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(レポ&写真) [PRIDE.27] 2.1 大阪:ミルコ、無傷で武士道出陣。ケァー自爆

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE.27 凱旋 (TRIUMPHAL RETURN)"
2004年2月1日(日) 大阪・大阪城ホール

 ◆ フジ・関西テレビ等で2/8 (日) 24:15〜25:45放送  
 ◆ スカイパーフェクTV PPV完全中継


レポート:小林秀貴&井田英登 コメント編集:仲村直 写真:井田英登  
【→大会前のカード紹介記事】 
【→掲示板スレッド】

※オープニングに登場。「自称・統括副本部長の桜庭です。男の中の男たち、出てここいやー!」高田のお株を奪う絶叫で、選手を呼び込んだ。

第7試合 1R10分・2,3R5分
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/クロコップ・スクワッド)
×ロン・ウォーターマン(米国/コロラド・スターズ)
1R 4'37" KO


 すでにPRIDE武士道への参戦も表明しているミルコ。PRIDE-GP完全制覇を目指しての調整とは言え、連戦はあまりにリスキー。ライバルのノゲイラ、ヒョ−ドルらが四月までの完全休養を打ち出しているのとは対照的な姿勢でもあり、格下相手とはいえ単なる勝ち負けだけでなく「どう勝つか」が問われることになる。
 対するウォーターマンは188cm118kgのマッチョな元プロレスラー。PRIDE.24ではヴァレンタイン・オーフレイムをアームロックで下したものの、強さという点ではまだ今ひとつファンの支持を得ているとはいい難い。
 結果はこれまでミルコが築いてきたKOの「山」がまた一段高くなった格好だが、組み技の攻防をコントロールしたことで、ウォーターマンの評価も高まる一戦となった。

 開始直後、胴タックルで突進するウォーターマン。そしてその顔面を両手で押して、必死に抵抗するミルコ。しかし抗しきれずミルコがまさかのテイクダウンを許し、場内はどよめきと歓声が入り交じった声に包まれる。
 グラウンドではウォーターマンが上のポジションを取り、膠着の中にも緊張感が漂う展開。ウォーターマンはインサイドガードでネックロックとパスガードを交互に狙ったが、ミルコも強固なクローズドガードで相手の攻撃を許さない。なんとか立ち上がりたいミルコは、ウォーターマンがミルコの足をかついでパスガードを狙ったところを突き放し、スタンドへ。
 再開後、ミルコがこの試合で最初に放った左ハイが決定打となり、ウォーターマンは崩れ落ち、畳み掛けるようにミルコが放ったグラウンド状態での頭部への蹴りでレフェリーストップ。

 試合後リング上でマイクをとったミルコは「本当に強い選手と闘いたかったので、ウォーターマンと戦えてよかった。これで、 K-1 …いやPRIDE GPにでれるのでうれしい」とまさかの言い間違いをして、珍しく照れ笑いを覗かせる。
 バックステージでも「タフな試合に見えたと思うが、自分の寝技の防御が完璧である事を見せられたと思う。その意味で計画通り。20キロほど体重差があったが、試合で調整するにはちょうど良い相手だった。進化した自分をGPで見せたい。これから武士道までは日本に残って、TVに出たりインタビューに答えたりしたい。自分はインタビュー嫌いというイメージを持たれているが、インタビューに答えるのも仕事の一部だと思っている。高田道場にも出稽古に行って、桜庭や他のファイターとも練習したい。学ぶものがあれば学ぶし、自分からもいろいろ盗んで欲しい。今日は無傷で終わったので、武士道では久しぶりに10オンスのグローブを付けて闘ってみたい。武士道というおもちゃ箱的な大会の中で、自分がどんなルールでもできる事を見せたい。」と語り、絶好調ぶりを印象づけた。

第6試合 PRIDE GP サバイバルマッチ 1R10分・2,3R5分
○ヒース・ヒーリング(米国/ゴールデン・グローリー)
×ガン・マッギー(米国/ピット・ファイトチーム)
判定2-1


 頭を低くしてパンチで一気に距離を詰めようとするヒーリングに対し、マッギーもカウンター狙いの左右フックとキックで応戦する。身長208センチのマッギーに対し、184センチのヒ−リングはリーチ差が苦しい。飛び込んでのパンチを打っても、マッギーのカウンターが容赦なく顔面を襲う。正面でそれを喰わない為に、頭を下げて半分当て勘頼りのサブマリンパンチを打つヒ−リングだが、その分精度は下がる。スーパーヘビーにコンパクトで早い左右を振り、時折豪快なハイキックまでくり出してくるマッギー。“巨鯨vsシャチ”の構図で、手数に勝るものの、制空権争いではヒ−リング苦戦の印象で進んで行く。

 試合が動いたのは中盤。マッギーが自ら蹴りで前に出て行くと、ヒーリングは片足タックルでグラウンドに誘う。しかしマッギーは下から足関節狙いでリバーサル。さらにサイドポジションにつき、上四方の体勢からバックに回るなど、137kgの巨体の割に軽快なポジションチェンジを見せる。両者有効な攻撃を出せないままゴング。

