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(レポ&写真) [PRIDE武士道] 4.2 有コロ:五味・近藤完敗。ハンセン快勝

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE武士道 - 其の拾 - "
2006年4月2日(日) 東京・有明コロシアム  観衆:9,313人(超満員:主催者発表)

  レポート:井原芳徳  写真:井原芳徳 & 井田英登  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第11試合 ライト級 1R10分・2R5分(CERUX LOVER WEDDING SPECIAL MATCH)
×五味隆典(木口道場レスリング教室/PRIDEライト級(73kg)王者/72.9kg)
○マーカス・アウレリオ(ブラジル/アメリカン・トップチーム/72.8kg)
1R 4'34" レフェリーストップ (肩固め)


 4月1日土曜日、東京は快晴に恵まれ、絶好の花見日和となった。しかしその次の日の2日は「あの快晴はエイプリルフールだった」と神様があざ笑うかのような暴風雨。有明コロシアムを冬に戻すかのような底冷えで包み、五味隆典の『火の玉』までも消した。あのPRIDE 10連勝の快進撃までもあざ笑うかのように。

 五味はサウスポーの構えで膝蹴りやハイのフェイントを絡めつつ、打撃でプレッシャーをかけ、回るアウレリオを何度かコーナーに詰める。だが左ジャブを当てるのはアウレリオ。あえて五味をコーナーに誘ったか? 左ジャブを振った後、五味が左アッパーで距離を詰めてきたのに合わせて、タックルでテイクダウンに成功する。

 ハーフガードから肩固めを狙うと、五味は振りほどきクロスガードに戻す。しかしアウレリオはパスガードを狙いつつ、今度は反対の右肩に肩固めを仕掛ける。五味はブリッジでリバースしようとしたが失敗。アウレリオがそのままサイドを取りじわじわと絞り上げ、五味の腕がダランとしたところでレフェリーが試合をストップした。

 大みそかにライト級の頂点に立った五味は、その後しばらく休みたいと発言。今回の試合が決まってからもモチベーションが上がらず、練習にも力が入らなかった。「早く試合がしたい」という言葉からは、「試合が楽しみだ」というより、「早く試合前の苦しみから脱したい」という心の叫びを感じた。試合後の表情からも、不思議と悔しさはさほど感じられない。むしろ苦しみから脱した安堵の色のほうが濃いような印象を受けた。

 インタビュースペースに現れた五味は「今は休みたいですね。練習で気持ちが燃え上がるまで何も考えたくない」と語り、改めて休養を希望。榊原信行DSE代表は、大会直後の会見では継続参戦を希望したが、7日の記者会見では「まだ試合から1週間も経っていないので、少し時間を与え、じっくり話し合いたい。6月までにモチベーションが上がれば出て欲しい」と話した。

 この日の五味ならGPの一回戦すらも突破できなかったのではないか。ハンセン、パルバー、エドワーズ、アゼレード、川尻、マッハの誰にも勝てなかっただろう。下手をすれば初参戦の石田にも寝技でいいようにやられて負けたかもしれない。柔術対策が不十分だったことも敗因だろうが、それよりも肩固めを仕掛けられた後の粘りの無さが気になった。
 五味はかつてハンセン、BJペン相手に連敗したが、年をまたぎわずか4ヶ月の休養を経て、PRIDE破竹の10連勝、そしてGP制覇を成し遂げた。会見の最後、五味はこう語った。「今年中に『伝説の五味』として武士道のリングに上がれるようにします。僕が強いのは皆さんわかっていると思うんで」。再び火の玉を燃え上がらせる日も、そう遠くはないはずだ。
 
