<PART4 吹き続ける逆風>
アメリカNHB界にとって残念なニュースはさらに続きます。3月28日に予定されていたInternational
Fighting Championship(IFC)というローカルNHB大会が、開催予定地だったテネシー州の圧力により直前になって中止に追い込まれました。デッジ選手の死亡事故との関りは明らかではありませんが、IFCはこれまでも何回か開催実績がある大会だけに非常に残念なことです。主催者側は5月2日に新たな大会をカナダのケベック州で予定しています。ここは今は亡きエクストリーム・ファイティング大会(EFC)が逮捕者を出す騒ぎを起こしたNHB界因縁の土地でもありますが、今回の開催に当たっては周到な準備のもと、無事開催にこぎつけたいということです。ちなみにこの大会のメインイベントはダン・スバーン対ライオンズ・デンのピート・ウイリアムズになる予定です。
悪いニュースはまだまだ続きます。4月20日付のFull Contact FighterによればUFCのペイパービュー(PPV:有料放送)が縮小されるそうです。Viewer's
ChoiceというPPVネットワークが、UFCの扱いを格下げし、視聴可能世帯数が大幅に減ってしまうとのこと。私がもっと驚いたのはその理由で、今回の死亡事故とは関係なく、単に視聴率がUFCとして過去最低だったからだそうです。格闘技ファンの間で史上最高とまで言われたUFC
XVIがよりによって最低視聴率を記録するとは!テレビ業界で視聴率が稼げないということはNHBバッシング以前の問題ですから言葉もありません。
さらに問題のレベルは異なりますが、次回UFCにてマーク・コールマンとの対決が噂されるリングスの高阪選手が、なんと体調不良で今大会をキャンセルするのではないかというニュースが入ってきました(バウトレビュー参照)。The
New Full Contactでは「lightheadedness(頭がくらくらすること、意識がもうろうとすること)ではないか」、Full
Contact Fighterでは「dizzy spells(めまいにとらわれていること)のため、CAT(CT?)スキャンを行う予定」と出ています。デッジ選手の死亡事故の後だけに非常に気になるところです。コールマン戦は非常に楽しみですが、何よりまず異常の原因をしっかりと解明し、治療の上カムバックしてほしいものです。
5月15日に予定されている次回UFC XVIIではアメリカ初登場のウゴ・デュアルチ対タンク・アボットのワンマッチ、アラン・ゴエスやカーロス・ニュートンらが出場予定の中量級トーナメントの他、NHB否定派だったはずの強豪柔術家ヒーガン・マチャド対ブラジルのVTトーナメントを制したアマレスラー、マイク・ヴァン・アースデイルのワンマッチが噂されています。逆風の中、せめて充実した内容の大会を見せてもらいたいですね。
<最後に>
私事ですが、5月末を持って日本に帰ることとなりました。ということで今まで番外編を含めて計8回に渡ってアメリカからお送りしてきた「VTのススメ」もこれにてお終いです。5月15日のUFC
XVIIの観戦記は書く予定ですので御期待ください。
最後に一言付け加えさせてもらえれば、私にとってVTに与えられた衝撃というのは
1)素手(もしくはそれに近い状態)での顔面パンチを認めること
2)寝技の状態での打撃を認めること
3)ブレイクなし
これらによって既存の格闘技観、特にいわゆる異種格闘技戦というものの見方が全く変わってしまったことにあります。そして上記1)〜3)ゆえの新たな技術的発展が総合格闘技にもたらされたこと。もう少し突っ込んでいえば、総合格闘技のみならず「実戦」とか「最強」とか謳っている武道・格闘技団体ならばVTは無視できない競技形式であるということです。
ブラジルで行われてきたような「目突き・噛みつきのみ禁止」という形での本来のVTはすでに日本やアメリカでは開催不可能です。それが良い事なのか悪い事なのかは別として、我々格闘技ファンは「何でもあり」という禁断の実をもはや味わってしまいました。それは多くの選手にとっても同じ思いでしょう。その上で日本の総合格闘技が今後どう進化していくのか、それを自分の目で確かめていきたいと思っています。
長い間御愛読ありがとうございました。
参考サイト:
The New Full Contact http://www.newfullcontact.com/
Full Contact Fighter http://members.aol.com/FCFighter/fcf0101/rumnews.html
(NHB NEWSはライターのエディー・ゴールドマン氏ともどもこちらに吸収されたようです)
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