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(レポ&写真) [MFC] 11.5 米国:阿部兄&BJ勝利。花澤・浜中ら敗れる

Mixed Fighting Championship "MFC 5 - USA vs. JAPAN"
2005年11月5日(土) 米国ニュージャージー州アトランテックシティー:トランプ・タージ・マハール

  レポート:フェルナンド・アビラ  写真:吉田みのり  (BoutReview USA該当記事
  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】



第5試合 敗者髪切りマッチ 164パウンド(74.4kg)契約 5分3R
○スティーブン・ハイ(アメリカ/ファイト・ファクトリー)
×宮崎裕治(日本/コブラ会)
1R 1'46" タップアウト(腕ひしぎ十字固め)


ザ・ヘッド・シェイバー(髪切りマッチ)

「彼、刈りたくなっちゃうようなスパイキーなヘアーだね」
というハイのたっての願いで実現した、異色の「敗者髪切りマッチ」。聞けば夫人がヘアスタイリストという話で、ヘアスタイルには人一倍こだわる方だとか。対戦相手として浮上した宮崎の写真を見た途端、インスピレーションを得たのだという。

 そんなハイにとって、今回の試合は約3年振りとなるもの。だが、一年前、ロスアンゼルスで開かれたPRIDE武士道のトライアウトにもエントリーされるなど、ファイト・ファクトリーのリーダーは、なかなかの実力者でもある。

 対戦相手の宮崎裕治は、この日、パンクもどきのコスチュームでアメリカ・デビューを飾った。どうも、レイザー・ラモンHG(ハード・ゲイ)とかいう、今、日本で人気のコメディアンの真似らしいが、アメリカの観客にその意味がどこまで伝わっていたかどうか。

 ローキックで揺さぶると、宮崎はすぐに組み付きハイグをロープに押し込みテイクダウンを奪おうとするが、腰の重いハイはそのまま体勢を低くしロープ際で何とか耐える。ハイのコーナーについたエディ・アルバレズが、しきりに「クロコップ!クロコップ!」と叫んでいる。そのままロープ際で組み合ったまま進展のない二人に、レフェリーが割って入りブレイク。

 そして次の瞬間、一歩下がったハイは左足で飛び上がり、誰もが予想していなかったジャンピング・ニーを宮崎の顔面にクリーンヒット。バシッという乾いた音が場内に響き渡る。しかし宮崎はこれをしっかりとうけとめ、反射的にハイを捕まえると投げでテイクダウンを奪う。

 ハイのフルガードの中で、宮崎は一瞬だけ間を置きそこから殴りにいったが、ハイはそれを待っていたかのように下からの腕十字をガッチリと決めた。不運なことにこれが古傷でもある左肘に入ってしまったため、1ラウンド1分46秒、宮崎はたまらずタップアウト。ロープに押し付けられた時は「かなりのプレッシャーを感じた」と言うハイだったが、終わってみればパーフェクトなフィニッシュだった。これから休まずに試合をこなし、三年間の眠りから覚めたハイが、今後どれだけの能力を持っているのかを我々に魅せてくれるのか、非常に興味深い。

 さて注目の髪切りは、休憩前に行われた。3人のリングガールたちに囲まれ、そのナイス・バディを擦り付けられたて、テレ笑いの中、ハイ好みの(?)ヘアスタイルに改造されてしまった。ハードゲイを標榜する彼ではあったが、やはり美女に囲まれるとうれしいものらしい。

第13試合 155パウンド(70.37kg)契約 5分3R
×ジョーイ・“ノックダウン"・ブラウン(アメリカ/ヘンゾ・グレイシー柔術)
○阿部裕幸(日本/AACC)
1R 1'40" タップアウト(ヒールロック)


爆撃機アベの電撃勝利

 修斗、K-1 MAX、プライド武士道など様々な戦場を体験してきた阿部裕幸が、真の男である事を証明する時が来た。彼が前回参戦したMFC 3では、70キロ契約で、どう見てもひと回り身体の大きいライアン・シュルツを相手に闘った。元々は65キロ級の選手である阿部は、1Rに鋭い右のパンチをクリーン・ヒットさてシュルツをぐらつかせるなど、実力者ぶりを見せてくれたが、2Rにシュルツの放った“生涯初”の右ハイが頭部にヒットしてしまい、無念のレフェリー・ストップ負けを喫している。このシュルツとの試合では打撃戦で試合を組み立てた阿部だが、今回の試合ではトリッキーな関節技で、そのポテンシャルを見せつけることに成功した。