 
◆五味「応援してくれたお客さんに申し訳ないです。大会当日、僕は他の選手の試合を見てテンションを上げますけど、何せ、やってきたものがありませんから。頭でわかってても、体は正直に出ますね。練習不足でした。大晦日の前に(柔道の)鈴木桂治選手とスパーリングをしていた時と比べれば、マーク・ハントのようにお腹が出なければいいという、健康維持程度の練習しかしませんでした。(PRIDE)11試合目でさすがに疲れちゃいました。僕も人間ですから。
(フィニッシュの肩固め)タップもしたくないし、落ちもしないけど、完全に固まってどうしようもないという感じでした。(アウレリオは対策を練ってきたと感じた?)寸分の狂いもなく実行できたんじゃないですか?
(敗因は慢心と疲労のどっち?)両方ですね。悔しいけど、格闘技は面白いとも思いました。今は休みたいですね。練習で気持ちが燃え上がるまで何も考えたくないです。もちろん今年中に『伝説の五味』として武士道のリングに上がれるようにします。僕が強いのは皆さんわかっていると思うんで」

◆アウレリオ「打ち合いで相手を見極め、テイクダウンして、自分の柔術ができた。グラウンドでは僕が上。戦うずっと前から勝利を確信していた。昨年のライト級GPは拳の骨折のせいで欠場したが、出ていれば僕が決勝まで行けたことを今日は証明できた。五味のベルトを自分の元に取り返したい。柔術は全ての格闘技の源。皆さんも習って欲しい」

◆榊原「格闘技の魅力の詰まったいい大会だった。ライト級もウェルター級も混沌とし、大きなテーマがいくつか見えてきた。去年が出世の年なら、今年は飛躍の年にしたい。
 五味君は大晦日以降上がらなかったモチベーションが、リング上で現実になった。今日は相手というより自分自身に勝てなかった。五味隆典に大きなテーマができた。我々としてはどうしてあげようもないが、まだ若い。心の部分をケアしつつ、『今年中』と言わず、早いタイミングで試合を組む事をお約束したい。
(五味の防衛期限は?)他の階級同様、明確には決めていないが、年内に必ず行う。今回負けたことでモチベーションが上がらないようならどうしようもない。何糞と思って五味君の手で(名誉を)取り戻して欲しい。2つのベルトを抱えて入場している以上、五味君が持っている事を誰も疑わないよう、モチベーションを上げて試合をして欲しい。
(アウレリオが挑戦者になるか?)再戦が防衛戦になる可能性が高い。その前にアウレリオにも試合を組むと思う。今日は前半戦でもいい試合があった。ヨアキムとアゼレードの試合が良かった。ヨアキムは『五味君と対戦したい』という目的意識を持ってシェイプして来たのが見えた。今後に期待ができる」


第10試合 ウェルター級 1R10分・2R5分
○ダン・ヘンダーソン(アメリカ/チーム・クエスト/PRIDEウェルター級(83kg)王者/82.9kg)
×三崎和雄(GRABAKA/82.6kg)
判定3-0 (ヒューム=ヘンダーソン/三宅=ヘンダーソン/大橋=ヘンダーソン)

 
 ヘンダーソンのパンチを浴びた三崎は、グラウンドに持ち込みサイドから膝蹴り。ヘンダーソンの立ち上がり際にギロチンを仕掛ける等、序盤はペースをつかむ。だがスタンドに戻るとまたもヘンダーソンがパンチで攻勢。右フックで三崎をダウンさせる。踏み付けから足を取られ三崎にリバースを許すが、ヘンダーソンは有効打の数で1R目を支配する。
 2Rもヘンダーソンの優位は変わらず。スタミナは落ちたものの、左ジャブで距離を取り、パンチを振り回す。三崎は連打の途中まではかわすが、追い打ちの右フックを浴びることも度々。三崎もパンチや蹴りを当てるが、右目に指が入ったことも災いし、最後まで流れは変えられない。終盤はヘンダーソンのパンチを逃れ周りを回る劣勢に追い込まれた。
 判定は文句無しでヘンダーソン。榊原代表は「ダンヘンの首を獲る日本人選手が今年中に必ず出る。ウェルター級の中でもウカウカしていられない」と話し、ヘンダーソン危うしと見た。確かに三崎は健闘した。しかしヘンダーソンは多少危ない場面があっても、すぐさま回復してペースを取り戻し、ポイントを稼ぐ攻めをしていた。穴を作らず、少々開いてもそれ以上拡げない。
 王者となってプレッシャーはあるかと尋ねても「気持ちの変化はない。リングに上がれば常に勝ちたいと思うだけだ」と答え、この日敗れた五味へのアドバイスを聞かれると、「彼のことはよく知らないしメンタルのことはわからないが、グラウンド技術を磨いたほうがいい」と答える。絶対王者・ヒョードルに似た落ち着きと自信が感じられた。

