6)『意地以外の何物でもないですねぇ』

−−確か7月にジムをオープンするんですよね。

「場所が決まったんで。あとマットを昨日中古のを安い値段で卸してもらうことが決まって、もう3個所場所を目星付けてるんで。うちみたいな団体は道場が無いと始まらないですよね。今は公共施設を借りてるんですけど、時間が2時間とか決まってるんで」

−−今若手は伸びてきてますか?

「この前コンバットレスリングでアベカズと決勝でやって準優勝した選手とか。基本的に僕がスカウトしてきたりするんで、いい感じで伸びてきてますよ」

−−布施選手や稲野選手は?

「僕から見て二人とも他の団体の格闘家に見劣りしない実力があると思いますよ。特に布施は打撃がいいし、稲野はポジショニングに至っては」

−−グレイシーですからね。

「今度の6月11日の北沢大会でも、コンバットレスリングの74キロ級で優勝した大杉勇選手とやるんですよ。それで稲野がどれくらいのレベルかわかってもらえるかなと。勝てば格闘技側も悪くは見ないんじゃないですか」

−−布施選手はどうですか?

「あいつはリングス出身ですから関節を取られないことに関しては凄いですよ。リングスは取られさえしなければ負けないですからね。」

−−6月11日はアマチュアの大会もありますよね。

「U系の他団体のジムがあるじゃないですか。そのジム生が多数うちに出てきてくれるということで。例えばバトラーツジム、パンクラスのP’S LAB。あと『田村部屋』と名前は変えてますけど、キングダムのアマチュアを他団体に出す時に『入江部屋』と名前を変えてるのを真似てて(笑)。U−FILEの名前で出るかもしれないですけど田村部屋から二人出てくると。あといくつかの団体も。そういった中で、うちをU系の団体のアマチュアの活躍の場として認めてくれてる人が増えてるのが凄くうれしくて。もちろん慧舟會とかシューティング系のジムからも出てくるんですけど、そういったU系のジムから出てくれるのが特にうれしいです」

−−そういった格闘技としての認知が徐々に育まれてきているのは間違いないと。

「見に来たファンがわかってくれてると思うんですよ。それはやっぱり終わった後のグッズの売り上げも、始めの頃は1万円ぐらいだったのが、今では10万ぐらい売れるようになってきたんですよ。『面白いから買ってるんだ』ってことも言ってくれてるんで、今後も固定客を増やしながら、口コミで広がっていくような、マスコミで露出が少なくてもそれで何とか広がっていくかなと」

−−新しい展開だと思うんですね。『インディー格闘技』っていう。プロレスのインディーってのはあったけど、格闘技のインディーってのはほとんど存在しなかったのに、それが出てきたというのは、競技が広がってきた証拠だと思うんですよ。だからその存在を長い目で見守って、ファンは本当に代々木までたどり着くかというのを応援していくべきだとおもいました。

「今の流れの中で、打撃の格闘家の活かせるルールであるのは凄く大きいと思うんですよ。あと思いきった極めとエスケープがあると。そういった他団体との違いを面白いと思ってくれる選手が集まってくれるといいと思ってます。」

−−ここ数年バーリ・トゥードが技術の最先端を行っていたんで、みんなバーリ・トゥードに走ってたけど、これからはルールをデザインして、『こういう試合が見せたい』『こういうので強さを示したい』という時代に入ると思うんで、キングダムの試みって、今となっては凄く自己主張の強いルールだと思えるんですよ。だから、うちとしても今後も追っかけていきたいと思うんで、よろしくお願いします。

 じゃあ最後になりますが、特にまだキングダムを見たことない人達に、入江選手としては今後どうキングダムをアピールしていきますか? 今北沢に来ているお客さんっていうのは、自分で情報収集できる人だと思うんですよ。今日僕は『ガチンコである』という話を聞いたから、それをBoutReviewの読者に伝えるわけですが、プラスアルファ、入江選手としては何を見せたいかをもう一つアピールしてほしいんですが。

「そうですね。自分たちの団体の生き様ってのを、何らかの形で表現したいんですよね。本当にポッと出の団体とは違うと。ちゃんと歴史があるってことを知って欲しいんですよ。その中でまだ今は底辺でみんなの知らない部分でもがいてますよと。そこからはい上がろうとしている今からの課程ですね。必ずはい上がれると信じてフロントも含めみんなやってますんで」

−−入江選手にとっても最後のチャンスだしね。

「もうこれが、次のジムができるじゃないですか。そこが僕にとってたぶん、あの、何て言うかガン患者から見たホルピスみたいなもの?」

−−ホスピスですか(笑)

「ああ間違えた!。ホスピスみたいな、格闘家としての死に場所ですよ。練習の。そこで練習しながら余生を(笑)」

−−最後の夢を賭けた場所だと。

「これで辞めた後もう1回できるわけないじゃないですか。寂しいけど、ここに入っちゃったら出られないと」

−−その生き様を見てくれと。布施選手にしても稲野選手にしても、ここにたどり着くまでに紆余曲折があって、キングダムという沈みかけた船にみんなで集まったのを見てもらいたいと。

「そうですねえ。必死でみんな戦ってますよ。...(感慨深げに)何なんでしょうねぇ。」

−−意地?

「意地以外の何物でもないですねぇ。でも本当にヤバくなった時は他の選手に降りてもらってもいいと思ってるんで。自分一人で沈んでもいいと思ってるんで」

−−そこまで最後の夢にかけたいと思うのは何なんですか?

「最後の夢ですか?。ちょっとそれは9月2日が終わってからで(笑)。勝ってベルトを巻けば出てくるかもしれないですよ」

−−最後の大勝負、ある相手と闘いたいというのが明確にあるのですか?

「...そうですねぇ。団体としての借りをその選手には是非返したいですね」

−−それがヒントですね。ありがとうございました。◆◆◆


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