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(レポ&写真) [PRIDE.24] 12.23 福岡:ノゲイラ、満身創痍のリベンジ戦

DSE "PRIDE.24" 2002年12月23日 (月・祝) 福岡・マリンメッセ福岡  観衆:8,543人

  Text:井原芳徳/井田英登  Photo:井田英登

  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板・PRIDEスレッド]

第8試合 1R10分・2,3R5分 ※ヘンダーソンは4点膝ありを選択
○アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップ・チーム/106.5kg)
×ダン・ヘンダーソン(米国/チーム・クエスト/88kg)
3R 1'29" 腕ひしぎ十字固め

 当初予定されていたタイトルマッチが、挑戦者ヒョードルの怪我によって中止。急遽ミドル級のヘンダーソンとのノンタイトル戦となったのが今回の対戦。通常の格闘技の感覚で言えば、100キロ超のノゲイラが圧倒的に有利であり、あまり意義のある試合とは思われないだろう。しかし、かつてこの一戦は実現したことがある。今を遡ること2年前の2000年リングスKOKトーナメントの準決勝のことであった。終止上のポジションを支配したのはノゲイラだったにもかかわらず、判定はヘンダ−ソンに傾いた。以降、一本勝ちに重きを置くノゲイラの現在のスタイルを築く基礎となった重要な黒星である。
 いわば、この一戦はノゲイラがリングスに置き忘れてきた痛恨の黒星に対するリベンジマッチとも言える。だが、この日ノゲイラ実は試合のできる状態ではなかった。まず11月のシュルト戦で負った左小指の怪我。そして今回に向けての練習中には右肩も負傷。さらには大会直前に風邪を患い高熱を発するという、まさに泣きっ面に蜂状態。対する、ヘンダーソンも試合後「全回の方が体調は良かったな。今回は気分的にもちょっとがんばりが効かなくて、タップしそうな弱気な場面があった。最後の十字までは危険だとは思わなかったんだけどね」と体調の悪さを口にしたものの、やはりコンディションの悪さでは比較にならない。

 1R中盤、下になったノゲイラはヘンダーソンの腕を股に挟み込む格好で極めを狙う。ヘンダーソンはノゲイラの上に回り込んで防御を試みるが、ノゲイラは股に挟んだ腕に注意を向けさせた隙に、もう片方の腕を捕まえ極めを狙う離れ技を見せる。その後も再三アームロックを狙い、関節技マジックを博多っ子に披露するが、体調不良のノゲイラは極めが甘く、なおかつ百戦錬磨のヘンダーソンのディフェンスの巧さも相まって、なかなかフィニッシュに至らない。逆にスタンドではパンチの打ち合いでいい当りをもらう場面もあり、ファンをヒヤヒヤとさせる。
 最終ラウンド、差し合いを制したノゲイラは足払いからあっさりとマウントに。「三角締めは自分の得意技の一つですが、それだけではないことを日本のファンにみせたかった」と言うように、この日ひたすらアームロックを狙い続けたノゲイラ。一つにはグラウンドでも思いきり良く打ち抜いてくるヘンダ−ソンのパンチを封じたかったという狙いもあったのかもしれない。この場面でも始めはアームロックを狙い続けたノゲイラだが、セコンドのアドバイスを聞いて一呼吸置いた後、一気に腕十字へ移行。さすがにこの速攻は防御できなかったヘンダーソンはすぐにタップ。ノゲイラが苦しみながらもリベンジに成功した。

 大会後のインタビュウでは「猪木さんのオファーがあれば大みそかの猪木祭に出場したい気持ちもある」とリップサービスをしたノゲイラだが、一方では「連戦の影響で疲労が溜まっており、今は少し自分に休みをあげたい」という本音ものぞいた。マネージャーもこの発言を支持「パフォーマンスとか挨拶程度のものにして、当分休ませたい」と述べている。

 ただし、すでに森下社長は次回3月16日に予定されるPRIDE25で吉田とのタイトルマッチを、という意向を口にしており、ノゲイラも今後戦いたい相手として吉田秀彦の名前をあげたことから、両雄の激突は時間の問題ではないかと思われる。ただ吉田が猪木祭りの佐竹戦に出撃することで、11月12月連戦となり、体調も優れないことから、吉田がPRIDE25出場に難色を示しているという話もある。

 果たして“21世紀の寝技王”を決める世紀の一戦はいつ実現するのだろうか?