 両者が並ぶと、77キロ級でも試合をしているブラウンの方がひと回り大きいのがわかる。一瞬、前回のライアン・シュルツ戦での結果が頭をよぎったが、歴戦の勇士阿部は、そんな予感を吹き飛ばす戦いを見せてくれた。なんとスタンディングの状態から、自らグラウンドへ回転しヒールを取るという素晴らしくトリッキーな関節技を披露してくれたのだ。

「ガキッという音が4回したんだ」

 この試合の数日後、マンハッタンで開催された阿部のセミナーに表敬訪問したブラウンは、そう語った。その言葉を裏付けるように、ブラウンは右足首と右膝にブレイスをつけ松葉杖をついてやってきていた。

 1分40秒。第二次大戦でパールハーバーを爆撃した日本の空軍のような電撃戦だった。ブラウンも、総合格闘技というスポーツでの「戦略」の重要さを学んだのではないかと思う。阿部は総合格闘技での通算戦績6勝7敗2引き分けと、五割まであと一歩という所まで勝率アップした。この戦いの中には、修斗ライト級で盤石の王座を守り続けている“ペケーニョ”ノゲイラからのKO勝利も含まれた堂々たる物だ。そして日米対抗戦というこの大会の趣向にも、貴重な日本の2勝目を刻んだ(このときアメリカは既に3勝)。

第14試合 ダブルメインイベント 220パウンド(99.88kg)契約 5分3R
○ウイルソン・ゴヴィエア(アメリカ/アメリカン・トップチーム)
×浜中和宏(日本/猪木事務所)
1R 0'39" TKO(グラウンドでのパンチ)


苦いアメリカデビュー

「U.S.A.! U.S.A.!」

 ダブル・メインイベントの第一試合。ここで一層と戦闘的になった観衆のUSAコールが、MFCのリングを包み込んだ。

RIDE武士道で、ニーノ・シェンブリを破り、当時所属していた高田道場の先輩・桜庭和志の仇をとった“あの”浜中和宏がアメリカでどんな試合を見せるのか、期待感が高かったが、やはりアウェイでの緊張感のほうが勝ってしまったのかもしれない。アメリカン・トップ・チームのホープ、ウィルソン・ゴヴィエアは浜中のタックルを切るとバックに回り、パウンドの連打で秒殺勝利を飾った。
 
 試合の翌日、JFK空港のターミナルの中の歩きながら浜中は、やや蒼い表情でその無念さを語ってくれた。私は「MFCはまた浜中選手を呼んでくれる筈です」と言い握手をした。そしてTKに「今度はあなたの美人秘書が居る六本木のオフィスで(※編集部注:これは日本通のフェルナンド記者が「キャバクラ」のつもりで言ったらしい)勝利のインタビューをしましょう」と冗談を言ったら、周りにいた選手たちも何故かニコッと微笑んだ。「またアメリカで試合がしたいです。『U.S.A.! U.S.A.!』ともうファンはクレイジーですから。私は好きですね」。浜中はその流暢な英語で私に語ってくれた。

第15試合 ダブルメインイベント 170パウンド(77.18kg)契約 5分3R
○エディ・アルバレズ(アメリカ/ファイト・ファクトリー)
×花澤大介13(日本/コブラ会)
1R 4'00" TKO(グラウンドでのパンチ)


ハンターとジャパニーズ・タイガー

「自分がとても速く感じるんだ。軽くなったような気もするよ。まだ3ラウンドまで闘ったことはないけど、もちろんいつも3ラウンドまで闘える準備はしてきているからね」―そう試合前に語ったのは、この大会のメインイベンター・エディ・アルバレズだった。

 今年二月のMFC3で、修斗の世界ランカーでもある池本誠知を強烈な打撃で圧倒し、大メジャーUFCへの登竜門であるTUF出演の誘いを撥ね付ける硬派ぶりで、アメリカの格闘技界でもちょっとした話題となり、いまやMFC生え抜きのエース的存在にのし上がったエディ・アルバレズ。

 対戦相手の花澤大介13は、前回、同じ日本人である池本が血祭りに上げられる姿を見て「俺が敵を討つ」と、みずからエディ戦に名乗りを上げた。判定で敗れたとはいえ、サブミッションでリッチ・クレメンティの膝を破壊、長期欠場に追い込んだ、この男の危険さをMFCの観客は忘れていない。