 2R、ガードを下げ、右拳のみ構えてパンチを狙うマッギーに対し、時おり単発の攻撃を当てるヒーリング。右フックを当てられ、マウスピースが飛ぶマッギー。一瞬遅れてしゃがみ込んだ姿に“巨鯨倒れる”を予感した客席。しかし、直後に平然と拾っただけと判明。余裕で再びファイティングポーズを取ったマッギーに、場内からどよめきの声があがった。既にヒ−リングの方は右目が潰れ、攻勢は掛けるものの、ダメージの点ではかなり不利な印象が残る。

 3R、右フックでまたもマウスピースを落としたマッギーをコーナーに詰め、ヒーリングはラッシュをかけるが、有効打を出せない。マッギーには疲れが見られ、ヒーリングの大振りの左右フックに対し返す大振りのパンチも正確とはいいがたい。ラスト1分。ヒーリングはショートレンジからの左フックでマッギーのアゴを、右フックでテンプルを数発とらえたがKOはできず。判定はスプリットとなった。
 
 なんとか勝利を掴んだヒ−リングだが、頭部強打で病因直行。榊原社長はGP当確の御墨付きを与えたが、その切符を手に入れる為に大きな代償を払わされることになった。一方、準備期間の不足を訴えたマッギーは「オファーがあったのが試合の直前だったので、体を絞り込む事ができなかったが、勝てばGPに出られると言う話だったので試合を受けた。今度は万全の準備で来日したい」と訴え、逆に「UFC代表という意識はない。今はPRIDEのファイターだ」と言い放ちPRIDE定着をアピールした。

第5試合 PRIDE GP サバイバルマッチ 1R10分・2,3R5分
×マーク・ケァー(米国/チーム・ケァー)
○山本宜久(日本/高田道場)
1R 0'40" KO


 かつて「霊長類ヒト科最強」と謳われたケァーだが、2001年7月の「PRIDE15」でヒース・ヒ−リングに敗北を喫して以降、PRIDEマットには御無沙汰。その後もプロレス団体ZERO-ONEへの電撃移籍で契約問題を引き起こすなど、トラブルが相次いだことでマット界全体からも姿を消しており、すっかり“過去の人”と化した感がある。再び巷間の話題となったのは昨年、その凋落の過程を記録したドキュメント映画「スマッシング・マシーン」が全米TVネットワークで放映されたことによる。この作品で、ケァ−は過去の薬物使用やアルコール依存、周囲との軋轢など、スーパースターの虚栄の実体を公開、話題を呼んだ。2年7ヶ月ぶりのカムバック戦はそうしたダークサイドを精算し、アスリートとして再出発するための禊の一戦と位置付けられた。

 だが、Tシャツを脱ぎ捨てたその体は、かつての鋼鉄のような張りを失っており、みじめなまでに弛んだ筋肉を露呈している。やはり薬物使用の残酷な爪痕は、確実に彼の肉体を蝕んでいたのだ。

 開始早々、ケァーは胴タックルで踏ん張った山本の体を抱え上げ、グラウンドに持ち込む。だが次の瞬間、山本が戸板返しのようにくるりとリバーサルしてマウントを奪う。この時のあまりの圧力の無さは、いかに落ち目のケァ−とはいえ不可解極まりない。棒のように横たわり、全くのノーガード状態のケァーの顔面にパンチを連打する山本。既にケァーの意識が失われていたため、ただちにレフェリーが試合をストップした。あまりに呆気無い流れに観客も声を失ったが、どうやらケァ−はテイクダウンの瞬間マットに頭部を打ち、意識を喪失していたらしい。ケァ−は試合後もノーコメント。最後までマスコミの前に姿を現さなかった。試合内容のひどさもあるだろうが、その結果も踏まえて虚心坦懐に自らを語る心境にはまだ達していないようだ。

 一方、タナボタ的な勝利を得た山本は、フィニッシュはプロレス技のDDTであることを強調、「プロレスラーなんでね、いろんな技の引き出しはありますよ」と上機嫌。凋落の色の濃いケァ−に関しても「薬を使わなければこんなもんでしょう。彼は薬物なんかを使わないで、普通の人間として暮らして欲しい」とコメント。GP出場には既に決定事項と解釈「次の四月が勝負でしょう。チャンピオンクラスか、同志の田村さんが負けた吉田選手と闘いたい」とUの末裔である自らの立場を強く主張してみせた。
 

第4試合 1R10分・2,3R5分
○中村和裕(日本/吉田道場)
×ドス・カラスJr.(メキシコ/AAA)
判定3-0


 中村の柔道に対し、ドスもグレコローマンレスリングがベース。両者の組みのテクニック合戦が期待されたが、ドスJrは序盤に古傷の膝の故障が再発しふんばりが効かない状態。昨年6月のK-1 JAPANに参戦、掘を相手に互角に撃ち合った経験もあって、中村はロシアンフックを武器にスタンドを支配。組んでからの腰の強さ、寝技での積極的な仕掛け、全局面で中村が一枚上の印象。

