5)『僕、意外と堅実なんですよ(笑)』 代々木第二までの入江式経営術

−−確かに今キングダムルールを維持しつづけているのは面白い方向性だと思うんですよ。あとは参加する選手の顔ぶれと、入江選手のリーダーとしてのイズムの問題ですよね。なにせ情報が少ないから、マッチメークからしかイズムが見えなくなっている。入江選手の声が外に届かないんで、勝手に『プロレスじゃないの?』と思われてしまう部分があると思うんで、そこをどう解消していくかですよね。

「でも見に来てもらえればわかると思うんですけども、あの血だらけのリングを見てこれがフェイクか?って。血糊も使ってないですしね。それを考えると、見に来ればわかりますよ。お客さんが満足して次回も来てくれる。旗揚げ戦のガラガラの北沢タウンホールが、今では満員になってるのは、繰り返し見に来てくれるファンが増えてるからですよ。それを考えると、今の方向性というのは残していきたいところであり、伸びる可能性が多分にありますよ。客観的に見て、この団体は背負ってきた悲しい歴史プラスアルファを持っていけば、いい位置行けますよ」

−−経営者として自信ありと?

「そうですね。チケットの売上も伸びでますから。他のプロレス団体の話を聞いてても、下北でもガラガラってことが平気にあるみたいですし」

−−じゃあ下北は毎回満員?

「チケット300ぐらいあって、毎回実際250ぐらい来てくれるんで。招待含めて300行きますね。それで多いか少ないかわからないですけど、4000円とかするチケットが250枚売れたら結構いい額ですからね〜。僕はほんとに、フッフッフッフッ...(ふいにほくそ笑む)」

−−次は後楽園というステップになりますよね。

「後楽園までは、一般のチケットショップの売行きをもうちょっと見ないと。僕はこう見えても堅実なんで、冒険しないんですよ。本当に黒字が出るとわかったところでしかやりたくないです。だからこの前の九州も結構大きい所でやりましたけど、ある程度手売りならこれぐらい売れるだろうと集計取ってから、これだったら赤字が出ないだろうなということで始めたことなんで。後楽園だったら、チケットショップで実質300売れないと駄目ですよ。当日300来てくれて、あと手売りが500。これで1100で、あそこは1600で満員ですからね、招待入れて1300ぐらい入れば満員に見えるんで」

−−テレビは付いてないですよね?

「はい。ほんとにちっちゃなスポンサーが3万、5万チケット買ってくれて、あとワールドジムがウェイトさせてくれたり、そういう細かいスポンサーですね。でもテレビ欲しいですね。」

−−だから伸びていくスピードによっては後楽園もありうる?それとも一気に代々木第二に行きたい?

「いや、通過点として格闘技の殿堂・後楽園を成功させた後、僕はほんとに、代々木も今でも赤字覚悟でやればできるんですよ。でもそれじゃ意味がないのですよね」

−−必ず黒字でやりたいと。

「そうです。一番初めの代々木第二のRe−Birthの時が4000人超満員で、あの時僕見に行って入れなかったんですよ。そういう流れがあって。4000人入れるには最短2年、遅くても3年で」

−−キングダムの名前に恩返しをして、名前を変えて。

「その間に僕もやりたいことがあるし。はっきり言って、僕は3年4年できっぱりやめますよ。もう今年で31になりますから」

−−船木選手と一緒ですね。

「いや、1個下なんです。桜庭さんと金原さんと一緒なんですね。それを考えると時間が無いし、今は下の人間がどんどん増えてきてて、本当にプロレスの色を持ってない選手だけになる可能性もありますよね。こうやってプロレス団体に挑戦するのは僕だけでいいと思うんですよ。あとは下の人間さえ育ってくれれば、下北だったら一生やっていけるんで(笑)」

−−自分が泥を被ってある程度誤解を受けても、キングダムの基礎は自分の代だけで作ってしまいたいと。

「そうですね。もう僕はツイてないまま終わるってのはわかってるんですけど、ただ1回だけ?チャンスが欲しいだけなんで、その1回を絶対に手に入れますよ。とりあえず9月2日の川崎市体育館が決まってて、あそこは4000人の所ですから、ちょっとね〜。いや〜もう(笑)。これはもう赤字覚悟の興行ですから」

−−さっきも言いましたけど、大きな興行になればなるほど、『こういう方向にキングダムを持っていきたい』という入江選手の意志が、マッチメークから透けて見える必要があると思うんですよ。プロレスラーと戦うというマッチメイクで、最初客は判断したわけだから、今度はもっと、最後の大勝負に賭けるというラインの戦いをやってもらわないと意志が見えないですよね。

「今その9月に戦う外人と今交渉してて。それも一応タイトルマッチの予定なんで、そこそこの人に勝ってベルトを持つことで発言権も出てくるかなと。それまでは辛抱ですよね」

−−今は辛抱の時期ですか。

「かなり辛抱ですよね。毎週ぴあのチケットがどれだけ売れてるかな?って(笑)」

−−外のリングには出ないんですか?

「外も出たいですよ。それは話が来ればですけど、10日前とか直前に来ても困る話なんで。最低1カ月半ですね。バーリ・トゥードに臨むにはある程度心の準備が必要じゃないですか。自分がフリーの格闘家だったら直前の話で出ることもありえますけど、団体背負って出る以上やるからには絶対勝ちたいし。僕はどんなに遅くてもうちの選手には5週間ぐらい前にオファーを出すんですけども」

−−でもUFCやPRIDEに出て名を売ることは非常に効果があると思うんですよ。キングダムのためにも。

「そうですね..。ただ興行が最近でも2、4、6月とあって、2カ月おきにあったからキツかったっすよ〜(笑)。仕事終わって練習して、夜中2時3時まで打ち合わせしたり電話やFAXしたり、チケット売ったり」

−−手売りもやってるんですか?

「手売りやりますよ〜。僕は50枚ぐらい売れるんじゃないですか」

−−飛び込み営業で?

「いや、知り合いだけです。ファンや後援会の人とか。実質はチケットショップと当日券で100枚ぐらいかな?。それで割と率は悪くないと思いますけどね」

−−あと昼間の仕事もやってるんですよね?

「ちょこちょこっと。堅い仕事なんで、絶対会社にバレないようにしないと」

−−週何日ぐらい?

「普通に五日ですよ」

−−じゃあサラリーマン格闘家でもあるわけだ。

「2月の興行で『僕、サラリーマンをやってるんですけど』ってリング上で言ったら超バカ受けしましたけどね(笑)」


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