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(レポ) [K-1 WGP] 5.27 パリ:シュルト予選突破。バンナ×アビは激闘に

FEG "FieLDS K-1 WORLD GP 2005 in PARIS"
2005年5月27日(金) フランス・パリ:ベルシー体育館

  レポート:井田英登  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第8試合 スーパーファイト 3分5R
○ジェロム・レ・バンナ(フランス/レ・バンナ・エクストリーム・チーム)
×シリル・アビディ(フランス/ブリゾンジム)
5R 2'50" TKO (レフェリーストップ)


 一昨年のパリ大会終了後、バンナの陰口に激高したというアビディが殴り掛かるという事件が勃興。その後、今年1月にもフランスのローカル大会で取っ組み合いの喧嘩を繰り広げたという両者(この時はバンナが失神してしまったという)。その犬猿対決が、ついに二人の地元フランスで実現することとなった。とはいうものの、マルセイユ出身のアビディには、バンナびいきのパリっ子の冷たいブーイングが飛ぶ。
 試合開始早々、アビディのローのカウンターにバンナが右ストレートを合わせてスリップ。前のめりなアビディに対し、バンナは着実に右を当てて行き、三回のスリップ。明らかに動きが固い。心境的にアウェイのアビディが気負い過ぎか? そんな心理を知ってか知らずか、バンナは左ストレートを打ち込んでアビディをふらつかせる。
 2R、ガードを固めてアビディのパンチをかわしたバンナは、カウンターの左を打ち込んで、アビディをふらつかせる。しかし、なんとこの時ドクターが呼ばれて、バンナをチェックする。眉間が割れて出血していたのだ。
 しかし、再開後もバンナペースの試合は続く。構わずアビディをコーナーに詰めたバンナはアビディのパンチをウィービングでことごとくかわしてパンチをぶちこんでいく。コーナーを背負いながら、ほとんど相撲のような至近距離でパンチを撃ち合い、ハイを飛ばし合う両者。ただ、パンチのヒット率ではバンナが上回っているようだ。だが、それでも倒れないアビディ。
 3R、両者のギリギリするような打ち合いが続く。バンナの眉間がぐんぐん腫れ上がっているのは、どこかでバッティングでもあったか。コーナーに押し込んだ所でバンナの右を浴びたアビディは遂にダウンを喫する。ダメージの大きさがその目付きから伺えるが、試合続行。ふらつくアビディはローをもらい、バンナの左フックをモロにくらいながら倒れない。足下が定まらない様子ながら、最後までKOにはさせないという気力でこらえきったアビディ。
 4R、若干パンチの出なくなったバンナはプレッシャーでコーナーに詰めながら、3Rまでの切れが無くなっている。反撃に出るアビディだが、カウンターの左を浴びてスタンディングダウンを宣告されてしまう。軸足払いで倒れ込んだアビディを尻目に、左頭部のバンナのコブがチェックされるが、ここでは試合続行。ここでリズムを取り戻したのかアビディがパンチ連打で、バンナを俯かせる。ゴングに救われたものの、若干バンナがここで逆転された感も。
 いよいよ勝負は最終ラウンドへ。脅威のスタミナで攻勢に転じたアビディが、回転をアップ。左右のフックにハイと畳み込む。だが、ローで前に出たバンナが、右のジャブを当てて活路を開く。コーナーでふらふらになりながら撃ち合う両者。至近距離でお互いにド突きあう消耗戦となる。ラスト30秒となって、数発バンナの右カウンターをモロに浴びながら、結局アビディは倒れない。最後は、フラフラになったアビディの挙動に不安を感じたか、バンナがコーナー際でアビディを突き飛ばして倒した所でレフェリーが試合をストップ。既にアビディ側も精神力でリングに立っているだけと言う状態だったので、この裁定には文句はあるまい。


第7試合 スーパーファイト 3分5R
○角田信朗(日本/正道会館)
×マーべリック(ドイツ/シャークタンクジム)
1R 0'56" KO (右フック)


 総合で28戦24勝と言う戦績を誇る元アマレスラーという異色選手マーベリック。左肩から上半身には、キモを思わせるタトゥが刻まれたサモアンファイターだ。序盤から派手にハイを振り回してスリップした様子は、あまり打撃の出来る選手とも思えない。フェイントの右フックから、もう一歩踏み込んで右一閃。あっさりKO勝ちを奪取してしまった。


◆ ヨーロッパGP

リザーブファイト 3分3R
×ピーター・マイストロビッチ(スイス/ドゥランテス・ボックスジム)
○グレゴリー・トニー(フランス/ボクシングクラブ・トール)
判定0-3 (27-30/27-30/28-30)


