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(レポ&写真) [K-1 MAX] 11.18 武道館:魔裟斗、元ボクシング王者をローでKO

FEG "アルゼ K-1 WORLD MAX 2003 世界王者対抗戦"
2003年11月18日(火) 東京・日本武道館  観衆:9,250人(満員)

  レポート:新小田哲(第10試合),井原芳徳  写真:井原芳徳(第10-8試合),湯本恵子
  【→大会前のカード紹介記事】  [→掲示板スレッド]


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第10試合 -70kg契約 3分3R
○魔裟斗(日本/シルバーウルフ)
×ビンス・フィリップス(米国/フリー)
2R 0'15" KO (右ローキック)


 国際式ボクシングで世界王者の経験のあるビンス・フィリップスは、97年にコンスタンチン・チューを大番狂わせの逆転TKO勝利で下しIBF世界J・ウェルター王座を奪取すると、自慢の右強打でその後いずれもKO・TKOで3度の防衛に成功した。99年にテロン・ミレに敗れ王座から陥落した後もコンスタントにリングに上がり、2000年にはNABO北米J・ウェルター級王座も獲得するなど40歳となる今年4月まで現役で試合をしている。ここ2戦は、相手が一線級とはいえ完敗、年齢も合わせて考えるとボクサーとしてはそろそろ「上がり」と考えてキックボクシングへと戦場を変更してきたようだ。
 フィリップスを「過去の人」とばっさり切り捨てた魔裟斗だが、それでも前日の計量でフィリップスが契約体重をオーバーした時でさえ「こういう時こそ気を引き締めないと、と思った」と試合後に語っている。

 試合は、「パンチで打ち合わない」という作戦の魔裟斗が、まさに「ボクサー殺し」の定跡とも言える作戦を披露した。「体のスピードはそうでもなかったけど、手のスピードはあった」というフィリップスのパンチに対し、フットワークで徹底的に距離を置いて左右ローキック、ミドルを確実に打ち込んでいく。フィリップスはワンツーにさすがとも言える鋭さを時折見せたが、キックへの対策は全くしてこなかった様子で、及び腰で踏み込めず、成す術がない。それでも右ストレートを単発で魔裟斗の顔面にヒットさせる場面があったものの、大勢に影響を与えるまでには至らなかった。ロー、ミドルをいいように打ち込んでいく魔裟斗は1R終盤、右ローから左ハイキックをヒット。「手ごたえがあったから、パンチで詰めようかと思った」が、セコンドの「打ち合うな」と言う声に冷静に対応、あくまで蹴りで勝負に行く。
 初回は一方的な魔裟斗ペースのまま終了、フィリップスも慣れないローによく耐えたと思われたが、2R早々にフィリップスのパンチに合わせて魔裟斗が右ローを打ち込むとこれでフィリップスダウン。限界を超えたフィリップスの下半身はリングに横たわったまま立ち上がる事を拒否、10カウントが数えられた。


 K-1世界王者としての緒戦を飾った魔裟斗。「特にプレッシャーはなくて、リラックスしてリングに上がれた」と余裕のあるところを見せたが、3Rの短期決戦を考慮して「デビュー戦以来」という試合前のミット蹴りを行い、ウォームアップを入念に行うなど準備も万端だったようだ。
「ボクサー対策が万全だったから、いい結果につながった」という魔裟斗、一方的な展開にもパンチで打ち合おうとしなかった姿に「絶対に負けられない」という強い危機感が感じられた。セミ以下の試合を見ていて、魔裟斗以上の「気持ち」を感じさせた選手はいなかった。観客の圧倒的な声援はもちろんの事、試合前の準備、試合内容、心構えと、まさに魔裟斗の一人勝ちの今大会だったと言える。