 しかし、手負いのドスJrもキャッチされた二度の腕十字をポジションチェンジと釣り上げで外し、マルコ・ファス道場での一年の修行の成果を発揮。両者の気力が拮抗した形で、膠着戦が進む。
 
 セコンドについた吉田は千日手状況に「やられてもいいから、盛り上げてこい!」と発破をかける。この一言に奮起したか、中村は最終ラウンド外掛けでテイクダウンを奪い、ハーフガードからのパンチで一気に勝負をかける。さらに冷静にサイドポジションを奪うと、マウントへと移動し、 三度目の正直とばかりにまたもや腕十字へ。しかし今度は回転してドスが防御。意外なまでのMMA適応力を発揮してみせた。中村がガードポジションへ。試合は判定へもつれこむ。

 判定勝利でも満足の行かない中村は、四方に土下座。リング上でもバックステージでも「次は武士道で経験を積みたい」と語り「極めの強い吉田さんのような選手になりたい」と反省しきりだった。
 

第3試合 1R10分・2,3R5分
○ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー)
×アレクサンダー大塚(日本/AODC)
1R 5'25" 肩固め


 1R開始早々、ニンジャの首相撲から連打で放たれた右のヒザがアレクの急所を直撃。ニンジャは気付いた様子もなく、次の左ヒザを顔面に飛ばしており、おそらく故意ではなかった様子。だがこの一撃はファールカップが割れるほどの衝撃で、第4試合終了後に1R12秒からの試合再開という処置が取られた。

 再開後、スタンドで早いパンチを撃ち合う回復ぶりを見せた大塚。気力も去る事ながら、休場中の練習の成果が見える。ニンジャはそり投げでテイクダウンを奪い、アレクのサイドにつくと、バックマウントへ移行。執拗に首を狙うがやや乗りすぎか。アレクは亀の状態からニンジャを前に落としてタックルに持ち込むが潰される。ニンジャは仰向けのアレクを踏みつけサイドへまわると、ヒザとパンチを打ち込みつつ肩固めを極め、アレクからタップを奪った。

 アレク自身は「はじめにダメージを受けた自分の責任として、結果を受け止める」と語り、特に再戦を望む意志はみせていないが、相変わらずのプロ意識の高さで試合を成立させた姿勢は評価されるべきであろう。
 

第2試合 PRIDE GP サバイバルマッチ 1R10分・2,3R5分
○セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップチーム)
×LAジャイアント(米国/フリー)
1R 1'23" 腕ひしぎ十字固め


 ヒョ−ドルの離脱という緊急事態に、ロシアントップチームが送り込んで来た新エース候補。ロシア空挺部隊の現役戦士であり、コマンドサンボの使い手。14戦無敗というサンボ公式戦での戦績も去る事ながら、23歳という若さは今後の成長を期待させる。前回の武士道ではジェイソン信長を一蹴、「VTで闘う為に生まれて来た」とまで語る妥協のない試合内容は、ヒョ−ドルに通じる「新世代ロシアンファイター」を感じさせる。今回の対戦者LAジャイアントと並ぶとさすがに見劣りがするが、194センチ104キロの体格は立派なヘビー級のもの。

 開始早々、胴タックルからの内掛けでグラウンドに持ち込んだハリトーノフは、猪木アリ状態からローキックを打ち込み、さらにコーナー際でニーインザベリーの体勢からジャイアントの顔面に数発、鋭角的なパンチ落とす。これを嫌ってジャイアントが左腕を伸ばしたところをそのまま抱え込み、腕十字を極めた。榊原社長も、この身体差を物ともしなかった闘いぶりには注目していると語っており、自身念願とするGP出場を果たす可能性は高い。ヒョ−ドルとの直接対決が実現すれば、ラストエンペラーvs革命コマンドのロシア頂上決戦として注目を浴びる事になるだろう。

第1試合 PRIDE GP サバイバルマッチ 1R10分・2,3R5分
○イゴール・ボブチャンチン(ウクライナ/フリー)
×ダン・ボビッシュ(米国/バート・ベイル・シュートフファイティング)
2R 1'45" KO


 大半がグラウンドの展開。ボビッシュが体格の割にスピーディーな両足タックルからパスガード、サイド、マウントなど器用なポジショニング技術を披露するが、攻撃の決め手を欠く。逆にグラウンドの攻防でスタミナを使ってしまったのか、ボビッシュは1R終了時点ですでにガス欠状態。

 2R、流れは一気にボブチャンチンに。ボビッシュのタックルにヒザをあわせ、さらに2度目のタックルも潰したところで右のロシアンフックをヒットさせた。一瞬後ろを向き、自ら仰向けになったボビッシュに覆いかぶさるボブチャンチン。マウントを奪い、アッパー気味に右拳を数発打ち込んだところでボビッシュの戦意を奪い、タップアウトで勝利した。

 「二年間勝利がなく、長い休みのあと自分本来の姿に戻れたと思う。今度のGPでは1位を狙いたい」と全面復活を宣言した北の最終兵器。榊原社長も大会後、「イゴールとヒースは確実にGPの切符を手に入れたと思う」と歴戦の勇士の復帰を歓迎する様子だった。
 

Last Update : 02/01

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