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(レポ&写真) [HERO'S] 3.26 さいたま:宇野、ハンセンに逆転KO負け

TBS "HERO'S(ヒーローズ)"
2005年3月26日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ  入場者数:12,754人

  レポート:井原芳徳  写真:小林秀貴  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

◆ HERO'Sの総合格闘技ルールの特徴
・判定基準の重要度順はダメージ、コントロール、アグレッシブネス、ウェイト。各ラウンドごとに10点法で採点。合計が同点の場合、試合全体の流れを考慮しどちらが優勢だったかを判定。よってドローは無し。
・グラウンドは足裏以外が継続的にマットについた状態をさす。
・グラウンドの相手の頭部・顔面への蹴りは、中量級では禁止。それ以外の試合では、15kg以上差がある場合(軽量の選手が90kg未満の場合は10kg以上差の場合)、軽量の選手が蹴りの有無を選択できる。
・後頭部・延髄・脊髄への打撃は禁止。頭部・顔面への肘打ちは禁止。
・有効な攻防が見られない場合、レフェリー・ジャッジが口頭で注意を促し、5〜10秒を目安に改善されなければブレイクがかかる。


第3試合 5分3R
×宇野 薫(日本/和術慧舟會東京本部/69.7kg)
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/チーム・スカンジナビア/68.9kg)
3R 4'48" KO (左膝蹴り)


 昨年12月の修斗代々木大会で計画されながらもハンセンの怪我で流れたこの黄金カードが、HERO'Sの舞台で実現。修斗世界ウェルター級2位のハンセンと、6位の宇野。共に元王者。川尻達也の持つ世界王座の次期挑戦権を賭けた争いという見方が強かったせいもあり、古くから宇野を見続けている修斗ファンの間では、HERO'Sでの対戦に賛否両論が巻き起こった。
 試合順は第3試合。扱いが悪いようにも思われたがそうではない。4時スタートのイベントが終わるのはだいたい8時頃。夜7時からスタートするTBSのテレビ中継は、各試合の経過を横目で見ながら秒単位の編成作業を迫られ、約4時間のイベントを2時間の枠におさめなければならない。これはK-1 MAXの中継と同様の手法。今回の宇野戦は7時からの中継の一発目に抜てきされたが、これは最近のMAXの中継での小比類巻の試合に相当する。最初の試合で視聴者をツカまなければならない重要な役目で、番組でもちゃんと「元修斗王者」と紹介された二人の戦いは、テレビコンテンツとしてそれだけのバリューを持っていることの現れでもある。そして実際繰り広げられた試合内容もそれにふさわしい、めまぐるしく攻守の入れ替わる劇的な内容となった。

 裁くのはパンクラス出身の梅木良則レフェリー。ライバル団体・修斗の関係者からもそのレフェリング手腕を評価する声が聞かれる人物だ。ジャッジは平直行、和田良覚、岡林章の3氏。中でも岡林氏は今年からプロ修斗のレフェリングも行っている。ルールは後頭部打撃が禁止な点と、ブレイクが少し早い(DEMOLITIONとほぼ同じ)以外、プロ修斗とほとんど同じ。元々二人が闘う予定だったプロ修斗にかなり近い環境が整えられたことも、二人が力を発揮しやすかった一員かもしれない。

 先手を打ったのは宇野。ハンセンのローをつかみテイクダウンに成功する。宇野は腰を浮かしてパンチを落とそうとするが、ハンセンは長い足を活かして宇野をコントロールし、顔面の蹴り上げで襲いかかる。早くも宇野は鼻血。宇野がハーフガードになるとハンセンはスタンドに戻し、サイドスープレックスのような形で豪快に投げ飛ばす。
 しかし簡単には上を取らせない宇野。立ち上がると背後にしがみつくハンセンの腕を桜庭のように絡み取り、グラウンドに持ち込む。それでもハンセンは立ち上がるが、宇野は立ち上がり際にシウバのような膝蹴り。脇を差すと川尻戦でも見せたようなローキックを放つ。だがハンセンは宇野の両腕の隙間にねじ込むような強烈な左アッパー。宇野はアッパーを嫌いコーナーに追いつめると、足を引っ掛けてテイクダウン。しかし下になったハンセンはすぐさま腕十字。外されると顔面を蹴り上げようとするが、宇野はうまくサイドに回り込むと強烈なパウンドをハンセンの顔面に連打する。

