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[スマックガール] 4.7有明 (レポ&写真):バトルロイヤル&変型タッグを分析

格闘エンタテインメントSMACK GIRL "ROYAL SMACK 2002"
2002年4月7日(日)東京・ディファ有明
入場者数:580人(満員)

レポート&写真:井原芳徳

第1試合 Royal Smack 時間差バトルロイヤル
[登場順]
ナナチャンチン(チーム南部)
Lay-Ho(ボディプラント)
照井和瑛(フリー)
川又尚美(フリー)
金子真理(禅道会)
酒井真紀(フリー)
滝本美咲(禅道会)
[敗退順]
照井、ナナチャンチン、川又、Lay-Ho、酒井、滝本
勝者:金子真理 11'48" 腕ひしぎ十字固め

<ルール概要>一定時間おきに一人ずつ選手がリングに上がり、最大8選手がリング上で闘う。打撃攻撃は一切禁止とし、投げ技・締め技・関節技の攻防により試合を成立させる。グラウンド状態にある選手の上に別の選手を投げ入れる行為は禁止。

 このルールの原形は、篠プロデューサーが好きなアメリカの人気プロレス団体「WWF」の名物「ロイヤルランブル」だ。大会の関係者の所属していたあるジムでは、宴会の余興としてロイヤルスマックに似たルールを試したことがあったという。だが、プロの興行でまさかこれを実現させてしまうとは。実験精神の旺盛なスマックならではである。
 技をかけている選手の背後から技をかけようとする選手がいるのは当たり前。3選手の格闘を残り1選手が傍観していたり、1人の選手を2人がかりで攻めたり、2つの場所でシュートサインが同時発生したりと、常に何らかのアクションが発生する。レフェリーは3人体勢だがそれでも足りないぐらいだ。

 結局先に登場した4選手が先に退場し、後半に登場した3選手が生き残った。3選手のうち金子と滝本が禅道会なので、フリーの酒井が餌食となってしまった。残った金子と滝本の争いも、体格と技術に勝る金子の独壇場だった。この試合で金子は一人でLay-Ho・酒井・滝本の3人を片づけた。見事勝利した金子は「こういう結果になるんじゃないかと予想していたんで。何事も経験です。次はワンマッチで戦いたい」と話した。次の試合は5月大会でのキックボクサーのウィンディ智美戦となる。

 目まぐるしく入れ替わる攻防を筆者は素直に楽しむことができた。しかし純粋な「格闘競技」として成立していたかというとまだ問題点が多い。2人がかりで1人を攻めるのはやはり危険だろうし、レフェリーが3人いても細かい反則のチェックは難しい。だが、もし安全面が整備され、なおかつ競技性も高まったとしても、格闘競技でなくただの「競技」になってしまう恐れもある。鬼ごっこでもカバディでもない、一つの格闘競技として成り立つためには、まだまだ試行錯誤が必要だろう。スマックにはまた機会があればこのルールを試してもらいたい。

第2試合 SGS公式ルール ライト級 5分3R
×渡邊久江(LIMIT)
○大門まい子(闇愚羅)
1R 2'12" 反則(グランド顔面パンチで警告2度)

 辻結花と同じ闇愚羅所属の大門は、レスリングの名門・中京女子大学出身で、インカレ4位の実績を誇る。闇愚羅では「オッサン」の愛称で親しまれていることから、主催者は大門に「浪速のオッサン」という強烈なキャッチフレーズを付けた。
 試合開始前には契約体重オーバーのため減点1をもらってしまう。これも「オッサン」らしいといえようか。そして試合が始まっても、得意のタックルでテイクダウンを奪うものの、下になった渡邊から顔面パンチをもらってしまう。これは反則のため渡邊に警告が発せられる。大門は左目の下を腫らしてドクターチェックを受ける。再開後また大門はテイクダウンに成功するが、再び渡邊は下から顔面パンチを放ってしまい、警告2度のため渡邊の反則負けに。
 いちおう勝者にも関わらず、目の下の腫れが痛々しい大門。リング上での勝利インタビューでも「自分の技ができなかった。もう少し試合をしたかった」と無念の様子だった。だが最後は「これからもオッサンでよろしくお願いします」ときっちりアピール。キャラクターと格闘センスを兼ね備えた選手として、今後の女子総合シーンで注目を浴びることだろう。

第3試合 SGS公式ルール 無差別級 5分3R
×張替美佳(GF2)
○杉本由美子(禅道会)
2R 3'47" V1アームロック

 本業は看護婦という杉本が初参戦。1Rは互いにテイクダウンを奪うものの、その先は攻めあぐねるという展開が繰り返される。2R中盤、張替が腕十字を極めかけるが、杉本はディフェンス。そして終盤、今度は杉本がマウントからアームロックを極め、見事逆転勝ちをおさめた。杉本は「勝ててたので泣きたいほどうれしい。私はグラウンドが苦手で、相手がグラウンドが得意と聞いていたので、一生懸命練習してきた。練習も含めてアームロックは初めて極まった技だった」とコメント。これからの成長が楽しみな選手だ。

