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(レポ&写真) [PRIDE GP] 8.15 埼玉:2/60億に悪夢のアクシデント

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE GRANDPRIX 2004 FINAL ROUND"
2004年8月15日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ  観衆・47,629人(超満員札止め)

  レポート:河野俊彦  写真:井原芳徳  コメント編集:永塚和志
  【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第7試合 PRIDE GP 決勝 1R10分/2R5分
−エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/レッドデビル)
−アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
1R 3'52" ノーコンテスト (バッティングによりヒョードル負傷)

「夢の決勝“60億分の2”に悪夢のアクシデント」

 5ヶ月のロングランとなった今回のPRIDE GPだが、決勝に勝ち上がってきたのはやはりこの二人だった。大会のキャッチフレーズは「60億分の1」。PRIDE GPこそが地球全人口60億人から選びぬかれたたった一人を決める戦い、と位置づけた稀有壮大なものだ。その伝でいけば、決勝のリングに上がった二人は「60億分の2」の位置まで歩を進めてきたことになる。

 奇しくもこの組み合わせは昨年3月のPRIDE.25でのヘビー級タイトルマッチと同じであり、1年半ぶりの再戦となる。その後、ミルコを破って暫定王座についたノゲイラと、イノキボンバイエでの転出トラブルを経ても王座を譲らなかったヒョードル。ともに無敗のままくぐってきた一年半の修羅場がお互いをどう変えたか、この一戦が証明することになる。

 ヒョードルの左に合わせてタックルで下に入ったノゲイラは、早速足取りを仕掛けにいく。強い腰で踏みこたえたヒョードルは、そのまま押しつぶして上に。ヒョードルの右手をつかんで離さないノゲイラはスタミナの差を意識してか、そのまま十字、三角と早い仕掛けを狙っていく。一方、瞬時にガードを離れて立つヒョードルは、体重の乗ったダイビングパンチをぶち込んでくる。お互いの持ち味を出し合う序盤戦。

 しかし、ここで悪夢のアクシデントが発生する。パスを狙ったか、右グラウンドパンチを放とうとしたのか、上半身に体重を預けて前に飛び込んだヒョードルと、受け止めようとしたノゲイラの頭がバッティングしたのだ。ヒョードルの右眉上がぱっくり割れ、大流血となる。4〜5センチの幅で傷が発生しており、頭蓋骨の骨膜部分にも達する深さであると伝えられる。リング上でドクターやルールスタッフ、榊原信行DSE社長も含めた協議が行われ、試合中断が長引く。

 ルール上は、1Rでの偶発的事故による試合中止はノーコンテストになると定められている。主催者からは両陣営セコンドに対して、ドクターストップを前提とした申し入れが続く。ほかならぬGP決勝だけに、普通の一戦のように簡単にはノーコンテスト裁定は受け入れられそうにない。当然、客席を埋め尽くした5万近い観衆も、奇跡の再開を期待して、誰一人客席を離れようとはしない。

 リング上では体温を下げないために細かく体を動かし続けるノゲイラと、ドクターからロープ越しに治療を受け、コーナーに体を預けるヒョードルの二人。だが、“60億分の2”まで上り詰めた二人の男の対決は、最後の瞬間、クライマックスを宙づりにされて終わろうとしている。

 長い中断の後、島田裕二ルールディレクターがリング上でマイクを取り、ノーコンテストの理由説明を行ったが、島田氏のキャラもあってかブーイングが鳴り止まない。続いて、TV解説席を離れた高田延彦統括本部長が続いてマイクをとり「これはアクシデントであり、故意ではありません。二人はこの日を目指してすべてを投げ出して準備してきました。でもこの事故は“選手生命”じゃなく“生命”が掛かったものです。どうか理解してください。必ずこの試合の再戦は行います。二人の選手に拍手をお願いします」と語り、ようやく場を収拾させた。

 今回、選手の安全と競技性を堅持した主催者側の決定は、非常に勇気ある決定であり高く評価すべきであろう。大会後ヒョードルは右眉上を9針縫ったことを明かし、傷が治り次第、年内に再戦したいと語った。最終決戦の舞台として考えられるのは、10/31(日)のPRIDE.28さいたまスーパーアリーナ大会か、大みそかの男祭りだ(10/14(木)PRIDE武士道其の五・大阪城ホールも決定したが、この試合が行われる可能性は低い)。不幸にしてPRIDE最強を決定する一戦は今回決着を見なかったが、次回以降実現は必至で、確実に期待は繋がれた。今はその日の訪れを静かに待つことにしたい。