 

第7試合 1R10分・2,3R5分
×ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー)
○ケビン・ランデルマン(米国/ハンマーハウス)
3R 0'20" TKO (レフェリーストップ)

 いきなりテイクダウンされて下になるピンチを、ニンジャがアームロックでひっくり返してマウントに切り返す。全回、PRIDE23で見せた、アローナ戦のような華麗な切り返しあいに期待があつまるが、そこはパワーとレスリングでかつてUFCヘビー級を制したランデルマンのこと、見事なブリッジでこれをひっくり返す。
 スタンドに戻り、ランデルマンは投げを試みるが失敗。これを崩し上になるニンジャ。今度はマウントを取らずサイドをキープ。ランデルマンの頭に細かく膝を叩き込み堅実に攻める戦法にでる。しかしランデルマンはこれもブリッジで返し立ち上がる。PRIDE参戦以来、日本人二連戦はテンポのあわない攻防で苦しんだランデルマンだが、ここに至ってようやく本領発揮となったようだ。本来のスタンドでのラッシュにも冴えを取り戻し、豪快なフックでニンジャを苦しめる。


 2Rも序盤からランデルマンがテイクダウンに成功し、サイドポジションに。パワーでがっちりと上をキープする。さらにスタンドで豪腕フックを繰り出す。終盤ニンジャも上を取ることに場面も見られたが、あきらかにダメージが大きかったのは否めない。2ラウンド終了後のインターバルでは、晴れ上がったニンジャの右目にドクターチェックが行われていた。
 そして3R開始早々、ニンジャのローにあわせ、ランデルマンがその右目を狙い済ましたかのような左フックをクリーンヒット。これでついにニンジャの右まぶたはカットされて大出血。再度ドクターチェックとなり、シュート・ボクセ陣営は続行を訴えたが、島田レフェリーが危険と判断し試合を止めた。

「ゲームプラン通り試合ができた。ニンジャにはなにもさせなかった。試合中、ナ−ヴァスになるようなシーンもなかったし、効いたのもなにもない。俺が現役の間は俺にはかなわないよ。俺の顔はきれいなもんだろ。さ、ヴァンダレイ待ってろよ!UFCだろうが、PRIDEだろうが俺に敬意を払われない状況はもうごめんだ。ヴァンダレイは俺の持つべきベルトを巻いているだけだ」と試合後の共同インタビューで一気にまくしたてたケビン。PRIDE三戦目にしてついにエンジン全開となった元UFC王者が、無敵のPRIDEミドル王者に挑戦状を叩き付けた。シュートボクセの特攻隊長を仕留められたヴァンダレイが、来年この挑発にどう反応するかが見物だ。

第6試合 1R10分・2,3R5分
○アリスター・オーフレイム(イギリス/ゴールデン・グローリー)
×ヴォルク・アターエフ(ロシア/ロシアン・トップ・チーム)
2R 4'59" KO (膝蹴り)

 3分過ぎ、アターエフが散打仕込みの素早い回し蹴りをアリスターのこめかみにヒットさせる。一瞬ひるんだアリスターだが、すぐ回復しテイクダウン。サイドポジションをがっちりとキープし、長い足を活かして小刻みにアターエフの頭に膝を叩き込む。

 2Rも組み付いてテイクダウンし、今度はあっさりとマウントに。アターエフはブリッジで返そうとするがなかなか返せず防戦一方に。3分近くこの状態が続き、野口レフェリーは「膠着を誘発する動き」とみなしイエローカードを出す。
 スタンドで再開すると、アリスターは元気いっぱいに膝を連打。アターエフもパンチで応戦するが勢いに押され気味。最後は左膝をアターエフの腹部にクリーンヒット。アターエフは苦しい表情をしながらロープにもつれこんで倒れ込む。ブレイクとなるかとも思われたが、野口レフェリーはここですぐに試合をストップ。アターエフは総合初黒星。アリスターはPRIDE初参戦で大金星をおさめた。



 試合後、アリスターはわざわざ会見場にパンフを持ち込み「ロシアの破壊者(DEMORITION MAN)が襲ってくるとかこのパンフレットに書いてあったそうだけど、僕がロシアに送り返してやったよ。スタンドでもグラウンドでも効いたのはなかったな」と入場パフォーマンスで見せたハンマーに込めた皮肉を、ここでも爆発させていた。

 休憩明けに、ファイティングプロデューサーアントニオ猪木氏が登場。「元気があればスキャンダルがおこる…元気があり過ぎて女に刺されてしまった奴がここに来ています」と、先日女性問題で刃傷沙汰となった新日本プロレスの棚橋選手が呼び上げる。長髪を丸坊主にした棚橋選手は「お騒がせしています。自分はこうやって生きています。生きているから可能性がある」と挨拶。リング上で猪木のビンタを浴びて、自らおこしたスキャンダルの“禊ぎ”を済ませる形となった。その後猪木は、年末の猪木祭りに向けての全国キャラバンのアピールを行い、恒例の「1、2、3、ダ−」で今年最後のPRIDEでのセレモニーを終えた。