 アンディ・フグの愛弟子だったマイストロビッチ。師匠譲りの上段後ろ回し蹴りなどトリッキーな技を見せて積極的に前に出て行く。だが、ヨーロッパ予選の常連、巨漢グレゴリー・トニーとの20キロの体重差はいかんともし難く、圧力に押される展開となる。重さを武器にしたトニーのミドル、ローを重ねられ、ダメージが溜まる。インファイトで顔面にパンチを集めて逆転を狙うマイストロビッチだが、逆に師匠の必殺技であった踵落としを使われるなど余裕のトニーに判定で敗れた。


第1試合 一回戦Aブロック(1) 3分3R(延長1R)
×アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
○内田ノボル(日本/新日本キックボクシング協会・ビクトリージム)
判定0-2 (28-30/29-29/28-30)


 体を絞り込んだ印象のイグナショフは、左右の回転の早いフック連打で序盤から攻め込む。伸びるストレートを武器に内田を追い込むが、ふっと息を抜いてしまう悪い癖がまだ消えていない。内田は逆にその隙に乗じて右のストレートを打ち返し、コーナーまで押し返して行く攻勢を見せる。ヒザ禁止のパリルールの元とはいえ、右ヒザにサポーターを巻いたイグナショフが、蹴りをほとんど出さないのが印象に残った。
 2R、速い左右のローとショートジャブを武器に先手を取りに行く内田。イグナショフもスピードの乗った豪快なフックを繰り出すが、若干正確性に欠けるため、小刻みに動く内田を捉えきれない。客席からは攻めあぐねたイグナショフにブーイングが飛ぶ。
 最終ラウンド、ゴングとともに連打で攻め込んだ内田。息が上がったかガードの下がったイグナショフは、単発の右のストレートを繰り出すのみ。出入りを繰り返しながら、ローをぶち込んで行く内田の動きは止まらず。判定では内田の名前がコールされ、大金星獲得に当人は一瞬驚いた表情となるが、すぐさま両手を突き上げてリングを跳ね回り歓喜の表情に変わった。


第2試合 一回戦Aブロック(2) 3分3R(延長1R)
×アジス・カトゥー(ベルギー/リール・チーム)
○ナオフォール・“アイアンレッグ”(フランス/ゴールデン・グローリー)
1R 1'58" KO (2ダウン:右ハイキック)


 サミール・ベナゾーズの実弟というアイアンレッグが、同門のハリッド・“ディ・ファウスト”に代わって出場。得意技だという長身を活かした右ハイを序盤から振っていく。ガードを固めて前に出て来たカトゥーのボディに左フック、そして側頭部に右ハイがぶち込まれ、あっという間に最初のダウン奪取。なんとか10カウント前に立ったカトゥだが、左フックから繰り出された二発目の右ハイで再びダウン。ほとんど何も出来ないまま、カトゥはKO負けとなった。内田の金星に続く代打ナオフォールの圧勝と、トーナメントには波乱の匂いが立ちこめ始めた。


第3試合 一回戦Bブロック(1) 3分3R(延長1R)
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
×ピーター・ボンドラチェック(チェコ/バカルディー)
2R 2'42" TKO (レフェリーストップ)


 ルーツである空手着に身を包んでの入場を見せたのは、この大会大本命に上げられたセーム・シュルト。今回、正道会館に移籍したということで、胸の縫い取り部分だけが新しい。
 左右に動きながら、パンチを打ち込む作戦のボンドラチェック。クリンチで動きを止めたいシュルトだが、ボンドラチェックはその腕をかいくぐってパンチをぶちこんでいく。組みからのヒザが使えないシュルトは、試合の流れが掴みにくそうだ。
 2Rも自分から飛び込んで左右のパンチを振って行くボンドラチェックがペースを握る。しかし、シュルトの放った一発の左ミドルで一気に形勢が逆転。ダウンを取られ、苦しい表情となったボンドラチェックは、さらにそのボディに前蹴りを浴びて苦悶の表情を浮かべる。攻勢に転じたシュルトはガード上から顔面にミドル(!)、そして打ち降ろすストレートと猛攻を繰り広げ、レフェリーストップを勝ち取った。レフェリーの制止に力が抜けたか、コーナーでボンドラチェックはコーナーを背に崩れ落ちてしまった。


第4試合 一回戦Bブロック(2) 3分3R(延長1R)
×ノブ・ハヤシ(日本/ドージョー・チャクリキ・ジャパン)
○フレディ・ケマヨ(フランス/ファウコンジム)
1R 2'36" KO (2ダウン:パンチ連打)


