旧ソ連圏出身、極真空手家。ビターゼ・タリエルと同じ経歴を持つクレメンチェフであるが、リングスにおける存在感には相当の差がある。チャンピオン対ノーランカー。だが、これはあくまでリングス・ルールでの試合実績の差であり、空手家としての実力とはイコールではない。実際、タリエルは、クレメンチェフとの試合において「蹴り負け」ている(試合自体はタリエルが不慣れなグラウンド技で勝利)し、96年8月の有明大会で行われたウォルター・シュナーベルトとの極真ルールでのエギジビション・マッチにリングス代表として出場したのはクレメンチェフの方だった。
蹴りと正拳だけで勝負させたら、おそらく、クレメンチェフはタリエルよりも強い。
そして、田村は、タリエルの膝、拳、掌底のラッシュの前に、先の札幌大会で、もろくも沈んでいる。自分よりはるかに体格が上の空手家にどう立ち向かうか。
打倒タリエルに向けての、これは、テストマッチである。
道着を身につけ、田村を見おろすクレメンチェフ。踵落とし、ハイキックなど、タリエルには見られない華麗な蹴りの乱打で田村を追いつめ、破壊力のある膝蹴りを田村に見舞う。思わず吹っ飛び、1ダウンを取られた田村だが、そのままバック転をするようにすくっと立ち上がる。どうやらダメージを逃がすために敢えて抵抗しなかったようだ。
今度は田村がクレメンチェフのローに合わせてタックルし、上になる。クレメンチェフは大きな体をがっちりと亀にし、それを田村は攻めあぐねたような様子。流石にクレメンチェフもグラウンドのディフェンスが進歩している。だが、スタンド再開後、再度グラウンドに入ると足関節の複合技とロープ際の腕ねらいでエスケープを二つ奪取。自分のペースに持ち込んだ。
5分経過、クレメンチェフはミドルキックと膝蹴りで再度ダウンを奪うが、その後田村はタックルからクレメンチェフを持ち上げ倒し、背後からスリーパーでエスケープを奪う。また先程と同様の亀のような状態になるが、今度は田村もうまく腕十字に持ち込む。それを力任せに回転して切り返し立ち上がるクレメンチェフ。思わず場内からは拍手がわき起こる。
しかし、クレメンチェフの抵抗もここまで。最後はクレメンチェフが膝蹴りにきたところを田村がタックルで倒し、腕十字。クレメンチェフは先程と同じように逃れようとするが、逃れられず。ねばりにねばったが、レフェリーがもはやこれまでと判断し、ストップをかけた。
仮想タリエルとも言うべきクレメンチェフに快勝した田村。だが、クレメンチェフの下段が余りに重く、カットはしたものの、足に痺れが走っていたという。
タリエルは、蹴りの華麗さではクレメンチェフに劣るが、その分腰が重く、またタックルのカットにも長けている。避けがたいタリエルの打撃ラッシュ。そのダメージをどれだけそらし、反撃の機会を見いだすことができるか。
来年には巡ってくるだろうチャンピオン戦に向け田村の精進は続く。
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