを崩している自分がいましたね。(「経験値が上がった」とは?)リングに上がると相手が強そうに見えて、自分の意識を持っていかれたんですけど、自分の中に集中することを覚えましたね。対戦相手は自分の外にいるので。自分自身を見つめて闘えました。(その経験はシウバ戦にも役立つ?)そうですね。役立つと思います」


セミファイナル スーパーヘビー級 5分3R
○高森啓吾(パンクラスMEGATON/4位)
×石井 淳(超人クラブ/6位)
1R 0'40" KO (スタンドパンチ連打)


 ストレートパンチで先制したのは石井だったが、高森がフックの連打で次第に優勢に。最後は左フックの連打で石井をロープに追い詰めたところでレフェリーストップ。今回も寝技を見せなかった高森。プロ戦績はこれで3勝(3KO)1敗に。4試合の合計タイムはわずか2分40秒だ。

第5試合 ライトヘビー級 5分3R
○デビッド・テレル(米国/シーザー・グレイシー・アカデミー/6位)
×渋谷修身(パンクラスism/9位)
1R 3'04" ヒースチョーク


 テレルが得意の左ハイで先制を仕掛けると、倒れた渋谷のアキレスをつかまえ一気にフィニッシュへ。しかしism随一の寝技師として知られる渋谷は、脱出に成功するとスタンドの状態に戻し、組み付いてきたテレルをギロチンチョークに捕まえる。ところがテレルもこれを脱出すると、いったんグラウンドに持ち込み、立ち上がり際にお返しのギロチン。だがこれも渋谷が脱出。一進一退の素早い攻防に満員の会場が沸き上がる。
 とはいえ渋谷の健闘もここまで。いったん立ち上がった渋谷に対し、テレルはしつこいタックルで食らい付きテイクダウン。すぐにサイド、上四方に周り込み、180度逆方向から肩固めを極めるような体勢に。テレルの両足はリングの外にハミ出るが、レフェリーはシュートサインを出し、渋谷はタップ。昨年アブダビコンバットでアルメイダを破り3位に輝いた寝技テクニックを存分に見せつけての完勝だった。
 フィニッシュの公式発表は「変型スリーパーホールド」だったが、正式名称は「ヒースチョーク」。これは大会2日前の公開練習(パンクラス公式サイト参照)で、テレルと同門でメインで近藤と戦ったスティーブ・ヒースが披露した技。ヒースはこの技で過去6試合一本勝ちをおさめており、テレルはヒースから習って使ったわけだが、皮肉にもテレルが先に日本のファンにお披露目する形となり、ヒースも近藤に一本負けを喫してしまった。テレルはこれで佐々木有生戦に続き2連勝。ヒースチョークは、パンクラシスト達の脅威となるだろう。
 

第4試合 ミドル級 5分3R
○石川英司(パンクラスGARABAKA/6位)
×北岡 悟(パンクラスism)
判定3-0 (廣戸30-28/岡本30-28/梅木30-27)


 開始前、石川に近付きガンを飛ばす北岡に対し、「郷野さんを意識した」という石川は胸を突き飛ばし、対抗戦ムードを煽る。両者とも計量では81.9kgだったが、普段はウェルターで戦っている北岡は石川に押され気味。石川が上を制してパンチを落とし、北岡がロープの外に出てしまう展開が1、2Rとも繰り返される。その度にストップドントムーブで中央に戻されるため、石川はリズムを狂わされているような様子。レフェリーは一度ぐらいは北岡に注意をして欲しかったところだ。

 石川は1Rには立ち上がり際にサッカーボールキックを放つ場面もあり、2Rにはパスガードにも成功した。3Rには2度バックを奪いスリーパーとパンチで攻め北岡を圧倒。文句無しの判定勝ちをおさめた。だが、逆に言えば北岡だからこそフルラウンド石川の猛攻を凌ぎきれたとも言える。2月の保坂戦に続き、体重差のある相手との対戦経験は、北岡を精神的にも技術的にも成長させることだろう。
 試合後は「さんまのスーパーからくりTV」で共演したボビーさんとアドゴニーさんがリングインし石川を祝福した。石川はアルメイダ、國奥、竹内といった上位ランカーとの対戦を希望。たくましく成長した今の石川なら、彼らを喰ってしまったとしてもおかしくはない。