第9試合 契約体重無し 1R10分・2R5分
○美濃輪育久(フリー/87.4kg)
×ジャイアント・シルバ(ブラジル/フリー/180.0kg)
1R 2'23" TKO (レフェリーストップ:グランドでのボディと顔面への膝蹴り)


 美濃輪はジャブで様子を見た後、前転からの片足タックルで巨漢のシルバを倒す。パンクラス時代の99年9月のセーム・シュルト戦と同じ戦術だ。その時はサイドからニーオンザベリーにして腕十字を仕掛けたが、PRIDEルールではグラウンドの蹴りもOK。サイドからボディと顔面に膝をコツコツ当てると、シルバはあっさり戦意を失いレフェリーが試合を止めた。
 試合後は恒例のSRF8回を行い会場は大盛り上がり。インタビューでは無差別級GP出場を希望し、榊原代表もウェルター級代表として出場させる考えを示し、4日後にミルコ戦が発表された。

第8試合 ウェルター級 1R10分・2R5分
×近藤有己(日本/パンクラスism/パンクラス・ライトヘビー級(90kg)王者/82.1kg)
○フィル・バローニ(アメリカ/ハンマーハウス/82.6kg)
1R 0'25" KO (右フック)


 開始早々、バローニが得意の右フックを当てラッシュ。左ボディ等数発もらった後も近藤は打撃戦に応じスウェーしたものの、直後に右フックを被弾。マットに倒れパウンドをもらったところでレフェリーが試合を止めた。
 近藤がウェルター級でどこまで対応できるかがこの試合の見所だったが、それとはほぼ無関係の結果に。本人も減量の影響は無かったと話す。バローニの一番な得意な分野に付き合ってしまったのが敗因だろう。


第7試合 ウェルター級 1R10分・2R5分
○郷野聡寛(GRABAKA/全日本キック・ヘビー級王者/82.7kg)
×キム・デウォン(韓国/正進MMA GYM/82.8kg)
1R 9'00" タップアウト (腕ひしぎ十字固め)


 柔道出身のデウォンが倒して上になると、コーナーを枕にした郷野にパウンドを当て続け攻勢。郷野は膠着ブレイクに救われたが、またも倒され下になってしまう。
 ところが郷野はここから隠れた寝技の名手ぶりを発揮。腰を浮かしてタックルでリバーサルに成功すると、いったん立ち上がってパウンドでハーフに。アームロックを仕掛けつつマウントを奪い、最後はパンチで痛めつけた後に腕十字を極めた。

 恒例のマイクアピールでは「PRIDEウェルター級で、近藤でも外人でもなく、俺が主役になりますので、脇役から頑張っていきます」と宣言した。
 珍しく正統派の攻めになったのは、「立ち技は厳しい」と感じたからで、「勝ったという事実だけで会心も何もない」とバックステージで不満を示した。勝利者賞を受け取った後、今大会で引退のラウンドガールに声をかけたが、「あの反応じゃダメでしょう。これ以上押さないほう僕も傷つかないし」と話し、あっさり“敗北”宣言していた。

第6試合 ウェルター級 1R10分・2R5分
×ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/82.7kg)
○パウロ・フィリオ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/82.5kg)
判定0-3 (ヒューム=フィリオ/三宅=フィリオ/大橋=フィリオ)


 フィリオがタックルや首投げで再三テイクダウンを奪い、ポジショニングでも圧倒。1R終盤にはマウント、サイドから攻め続ける。減量の影響もあってか動きに粘りがなく、ニンジャは柔術の元世界王者・フィリオのグラップリング技術を前に為す術無し。フィリオは2Rも序盤からサイドを取り主導権。残り時間が少なくなったのを見計らい肩固めを狙う。やや手堅くはあったが、ミドル級からの転向組対決で完勝。ヘンダーソンの王座に一歩近づいた。

