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(レポ&写真) [S-Cup] 11.3 両国:緒形、サワー・宍戸ら破り悲願の優勝

シュートボクシング協会
"SHOOT BOXING WORLD TOURNAMENT S-Cup 2006"

2006年11月3日(金/祝) 東京・両国国技館  観衆:6512人

 レポート&写真:井原芳徳
 【→カード紹介記事】 掲示板スレッド【→キック】【→K-1 MAX】

※大会の模様はCS放送「J SPORTS」にてOAされます。

 
■ S-Cup

第1試合 一回戦(1) 3分3R(延長1R)
○宍戸大樹(日本/シーザージム/SB日本ウェルター級王座)
×ジョーダン・タイ(ニュージーランド/レイ・セフォー・ファイトアカデミー)
4R 判定3-0 (和田10-9/北尻10-9/平10-9)

3R 判定1-0 (和田30-29/北尻30-30/平30-30)

 2Rまでタイがややヒット数で上だが決定打は無し。左ボディ、右ハイ、右アッパーを放つが、宍戸もひるまず回転系の技を駆使しつつ応戦する。3Rには左ボディを効かせたのをきっかけに、得意の高速コンビネーションを2度決める。だが終了ゴング直後のタイの左ハイでダウン。もちろん減点対象とはならないものの、印象を悪くしたか、延長戦に突入する。
 とはいえ宍戸のラッシュはとどまるところを知らず。左膝、右ハイをたびたびヒットさせ、左ストレートをきっかけにコンビネーションを決める場面もあり、文句無しで準決勝進出を果たした。

第2試合 一回戦(2) 3分3R(延長1R)
○緒形健一(日本/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級王者)
×ダマッシオ・ペイジ(アメリカ/ジャクソンズ・サブミッション・ファイティング)
2R 1'14" TKO (2ダウン:左ボディブロー)


 典型的なブンブン振り回し系のペイジに、緒形は左ボディをクリーンヒットさせダウンを先取。圧勝ムードが漂ったが、直後のペイジの右フックでダウンを喫してしまう。
 またもトーナメントの魔物が降りてきたかとも思われたが、その後はパンチ、膝、左ミドルの猛ラッシュで優勢をキープ。ペイジもハートと肉体の強さを発揮したものの、最後は緒形が左ボディで2連続ダウンを奪い、悲願の一回戦突破を果たした。

第3試合 一回戦(3) 3分3R(延長1R)
○ダニエル・ドーソン(オーストラリア/シュートボクシング・オーストラリア/PABAスーパーウェルター級王者)
×ヴァージル・カラコダ(南アフリカ/スティーブズジム)
判定3-0 (大村30-29/北尻30-28/和田30-27)


 ボクシングでの実績差をアピールしていたドーソンが、パンチの連打を度々当て先手。膝蹴りや右ローも駆使し、試合前の予告通り、2R終盤には右ミドルと左ハイの二段蹴りでダウン気味にカラコダを吹き飛ばしてみせる。
 カラコダは大会前日に来日した影響もあってか精彩を欠く。3Rになるとようやくパンチの連打を当てだしたもののやや遅し。ドーソンはクリンチを多用し難を逃れ、一回戦を突破した。

第4試合 一回戦(4) 3分3R(延長1R)
○アンディ・サワー(オランダ/シーザージム・オランダ / チーム・サワー/S-Cup '02 '04 王者)
×マルフィオ・カノレッティ(ブラジル/シッチ・マスター・ロニー)
判定3-0 (茂木28-27/和田28-26/北尻28-27)

※1R右フックでサワーに1ダウン。2R右フックでカノレッティに1ダウン

 開始しばらく様子見といった雰囲気だったサワーは、左フックのカウンターで右フックを浴びまさかのダウンを喫してしまう。だがその後はエンジンに火がつき、左ボディを中心に反攻。2R序盤には右フックの2連打でダウンを奪い返し、ポイントを五分に戻す。
 以降は主導権をキープ。右ハイをヒットさせ、ブアカーオばりの前蹴りでカノレッティを吹き飛ばす場面もたびたび見られた。

第7試合 準決勝(1) 3分3R(延長1R)
○緒形健一(日本/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級王者)
×宍戸大樹(日本/シーザージム/SB日本ウェルター級王座)
判定3-0 (大村30-28/茂木30-28/和田30-28)


 禁断の同門対決。試合前もゴングが鳴ってからも、場内は異様な緊張感に包まれる。1Rは宍戸が回し蹴りや右ストレート等で手数多く攻める立ち上がり。先輩・緒形は受けて立つといった雰囲気。
 だが緒形の左フックが当たる度、宍戸の表情が歪む。2Rに入ると少しずつヒット数が増え、終盤には連打で猛ラッシュ。場内は悲鳴と歓声に包まれる。「殴りたくなかった。早く倒れてくれと思いながら殴っていた」という緒形。ラウンド終了のゴングが鳴ると、フラフラの宍戸の肩をポンと叩く。
 3Rも序盤は静かだったが、緒形の右ローで宍戸の表情が歪む。打ち合いになだれこむとやはり優勢は緒形。宍戸は回転系の技で打開を計るが、緒形は全て見切っている。二人とも最後まで妥協なしの殴り合いを繰り広げ試合終了。場内は暖かい拍手に包まれた。
 判定は文句無しで緒形。涙を流す宍戸をなぐさめる緒形の眼も潤んでいる。リングを降りた宍戸は師匠のシーザー武志SB協会会長の元へ。会長もうれし涙を流していた。