第3試合 ミドル級 5分3R
×中西裕一(フリー/9位)
○佐藤光留(パンクラスism)
判定0-2 (廣戸28-29/岡本29-30/梅木29-29)

※3R中西が金的攻撃の反則により減点1

 光留がスープレックスを放ったり、下から三角を極める中西を持ち上げてマットに叩き付けるなど、美濃輪を彷佛とさせる“新・無謀美”野郎(本誌井田が命名)ぶりを発揮。光留が対戦を熱望するジョシュ・バーネットも、客席から拍手を送る。
 だがその後は比較的大人しめな展開に突入。光留がインサイドガードになるも、中西が下から腕十字を狙って脱出し、バックを奪う。これまでの試合でも再三見せた得意パターンだ。2Rも中西はバックを奪取。だが佐藤はきっちりとディフェンスし危なげが無い。中西は2分近く攻めあぐね、ブレイクがかかる。
 1、2Rにバックを取ったためか?中西は3R、スタンドで仕留めにかかろうと前進する光留をかわし、カウンター狙いのスタイルとなる。だが2分過ぎ、ローが光留の股間に命中したため、減点1をもらってしまう。以降も中西は光留の打撃を流す展開で、最後は光留がグラウンドで足関を狙ったところで試合終了。

 大半の観客の判定は、減点1があっても、1、2Rでポイントを取った中西の勝利か、悪くてもドローという見方だったようだ。そのため判定結果が読み上げられ、光留の勝利が宣告されると、会場は騒然とし、中西のファンからは罵声が飛ぶ。
 それほどダメージの無かったローブロー1発で減点1というのも酷な気がするが、減点1が無かったとしてポイントを計算し直すと、判定1-0 (廣戸29-29/岡本30-30/梅木30-29) で、それでも中西の勝ちとならない。岡本レフェリーは中西がバックを取ったのを一切評価せず、廣戸&梅木ジャッジは2R目の中西の優位性を評価したと思われる。
 だが廣戸ジャッジが9-10で佐藤に付けたラウンドがあるのには疑問が残る。パンクラスルールの判定基準には、「投げ技により身体的ダメージを与えたと判断できる攻撃」を有効とみなす条項がある。廣戸ジャッジは1Rの光留のスープレックスを評価したのかもしれないが、その後に三角を極めかけ、バックも取った中西の優位性と相殺するぐらいが妥当ではないだろうか。
 筆者の採点は梅木ジャッジと同じだった。梅木ジャッジはDEMOLITION、DEEP等でも豊富なレフェリング経験があるせいか、採点に一貫性が感じられる。日本のMMA界では、修斗の鈴木利治レフェリーと双璧をなす優良なジャッジだと筆者は評価している。率直なところ、廣戸&岡本ジャッジの採点に疑問を感じることがたまにあり、今回もそのケースとなってしまった。だが、試合を見る位置と角度によって微妙に評価が変わることがよくある。そしてこの判定基準が昨年夏に設けられたことが示すように、パンクラスの審判団はルールを少しずつバージョンアップさせ、良い方向に進める努力をしていることは確かだ。今回の試合も、ルールをより良くするための好材料としてくれることを願いたい。

第2試合 ミドル級 5分2R
△長谷川秀彦(SKアブソリュート/7位)
△梁 正基(スタンド)
判定0-0 (廣戸19-19/岡本19-19/梅木19-19)


 1R、長谷川がマウント、バックマウントを奪い、腕十字を極めかけるなど圧倒。2Rも長谷川が上になるが、梁はひっくり返すと中腰の体勢からパンチを落とし反撃。なんとかドローに持ち込んだ。

第1試合 ライトヘビー級 5分2R
×佐藤光芳(パンクラスGRABAKA)
○内藤征弥(A-3)
1R 3'30" 三角絞め


 光芳がタックルでテイクダウンに成功するも、内藤の下からの三角にあっさり捕まりタップアウト。復帰戦のせいか光芳の動きが固かった。

パンクラスゲート第2試合 ライト級 5分2R
△荒牧 拓(P's LAB横浜)
△吉村直記(TEAM KIBA)
時間切れ

パンクラスゲート第1試合 ライト級 5分2R
○NUKINPO!(P's LAB東京)
×松本光央(グレイシーバッハVTT)
1R 3'23" 腕ひしぎ十字固め

Last Update : 04/03

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