 ここでようやく1R終了のゴング。総合格闘技の新旧あらゆる技術が総動員され5分間に凝縮されていた。お互いの集中力と頭の切り替えの早さは半端ではない。
 テレビ中継ではカットされた2R目も、宇野が上からパンチを落とし、ハンセンが下から蹴り上げる展開からスタート。いったんハンセンがひっくり返して上になるが、目立った攻撃はないままスタンドへ。このあたりから消耗戦の様相を呈し始め、数十秒攻めた側が攻め疲れ、逆に攻められた側が反撃するという展開の繰り返しに。鼻血の止まらない宇野がやや不利なようにも見える。

 最終ラウンド。おそらくこのラウンドを取った方が勝者になるだろう。ハンセンはゴングが鳴るとパンチと膝で先制し、テイクダウンに成功。宇野がリバーサルに成功した際にハンセンが腕十字を狙うが、決まりが浅く宇野は逃げてスタンドに。アリ猪木状態から宇野は側転パスガードを2回試みるが、ロープに邪魔され失敗してしまう。しかしハンセンの長い足を折り畳むと、UWFを思わせる回転系のムーブでバックポジションを奪取。宇野にようやくチャンスが回って来た。だがそれでも足のクラッチで捕まえることができず、両者再びスタンドに。

 主導権は宇野に回って来た。その後もテイクダウンを奪ってもなかなか優位なポジションをキープできなかったが、疲れが激しいハンセンは防戦一方。残り2分、四点ポジションに回り込み、ハンセンが片足タックルでしがみつくと、宇野は奇襲のアームバー。レフェリーは一瞬キャッチサインを出す。だがポイントがずれてしまいスタンドに。ハンセンがパンチで攻め込むが、スタミナ切れの影響で序盤のような勢いが皆無。宇野は押し込んでタックルで持ち上げてテイクダウンに成功する。

 ここで残り1分のアナウンス。このまま優位をキープすれば宇野の勝ちは間違いないムードに。しかし1年前の川尻戦同様、宇野に“魔の3Rの悲劇”が襲いかかる。
 宇野は上からパンチを落とそうとするが、さすがにスタミナが切れ勢いがない。サイドに回ろうとしたところでハンセンが腰を浮かせると、宇野は対抗できずそのままスタンドに戻されてしまう。残り17秒、前に出るハンセンに対し、宇野は後ずさり。なんとここで宇野は右斜め後ろのニュートラルコーナー下の時計の残り時間を確認してしまい、前を向き直したところ、がら空きのアゴにハンセンの渾身の左膝が直撃。宇野は大の字に倒れ、まさかの大逆転負けを喫してしまった。

 体力消耗と膝蹴りのダメージが相まって、しばらく立ち上がれなかった宇野。意識朦朧としながらも最後は一人でリング中央に立ち、四方の観衆に深々と頭を下げた。単純に勝てなかったことの謝罪だけではない。修斗のリングを離れてまでもハンセン戦にこだわり続け、最後は自分のミスで勝てる試合を逃してしまったことへの、昔からの宇野ファン、修斗ファンへの謝罪の意も込められていたように見えた。その後宇野はセコンドに両肩をかつがれながら退場していった。謝罪の光景はテレビ中継されなかったが、この大会で筆者が一番感動させられた場面だった。

 ヒーローという言葉の頭には、「悲劇の」というフレーズが付けられることがよくある。この日の宇野はまさしく「悲劇のヒーロー」だった。ファッションリーダーとファイターというギャップの大きい二つの顔を持つ「総合格闘技界のプリンス」が、HERO'Sの第一話でいきなり挫折。TBSの思惑は外れたと思われるが、こんな非情なドンデン返しを思いつく有能な作家は、TBSのドラマ制作者にもそうはいないだろう。
 前田日明スーパーバイザーは「80年代のボクシングのミドル級黄金時代をHERO'Sの総合の舞台で復活させます」と宣言していたが、黄金時代のドラマの第一章は、堕ちたプリンスが、宇宙人系の風貌でテレビ向けインパクト大の「戦慄の日本人キラー」への復讐を目指すストーリーから始まった。そしてそのストーリーには、選手たちの高い技術と信頼できる審判団の運営技術という、まっとうなスポーツとしての下地がしっかりとあり、昔からのファンも安心して見ることができる。何かと課題の多い船出となったHERO'Sだが、この宇野×ハンセンの名勝負からは、黄金の金脈からの一筋の光明を見い出せたような気がする。
 