「MFCで一番輝いていたのはエディ。その彼を倒してアメリカの格闘技界で成功したい」この日MFCのリングに上がった日本人選手の中で、最大の野心を胸に燃やしていたのも、実は花澤だったのである。まさに“タイガー”と呼ぶべきエネルギーの持ち主だ。
 
 花澤は前に出てタックルを狙うが、これがアルバレズのパンチの射程距離にばっちりとはまり、強烈なアッパーを2発ほど喰らってしまう。しかし、花澤も連打を浴びる前に、高速の両足タックルを繰り出す。高校時代、オールアメリカンにも選出されたアマチュアレスラーでもあったアルバレズをテイクダウンしたこの実力は、花澤のポテンシャルの高さを証明したと言えるだろう。エディはついに総合戦でまだ体験したことのない「アンダーポジション」という未知のゾーンに引きずり込まれてしまった。

 花澤はまずフルガードから脱出しハーフマウントへ。そして肩固めの体勢に入ろうとするが、ポイントがずれていたのか決まらない。そのままの状態が続いたため膠着状態とみなされブレイク。両者スタンディングからの試合再開となった。

 再度テイクダウンを狙い、頭を下げて前に出る花澤。顔面にアルバレズのアッパーがバシバシと当たるが、それにも押されずに何とか組み付きテイクダウンを寝狙う。この時、後ろに倒されたアルバレズがロープとロープの間からリング下に落ちてしまい頭部をヒットする事故が起きてしまった。

 頭の上から出血がみられたのでドクターチェック。この時、ニュートラルコーナーで試合再開を待つ花澤の目は燃えていた。そう“アイズ・オブ・タイガー”だ。アルバレズをグラウンドに持ち込むことはできる!そう確信している目だった。実は花澤は、この半年間、エディ戦にだけ意識を集中して、他の試合のオファーも撥ね付けて訓練を積んで来たという。その強い気持ちがこの時の表情に現れていたにちがいない。

 試合再開後、アルバレズのパワフルな左ジャブがヒットするが、それでも組み付きにいく花澤。しかしそのタイミングに合わせてアルバレズが放った膝が顔面を直撃。それでも何とか組み付き、連打をまぬがれる花澤。再び花澤がロープに押し込み、アルバレズがリング下に落ちそうになるが、ここはうまくレフェリーがリング内に押し戻す。クリンチから花澤がボディへの膝を一発。次の瞬間離れたアルバレズは、左右のレンガのような思いワンツーを顔面にクリーンヒット。堪らず前屈みになり倒れた花澤に追撃のパンチの連打を落すアルバレズ。亀の状態になったままでパンチを受け続ける花澤をみてレフェリーが試合をストップ。アルバレズのTKO勝ちとなった。まさに、ハンターがその恐るべきパンチ力とスピードで、猛獣を組み伏せた瞬間だった。

 試合後、病院でCATスキャン検査を受けるためにストレッチャーに乗せられた花澤を抱きしめ、アレバレズは「オマエは俺を初めてテイクダウンした選手だ」と感激しきりだった。強敵との接戦を制した興奮が、見て取れる光景だった。おそらくこの二人の繰り広げた戦いは、数年後“MFCの初期の名勝負”として語り継がれるにちがいない。

 修斗世界ランカーに続いて、パンクラスのランカーである花澤を連覇。まさに「MFCの日本人ハンター」とも呼ぶべき存在となり、またもや無敗記録を伸ばしたエディ。ついに「MFC 6」に於いて、カーロ・プラターと初代MFCウエルター級チャンピオンを賭けて闘うことが発表された。

 一方、病院送りにされた花澤は失意のどん底に突き落とされた。

 肉体的な怪我は、結局鼻の骨のヒビのみに留まったが、半年間、打倒エディだけを目指して来た彼の野心は完全に打ち砕かれてしまった。試合に勝った者でさえ、身体中を駆け巡るアドレナリンや、観客の歓声が消えた直後に、ロッカールームで気持ちがトーンダウンし、とてもブルーになる事があるという。母国を遠く離れた病院で花澤が感じたブルーな気持ちは、一体いかなるものであったのだろうか。

 敗れたとはいえ、彼の見せた堂々たる戦いぶりは大きく評価したい。連打をあびながら、全くひるむ事なく前に前に突進したあの猛獣を思わせるダイナミックな“タイガー・タックル”を、もう一度MFCの舞台で見たいと真剣に思う。