◆ ヒョードル「(決勝戦がノーコンテストになったが?)大変残念で、悔しい気持ちだ。こんなことは望んでいなかった。しかしこういう偶然は、この競技では起こりうることだ。(アクシデントまで試合を優位に運んでいたように見えたが?)早い段階で傷を負ってしまったが、それまでの展開には満足している。(ノゲイラは対策を立てていたように見えたか?)確かにノゲイラの技術は向上したと思う。しかしそれはノゲイラだけではなく、私も、他の選手も同様だ。私は常に技術を向上させようとしている。今日もノゲイラにいい角度でパンチが入っていた。(グランプリ決勝は年内に行いたいか?)もちろん、年内にもう一度ということで賛成だ。そのために、早くこの傷を治すのに集中したい。」

※ノゲイラは試合直後はノーコメントだったが、大会2日後にDSEを通じコメントを発表している。(全文)

◆ 榊原社長「メインの結果を含め、PRIDEの魅力の詰まったPRIDEらしい大会だった。ノゲイラもすんなり気持ちが切り替わるわけではないと思うので、少しクールダウンしてから考えてもらいたいが、ヒョードルの回復も待って、10月か12月のいずれかに再戦させたいと思う。統一戦のように、タイトルとGPのチャンプの両方を賭けたい。(再戦のラウンド制は?)プロモーターの立場としては3Rの通常ルールでやらせたいが、両選手の思いがあってのことなので(意向を聞いた上で決めたい)。(裁定に時間がかかったのは?)優勝賞金も名誉も地位もかかった大一番だったので、両チームへの説明に時間がかかった。今後はもっと早く対応できるようにしたい」


第3試合 PRIDE GP 準決勝 1R10分/2R5分
×小川直也(日本/フリー)
○エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/レッドデビル)
1R 0'54" 腕ひしぎ十字固め


 好カードの並んだ今大会にあってもやはり一番の注目カードとなるのは、このハッスル旋風を引き起こした小川と、現ヘビー級王者ヒョードルの一騎討ちだろう。青コーナーからいつもどおりの冷徹な表情で淡々と入場する王者に対して、小川はテーマ曲前に“ハッスル音頭”に腰を振るオーちゃんアニメが付け加えられる、あざといまでの“ハッスル”アピール。しかし、開幕したばかりのアテネオリンピックとの相乗効果もあってか、小川に対する声援は熱狂的に会場を揺るがす。

 マットに目を落としたままのヒョードルに対し、小川はじっと相手をにらみつける。開始早々、アッパーから左右ストレートで遮二無二前に出るヒョードル。体重の乗ったパンチが突き刺さるように小川の顔面にヒットする。なんとかコーナーに逃げた小川は、胴に抱きついて横投げにしようとするが、ヒョードルは体重移動で逆に仕掛けた小川を下に組み敷く。そのままマウントを奪い、横にターンして逃れようとした小川に腕十字を仕掛ける。必死に腕をロックし、足での突き放しを狙った小川だが、ヒョードルは差し込んだ腕を左右に切り変え梃子を利かせる。テクニックと膂力の両面攻撃を仕掛けてくるヒョードルの攻めに、腕を明け渡す小川。この間、わずか54秒。フルラウンドを戦い抜いたノゲイラとは対照的に、無傷で緒戦を乗り切ったヒョードルがPRIDE完全制覇に歩を進めた。

 一方敗れた小川は、異例の敗者マイクを強行する。
「今まで応援どうもありがとうございました。負けてマイクは大変情けないですけれど、この三回、4月6月8月と応援どうもありがとうございました。PRIDEに感謝したいです。勝っても負けても、かっこ悪いけど…ハッスルだけやらしてください。負けたけど、俺はハッスルするぞ。みんなありがとう!」
 最後まで傍若無人なチキンキャラを押し通しながら、アスリートとしての勝負に再度身を投じた小川の潔さは、確実にGP全体に熱を与えたといえるだろう。
 小川は試合後ノーコメントだったが、榊原社長は「またPRIDEに上がって欲しい。今日の結果は悔しいはずだから、これで引き下がるはずはないと思う」とエールを送った。