 

第4試合 5分3R
○須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ/71.8kg)
×ラモン・デッカー(オランダ/リングス・オランダ/75.8kg)
1R 2'54" 一本 (ヒールホールド)


 デッカーの打撃を警戒した須藤は、距離を取って周りながら様子を伺い、パンチをふってからタックルで組み付いてテイクダウン。そのままサイドポジションを奪う。デッカーは須藤の首をがっちりと抱えて防御するが、須藤は抜いてトップポジションに戻すと、腰を浮かして両足を抱えた。
 「地獄の風車に対抗して、回転技を出す」と予告していた須藤。普段ならここからジャイアントスイングで振り回してから、アキレス腱固めを極めるのが得意パターンだ。しかしロープ際ということもあったが、「スタンドの打撃で威圧感があって、気が抜けなかった」「直前の試合で宇野さんが逆転負けして、気が引き締まった」、さらに「左膝の怪我が治りきっていない上、4日前に右足親指を脱臼した」ことから、安全策をチョイス。そのまま後ろに倒れてアキレス腱固めを極める。
 だが4年前から総合の練習をしていたデッカー。防御方法はインプット済みだ。回転してポイントをずらして、逆に須藤の足首をつかんで極めを狙う。「ある程度寝技もできる」と読んだ須藤は、ヒールに移行。それでもデッカーは立ち上がってパンチを撃ち落とすが、そこで動きが止まってしまい、最後は須藤のヒールの餌食となりタップした。

「勝てば官軍じゃないですかね」
 試合後のインタビュースペースで須藤は「今日は何%の出来?」という質問にこう答えた。“変幻自在のトリックスター”も、満身創痍の今回ばかりは、何が何でも勝つということに固執せざるをえなかった。警備員のコスチュームを着た男たちが非常灯を振り回し千手観音を模した入場パフォーマンスも、前日夜中まで準備に追われた。左右にコスチュームを破いて須藤の姿が現れる場面では、呼吸が合っていなかった。過去のパフォーマンスの中でも数段クオリティが落ちた感は否めない。試合と並んで、入場パフォーマンスは須藤元気の試合を形作る重要な要素である。

 今回のHERO'Sは、須藤に限らず準備不足の選手が多く、実力を発揮できないまま敗れた選手、本来の勝ち方が出来なかった選手がほとんどだった。
 温厚で慎重な表現だったが、共同インタビューで須藤は主催者側にこう苦言を呈した。

「最近の格闘技のイベントは、選手よりも興行をやることに意識がいっている気がします。準備不足のまま選手がリングに上がり、本当の実力を発揮できない傾向が続いています。このままでは興行が共倒れになってしまいます。最低でも2ヶ月前にオファーしてもらって、1ヶ月前に相手を決めてもらえれば助かります」

 何千万・何億という金が動き、巨大化したメジャー格闘技業界。しかしそれを支えるのは選手たちの日々の地道なトレーニングと節制である。「どんな時にオファーを受けてもいいよう、体調を整えておくのが選手の役目だ」という声もたまに聞かれるが、全身を無謀なぐらいに激しく動かすことになる総合格闘技・キックボクシングをする選手たちに、それを求めるのはあまりにも酷な気がする。余談だが、知性あふれるコメントを常々発する須藤に、筆者は時折プロ野球の古田敦也の姿がダブることがあるが、選手側から業界を改善していこうとする意識を持ち、誠実に対応する姿勢にも、どこか共通点があるような気がした。
 だが大会のスーパーバイザーの前田日明氏も、晩年は怪我に泣かされ続けた一人。選手たちの苦しみを身を持って知っている。大会後、怪我人が多かったことについて「主催者として頭を下げないといけない。本来2ヶ月前にオファーすべきだった」と素直に反省の弁を述べた。次回以降の大会もTVの改変期にあたる6月末か9月末となる模様だが、もしそうなるならば、4月中あるいは7月中に選手に出場オファーをかけることが必須となる。旗揚げ大会は華々しく終わったが、ハッピームードはこの日だけで十分だ。プロモーター側の次回大会への準備は、今大会が終わった時点で既に始まっていなくてはならない。