第5試合 1R10分・2,3R5分
○山本憲尚(日本/高田道場)
×アレクサンダー大塚(日本/AODC)
2R 終了後 TKO (ドクターストップ)

 1Rはパンチを振り回す山本がその勢いでコーナーへの押し込み、コカして上になる展開で膠着状態が続く。2R序盤、差し合いの体勢になったところで大塚がローブローとなる膝蹴りを放ち和田レフェリーよりイエローカードをもらってしまう。その後も事態は改善されず、コーナーに押し込みあうのみという大味な膠着が続く。

 たが、ブレイク後、大塚の右アッパーが炸裂。苦し紛れにタックルに来た山本をつかまえ、さらに上から豪快に膝蹴りを叩き込む。だが攻め手に欠き山本の回復を許してしまう。
 逆に2R終盤、ハーフガードとなった山本がアレクの顔面に膝を叩きこみ、ようやく試合が盛り上がってきたかに思われたが、両者もつれあった状況でゴング。

 

 ところが、インターバルになっても大塚が立ち上がれない。チェックにドクターがリングに入れられた結果、右足のふくらはぎ(足首付近)の筋肉断裂の疑いが浮上。ドクターストップが宣告され、大塚は担架で運ばれた。

 試合後、共同インタビュウにぶ然とした顔で現れた山本は「最後どうなったかわかんないすね。膝が入ったのかと思ったんだけどね。彼は元々プロレスラーな訳で、それなら骨の一本も折れても立ち上がって欲しかったですね。撃ち合いがしたかったのに、打ち返してくれなかったし。負けても、あそこで立ち上がって来るのが彼の生き方のはずだし。その気持ちが見えなかったのが残念だった。雑草魂というなら立ち上がって欲しかった。相手が強くても、どんな不利な体勢でも立ち上がってくることで彼は光るんだし。ここですっきり勝って、31日(猪木祭り)にむけて戦いたい相手をぶちあげようとおもったんだけど、こんな調子なんで止めておきます」とコメント。せっかくのPRIDE二勝目にも喜べないといった風情だった。

第4試合 1R10分・2,3R5分
○ホドリゴ・グレイシー(ブラジル/グレイシー・バッハ・アカデミー)
×佐々木有生(日本/パンクラスGRABAKA)
判定3-0

 前回同じく「チェンジマン」のテーマ曲をバックに唄い、決めのポーズを入れた踊りを披露ながら入場してきたホドリゴ。「入場の時にチェンジマンのポーズで踊ると、“これから悪いやつと戦うんだ”という気分になれていいね。もちろん、ササキが悪党だっていってるんじゃないけどね(笑)」というだけに、一種ムエタイ選手のワイク−のような戦い前の儀式なのかもしれない。

 その精神集中の踊りが功を奏したのか、ホドリゴは試合開始早々豪快な右フックで突進するなど元気たっぷり。スタンド勝負を目論んでいたという佐々木の機先を制するホドリゴ。1R後半、腕を差してテイクダウンに成功し、早速パスガードを狙う。だがグラウンドスペシャリスト集団GRABAKAの一員として佐々木も負けられない。すぐにガードポジションに戻し、グレイシーの末えい相手に寝技で対等に渡り合ったばかりか、仕掛けをはずされたとは言え下からの三角を狙うなど“攻めの寝技”も試みる佐々木。
 ともあれ1R後半以降ねっちりした寝技の攻防が続く。それほどに高いテクニックをくらべあう両者の能力が拮抗していた証拠なのだが、“そこから先”の攻め手に欠いたのも事実。2R終盤に「膠着を誘発する動き」としてイエローカードをもらってしまう。


 3Rようやく佐々木が上になったがホドリゴのガードを突き崩すことができない。一度スタンドに戻りまたも上になるが、今度はホドリゴにひっくり返される。この辺りから寝技に遜色なしと見たのか、佐々木お得意のローが繰り出されるようになり、棒立ちのホドリゴのモモを容赦なく打ち付けるシーンも目についた。
 決定的な差はなかったが、マストシステムが採用されたこともあって、上になる場面の多かったホドリゴに軍配が上がった。


