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[K-1] 5.25 フランス (レポ&写真):バンナ×ハント、豪腕決戦の幕を閉じたのはあの技!

K-1 "K-1 World Grand Prix 2002 in Paris" 5月25日(土) フランス・パリ:ベルシー体育館

レポート:井原芳徳
photos: Jerome L.M.Winters (Martial Arts News - magazine)

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▼この大会は、ご当地フランス・スポーツ省の「暴力性が高い」との意向で、蹴り足をつかんでの攻撃・膝蹴りなどが反則となる特別ルールで試合が行なわれた。K-1プロデューサーの石井和義・正道会館館長は、これらの技が当然使えると思い練習してきた選手達に配慮し、大会前日までスポーツ省側と交渉したが、結局特別ルールを飲まざるをえなかった。だが石井館長は最近、K-1ルールから膝蹴りを将来的に廃止する可能性があることを示している。そして大会が終ってみると、膝を得意とするレミー・ボンヤスキー、アレクセイ・イグナショフもハイキックでKO勝ちをおさめ、膝のないルールへの適応ぶりを見せつけた。今大会は、皮肉にも膝なしルールの絶好のテストケースとなったのかもしれない。
 なお、この大会の模様は世界的な放送網を持つ「ユーロスポーツ」を通じて53カ国に配信される。リングに日本企業のカタカナの広告がいっぱい貼られていたのでそういう印象をあまり受けなかったものの、日本人選手が一人も出場せず、ニュージーランドのマーク・ハント以外はみなヨーロッパ人の選手だったことは、明らかにヨーロッパ市場を意識したものだろう。試合も6試合中5試合がKO決着というわかりやすい内容で、K-1を初めて見た視聴者にもK-1の魅力が存分に伝わったのではないだろうか。

第6試合 K-1特別ルール 3分5R
○ジェロム・レ・バンナ(フランス/ボ−アボエル&トサジム)
×マーク・ハント(ニュージーランド/リバプール・キックボクシングジム)
2R終了後 TKO(タオル投入)

 昨年12月のワールドGP決勝トーナメント一回戦でハントにまさかのノックアウト負けを喫し、大みそかには総合格闘技ルールで猪木軍の安田忠夫にも敗れ、失意の底にあったバンナ。だが、今年始めにフランスのムエタイの強豪・ステファン・ニキエマ(関連リンク:2年前の日本での試合の記事)をトレーナーに迎え、キックの練習に重点を置いた。そして3月の名古屋大会では、天田ヒロミ相手にキック主体のファイトを見せ、成長の片鱗を見せつけた。

 そして迎えたハント戦でも、伸びのある右ハイ、着実なローで、蹴りの技術の向上を見せつける。試合運びも冷静だ。しかし残り30秒、ハントの右アッパーをもらうと、パンチの打ち合いに応じるようになる。
 そして2R開始すぐ、カウンターの右フックでハントからダウンを奪う。さらに左ハイ、左フックを中心とした波状攻撃を仕掛ける。だがハントは倒れず、驚異的なタフさを見せつける。しかしハントは去年12月のバンナ戦の時のように挑発する余裕はなく、何度もダウンしそうな状態になる。
 さすがのハントも万事休すかと思われた。だがバンナの左ミドルをブロックすると、下がってがら空きになったバンナの顔面に右フックと左フックを連打。バンナが前のめりでマットに崩れ落ちる。
 これで勝負がわからなくなってきた。ハントが一気呵成にパンチで攻めると、耐えたバンナもパンチで反撃。一進一退の攻防を観客は総立ちになって見守る。互いに前のめりでフラフラになりながらも派手な殴り合いを続ける。技術うんぬんではなく、超人的な打たれ強さの競争の世界に突入した。

 しかし最後にものを言ったのは、ハントが今年から始めたキック修行の成果だった。2R残りわずか9秒、後ろに下がったハントの首筋にバンナの左ハイキックが見事に命中。ハントはロープに倒れ込み、その反動でマットに崩れ落ちる。ハントはなんとか立ち上がるが、テンカウントをコールされている最中にラウンド終了のゴングを聞いた。
 そして3R開始直前、ハントが右目の奥の骨を骨折している疑いがあったため、ハントのセコンドがタオルを投入。ハントが驚異的なタフネスを誇るとはいえ、セコンドのこの判断は適切だった。リベンジに成功したバンナは、コーナーポストに登って大喜び。今回のバンナの反省点はパンチの打ち合いに応じてしまったことだとは思うが、フィニッシュのハイキックはニキエマとの練習の賜物。去年と違うバンナが、今年後半のグランプリ戦線で猛威をふるいそうだ。

第5試合 K-1特別ルール 3分5R
○アーネスト・ホースト(オランダ/ボスジム)
×ステファン・レコ(ドイツ/マスターズジム)
1R 1'48" KO(パンチ)

 昨年12月のワールドGP一回戦の再戦。前回は判定でホーストが勝ったが、ホーストが左足の甲を負傷したため準決勝の出場を断念し、レコが準決勝に進出したという経緯がある。ホーストは4月の広島大会で復活したが、左足の状態が完全でなく、中迫とはパンチだけで戦った。それからわずか1ヶ月。左足の状態が心配される中での試合となった。
 ホーストはレコにじわじわプレッシャーをかける。そして右ローを叩き込み、パンチでロープ際に追い詰め、左右のフックでいきなりダウンを奪う。さらにボディを叩き込んでからのパンチの連打で2度目のダウンに成功すると、レコは立ち上がれず、角田レフェリーが試合をストップした。