 なお、敗れたデッカーも、この試合に向けて1週間しか準備できなかったことを明かした。足関の対処は付け焼き刃ではないことは確か。これで準備万端にすれば、中量級のミルコ・クロコップになったとしても不思議ではない。そして本人もその道にやる気まんまん。本職のキックの試合もやっていきたい意向で、これからの動向が非常に楽しみである。



 

◆ 前田、ファンの歓声に感動

 開会式冒頭では前田日明スーパーバイザーがリングに上がり、紙を読みながらだったが、格闘技界の先達である力道山、カール・ゴッチ(前田氏の格闘プロレスの師匠)、エディ・タウンゼント(日本で6人のボクシング世界王者を育てた名トレーナー)、大山倍達の4氏の功績を讃えた。直接の師匠にあたるアントニオ猪木氏の名前は出無かった。
 選手入場セレモニーで流れた曲、リングアナウンサー、前田氏がリングサイドで着ていた赤いジャケット。いろんなところでリングス色が見られた。しかし大会前や休憩時間には、花道中央のDJブースからヒップホップが流されたりと若者向けの演出もなされていた。オールドファンと新興ファンを取り込むブランドイメージが今後どう練られていくかも楽しみである。
 発表された入場者数は12,754人。同規模の会場サイズで行われる時のPRIDEにはまだまだかなわないが、前田氏も上井文彦ビッグマウス社長も、1ヶ月足らずの準備期間でこれだけの観衆を集められたことに手応えを感じていた。閉会式で「前田」コールが起こったことについて聞かれた前田氏は「涙を流しそうになったんで、早く退散しました」と照れ笑いを浮かべていた。


 

第9試合 5分3R
×秋山成勲(日本/フリー/89.7kg)
○ジェロム・レ・バンナ(フランス/ボーアボエル&トサジム/120kg)
1R 2'24" KO (左膝蹴り)


 サウスポーからジャブでけん制するバンナを、秋山はロープに押し込んでテイクダウン。ハーフガード、ニーオンザベリーまで行く。だがバンナも柔道出身。試合迄の2週間、道衣を着た相手と練習を重ねたことで「寝技でも焦りは無かった」といい、秋山がバランスを崩した隙を突き暴れて脱出。スタンドに戻す。左ハイキック2発は空振りするが、秋山を威嚇するには十分だ。またも秋山は組み付いてテイクダウンするが、「あまりにも体重差がありすぎた。体幹の太さが違う」と振り返ったように、思うように巨体をコントロールできない。バンナは再びスタンドに戻すと、焦りの表情を見せ始めた秋山に左ミドル。さらに後ずさりした秋山の顔面に左膝蹴りを2発お見舞いし、念願の総合初勝利をおさめた。
 

第8試合 5分3R
○ボブ・サップ(アメリカ/チーム・ビースト/160kg)
×キム・ミンス[金 岷秀](韓国/リングス・コリア/115.5kg)
1R 1'12" KO (右ストレート)


 サップは開始早々ミンスの道衣をつかんで突進するが、ミンスが強引にパンチを振り回してサップの頭部に当てると、サップは亀になるいつもの悪いパターンに。鼻血を出し、ドクターチェックを受ける。だが逆にこのチェックが仕切り直しの格好となり、サップは再開早々に右ストレートで突進する。ミンスも左ストレートでぶつかっていったが、柔道の癖でがら空きだったアゴにサップのパンチが炸裂。マットに沈み、デビュー戦黒星を喫してしまった。
 

第7試合 5分3R
×ヒース・ヒーリング(アメリカ/リングスUSA/110.5kg)
○サム・グレコ(オーストラリア/チーム・グレコ/108kg)
1R 2'41" TKO (レフェリーストップ:右足の負傷)


 ヒーリングはミルコ戦のようにしつこくタックルを仕掛け、テイクダウンに成功。サイドポジションを奪取するも、こう着状態に陥ってしまい、ブレイクがかかる。スタンドで再開直後、ヒーリングは左ローを放った時に軸足の右足を負傷。そのままスリップしてグレコがサッカーボールキックを放ったところでレフェリーが試合をストップした。
 まるでミルコ vs. バーネットを思わせるアクシデント決着。一概に断定はできないが、これも急遽試合が決まったことでの調整不足の影響かもしれない。グレコも再戦を希望しており、実現を期待したい。
 

第6試合 5分3R
×BJペン(アメリカ/BJペンMMA/86.5kg)
○LYOTO(ブラジル/チーム・イノキ/102kg)
判定0-3 (平30-30 LYOTO優勢/岡林29-30/梅木29-29 LYOTO優勢)


