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Report

UFC 33 "Victory in Vegas"
2001年9月28日(金)
米国・ネバダ州ラスベガス マンダレイベイ・イベントセンター

エピローグ:「アメリカはもう、総合格闘技を無視できない」

 継された全ての試合がフルラウンド判定決着、インパクトの強いフィニッシュが見られなかったことは、「エンターテイメント」としては物足りなかった。だがこういういわば凡庸な結果は、逆に一般のスポーツファンに「総合格闘技は街の喧嘩と違う。アスリートたちが繰り広げる究極の格闘スポーツである」ということを印象づけるのに役立ったのではないだろうか? タックル、寝技、関節技などパンチ以外の技術にアメリカの観客が慣れるのにはまだまだ時間が掛かりそうだが、立派な「プロ・スポーツ」としてラスベガスという鬼門をクリアできた功績は大評価に値する。

 試合後の記者会見で、大会主催者・ズッファの副社長ダナ・ホワイトが「ラスベガスでUFCを開催し、マンダレイ・べイという大会場をソールド・アウトにしたことを誇りに思っている」と言っていたが、まさにその通りだ。ボクシング以外の格闘スポーツがラスベガスでこれだけの規模の興行を打てたというのは、米スポーツ界、特にボクシング業界にとっては大事件と言っても過言ではない。アメリカの長いプロ・スポーツの歴史の中で、初めてボクシングというスポーツに対抗できるプロの格闘スポーツが誕生したのだ。しかも、デジタル放送、DVD、インターネットなど新しい媒体を通して、すでにかなりの数のファンをこの国で獲得している。これはボクシング関係者にとっては脅威だ。黙って見過ごすわけにはいかない。アメリカのプロレスは子供向けのエンターテイメントだから、観客はスポーツ・ファンや格闘技ファンではない。しかし、総合格闘技の観客はボクシングの観客と同じスポーツ・ファンだ。世界で一番強いのはボクサーだと信じてきた人たちの頭の中に大きな「?」マーク投げかけるスポーツが現れたのだ。アメリカのメジャーなメディアは、この総合格闘技というスポーツをいつまで無視し続けられるのだろうか?

 こでキーとなってくるのが、どれだけ多くのファンを獲得できるかという点と、今までボクシングをサポートしてきた政治家やメディア、プロモーターたちの圧力がどのようにシフトするかの二点に絞られてくるように思われる。アメリカは民主主義の国、自由の国だ。スポーツに限らず、物でも人でも世間一般から圧倒的な支持を得られるようになれば確実にメジャーになる。UFC、いや総合格闘技がそうなるのには、クリアしなくてはいけない問題がまだまだ山積みだ。ルール、ランキング、ジャッジ、アメリカ人のハートを掴むスター選手の育成など課題はいくらでもあるが、やっとボクシングと同じ土俵にあがった今こそがチャンスだ。「ラスベガスで試合をするのが夢だった」というミネソタ出身・デイブ・メネーの言葉が全てを物語っている。選手たちのモチベーションも最高頂に達している今だからこそ、ズッファには次々と世間に対する「仕掛け」を行ってほしいと願っている総合格闘技のファンは多い筈だ。

 回のUFCもラスベガスで開催される。メインはUFC 31でホームダウンデシジョンと言ってもいいような判定で敗れてしまったぺドロ・ヒーゾとUFCヘビー級王者ランディー・クートゥアのリマッチだ。ウエルター級チャンピオンのカーロス・ニュートンも防衛戦を行うし、UFC 32でファビアノ・イハにKO勝ちした宇野薫の参戦も決定した。UFCファン、いや、総合格闘技ファンにとっては楽しみなカードが目白押しだが、厳しいことを言ってしまえば、クートゥアとヒーゾが再戦すると聞いてトキめくのはUFCファンであって、普通のスポーツ・ファンではない。そう、一般家庭で名の通った選手がオクタゴンに足を踏み入れない限り、メジャーなメディアを総合格闘技に振り向かせのは至難の技なのだ。だからこそ、ズッファには世間に対しても挑戦状を叩き付けてほしいのだ。実現が不可能でもいい。大ボラ吹きだと言われてもいいではないか。UFC ヘビー級王者をボクシング・ヘビー級王者に挑戦させるぞと宣言するもよし。駄目もとでマイク・タイソン、レノックス・ルイスやオスカー・デラホーヤあたりに巨額のファイト・マネーをオファーするのも手だ。もっともっと積極的に、ボクシングだけが格闘スポーツじゃないぞというメッセージをどんどん世間に投げかけてほしいのだ。ボクシング関係者たち慌てふためくような仕掛け。ズッファが選手たちの為にできる最高のプロモーションがこれだと思うのは私だけだろうか? ラスベガス進出だけで満足してほしくない。総合格闘技が米スポーツ界で一勢力としていわば「独立」した記念日、それが2001年9月29日なのだから。◆◆◆

UFC 33 "Victory in Vegas"
2001年9月28日(金)
米国・ネバダ州ラスベガス マンダレイベイ・イベントセンター

メインイベント ライトヘビー級チャンピオンシップ 5分5R
○ティト・オーティス
×ウラディミール・マティシェンコ
判定3-0
※ティトが王座防衛

第7試合 ライト級チャンピオンシップ 5分5R
○ジェンズ・パルヴァー
×デニス・ホールマン
判定3-0
※パルヴァーが王座防衛

第6試合 ライトヘビー級5分3R
○チャック・リデル
×ムリーロ・ブスタマンチ
判定3-0

第5試合 ウェルター級 5分3R
○マット・セラ
×イーブス・エドワース
判定2-1

第4試合 ミドル級チャンピオンシップ 5分5R
○デイブ・メネー
×ギル・キャスティロ
判定3-0
※メネーがミドル級王者に

第3試合 ウェルター級 予備戦 5分3R
○中尾受太郎
×トニー・デ・スーザ
2R 0'15" KO

第2試合 ミドル級 予備戦 5分3R
○ヒカルド・アルメイダ
×ユージン・ジャクソン
1R 4'06" 三角絞め

第1試合 ライト級 予備戦 5分3R
×ファビアノ・イハ
○ディン・ト−マス
判定3-0

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