◆魔裟斗
「1R終わった時点ではロー効いてるとは思えなかったんですけど、(ダウンしたのは)タイミングと入った場所じゃないですか。
(大みそかの興行には)出ません。そんなに安くはないんで。自分はボクシングの世界王者と同じだと思ってるんで。ボクシングの世界王者がそんな短い間隔で試合しないですよね。年に2〜3試合でいいと思ってるし。最近のK-1ってエンターティメントの方向に行ってるのがイヤなんですよ。MAXだけは本当の強さを見せたいと思ってます。
(今後戦いたい相手は)他の試合見てないので、分からないです」

第9試合 -70kg契約 3分3R
×小次郎(日本/Kスクワッド)
○ダニエル・ドーソン(オーストラリア/シュートボクシング協会・ブンチュージム)
判定0-2 (29-30,30-30,29-30)


 小次郎は3月の武田戦の敗北後、ウィラサクレック・ムエタイジムを離脱。K-1向きのパンチスタイルに転向し、8ヶ月ぶりのK-1でその成果を発揮できるかに注目が集まった。ドーソンも最近はボクシングの試合で11戦11勝9KOという戦績を残しているというが、1R小次郎は互角の打ち合いを展開。成長の度を伺わせる。2R、3Rも小次郎は左アッパーやローを当て続ける。だが、追い込む場面があったのはドーソンの方。2Rには左ハイで小次郎をヒヤリとさせ、3Rには右フックからラッシュをかける場面も。
 ジャッジ1者は30-30のイーブンだったが、2者は2R&3Rを小次郎9.5-ドーソン10と採点したため合計1点差がつき、ドーソンが僅差の勝利。セミファイナルにふさわしい好勝負だった。

◆小次郎「みんなを驚かせるような結果が残せなかったから、何も言えないです。延長があると思いました。ローが効いてるのと、アッパーがきれいに入って効いてるのがわかったけど、そこから詰められませんでした。パンチが上手い選手だと思ってたけど、自分のパンチも意外と入って、そんなに怖くはなかったけれど、上手いなとは思いました。試合でバタバタしてるのが自分でもわかったんですけど、経験不足ですね。練習以下の実力しか出せてないです。もっと経験を積まないと。魔裟斗選手が試合で結果を出しているのをもっと見習いたいです。3月に試合した時にパンチがダメだって言われて、ボクシングのジムに通ったんですけど、今度は蹴りとパンチのバランスを修正することになって。今後は手と足のバランス、つなぎを速くするのが課題です」

◆ドーソン「厳しい試合だったが、初めてのK-1ルールで勝てて嬉しい。今後もSBの選手がK-1で勝てることをお見せしたい。自分の実力は十分に出せたと思う、次はKOで勝ちたい。魔裟斗の試合は相手がイージーだった。ボクシングとK-1は違う。自分はどんな相手ともハードファイトをする自信がある。魔裟斗にとって、この自分が一番いい相手になると思う。サワーともいい試合になるだろう」

第8試合 -70kg契約 3分3R
×須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ)
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム)
判定0-3 (29-30,29-30,29-30)


 須藤は相手に背を向ける動作で角田レフェリーから注意を受けるも、単にトリッキーなだけでなく、バックハンドやフックの精度が上がり、確実に倒せるスタイルに進化している。クラウスは攻めにくそうだったが、その中でもパンチやローを的確にヒット。3Rはジャッジ3者とも10-10のイーブンだったが、1Rは9.5-10/10-10/9.5-10、2Rは9.5-10/9-10/9.5-10と採点されたため、2R時点で1ポイント差が付き、クラウスがなんとか勝利をものにした。

◆須藤「試合の組み立ては自分の考えていた通り。テーマは左(ジャブ)の差し合い。クラウスは右の攻撃に右をカウンターで合わせてくるので、左を合わせて、右の攻撃には回転系で行きました。ただバックブローが撃った後にクリンチの間合いになってしまって、あれでイエローカードをもらってしまったのが悔しいです。自分ではもう1Rやりたかった。相手は結構(自分のことを)ナメてなかったので、何をやってくるか分からないと思ったと思うので、もっと分からなくしようと。聞いていたほどそんなに強いっていうのは無かったです。ボディも効いてたし、前回のチャンピオンという事を意識しすぎました。勝てない相手じゃないです。ペースは掴んでいたので4R行けると思った。もっとルールに対応したいです」