試合後、「自分がパンチで良いところをみせたので、佐々木は驚いたんだと思う。ただ佐々木はグラウンドで自分を驚かしたし、これでイーブンじゃないか?」というホドリゴに対し、佐々木は「どこが負けていたってのはないと思うんですけど、むこうの方が“勝ち方”を心得てたっていうかんじですね。上になってきっちり固めて殴ってくるんで、下から放そうとしてもできなくて。展開のないところできっちり勝つやり方を覚えないとダメだなと思いました。まあ、アブダビでチャンピオンになっただけに強かったですけど、パスもされなかったし、自分もそこそこのレベルだなとおもいました。タックルを切ってパンチで勝負という作戦だったんですけど、右(パンチ)が思った以上に伸びてきたんで、3Rから蹴りを出したんですけど。欲を言えば2Rからでもよかったですね。まあ、自分に足りないのは経験ですね。負けましたけど、これで自分の格闘技人生が終わるわけじゃないですし、細かい部分をなおして練習していけば射程圏内に届くぞって思えたのが収穫でした」と、大一番での充実した試合内容に満足げだった。

第3試合 1R10分・2,3R5分
○ロン・ウォーターマン(米国/コロラド・スターズ)
×ヴァレンタイン・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー)
1R 2'18" アームロック

 元アメリカンフットボール選手にして120キロの巨体。かつてはWWFでプロレスラーとしてリングに上がった事もあるという経歴から今をときめくボブ・サップとも比較されるウォーターマン。“H2Oマン”の愛称でUFCでも中堅どころに付けていたが、結局戦績も振るわず開花することはなかった。今回の参戦は、今年九月のPANCRASEでの謙吾戦での圧倒的な勝利を評価されてのことだろう。PANCRASEのシャツを纏っての入場ということで、この後の第四試合に登場する佐々木同様、パンクラスとの対抗戦2連戦と見る事も不可能ではない。


 さて、10キロ以上軽いオーフレイム兄が「4点膝あり」を認めたこの試合だったが、体重差はやはり圧倒的だった。序盤やすやすとテイクダウンに成功したウォーターマンが、9月のパンクラスで謙吾を仕留めたのと同じアームロックでオーフレイム兄の左腕を絞り上げタップアウト勝ち。鮮烈なPRIDEデビューを果たした。

 試合後、「練習してきたことが何もできなかった」と悄然とするオーフレイムとは対照的に「準備されたカード次第でまたPRIDEにも上がると思うが、日本でプロレスもやってみたい」と新天地を見い出した“H2Oマン”は終止御機嫌だった。



第2試合 1R10分・2,3R5分
○アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップ・チーム)
×ガイ・メッツァー(米国/ライオンズ・デン)
判定1-2

 1Rグラウンドに引き込んだホジェリオが、メッツァーの足を抱え膝十字を狙うが極まりが浅く失敗。その前後の攻防でメッツァーが何度もロープをつかんだためイエローカードをもらってしまう。
 試合は何度もホジェリオが引き込むが両者攻め手に欠き、スタンドでも互いに決定打のない展開が続く。だが、総合転向直後は未熟だったホジェリオの打撃テクニックの成長ぶりは光るものがあり、元キックボクサーのメッツァーに何度もカウンターを当てていた。


 ジャッジは和田がメッツァー、ヒュームと安達がホジェリオを評価し1-2でホジェリオの勝利。僅差ながらも白星をもぎとったことで両者の明暗は二分。メッツァーは「ジャッジがひどい。公平なジャッジのいるところで再戦したい」とPRIDE離脱とも取れる文句に終止したのに対し、ホジェリオは「今日は寝技が見せられなくて残念だ。対戦相手はより好みしないが、ミドルの選手と戦っていって、いずれチャンピオンになりたい」とPRIDE王座をノゲイラ兄弟で独占する野望を語るなど、今後のPRIDE定着を目論む発言を残していた。


第1試合 1R10分・2,3R5分
○松井大二郎(日本/高田道場)
×大久保一樹(日本/U-FILE CAMP.com)
判定3-0

 1Rの前半は松井が上、後半は大久保が上になる展開が続く。スタンドでは松井が右ローを効かせ、大久保は回転の早いパンチの連打を当てる。2Rまで決め手に欠いた両者だったが、3Rには松井がマウント、バックマウントを制する。大久保も最初のマウントはブリッジで跳ね返すことに成功したが、2度目のマウントはブリッジで逆にバックマウントを奪われてしまう。結局3Rの攻めが評価され松井が勝利。

「KOできなかった」と悔しがる松井に対し、大久保は「ローが効きましたねえ。田村さんに下になるなって言われたんですが、下になってしまいましたぁ」と“癒し系格闘家”と呼ばれる相変わらずの春風駘蕩ぶりで、対照的な表情を見せた。

Last Update : 12/23

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