第4試合 SGS公式ルールタッグマッチ 5分3R
○ドレイク森松(フリー)
×坂口一美・金井広美・市村幸恵(GF2)
3R 2'01" チキンウイングアームロック

<ルール概要>試合は変型のタッグマッチ形式で行われ、坂口、金井、市村はタッチする事によって交代する事ができる。タッチが行われた際は両選手スタートポジションに戻り試合を再開する。

 ロイヤルスマック同様、こちらも実験要素の高かった一戦。一人で戦う立場のドレイクだが、まずはGF2チームの切り込み隊長・市村をアームロックで苦しめ、続いて小柄な坂口をパンチで半泣きにさせ、最後は3人で一番重い金井も払い越しで吹き飛ばすという余裕の戦いぶりを見せる。2Rには市村をジャーマンスープレックスで投げ飛ばす。だが次第に攻め疲れを見せ、大味な展開に。GF2陣営も消耗が激しく、2R終了時にはレフェリーに戦闘意欲があるかどうか尋ねられる。3Rには金井がパンチでドレイクの鼻血を誘うことに成功するが、最後はドレイクが金井をアームロックに極めて試合を終らせた。

 ドレイクは試合が終るとGF2の3人の健闘を讃える。リング上でドレイクは「自分が圧倒的に勝つと思っていたましたが、だらだらした試合になってしまい申し訳ありません。総合格闘技は私はまだひよっ子です」とコメントした。
 ドレイクが3人に一度ずつ当たってみせたのは、おそらくプロ選手ならではのサービス精神があったからだろうと思う。だがこのせいでドレイクは疲れてチャンスを逃し、後半戦の内容が大味になってしまった。スマックのタッグマッチルールも、コンテンダーズのダブルスルールのように三本勝負を採用すべきではないだろうか? そうすれば、ドレイクも最初からアグレッシブに一本を取りにいくことができ、なおかつ複数の選手と対戦できたと思う。

第5試合 SGS公式ルール 47kg契約 5分3R
○しなしさとこ(Girl Fight AACC)
×小池亜伊子(禅道会)
1R 1'01" レフェリーストップ (腕ひしぎ十字固め)

 しなしのセコンドには同じサンビストの若林次郎だけでなく、打撃の出稽古先のシーザージムに所属する土井広之と、そこでトレーニングする後藤龍治も付く。しなしは開始早々「3月31日のシュートボクシングの試合での土井選手の真似」だという浴びせ蹴りを放つが、距離があり「足が短かった」ため単なる一回転受け身となってしまう(いずれのカッコ部分も本人談)。普段は少し天然キャラのしなしらしい攻めではあるが、格闘センス自体は一級品であることに変わりない。しなしは小池の打撃を冷静に対処し、組みついてテイクダウンし、足関節を狙う。小池はなんとか逃げることに成功するが、しなしはすぐに次の展開を組み立て、素早くサイドに回り込んで腕十字で一本。勝ったしなしはコーナーに登って大喜びしていた。

第6試合 SGS公式ルール 58kg契約 5分3R
○辻 結花(闇愚羅)
×岡 裕美(フリー)
1R 3'43" スリーパーホールド

 3.2ディファ有明大会のメインイベントでは、開始早々の相手陣営のタオル投入のため、事実上全く試合をできず涙を飲んだ辻。しかし今回は、あの星野育蒔をも破ったハイレベルな格闘センスをようやく披露することができた。

 辻は低いタックルからテイクダウンを奪い、サイドから腕を狙う。30秒が経過しスタンドに戻ると、辻は素早いタックルでまたもテイクダウン。だが岡は下からがっちりガードポジションを固め辻の動きを封じる。その後同様の展開が3度繰り返される。そしてラウンド終盤、同じように辻がタックルでテイクダウンに成功すると、素早くバックに回ってスリーパー。岡がタップし辻が見事勝利をおさめた。

「前の試合の後しばらくイライラしていた」と言う辻だったが、勝利の後は「おつりがくるくらい気持ちよかった」といい、満面の笑顔を振りまいていた。次の試合は5月4日のAX後楽園大会。「レスリング時代に一緒に合宿をしたことがある」というキックボクサー、ジェット・イズミが相手だ。イズミは辻と同じく昨年12月のAXで総合プロデビューし、禅道会の金子真理を膝蹴りでノックアウトしている。辻は既にイズミ戦に照準を定めている様子で、「明日から練習をはじめます。プロなのでお客さんが喜んでくれるような試合をしたい」と、勝利直後とは違い引き締まった表情で語った。

Last Update : 04/21

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