第5試合 ライト級 1R10分・2R5分
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/フロントライン・アカデミー/修斗ウェルター級(70kg)世界2位/70.8kg)
×ルイス・アゼレード(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/71.0kg)
1R 7'09" KO (左ミドルキック)


 アゼレードが序盤からアグレッシブに打撃で攻め先に上を取るが、スタンドに戻ると左右のフックを浴びダウン。ハンセンはグラウンドでバックを取り、下からもヘリコプター十字(巴投げから腕十字を狙う技)を狙い反撃する。脱出したアゼレードは踏みつけの際にロープをつかみイエローカード。スタンドで再開するとパンチと蹴りの打ち合いとなり、アゼレードが右ミドルを当てる。だが直後、ハンセンはパンチで意識を上に向けさせると、アゼレードが前屈みとなり、ハンセンの左ミドルが膝蹴りのような形でアゼレードのアゴに炸裂。宇野戦、今成戦を彷彿とさせる衝撃的な結末だった。
 榊原代表もこの試合を高く評価。「ヨアキムは『五味と対戦したい』という目的意識を持ってシェイプして来たのが見えた。今後に期待ができる」と話しており、アウレリオと並ぶ今後のタイトル戦線の重要人物となりそうだ。
 

第4試合 ウェルター級 1R10分・2R5分
○デニス・カーン(韓国/スピリットMC/82.9kg)
×マーク・ウィアー(イギリス/グロスター・レンジ・ファイティング/82.8kg)
1R 4'55" タップアウト (膝蹴り)


 開始すぐ下になったカーンだが、立ち上がり際の打ち合いでストレートを当てると一気に攻勢。グラウンドでサイド、マウント等、優位なポジションで攻め続ける。最後はサイドから膝をウィアーのまぶた付近に叩き込んだ後、まぶたから血を流したウィアーがギブアップした。
 

第3試合 ライト級 1R10分・2R5分
×アライケンジ(パンクラス/70.0kg)
○ジェンス・パルバー(アメリカ/チーム・エクストリーム/71.7kg)
1R 3'59" KO (サッカーボールキック)


 アライがパルバーとパンチで真っ向勝負。互いにぐらつくシーソーゲームに会場は大いに沸く。アライもハイキックをクリーンヒットさせる等、有効打の数では劣らない。だが一発一発の威力と打たれ強さではパルバーが数枚上手。最後は右フックでぐらつき、パルバーの右ハイをかわして仰向けに倒れた後、サッカーボールキックを鼻にもろに浴び撃沈した。アライは鼻の骨が見えるほど深い裂傷を負ったという。
 

第2試合 ライト級 1R10分・2R5分
○石田光洋(T-BLOOD/修斗ウェルター級(70kg)世界1位・環太平洋王者/70.8kg)
×ポール・ロドリゲス(アメリカ/アメリカン・トップチーム/70.9kg)
1R 2'29" タップアウト (フロントチョークスリーパー)


 石田が差し合いの攻防で膝を当てた後、電光石火の片足タックルでテイクダウン。すぐさまサイドを取り、さっそく持ち味を発揮する。いったんトップに戻るが、最後はパスガードした瞬間にロドリゲスをタックルで誘い、カウンターのギロチン。これがガッチリと決まりPRIDEデビュー戦を白星で飾ることに成功した。
 修斗の環太平洋ベルトを巻いてマイクを持った石田は「これが始まり。これから強い外人をぶっ潰します。これからも応援してください」とさわやかにアピールした。
 

第1試合 ライト級 1R10分・2R5分
×池本誠知(TEAM Boon!/72.8kg)
○イーブス・エドワーズ(アメリカ/サード・コラム・ファイトチーム/72.7kg)
判定0-3 (木村=エドワーズ/三宅=エドワーズ/足立=エドワーズ)


 池本は長い足を活かした右ハイ、ミドル、ローを当てるが、距離が近づくとエドワーズのストレートの連打を浴び、真後ろに下がってしまう。イーブスがサイドからマウントに移行する際、ブリッジで脱出して沸かせたが、見せ場はこれぐらい。持ち前の華麗な動きができず、苦いPRIDEデビュー戦となってしまった。
 

Last Update : 04/08 12:04

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