第7試合 130パウンド(59.02kg)5分3R
×クリス・マグラス(アメリカ/アドバンスト・ファイティング・システム)
○BJ(日本/AACC)
1R 3'17" タップアウト(チョークスリーパー)


BJという名を記憶せよ

 クリス・マクグラスとの試合の前日、修斗バンタム級希望の星でもあるBJの練習を見ていて感じたのは、彼の驚異的なスピードと多彩な関節技も素晴らしいが、好きな事に打ち込んでいるひとりのハード・ワーカーとしての姿が最高にいいということだ。BJは全てに対しての「姿勢」がいい。もちろん金髪や笑顔からくる明るさも素敵だが、総合格闘技というスポーツに挑む姿勢が底抜けに明るいのだ。

 試合前、リング上でストレッチをしているマクグラスは、相手を殴る前にお祈りをしているカマキリのようだった。しかしBJはすぐにグラウンドに持ち込み、ムエタイ出身のこの選手の「闘いのエリア」を完璧に封じてしまったのだ。

 BJはハーフ・マウントから横四方、そしてフル・マウントへ行き、マクグラスの両足を絡め、レスリングでいう「サタデー・ナイト」のポジションからパンチを落す。(※アメリカのレスリング業界では、マウント・ポジション、または時折フルガードの状態でもこれを「サタデー・ナイト」と呼ぶ。もちろん、週末の夜、つまり土曜日の夜にカップルが行う行為からきた隠語だ)

 ロープ際までもつれた所でレフェリーがストップ、ドント・ムーブ。リング中央で同じ状態から試合再開。ここからもパンチを落して相手にダメージを与えたBJは素早く腕十字に入る。完璧に入ったがタップする気配をみせないマクグラス。更に腕を捻るBJ。リングサイドの誰かが「折れちゃってる!」と叫ぶ。

 これが引き金となったのか、この日一番不思議なシーンがここで起こったのだ。レフェリーが何故か試合をストップ。しかしマクグラスはタップをしていないし、コーナーも「彼は逆関節だから大丈夫だ!」と抗議。マクグラスの肘をレフェリーがチェック。そして問題無し、とみなされ試合が、しかも両者スタンディングの状態から再スタートとなったのだ。何か起きたのか分からないといった感じのBJは、再びマクグラスを倒すと今度はスピーディーなアルマジロトカゲのように後ろに回ると、1ラウンド3分17秒、チョークスリーパーでタップを奪った。

 キャラクター性抜群のBJは、勝利の雄叫びをアメリカ選手贔屓の観客たちに浴びせ、その侍の拳を何度も突き上げ数分間に及ぶパフォーマンス。しかしこれがなかなか観客たちには受けがよく、リングを下りたBJにハイ・ファイブを求めるファンも多数いた。ただその数日後、ロウワー・マンハッタンで一緒にディナーを食べた時、BJは明かしてくれた。「試合の後にそんな事(パフォーマンス)したなんて、全然覚えていないッス」。しかしBJの食べっぷりのよさは、彼の総合格闘技界での将来を物語っているかのような豪快さだった。パウンド・フォー・パウンド、キロ・フォー・キロ。BJという選手は間違いなく注目に値する選手である。

(※ハイ・ファイブとは「やったぜ!」といった意味合いで、自分の片手と相手の片手を頭上でパシっと叩く動作の事。語源は、お互いの五本の指を合わせるところからきている。ちなみに「ギブ・ミー・ファイブ!」と言われたら、これはようするに、ここは「ハイ・ファイブ」のタイミングだぞ、と誘われてという事なのだ)

第10試合 170パウンド(77.18kg)5分3R
○クリス・リゴウリ(アメリカ/チーム・ライノ)
×虎士(日本/AACC)
判定3-0


ダイナミックな決闘

 この日トランプ・タジ・マハールに集まったファンたちとっては恐らく驚くべき事ではないと思うが、私にとって、今大会のベスト・バウトは間違いなくクリス・リゴウリと虎士の試合だ。

 UFCでは、あの菊田早苗を追い込んだキース・ロッケルと闘い、UFC 51でフィル・バローニから一本勝ちを奪ったピート・セルを判定まで持ち込んだリゴウリとこれが総合2戦目の虎士。しかもリゴウリは今まで85キロ級で闘ってきた選手でこの試合のために77キロまで落してきた選手。

 土田、大久保に続いてもしかしたら虎士も?と思ったファンも多かったはずだ。が、虎士は、自分がコンバット・スポーツのプロフェッショナルである事を証明し、その強さと巧さをアメリカ総合格闘技ファンの脳裏にしっかりと焼きつけた。