 1Rから3Rまで、両者の押しくら饅頭のような展開の繰り返し。BJは「いつもこのウェイトで練習している」と増量は問題ないと語っていたが、明らかにスピードとキレが感じられない。LYOTOも途中のパンチで左拳を痛め精彩を欠いてしまい、むなしい勝利となってしまった。
 

第5試合 5分3R
○ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー/119.7kg)
×アラン・カラエフ(ロシア/リングス・ロシア/180kg)
1R 2'58" 一本 (前腕ギロチンチョーク)


 カラエフはパンチで突進してグッドリッジを押し込んでテイクダウン。上から頭を抱え込み体力を奪おうとする。だがグッドリッジにリバーサルを許すと、サイドポジションから前腕を首に押さえ込まれる、中邑×イグナショフのようなフィニッシュでカラエフはタップ。あっけない幕切れとなってしまった。グッドリッジも直前のオファーで急遽出場した選手。本来ならこんな地味な技で勝ちを奪う選手ではないはず。ここでも急遽大会を開いたことの問題点が露呈していた。
 

第2試合 5分3R
×宮田和幸(日本/フリー/69.6kg)
○イアン・シャファ(オーストラリア/リングス・オーストラリア/69.6kg)
判定1-2 (平28-29/和田28-29/礒野29-27)


 レスリング元五輪代表の宮田が得意のタックルで何度もシャファを倒すが、その先の攻め手に欠き、ブレイクがかかる展開が繰り返される。シャファも下からの柔術系の仕掛けとスタンドのパンチで応戦する。宮田はスタミナ配分のミスと2月のK-1 MAXのダメージの蓄積による練習不足で、次第に失速。判定は割れたが、またも黒星を喫してしまった。
 鳴り物入りで総合に転向した宮田だが、連戦の影響を差し引いても、総合への対応度がまだ低いことを露呈してしまう内容に。同じレスリング出身のKIDも修斗のアマ(クラスC)、プロ2回戦(クラスB)で実績を積み、3回戦(クラスA)でも強豪パーリング相手に秒殺負けを喫し、厳しい下積みをしてきた上で今の地位に立っている。宮田の素質は誰もが認めるところなのだから、主催者側も長い目で見守って育てていって欲しいものだ。
 

第1試合 5分3R
○大山峻護(日本/フリー/89.4kg)
×ヴァレンタイン・オーフレイム(オランダ/リングス・オランダ/99.5kg)
1R 1'28" 一本 (アンクルホールド)


 素早い右ハイを放ちながらプレッシャーをかけるヴァレンタインに対し、大山はかつてのように真正面から打ち合わず、ロープに押し込んで防御。引き込んでアキレス腱固めを狙うと、ヴァレンタインもヒールホールドを仕掛けようとする。足関合戦となったが、大山がアンクルに移行するとこれが見事極まった。
 大山の勝ち星は02年6月のPRIDEでのヘンゾ戦以来約3年ぶり。関節技での一本勝ちはプロになってから初めてだ。足関はセコンドの山田学から学んだもので作戦どおりだったという。空手の数見肇には闘う心を学んだ。「今までは自分の打撃を過信していた。元々持っている柔道とサンボの技を出せば勝てると思った。原点回帰。これからはそれでいきます」と晴れやかな表情で語った大山。PRIDEから主戦場を移し、ようやくこれからブレイクしていきそうな気配だ。「ホイス・グレイシーとやりたいですが、実績を積んで一歩一歩進みたい」とも語っており、以前のように一気に大物と闘うような無謀さは鳴りを潜めたが、逆にこの慎重さは、総合キャリア4年を通じ、強くたくましくなったことの現れかもしれない。
 

オーニングファイト 5分2R
×内藤征弥(日本/和術慧舟會A-3/90.5kg)
○ハリッド・“ディ・ファウスト”(オランダ/ゴールデン・グローリー/94kg)
判定0-3 (平18-20/松本18-20/梅木18-20)


 1R、先にテイクダウンに成功したのは内藤だが、パスガードの後にリバーサルを許してしまう。終盤には逆にテイクダウンされる。2Rも同様にリバーサルされ、下から三角を狙うが極まらず。スタンドでパンチをもらううちに鼻血を出すようになり、ジャッジに好印象を与えることができず惜敗した。

Last Update : 03/29 00:10

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