第2試合 PRIDE GP 準決勝 1R10分/2R5分
○アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
×セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップチーム)
判定3-0


 ブラジルvsロシア、サンボvs柔術と、明快な対立の構図の見えるこの一戦。
細かいジャブの打ち合いから緊張感の漂う序盤、パンチにはパンチ、ローにはローと両者の意地が覗く攻防となる。軽いジャブながら、ノゲイラの左が二発三発とハリトーノフの鼻を捉え、プレッシャーがかかる。ノゲイラは押しの圧力に乗じてタックルを仕掛ける。フロントチョークに取ったハリトーノフだが、首を抜くと素早く下からの三角を仕掛ける。吊り上げて頭部からマットに落とすハリトーノフ。アリ猪木状態になるが、長い足を巧妙に使ったノゲイラは、ハリトーノフがインサイドガードに入ることを許さない。ローを散発に放ったハリトーノフだが、攻め手に欠き、ブレイクが命じられる。

 スタンドに戻るとハリトーノフは序盤にも見せていたボディパンチ、踏み込んだノゲイラのパンチを読んだカウンターと、細かいテクニックを見せる。タックルで入ったノゲイラだが、再びフロントチョークに取る。胴を抱えて、上のポジションを確保したノゲイラはサイド〜ニーインザベリーと有利なポジションをキープ。ようやくラスト30秒でマウントを奪取して、抱きつくハリトーノフの側頭部にパンチを入れていくが、このラウンドでは勝負を決めるには至らなかった。

 トーナメントルールでラストラウンドになる2R。ハリトーノフは肩から伸びてくる左ストレートを打つが、ノゲイラは1R同様細かい左ジャブでハリトーノフの顔面を赤く染めていく。飛びつきを狙ったか、ジャンプして膝を見舞ったノゲイラ。自ら下になるピンチとなるが、落ち着いてアリ猪木状態をしのぎ、すばやく立つ。スタンドに戻って、左ジャブでハリトーノフにプレッシャーをかけていく。組みにくるノゲイラをいなして、スタンドの攻防を望むハリトーノフ。ようやく左ストレートがノゲイラの顔面を捉えだした。しかしここでノゲイラは、胴タックルから腕を巻き込んでアームロックを狙う奇手を繰り出した。なんとか前転で切り抜けたハリトーノフ。ここでも勝負は付かず。決め手はなかったものの、着実に試合をリードしたノゲイラが、僅差でハリトーノフを突き放した。

◆ ハリトーノフ「(どういう作戦だった?)ノゲイラはスタンディングもグラウンドも強いので、両方に対応できるように練習した。今日は負けたとは思っていない。(判定に納得していないのか?)判定に満足してないわけではなく、次にいい試合を見せられるよう頑張るということだ。(ノゲイラの打撃は強かったか?)皆さん見た通り、ノゲイラの打撃によって私は特に大きなダメージを受けてはいない。普通の人と同じような打撃だったと思う。」


第6試合 ミドル級 1R10分/2,3R5分
○ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
×近藤有己(日本/パンクラスism)
1R 2'46" KO (ストンピング)


 5月の武士道で予定していたミドル級頂点対決は、ヴァンダレイの怪我で一旦流れた。だが今回GP決勝大会というベストの舞台を得て、ついに実現。近藤は一身に背負った期待を象徴するように、日の丸にパンクラスのマークを染め抜いた特製Tシャツでの入場。一方、半年振りのPRIDE復活となったミドル級王者ヴァンダレイ。リングインすると、得意の一本足回転で健在振りをアピールする。

 左ストレートで出る近藤。下がりながら早いワンツーを返すヴァンダレイ。スリップでバランスを崩した近藤の顔面に、ヴァンダレイの左、そして膝が打ち込まれる。めげずに前にプレッシャーをかけていく近藤に対し、ヴァンダレイは右のフックを打ち込む。スタンドファイトに徹した両者だが、コンビネーションの冴えるヴァンダレイの左右が、確実に近藤の顔面を捉えるのが印象に残る。