 1ラウンドは紛れもなく虎士のラウンドだった。試合開始早々タックルに入る虎士。これはリゴウリに切られたが、虎士は何の躊躇もなしに再び低空タックル。今度はテイクダウンに成功しグラウンドで上になる。リゴウリも下から両腕をしっかりと押さえフルガードでディフェンス。虎士はガードから脱出し横四方へ。しかしリゴウリは素早く虎士の身体を突き放し横にスライドするとすぐに立ち上がり、差し合いの状態で虎士をコーナーまで押し込む。ここでリゴウリが足を取りにいくが、虎士は反対に押しつぶし今度は上からパウンドを落す。リゴウリも下から虎士の腕を捕み蹴りあげるが、虎士はこれも巧くかわし、そのままグラウンド・アンド・パウンド。しかしこのラウンドのハイライトは、虎士が魅せた横三角絞めだ。これにはベテランのリゴウリもかなりの間苦しんだが何とか脱出。スタンディングの状態に戻り、リゴウリの跳び膝蹴りが空を切った所でゴング。

 2ラウンドはグラウンドでのポジショニングの勝負となった。投げ、膝十字など常に先に攻撃を仕掛ける虎士だが、これを巧く防御し、リゴウリは上になりそこからパウンドを落す、という展開に。虎士もクリーン・ヒットを許さないが、リゴウリがグラウンドでのポジショニング、そして手数の多さで試合をリードし始める。

 最終ラウンドはお互いに一歩も譲らない意地と意地のぶつかり合いに。リゴウリが左ハイ、虎士はパンチのコンビネーション。素早くタックルに入り、上から顔面にパンチを落すリゴウリ。虎士はこれを何とか耐え、スタンディングに戻すと投げを放つが、これをまたリゴウリに潰されフルガード。リゴウリが横四方に移ると虎士は、ロープ際、ジャッジの目の前で身体を反転させ、見事としか形容できない横からの腕十字!ここがこの試合のターニングポイントとなった。リゴウリはこの腕十字にすぐに反応し立ち上がると腕を抜き、虎士のフルガード戻る。ここから試合のペースが一気にスローダウンし、リゴウリが上から「義務的」とも見えるパウンドを落し続け、虎士がアンクルを取りにいった所で試合終了のゴング。判定は3―0でリゴウリの勝ちとなった。2人のジャッジは29-28だったのに、残りの1人は何と30-27!これには、もう馬鹿げているというか、空いた口が塞がらないとしか言えない。この試合は誰がどう見ても接戦。両者ともに自分の有利なポジションをギブアップし試合を決めることを狙い続けたグレートな試合だった。

 ここで二度目の休憩。対抗戦はこの時点でアメリカが3勝で日本が1勝。これにプラス、日本の不戦勝1。休憩明けに、カーロ・プラターがノゲイラばりのスピニング・チョークでパット・ヒーリーから2ラウンド、3分57秒でタップアウトを奪い、対抗戦は遂にクライマックスへと突入していった。


第8試合 185パウンド(83.99kg)契約 5分3R
○ホゼ・ロドリゲス(アメリカ/フリー)
×土田雄一郎(日本/空柔拳会館)
1R 0'31" TKO(パンチ)


第9試合 170パウンド(77.18kg)契約 5分3R
○カート・ペリグリーノ(アメリカ/アメリカン・トップチーム)
×大久保一樹(日本/U-FILE CAMP)
1R 0'38" TKO(グラウンドでのパンチ)


クィック・シリーズ

 ホゼ・ロドリゲズ対土田雄一郎の試合は、残念なことにあっという間に決着がついてしまった。前蹴りで距離を計る土田。しかし三発目の前蹴りに合わせてこのラテン人が放った右ストレートが土田の左頬を直撃。すぐに土田もローキックで反撃したが、チャンスと見たロドリゲスは左右のフックを振り回しそのまま土田を圧倒。キャンバスに倒れ亀の状態になり、ロドリゲスのパンチを浴びるだけとなってしまった土田を見てレフェリーがストップ。空手家の総合デビューは、やはり不馴れな顔面へのパンチが勝負の分かれ目となってしまった。