◆クラウス「須藤はコメントしずらい選手。変な選手だなと思ってたけどその通りだった。(途中ロボットみたいな動きをしていたが)キックボクシングには関係ない動きだ。
 作戦は左から入ろうと思っていた。後はローキック。だがプランどおりにいかなかった。コンディションも100%ではなかったし、須藤の動きが読めなくて掴みづらかった。ただ自分の方が上だと言う手ごたえはあった。バックブローはちょっともらったけどダメージはそんなにない。今後は全てKO勝ちを目指したい。魔裟斗とはまた戦いたい」

第7試合 -70kg契約 3分3R
×松本哉朗(日本/新日本キックボクシング協会・藤本ジム)
○ドゥエイン・ラドウィック(米国/3-Dマーシャルアーツ)
2R 2'12" TKO (タオル投入)


 2R途中までほぼ互角の展開だったが、ラドウィックは右ミドルの直後にかぶせるように右ストレートを放ち、ダウンを奪う。なんとか立ち上がった松本だが足元はフラフラ。ラドウィックは容赦なく右フックを叩き込み、最後は左膝。松本がマットに沈むと、セコンドがタオルを投入し試合終了。松本がプロ16戦目にして初黒星を喫した。

◆松本「試合前は特に緊張してなかったです。プレッシャーも感じていないつもりだったんですけど、どこかに(プレッシャーが)あったのかもしれないです。相手の右が見えなくて、不用意にもらってしまいました。作戦は蹴りを多用していくつもりでした。協会を背負ってたとかが原因じゃなくて、自分が弱いだけ。経験不足が出ました。一からやり直しです」

第6試合 -70kg契約 3分3R
×村浜武洋(日本/大阪プロレス)
○アンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング協会・リンホージム)
判定0-2 (28-29,28-28,28-29)


 細かい動きからパンチを出す村浜に対し、サワーは接近戦で膝を当て、1Rはやや優位に試合を運ぶ。だが先にダウンを奪ったのは村浜。2R開始早々の打ち合いで、右フックをこめかみに命中させサワーをマットに沈める。直後のバッティングで村浜は左目尻を切り出血してしまうものの、サワーの攻撃は見えている。
 しかしながら3Rからサワーが底力を発揮。パンチと膝で村浜を苦しめ、村浜のパンチの連打も両手で完全にブロック。受け切った後でダンスを踊り、村浜を小馬鹿にする。そして試合終了15秒前、左右のワンツーでダウンを奪取。3Rサワーはジャッジ3者から文句無しの8-10のポイントを取ることに成功する。2Rはジャッジ2者が村浜10-サワー8でなく村浜10-サワー9と付けていたため、サワーは3Rの得点でかろうじて逆転に成功。うれしいK-1初白星を獲得した。
 村浜はもちろん負けたことを残念がってたものの、「お客さん湧いてましたよね?良かった。プロの仕事はできたんで。大みそかは今日の僕の試合の視聴率次第でしょうね」と笑顔だった。

◆サワー「村浜のパンチは強かったけれど、聞いていたほどではなかった。ダウンした時はヤバいと思ったけれど、ダメージはなかった。村浜について研究してきたので、前に出てくるのに合わせて前蹴りを使った。また、同じ方向に回って、動きを止めるようにした。今後はダニエル・ドーソン、魔裟斗と戦いたい。(クラウスと須藤元気の試合をモニターで見ながら)クラウスも気になるけど、須藤の試合もファンキーで面白いよね」

第5試合 -72kg契約 3分3R
○小比類巻貴之(日本/チームドラゴン)
×トニー・バレント(米国/ニックワンキック)
3R 0'59" KO (右ミドル)