 それでも前に前に出る近藤の姿勢が勝負を分けた。ヴァンダレイは左をガードして、カウンターの右のフックで近藤を押し返す。一気に連打で畳み込んだヴァンダレイに、まっすぐ下がってしまう近藤。追うヴァンダレイは左を連続ヒットさせる。足がもつれた近藤はそのままダウン。ヴァンダレイは殺意のままに顔面にストンピングを落とす。二発三発とカカトが近藤のアゴに落とされ、瞬時に近藤の全身から力が抜けたのを見届けてレフェリーがストップさせた。(※追記:右に掲載した写真でも明白なように、フィニッシュのストンピング時にヴァンダレイ側にロープ掴みの反則があったが、主催者側は“流れの上での反則”として特に処置はしないようだ。)

 試合後、高田統括本部長はクイントン・ランペイジ・ジャクソンをリングに呼び寄せ、10/31のPRIDE.28で、ヴァンダレイ vs. ランペイジのミドル級タイトルマッチを行うと発表した。

◆シウバ「(近藤の印象は?)素晴らしいものを持っていると思う。重いパンチを当ててきたし。試合前から打撃でやると言っていたが、本当にそうしてきたから凄いファイターだと思った。(カウンター狙いだったようだが?)カウンター狙いは試合の中で思いついたことだ。ウェイトトレーニングをしてパンチの力がアップしている。(ヒザの調子は?)今は良い状態だが、少し痛みがある」

◆ 近藤「(シウバの印象?)強かったです。パンチの回転がやっぱり速い。今まで(の相手)はパンチを一つかわせば良かったが、それでは終わらないというか。(どういう作戦で臨んだ?)立ってパンチを当てて行こうと思ってました。(シウバのパンチは予想したよりも速かった?あるいは強かった?)予想は元々してなかったが、完全にやられちゃったですね。(でも)現時点で自分の最高は出したと思う」

第5試合 ヘビー級 1R10分/2,3R5分
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/チーム・クロコップ)
×エメリヤーエンコ・アレキサンダー(ロシア/レッドデビル)
1R 2'09" KO (左ハイキック→グラウンドパンチ)


 4月のGP一回戦敗退でPRIDE頂点制覇に急ブレーキをかけられたミルコ。だが武士道で2連戦を強行。続いて最大のリカバー手段として、宿敵ヒョードルの弟アレキサンダーを引っ張り出すことに成功した。先月の大山戦後も日本に長期滞在し、この一戦に汚名返上のすべてを託すこととなった。
 序盤から21キロの体重差をいかしてプレッシャーをかけるアレキサンダー。左フックがミルコの顔面を捉える。追い込んで組み付くアレクサンダーだが膝をぶち込んで突き放すミルコ。ローが、アレキサンダーの白い腿を赤く染める。

 コーナーに追い込んで顎に的確な左右をぶち込んむミルコ。この連打でアレキサンダーの足が止まる。組みに来たアレクサンダーを横投げにしてマットに倒す。アリ猪木状況から足にローをぶち込んで、再び立たせる。そして若干目に光のないアレキサンダーに、伝家の宝刀左ハイ一閃。棒のように崩れたアレキサンダーの顔面に、更に左コブシをぶち込むミルコをレフェリーが止めた。ミルコの次の試合は10月となる模様。榊原社長は「ヒョードル vs. ノゲイラの勝者との対戦につながるテーマの試合にしたい」と語っている。

◆ ミルコ「KOするつもりだったが、キックかパンチかは決めてはいなかった。(アレキサンダーの印象?)彼は良かった。ヒョードルの弟ということだけではなく、彼はいい選手だ。パンチは重くて、ハートも強く、そして向かってきた。将来強くなるだろう。(今日の試合の対策は?)実は9日か10日前に、トレーニングで右ヒザの内側じん帯を痛めた。2日間歩けず、歩き始めてから今日で1週間だった。ケガをしてから一発のキックもできなかった」

◆アレキサンダー「今回のミルコ戦は準備万端だった。私の攻撃にミルコは逃げていたようにも見えたが、彼も(私の攻撃を)予想していなかったのかもしれない」

第4試合 PRIDE GP リザーブマッチ 1R10分/2R5分
×ケビン・ランデルマン(アメリカ/ハンマーハウス)
○ロン・ウォーターマン(アメリカ/コロラド・スターズ)
1R 7'44" V1アームロック


