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(レポ&写真) [PRIDE.30] 10.23 さいたま:ミルコ、ジョシュに辛勝

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE.30 - STARTING OVER -"
2005年10月23日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ  観衆:23,776人(主催者発表)

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第8試合 ヘビー級 1R10分 + 2R・3R5分
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/チーム・クロコップ/102.0kg)
×ジョシュ・バーネット(アメリカ/新日本プロレスリング/125.0kg)
判定3-0 (三宅=ミルコ/足立=ミルコ/小林=ミルコ)


 ジョシュはミルコに得意の蹴りを打たせないよう距離を詰め、パンチを当てたり押し込んで膝を当てたりと主導権。数度の軽いローブローもあったが、特に体重差が災いし、ミルコは体力を奪われる。
 だが腰回りがこれまで以上にタプついているジョシュも、久々の総合、1R10分のルールということも相まり、体力消耗が激しい。ミルコに倒され数度マウントを奪われてしまう。ミルコにその先に攻め手が無かったとはいえ、なかなか逃げられないジョシュの印象は悪い。スタンドでもガードが下がるようになり、3Rにはパンチの連打を浴びる場面も。どちらも決め手に欠いたが、後半戦の主導権を握ったミルコに軍配が上がった。
 試合後は両選手とも準備不足を不調の理由に上げた。「STARTING OVER(再出発)」というにはあまりにも苦々しい内容だった。榊原信行DSE代表はこの日のミルコについて「20kg以上重い相手を下したことで、いい再出発ができたのでは。いつもミルコにファンの求めるハードルは高く、不完全燃焼に映ったと思うが、精一杯頑張る姿を暖かく見守ってほしい」との見解を示した。
 ミルコは試合後のマイクで「大みそかに帰ってきます」と約束。対戦相手に関しては「DSEに任せる」と話していた。
 

第7試合 ミドル級 1R10分 + 2R・3R5分
○桜庭和志(日本/高田道場/92.4kg)
×ケン・シャムロック(アメリカ/ライオンズ・デン/92.6kg)
1R 2'27" KO (右ストレート)


 試合前の紹介VTRで、桜庭は珍しくこんな本音を漏らしていた。「負けるたんびに『引退』『引退』ですから。んで、勝ったら『復活』ですから。『引退』と『復活』って言葉しかないんだもん、あそこ。新聞記者に引退なんかさせられたくないですけど」
 シュートボクセの過酷な練習風景の映像の後、登場した桜庭は異例の入場パフォーマンス無し。ある種の型にハメられることを嫌がる彼にとって、パフォーマンスもいつしか型となっていたのだろうか? セコンドには武者修行先のシュートボクセのフジマール・フェデリコ会長の姿が見える。これまでの「桜庭和志」像はブラジルに置いてきたかのようだ。Tシャツを脱いだ肉体は今までより少し大きめ。オレンジと白の混ざったタイツの模様は変わらない。捨てたもの、変わらないもの、両方が入り交じっているが、不自然な感じはしない。試合も型にはまらない自然さがいい形で生きる内容となる。

 左ジャブから詰めようとするシャムロックに対し、桜庭は時折タックルのフェイントを加えながら、やや前屈みの体勢でリングを周る。シャムロックの右が顔面をかすめる場面もあるが、静かな間合いのまま、試合は2分を経過。すると桜庭はタックルのフェイントの後、サウスポーにスイッチ。シャムロックが踏み込んだところ、右のフェイントを振ってから左ストレートをシャムロックのアゴにクリーンヒット。さらに桜庭が追い打ちをかけようとしたところでレフェリーが試合をストップした。シャムロックはすぐさま立ち上がりダメージが無いことをアピールしたが、ロープ際に背中を向けてしゃがみ込んで防御してしまったため、ストップは致し方ないところだろう。

 勝ち方は4月のGP一回戦のユン・ドンシク戦と大差はない。だが短い間合いの攻防の中で、ベースのレスリングを活かしつつ、シウバのようなカウンタースタイルをうまく取り入れているのが見て取れた。桜庭は再びシュートボクセに武者修行に行き、大みそかに備える予定。2ヶ月後、どこまで桜庭は変化し、そして変わらないのだろう? 桜庭の衰えない闘争心と好奇心は、記者の想像力と文章力をこれからも挑発し続ける。
 

第6試合 ミドル級 1R10分 + 2R・3R5分
○瀧本 誠(日本/吉田道場/81.0kg)
×ユン・ドンシク(韓国/フリー/90.8kg)
判定3-0 (三宅=瀧本/大橋=瀧本/小林=瀧本)


 瀧本は半袖の道衣を着用、ドンシクは道衣を着用せず。二人の柔道家はそれぞれ新たなスタイルで柔道家対決に臨んだ。1Rは両者ともスタンド、寝技で積極的に攻め、総合慣れしてきた様子を見せる。だが2Rからは両者とも体力を消耗。雑なパンチの打ち合いが繰り返される。瀧本が1Rにアームロック、3Rにグラウンドパンチの連打でチャンスを作り判定勝利。しかしマイクを持つと、不甲斐無い試合内容にも関わらずマイクを持ったことに対する不満からか? 一部の観客からはブーイングが飛んだ。