 短い試合時間。パンチ主体のファイトスタイル。まるで4月の中迫戦の再現VTRを見るようだった。歓声を上げるパリっ子にホーストは得意のダンスを披露し、息子をリングに上げ喜びをあらわにした。レコに完勝したことで、昨年12月の悪夢の払拭は済んだかもしれない。だが今回の試合でも左足のキックは見られなかったので、コンディション面でも完全復活したか見極めが難しい。今年後半のGP制覇に向けてのサバイバルレースの中で、ミスター・パーフェクトの復調の度合いがあらわになることだろう。

第4試合 K-1特別ルール 3分5R
○アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
×ビヨン・ブレギー(スイス/ボスジム)
5R 2'12" KO(右ハイ)

 2メートル級の大型選手同士の対戦。特別ルールのため第3試合のボンヤスキー同じくイグナショフも得意の膝蹴りを出せず、序盤は様子見の展開。ブレギーも警戒気味で、単発の攻めが続く。
 3Rになるとようやくブレギーが積極的に攻めるようになり、イグナショフも終盤に右ミドルを連続ヒットさせる。
 だが4Rはまたもお見合い状態に戻ってしまい、客席からブーイングが巻き起こる。中盤にはイグナショフが特別ルールで反則となる蹴り足をつかんでのパンチを放ってしまい、島田レフェリーからイエローカードをもらう。
 最終ラウンドも静かな展開が続き、このまま試合が終了してしまいそうな気配に。息苦しそうなイグナショフ。だが残り1分を切ったところで、左右のフックをブレギーに叩き込み、ブレギーが低いガードのまま右フックを放ったところに、渾身の右ハイキックをブレギーのアゴにクリーンヒット。ブレギーはマットに大の字で倒れ、レフェリーは試合を止めた。
 スタミナ面で不安を残したが、イグナショフは膝蹴りが無くても十分戦える選手であることをアピールした。もちろんGP決勝戦レベルの選手相手にどこまで通用するかはわからない。だが、イグナショフがこの勝利で自信をつけたなら、今後強豪選手にとっても脅威となるだろう。

第3試合 K-1特別ルール 3分5R
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム)
×ピーター・マイストロビッチ(スイス/正道会館)
4R 0'27" KO(右ハイ)

 特別ルールで得意技の膝蹴りを封印させられたボンヤスキーだが、パンチからローのコンビネーション、伸びのあるハイキックで序盤から攻勢。シャープで重い打撃で、マイストロビッチを苦しめる。2R、マイストロビッチが左のボディとローを的確に当てるが、ボンヤスキーの攻め手をなかなか止めることができない。
 しかし3R序盤、ボディの連打から左ミドルを放ち、さらに距離を取っての華麗な胴回し回転蹴りをボンヤスキーの右側頭部に叩き込み、先制のダウンを奪う。これでボンヤスキーは防戦気味になるが、徐々に回復すると、離れ際にマイストロビッチの頭を抱え、豪快な右ハイを頭部に当てる。さらにすかさず同じパターンで右ハイをヒットさせ、逆転のダウンを奪い返す。
 マイストロビッチはかろうじて3Rをしのぎきったが、消耗の色を隠せず、4R序盤、3Rと同じボンヤスキーの連続の右ハイでマットに沈んだ。

第2試合 K-1特別ルール 3分5R
○トニー・グレゴリー(フランス)
×アゼム・マクスタイ(スイス)
判定2-0

 1月25日のGPフランス予選決勝戦の再戦。前回はグレゴリーが判定で勝利した。
 身長で13センチ、体重で23キロ上回る黒人のグレゴリーに対し、1Rはマクスタイが潜り込んでのフックとローを的確に当てる。「小よく大を制す」のお手本のような戦法は、マクスタイの母国スイスの英雄・故アンディ・フグを思い起こさせる。
 だが2Rからグレゴリーは距離を取り、パンチ、前蹴り、ローでマクスタイを痛めつける。潜り込めなくなったマクスタイは思い通りの攻撃ができない。
 しかしマクスタイはアンディ譲りの「ネバー・ギブ・アップ」の精神を発揮。4R、左右のブーメランフックをグレゴリーの顔面にたびたび命中させる。これにはパリっ子も大喜び。グレゴリーをコーナーまで追い詰めるが、ここでマクスタイがマウスピースを落としたため、レフェリーがブレイクし、せっかくのチャンスを阻まれてしまう。
 5R、疲労がピークに達している両者だが、一進一退の攻防を繰り広げる。終了間際、ロープの反動をつかって右フックを打とうとしたマクスタイの顔面に、グレゴリーの右ショートフックがクリーンヒット。マクスタイはスリップ気味に倒れたが、立ち上がろうとした時に足下がふらつきロープに倒れこんだため、ダウンを取られる。ダウンカウント中に試合終了のゴングが鳴った。
 判定でグレゴリーが勝利したが、パリっ子は判官びいきなのか? 地元のグレゴリーにブーイングを浴びせた。

第1試合 K-1特別ルール 3分5R
○シリル・アビディ(フランス/“チーム・ロメアス”ボクシング・プラネット)
×ニック・マレー(イギリス/ビーストマスターズ)
1R 2'05" TKO(3ノックダウン)

 マレーはイギリス・マンチェスター出身の26歳の黒人選手。3月24日のGPイギリス予選覇者で、キック戦績は9戦9勝を誇る。ゴング早々からローとパンチで積極的に攻めると、ケンカ屋アビディも大振りのフックと低いローで応戦。アビディがハイを当てれば、マレーも右フックを当てる豪快な打ち合いとなる。だがマレーのディフェンスは甘く、勢いで上回るアビディが右ストレート2回、左ストレート1回の合計3度のダウンを奪い快勝。母国フランスのファンはアビディに大声援を送った。


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Last Update : 06/09

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