第8試合 準決勝(2) 3分3R(延長1R)
○アンディ・サワー(オランダ/シーザージム・オランダ / チーム・サワー/S-Cup '02 '04 王者)
×ダニエル・ドーソン(オーストラリア/シュートボクシング・オーストラリア/PABAスーパーウェルター級王者)
判定3-0 (大村30-29/和田30-29/北尻30-29)


 1Rはまだ様子見の雰囲気だったが、2Rになると両者とも一歩も引かない強烈でハイスピードの殴り合い。サワーの左ボディをもらってもドーソンは全く表情を変えない。
 とはいえ一回戦からの疲れも相まってか、さすがに3Rは失速。逆にサワーは右ハイを立て続けに当て、パンチと膝で怒濤のラッシュ。一回戦で右拳の負傷が再発したため倒しきれなかったものの、下馬評通り決勝進出を果たした。

第10試合 決勝 3分3R(延長最大2R)
×アンディ・サワー(オランダ/シーザージム・オランダ / チーム・サワー/S-Cup '02 '04 王者)
○緒形健一(日本/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級王者)
判定0-3 (平28-30/北尻28-29/茂木28-29)

※1R右フックでサワーに1ダウン
※緒形が初優勝

 決勝は4年前のカードの再戦。緒形にとっては念願のリベンジのチャンスにもなる。サワーは一回戦、準決勝とは違い、序盤からペースを上げて左フック、左ボディを叩き込む。緒形の連打をもらってもすぐさま攻撃を返し、優勝は揺るぎ無いかとも思われた。ところが打ち合いの場面で緒形が右フックで値千金のダウンを奪取。試合は一気に動く。
 2Rも激しい打ち合い。サワーの左の連打で緒形はぐらつくが、すぐさま右ハイをお返し。サワーが効いていないとばかりにアピールすれば、緒形も笑顔を浮かべる。
 2Rはサワーがポイントを取っていたとしても不思議ではなかった。しかし右拳の負傷とこれまでの疲れが相まってか、持ち味であるラッシュのパワーは6〜7割ぐらいしか出ていないような印象だ。
 とはいえ、優勝へ燃える緒形のファイトは、今日3試合目とは思えない激しさで、サワーが万全だったとしても、4年前のような圧勝の確率は低かったのではないだろうか。緒形は一歩も引かない打ち合いを最後まで繰り広げ完走。判定が読み上げられた瞬間、これまでの苦しみを全て吹き飛ばすかのようなガッツポーズを見せた。

◆緒形「15年の選手生活の間、医者から3度引退を勧められたけど、あきらめずにやってきて良かったです。(病気・負傷の箇所は?)眼の負傷が2回と気胸です(今日の大会前の心境は?)『殺せるものなら殺してみろ』って気持ちでした。(一回戦のダウンのダメージは?)こめかみと耳にもらって、耳が聞こえなくなり、平衡感覚が無くなってました。
(準決勝の宍戸戦について)いろんなパターンは事前に想定してたんですけど、やり辛かったです。(2Rの終盤、どういう気持ちで殴り続けた?)倒れるなら早く倒れてくれと思ってました。殴りたく無かったですね。(入場前、宍戸の方が睨んでいたが?)ホントに宍戸がいるなぁ、って(笑)。しかもアイツ、睨んでるんですよ! 完全に戦闘モードで。でも逆に僕はそれで冷静になれて、優勝を目指すことができましたね。
(決勝について)サワーは疲れてましたね。トーナメント的に運が良かったことにも助けられました。2〜3Rはサワーもモードに入って、僕も意識が止まりかけたけど、あそこは気持ちで乗り切りましたね。(サワーからダウンを奪った右フックについて)練習で出せてた力の入りすぎないパンチが、ようやく試合で出せました。
(最後のS-CUPではないかと言われる中、優勝という目標を果たしたが?)まだやれると思いましたね。一回戦は自分の悪い所が出て、2(準決勝)、3(決勝)と、普段の自分が出せました。ちょっと(この道を)極めてみようかな、強さを求めてみようかな、って思いました。
 前のS-CUPの一回戦で負けてから、寝ても覚めてもS-CUPのことばかり考えていました。僕を支えてくれていた方が、前のS-CUPの時、末期ガンの状態なのに見に来てくれて、その2〜3週間後に亡くなられました。ちょうどこの前の日曜が三回忌でした。亡くなられてからは、毎日神棚に祈ってました。
(今は何をしたい?)寝たいです(笑)。2日ぐらい、何も考えたく無いです。大会まで、この大会の裏方としてスーツ着て、いろんなところに営業に行って頭を下げてましたから」