 バレントは敬愛するブルースリーが映画「死亡遊戯」で着ていた黄色のつなぎで試合出場。K-1ルール第16条には「試合コスチュームについては、各自自由選択とする」「対戦相手を、負傷させる恐れのある物の着用を禁止する」といった文言があるだけで、つなぎで試合をすることは特に問題無いようだ。
 身なりだけでなく動きもトリッキーなバレント。回し蹴りを多用し観客を湧かせるが、コヒは落ち着いて右ローを効かせる。2Rには右ミドルがバレントの脇腹に当り、バレントは苦しそうにダウン。3Rもコヒが攻勢で、再び右ミドルでダウンを奪い、危なげ無くKO勝ちをおさめた。
 コヒは昨年5月のマリノ・デフローリン戦以来のKO勝ちに無邪気に大喜び。マイクを持つと「復活だ!」と絶叫した。だがバックステージでは「20〜30%ぐらいしか動きを出せなかった。エンジンがかかる前に試合が終った感じ」と語り、内容には満足していない様子だった。リング上の「復活」発言についても「ここからがスタート。来年の日本トーナメントで勝って、そこからが本当の復活です」と説明した。

第4試合 -70kg契約 3分3R
×土井広之(日本/シュートボクシング協会・シーザージム)
○マルフィオ・“ザ・ウォーリヤータイガー”・カノレッティ(ブラジル/シッチマスター・ロニー)
判定0-3 (29-30,28-30,28-29)


 土井は愛称にもなっている『キラー・ロー』を着実に当てるが、馬力に勝るカノレッティのパンチに押され気味。2R後半から苦しそうな表情を見せ始める。3Rもカノレッティが優勢で、中盤過ぎには伸びのある右ストレートでダウンを奪取。結局土井はばん回できず、K-1初戦からいきなりつまずいてしまった。

第3試合 -70kg契約 3分3R
×大野 崇(日本/inspirit)
○シン・ノッパデッソーン(タイ/新日本キックボクシング協会・伊原道場)
延長R 判定0-3 (9-10,9-10,9-10)

※本戦判定0-0 (30-30,30-30,30-30)

 ラジャダムナン王者のノッパデッソーンは重い右ミドルやハイで大野を脅かす。だが、本来63kgぐらいの体重で戦っている選手のため、体格に勝る大野には十分威力を発揮できず。逆に接近戦ではパンチをもらう展開が続き、本戦では決着がつかず延長へ。ノッパデッソーンは右の蹴りだけでなく、3Rから多用し始めた首相撲でコントロールしてからの膝蹴りも活用。押し気味に試合を運び、勝利をもぎとった(延長戦はマストシステムだった模様)。試合後は「初のK-1ルールだったので思うような試合運びができなかった」と反省していた。

第2試合 -70kg契約 3分3R
○安廣一哉(日本/正道会館)
×デイビッド(米国/MA日本キックボクシング連盟・真樹ジムオキナワ)
判定3-0 (30-28,30-28,30-28)


 安廣が1Rから右のキックを上下に打ち分け優勢。2R序盤にデイビッドの膝蹴りを股間にもらうが、2分のインターバルで回復し、すぐに右フックでダウンを奪取。その後もスピンキックや子安キックを繰り出すなど試合の流れを維持し、文句無しの勝利をおさめた。デイビッドは前日に試合が決まったせいもあって力を出し切れなかった。次回参戦のチャンスに期待したい。

第1試合 -70kg契約 3分3R
×マグナム酒井(日本/MA日本キックボクシング連盟・士道館)
○アースラン・マゴメドフ(ロシア/チヌックジム)
1R 3'03" KO (右ストレート)


 1R中盤、圧力に勝るマゴメドフが強烈な右からのパンチラッシュでダウンを奪取。酒井も右フックでお返しするが、マゴメドフはパンチと膝の連続攻撃ですぐばん回。酒井はロープにもたれかかって立っているのがやっとで、最後は残り10秒を切ったところでマゴメドフの右ストレートをもらいダウン。そのまま立ち上がれず、K-1初戦で痛い黒星を喫してしまった。

Last Update : 11/19

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