第5試合 ヘビー級 1R10分 + 2R・3R5分
○セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップチーム/108.8kg)
×ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/チーム・クロコップ/105.0kg)
判定2-1 (小林=ハリトーノフ/ハミルトン=ヴェウドゥム/大橋=ハリトーノフ)


 ハリトーノフは試合2週間前にインフルエンザにかかり体調不良。しかも開始早々に投げを放った際に背中の筋肉を負傷してしまい、動きに精彩を欠く。写真は開始1分、ハリトーノフが受け身を取っている場面。その直前にハリトーノフは足を引っ掛けてヴェウドゥムを倒した際、左肘の方から着地しているように見え、その時に痛めたものと思われる。
 その後ハリトーノフは何度もヴェウドゥムをコーナーに追いつめるが、得意のパンチで仕留めることができない。ヴェウドゥムも寝技に誘い込むが、ハリトーノフはスタンド勝負を臨みアリ猪木状態が繰り返される。判定の難しい試合となったが、パンチでダメージを与えたハリトーノフに軍配。不甲斐無いハリトーノフの試合内容に、榊原代表は「次期王座挑戦者としては物足りない」との評価を下した。(右下写真はインタビュースペースに現れた時のハリトーノフ)

第4試合 ミドル級 1R10分 + 2R・3R5分
×横井宏考(日本/チーム・アライアンス/92.9kg)
○クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン(アメリカ/ゴッズ・ストリート・ソルジャー/92.9kg)
1R 4'05" KO (サッカーボールキック)


 横井はタックルからそのまま寝技に引き込むと、じわじわ足を昇らせてオモプラッタでリバーサルに成功。いったんハーフになった後、サイドポジションを奪取する。だがキープが不十分で、パワーに勝るジャクソンは起き上がって再び上になりサイドポジションに。するとジャクソンは横井の片腕に自分の足を乗せて身動きが取れない状態にキープし、右のパウンドを連打。30発近く放ったところで最後はダメ押しのサッカーボールキックを放ち、豪快にKO勝利を奪った。
 途中までの戦術は悪くなかった横井だが、パワー不足を改めて痛感。「もうちょっと下の大会で経験を積みたい」とコメントした。

第3試合 ヘビー級 1R10分 + 2R・3R5分
○ジェームス・トンプソン(イギリス/チーム・トロージャン/124.0kg)
×アレクサンドル・ルング(ルーマニア/リバティー柔道クラブ/175.0kg)
1R 2'13" KO (スタンドパンチ連打)


 開始早々、ジャブでガードの開いたトンプソンの顔面に、ルングの右フックが炸裂。ルングは上を制するが、回復したトンプソンは足で突き放してスタンドに戻す。トンプソンは組み付いての膝を顔面に叩き込み反撃。最後はフックを当てると、ルングはロープの外に頭を出して戦意喪失状態となり、トンプソンが背後から鉄槌を落とし続けたところでレフェリーがストップした。ルングはダメージというよりスタミナ切れでギブアップしたような様子。総合の準備以前に、体重を落とすことが先決だろう。

第2試合 ミドル級 1R10分 + 2R・3R5分
○ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー/92.7kg)
×ムラッド・チュンカイエフ(チェチェン共和国/ゴールデン・グローリー/92.2kg)
1R 3'31" ヒールホールド


 レスリングベースのチュンカイエフはシューズを着用。開始間もなく、ニンジャの飛び膝に臆するとこなくタックルで組み付き、テイクダウンで先手を奪う。ニンジャの三角狙いにもしっかり対処。スタンドの差し合いでは膝を何発もボディに浴びてしまうが、前へ前へ出る積極的なファイトで、ニンジャにペースをつかませない。
 だが2分半過ぎ、パスガードに失敗してスタンドに戻されると、ボディに膝をもらいすぎたせいか失速。あっさりとニンジャに組み倒されると、四点膝とサッカーボールキックを浴びてしまう。体を入れ替えてうまく上になることに成功したが、シューズを履いた足をヒールホールドで極められてしまい、タップせざるをえなかった。
 敗れはしたが、ニンジャがスリップしたらすぐさま上に飛び込んでパンチを落としたりと、チェチェン人らしい高い戦闘能力でPRIDEファンに強烈な印象を残した。再登場を期待したい。

第1試合 ヘビー級 1R10分 + 2R・3R5分
×戦闘竜(アメリカ/ファイティング・ドラゴン/114.0kg)
○ズール(ブラジル/B-TOUGH/184.0kg)
1R 1'31" TKO (レフェリーストップ:四点ポジションからの頭部への膝蹴り)


 戦闘竜がパンチを振り回して突進すれば、ズールも膝とフックで応戦。迫力ある攻防が繰り広げられるかと思いきや、体格で勝るズールが戦闘竜をコーナーに詰めて膝を放つと、急所に命中してしまう。戦闘竜の体力回復後すぐには再開とならず、ズールの方はファウルカップがズレてしまったため、その調整のため時間が取られる。ようやく再開すると、戦闘竜のタックルをガブったズールが頭部への膝蹴り3連発。この時戦闘竜がマットに手をついたのを大城レフェリーがタップと勘違いしてしまったようで、中途半端なところで試合終了となってしまった。戦闘竜陣営は不満を露にしたが受け入れられず。ズールのトランクスがズレて何度も尻が見えたことも含め、「世界最高峰のリング」らしからぬ再スタートとなってしまった。

Last Update : 10/25 22:30

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