◆サワー「決勝に辿り着けたのは良かったのですが、緒形選手に比べ、決勝までの道のりが険しかったです。これまでのS-CUPの方が、早く終わる試合があり楽でした。以前負傷した右拳を、一回戦で再び痛めてしまいました」

◆シーザー会長「今日の緒形は冷静だったね。あいつは左のパンチが凄く重くて、入門の頃から教えてて、今迄の試合でなかなか出せなかったんだけど、今日は出せてた。アンディは一回戦で右拳を痛めたんじゃないかな。あんまり右を出せてなかった。(緒形と宍戸の同門対決について)本当はやらせたくないね。冷たい気持ちでやらせたけど、見れなかったね。でも目一杯やったんじゃないですか。
(今後の緒形について)これまでのもう一歩踏み出せない緒形が全部取れて、自信がついたんだと思う。これから先、そんなに長くはできないと思うけど、これまでの積もった思いもあるから、これから凄いファイターになるかもしれない。
 これからはあいつを表に出して行きたいね。K-1さんで前にやった時は怪我してたけど、万全な時にまた出したい。一生は一回なんだから、悔いの残らないよう、ヘルプしてあげたい。
 今日は諦めない気持ちの大事さを感じたね。自分も色々あるけど、命がけでシュートボクシングをやって、いい若者を一人でも多く残したい。格闘技タレントじゃなくって、本当の格闘技を命がけで頑張る人が出ないとダメ。地味だけど、そういう人を作って行きたい。若い人たちも、諦めなければいいことがあると思う。損はしませんよ。得る物は一杯あると思いますね」

 


 

第5試合 リザーブファイト(1) 3分3R(延長1R)
○ライアン・シムソン(スリナム/バゾーストジム/S-Cup '97 王者)
×菊池浩一(日本/寝屋川ジム/SB日本ウェルター級1位)
判定3-0 (平30-28/茂木30-30/北尻30-29)


 互いに蹴りを一定のリズムで打ち合う比較的静かな展開に。2Rには菊地が左まぶたをカットしドクターチェックを受けるが、その後は出血がおさまる。3Rには菊地の右ローに、やや効いたそぶりを見せたシムソンだが、終始ペースは落ちず。決定打は無いものの手数で勝り、第一リザーブ権を得た。

第6試合 リザーブファイト(2) 3分3R(延長1R)
○土井広之(日本/シーザージム/前SB世界ウェルター級王者)
×キム・ジュン(韓国/泰雄會館/韓国ムエタイ協会ウェルター級王者)
判定3-0 (平30-28/茂木30-28/大村30-28)

※3R左フックでキムに1ダウン

 土井が左ローを着実に当てるが、なかなか決定打につながらず。数度狙った肩固めも極まりが浅い。逆にジュンのパンチで右目下が少し腫れてしまう。とはいえ最後までジュンに主導権は譲らず。3R終了間際には左フックでダウンを奪い。勝利を決定づけた。


 

■ スペシャルマッチ

第9試合 エキスパートクラス 3分5R
○及川知浩(日本/龍生塾/SB日本スーパーフェザー級王者)
×石川剛司(日本/シーザージム/SB日本フェザー級1位)
3R 0'49" TKO (ドクターストップ:肘打ちによる額のカット)


 1Rは比較的静かな立ち上がり。だが2R、及川の肘打ちで石川が額を切り大出血。ドクターチェック後は石川の闘志に火がつき、フックの連打や縦肘で猛反撃。及川の頭にも小さなコブができる。とはいえ石川の傷は時限爆弾のような状態。3R、パンチの打ち合いになると、再び出血が激しくなり、ついにドクターストップ。因縁対決を制した及川はコーナーによじ登り勝ち誇った。

■ オープニングマッチ

フレッシュマンクラスルール 3分3R
○尾崎圭司(日本/チーム・ドラゴン)
×金井健治(日本/ライトニングジム)
判定2-0 (大村29-29/和田29-28/平29-28)


 1R、金井が前方への投げで1点を先取。だが2Rは尾崎が左のテンカオをきっかけに流れをつかみ、バックブロー、胴回し蹴り等、得意の回転技で金井を圧倒する。3Rこそ金井も粘り、ハイやパンチを返し一進一退の攻防となるが、尾崎の回転技に比べればややアピールが足りなかったか?尾崎の判定勝ちに。念願の宍戸戦にさらに一歩近づいた。

フレッシュマンクラスルール 3分3R
×鈴木友則(日本/湘南ジム)
○阿部マサトシ(日本/AACC/修斗バンタム級(56kg)世界3位)
判定0-2 (北尻29-29/平29-30/和田29-30)


 オーソドックスの鈴木に対し、マサトシはサウスポー。鈴木のリーチも長いせいか、3度右ローがマサトシの股間に直撃し、鈴木は2Rに減点1。3R前半はパンチで攻勢に持ち込むが、序盤にもらった右ローのダメージの蓄積の影響もあってか、後半はマサトシの反撃を許し、ポイントを奪えず。結局ローブローの減点分でマサトシがSB初戦を白星とした。

Last Update : 11/05 13:40

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