 ランデルマンは見せかけの左フックから抱きつくと、体重差のあるウォーターマンをつりあげてのテイクダウンに成功。ハンマーハウスお得意の、インサイドガードから腰を浮かせたパンチを打ち込んでいく。ウォーターマンの密着に膠着イエローが提示されてブレイク。ランデルマンは低いタックルからロープ際の差し合いに持ち込むと、足を刈って二度目のテイクダウンに成功する。巨体に似合わず足の効くウォーターマン。オープンのハーフガードでランデルマンを捉えて逃さない。ランデルマンがパスを狙って足に神経を奪われた隙を突いて、ウォーターマンは中腰に。バックにしがみついたランデルマンを一本背負い風に投げて上になる。そしてそのままサイドからお得意のアームロックを決めてしまった。かつてのUFCヘビー級王者を破ったウォーターマン。PRIDEヘビー級トップ戦線に片足をかける大金星を手にする形となった。

◆ ウォーターマン「ランデルマンは良い友達だから、友達とパンチを打ったりするのはいやなものだ。最後サブミッションで極めたから良かった」

◆ ランデルマン「おれの寝技は本当にダメだ。バカなミスをした。しかし、試合内容に満足している。結果は結果だ」

第1試合 ミドル級 1R10分/2,3R5分
○中村和裕(日本/吉田道場)
×ムリーロ・ブスタマンチ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
判定3-0


 元UFCミドル王者はこれが三度目のPRIDE上陸。対する中村は先月末の武士道4でのメインから連戦状態だが、評価の低かったそのホジェリオ戦の汚名返上の意味もある。本年度屈指のスーパーイベントとなった今大会のオープニングマッチであり、来年に予定されるミドル級GPの出場権をかけた一戦と言われるだけに、両者ともに試合に賭ける意義は大きい。
 ゴングと同時にパンチで飛び込んできた中村に対し、ブスタマンチはスカしてすばやい胴タックルでテイクダウンに成功するとハーフガードに。中村は隙を突いて立ち上がる。リセットされた戦いだが、またも中村の左フックはかわされ、序盤そっくりの形でタックルの餌食に。だが、ブスタマンチのねばっこい押さえ込みを押し返す形で、中村はロープを背に立ち上がることに成功する。

 スタンドでの差し合いに続いて、パンチの打ち合いとなるが、的確なヒットを重ねたのはブスタマンチ。しかし中村も組んでからの払い腰でブスタマンチをテイクダウンに成功する。際でのマウント奪取はブスタマンチの足に阻まれたものの、自ら立ち上がってのアリ猪木状態に。ブスタマンチのかかと蹴りが顔を襲うが、中村も負けずに上からの豪快なダイビングパンチを落としていく。オープンガードでの密着で中村を捉えようとするブスタマンチだが、中村は離れて再びダイビングパンチを見舞う。後半硬かった中村の動きがスムースになりだした印象が残る。

 中村の左ストレートは再びカウンターの片足タックルで捉えられロープ際に。しかし、中村は1Rでも形成逆転に成功した払い腰を繰り出す。ガードに捉えたブスタマンチの長い足のクロスが解けた瞬間に、すばやく立ちダイビングパンチ、そしてインサイドガードに戻っても腰を浮かせた状態からの連打で、攻めの姿勢を貫く。下からの十字を狙っていくブスタマンチのわずかな隙を突いて中村は自由に立ち寝を往還する。アリ猪木からのダイビングパンチ、同時に狙った側転パスは阻まれたものの、ガードの腿に蹴りを入れるなど中村の積極性が試合を支配する。

 最終ラウンドは一転激しいパンチの応酬となる。ブスタマンチの右が単発ながら中村の顔面を捉える。一瞬の隙に、中村がこの試合初めてのタックルを放ってテイクダウンに成功。スタミナ切れの気配の濃いブスタマンチ。パスを試みる中村だが、15分を戦い抜いた中村側も攻め疲れが見え、息が荒い。ブレイクとともにブスタマンチには消極イエローが提示される。スタンドに戻った両者。中村の左右のフックをかわしてブスタマンチはアッパーを放つ。中村はタックルで再度テイクダウンするが、フロントチョークで捉えるブスタマンチ。その首を抜いたところで、ゴング。判定は三者一致で攻めに徹した中村に傾いた。

◆ 中村「(今日の勝利は)率直に嬉しい。連戦だったので、勝ち負けよりも力を出し切ろうと思っていた。膠着したが納得している。昨日(アテネ五輪で)谷(亮子)さんと野村(忠弘)さんが金メダルを獲って、自分も燃えた」
※ブスタマンチはノーコメント

Last Update : 08/16

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