98・10・23
WORLD MEGA-BATTLE TOUNAMENT'98

第1回FNRカップ Aブロック 1st ROUND

愛知県体育館
 
第1試合(20分1本勝負)
グラウンドでのボディパンチを認める特別ルール
 
成瀬昌由
173cm , 97.5kg
4分50秒
アームロック
×
 
滑川康仁
181cm , 88kg

 ビュー以来無敗街道を突き進んできた滑川だったが、遂に10月11日のグルジア大会でその記録をストップさせてしまった。対戦相手はゴキテゼ・バクーリ。分厚い体と乱暴なまでの投げの力をもったレスリング出身の選手である。

 残念ながらグルジア大会の映像は日本では放映されておらず、滑川がどんな闘いを見せたかはわからない。だが、いささかの想像はできる。今まで滑川が相手をしてきた選手は、デビュー戦の豊永を初めとして、自分とほぼ同じ体格かそれ以下だった。さらに言えば、リングの上に並んだ印象では、常に、滑川の方が体型的には「厚」かった。この「厚み」と、思いきりのよさから来る突進力が、新人滑川に新人離れした試合展開を可能にさせてきた大きな要因だった。しかし、グルジア大会でぶつかったバクーリは、体重で20kg以上も滑川を上回っていた。


 の「厚み」の差が無敗記録をストップさせた最大の要因だったのではないか。

 の黒星を喫した滑川の再スタートの相手は、当初、山本健一と発表されていた。だが、山本が頭部打撲(慢性硬膜下血腫発症)のため欠場。代わりに出場予定のなかった成瀬が急遽相手をすることになった。

 山健とは違い、成瀬の体は分厚い。坂田が「トーナメント21をどう考えているのか」といぶかしむ程、成瀬は、肉体強化にひたすら取り組んでいる。この日の計量では97.5kg。滑川を実に9.5kgも上回る。滑川の方が8cm程身長がある分だけ、リングに上がった両者の体の質感には、圧倒的な差が感じられた。  滑川はこの厚みの差に対応できるのか。

 見ることのできなかったバクーリ戦。その内容を想像するという点からも、興味深い試合となった。


 論から言えば、滑川は、成瀬の厚さの前に成すすべもなく敗退してしまった。ゴング早々から、いつものように掌底と膝蹴りで突進はしたものの、それをがっちりと受けとめられてしまったのだ。こうなるともう成瀬のペースである。落ちついてグラウンドに持ち込み、きっちりと上を制しながら、スリーパーを極め、まず1エスケープ。さらにリング中央に滑川を引きずっていってからアキレス腱固めからエスケープを奪った。その後滑川も足の取り合いからアキレスを決めてエスケープを奪ったものの、成瀬の余裕を奪うまでにはいたらず。上からのボディへのパンチも、自分がスタンドのままということで、ストップされてしまう(グラウンドでのボディへの打撃は、両者がグラウンド状態の時のみに認められる)。



 後は、成瀬がまたもや上になり、滑川のハーフガードをなんなく外して横四方からのアームロックを極め、完勝。横綱相撲といっていいだろう。

 合後成瀬は滑川について「今年マット界からデビューした新人の中で一番強い」「結構膝蹴りも効きましたもん」と語り、滑川への期待の大きさを示した。とはいえ、これはあくまで前田道場の先輩としての言葉。対等のライバルになるかもしれない相手に対する言葉では、残念ながら、ない。

 肉体改造をするのか。小兵なりの闘い方を考えるのか。

 スーパーヘビー級には事欠かないリングス・マットにおいて、滑川が、第一の壁にぶつかっていることは確かである。


 

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レポート:山名尚志  カメラ:井田英登