 昨年日本にオープンしたチャクリキ・ジャパンの道場生である子供たちの寄せ書きが施された国旗を着て、リングインしたノブ。
 早いフラッシーな左右を振ってくるケマヨ。気がないように下がったかと思うと、アッパーからのフックと繋ぎ、ガードを固めたノブに連打を浴びせるなど、独特のリズムを持っている。ハイから左右のマシンガンパンチと、一見勢い任せとも見えるコンビの攻撃を浴びせてくるケマヨだが、受け一方となったノブはコーナーでただパンチを貰うばかり。返すパンチも空を切り、コーナーを背負ったままパンチの嵐を浴びる展開で、二度のダウンを喫しての敗戦となった。


第5試合 準決勝(1) 3分3R(延長1R)
○ナオフォール・“アイアンレッグ”(フランス/ゴールデン・グローリー)
×内田ノボル(日本/新日本キックボクシング協会・ビクトリージム)
判定0-3 (28-30/27-30/27-30)


 一回戦フルラウンドを闘い抜いた内田と、短時間のKOで乗り切ったナオフォール。対照的な両者のコンディションもあってか、序盤からナオフォールが左右のパンチからハイのコンビでスピード十分の攻めを見せて行く。一回戦で見せた右だけでなく、コンパクトで軸のぶれない左のミドル、ハイも披露。結構な実力者である事が伺える。
 内田は一回戦同様細かいローでペースを掴もうとするが、一発一発の破壊力は明らかにナオフォールが上回っている印象。このラウンドは左右のローを重ねて、内田のスリップを誘う。ボディパンチに、後ろ回し蹴りと引き出しも多い。
 最終ラウンドには内田のローがナオフォールの金的に入るアクシデントが発生するが、再開後もナオフォールのスピードは落ちず。右一本でフック、アッパー、テンプルへのフックを繰り出す回転の速い“一刀流”連打等、多彩な攻めを見せる。内田は決定打こそ浴びなかったが、手数は明らかにナオフォールが勝った形で判定負けとなった。


第6試合 準決勝(2) 3分3R(延長1R)
×フレディ・ケマヨ(フランス/ファウコンジム)
○セーム・シュルト(オランダ/ゴールデン・グローリー)
3R 1'19" TKO (レフェリーストップ:右ハイキックでのダウン後)


 地元の人気選手であるケマヨを相手にしたため、一方的にブーイングを浴びるシュルト。一方K-1にとってはニューフェースのケマヨは、「黒いアゲハチョウ」の異名を取るトリッキーな選手。
 序盤からシュルトが身長差を活かしたパンチ連打でどんどん前に出てくる。だが、間合いは明らかにシュルトのもの。隙をみて打ち返すケマヨの距離にはシュルトの頭が無い。パンチでコーナーに詰めて、ローをぶち込むシュルトのペースで試合が進む。本来スロースターターのシュルトの事、二回戦に入ってようやくエンジンが掛かったと言う所か。
 前蹴りとローで前に出るシュルト。だが反撃したケマヨのパンチを封じに言った時のクリンチにイエローカードが出る。恐らく得意のヒザに行くリズムを身体が憶えてしまっているのだろう。パリルールではヒザ禁止のため、無意味なクリンチに映ってしまう。同じ展開に今度はレッドカードが提示。若干、それに精神的にひるんだか、シュルトの攻めが緩慢になった隙を突いて、パンチ連打にくわえて捨て身の胴回し回転蹴りを繰り出すケマヨ。
 最終ラウンド、シュルトは右のスネが割れた状態だったが、コーナーに詰めたケマヨの頭にその右でハイキックをぶちこむ。ガードごと吹き飛ばされ、ふらついたケマヨにスタンディングダウンが宣告され、客席からはブーイングがわき上がるが、勝利はシュルトに。


第9試合 決勝 3分3R(延長2R)
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
×ナオフォール・“アイアンレッグ”(フランス/ゴールデン・グローリー)
2R 2'32" KO (右フック)

※シュルトが9/23 GP開幕戦 大阪ドーム大会の出場権獲得

 準決勝で割れたスネの影響が心配されたシュルトだが、決勝のリングには棄権せずに上がって来た。一方、初出場にして決勝に駒を進め、大会の台風の目となったナオフォールは、余りダメージを感じさせないままで若干コンディション的には有利か。
 身長差16センチを感じさせない積極的な攻めで、巨人の顔面にハイキックを飛ばして行くナオフォール。前蹴りで距離を作りながらプレッシャーをかけるシュルト。2Rも序盤同様早いパンチで距離を詰めようとするナオフォールだったが、リーチ差を活かしたシュルトが右のフック一閃。そのまま四つん這いになったナオフォールは立ち上がる事ができず。KO決着となった。
 これまでアクシデントが多く、なかなかK-1戦線の中で浮上のチャンスをつかむ事の無かったシュルトだが、遂に眠れる巨人の実力全開となったトーナメントだった。

Last Update : 05/29 12:17

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