 この試合のパターンが、そのまま、アメリカン・トップ・チームのカート・ペレグリーノとU-File Camp.comの大久保一樹の試合まで引き継がれた。大久保はまわりながらのローキック。ペレグリーノはいきなり前に踏み込み渾身の右フック。これが大久保の右目にクリーン・ヒット。ペレグリーノは、大きく後ろに下がった大久保の懐に素早く入りこみ、軽々と持ち上げキャンバスに叩き付ける。すぐに大久保も下からパンチを繰り出すが、一息ついた後、上体を起こしパンチ、パスガード、ボディへの膝蹴り、そしてパンチと畳み掛けてきたペレグリーノに対して大久保は亀の状態に。更にペレグリーノが横からのパンチの連打を浴びせたところでレフェリー・ストップ。
 今やアメリカン・トップ・チームが一番の期待を寄せ、アメリカの総合格闘技マスコミはすでにウエルター級「次世代のスター」とまで評しているペレグリーノの圧勝劇となった。


第6試合 215パウンド(97.61kg)契約 5分3R
−マイク・パット(アメリカ/アメリカン・トップ・チーム)
−増田裕介(日本/AACC)
中止


突然の中止

「(現地入りする前に)二回も(ニュージャージー州)アスレチック・コミッションに検査の結果を送ったんだ。そして二日前にも、もう一度。それでやっとOKが出たのに。だからトータルで三回も検査結果を送ったんだよ」

 増田裕介対マイク・パットのヘビー級対決は、何と入場式の後に突然キャンセル。しかもその理由が、パットの眼検査結果をニュージャージー州アスレチック・コミッションが紛失してしまい、パット選手へのファイター・ライセンスの発行が不可になったからというお粗末なもの。自分のせいでは無いとはいえ、自分の検査結果が原因で試合が中止となってしまったパットは、大会後、そのやり場のない怒りを数杯のビールで押さえていた。
 阿部裕幸と藤井恵のAACCで練習している増田の失望度は、パットのそれより遥かに高い。初めてのアメリカ、そしてそこで初めての試合。もうこういった状況では、なるべく物事の明るい面を見るしかない。この日本から来たこの大きな選手は、少なくとも大会後、マンハッタンでチームメイトにショッピングに連れていって貰ったではないか。
 藤井恵選手曰く「日本では、彼のサイズの洋服ってなかなか見つからないんですよ。だから大柄の人たちは大体みんな似たような格好をしているんです」
 増田はニコッと笑い「次の大会では是非闘いです」と言うと、ヒョードルのいるレッド・デビルで練習できたらいいな、と付け足してくれた。すでに次の闘いの準備を始めている彼は、間違いなくウォリアーである。



第12試合 132パウンド(59.93kg)契約 5分3R
−タラ・ラローサ(アメリカ/チーム・ロック)
−アマンダ・ブキャナー(アメリカ/アカデミー・オブ・MMA)
※アマンダの食中毒によりキャンセル


バッド・フード

 タラ・ラローサとアマンダ・ブキャナー(本当はバックナーと読む)の試合は、アマンダの食中毒により試合当日の朝にキャンセルとなってしまったが、タラは休憩明けにリングに上がりファンに挨拶。
 MFCのマッチメーカーのミギュエル・イトゥラーテ氏が、朝一番に、試合キャンセルのバッド・ニュースをタラに伝えて時、彼女はこう叫んだのだ。「わたし、この試合のために二ヶ月も練習してきたのよ!」これからMFCが、女子の試合と男子の軽量級の試合をどう大会に組み込んでいくのが興味深いところだ。


第11試合 170パウンド(77.18kg)契約 5分3R
○カーロ・プラター(アメリカ)
×パット・ヒーリー
2R 3'57" タップアウト

第4試合 195パウンド(88.53kg)契約 5分3R
○マーク・バーチ
×ジェイ・ホワイト
1R 1'48" KO

第3試合 195パウンド(88.53kg)契約 5分3R
○ブリストル・マルンデ(アメリカ/アメリカン・トップチーム)
×リッチ・アットニート(アメリカ/プラネットJJ)
3R 1'57" TKO

第2試合 ヘビー級5分3R
○ジェイソン・グイーダ(アメリカ/ギルバート・グラップリング)
×パット・スタノ(アメリカ/COREマーシャル・ア−ツ)
1R 3'05" KO

第1試合 170パウンド(77.18kg)契約 5分3R
○スティーブ・ブルーノ(アメリカ/アメリカン・トップチーム)
×ジェイ・ジャック(アメリカ/アカデミー・オブ・MMA)
1R 4'02" タップアウト

 

Last Update : 11/25 03:40

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