(レポ&写真) [UFC 46] 1.31 ベガス:BJペン&ベウフォートが新王者に
Ultimate Fighting Championship "UFC 46 -Super Natural-" 2004年1月31日(土) 米国ネバダ州ラスベガス:マンダレイ・ベイ
レポート:井原芳徳 写真:Nick McDonell 【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
第6試合 セミファイナル UFCウェルター級タイトルマッチ 5分5R ×マット・ヒューズ(米国/ミレティッチ・マーシャルアーツセンター/王者) ○BJペン(米国/BJペンMMA/挑戦者) 1R 4'39" チョークスリーパー ※ペンが新王者に
ペンはライト級で活躍してきたが、主催のズッファはライト級を軽視し、最近は前座扱いするように。ライト級でのベルト穫りに見切りを付けたペンは、約7kg重いウェルター級ベルトに照準をずらした。だが相手はニュートン、マッハ、シャーク、トリッグらを撃破してきたヒューズ。ペンにとっては初のウェルター級の試合でもあり、無謀な挑戦かとも思われたが、意外な結末を迎えることに。 セコンドにシャオリン、加藤鉄史、キャベージを従えて入場したペン。ヒューズの引き締まった体と比べるとぜい肉が目立つが、弛んだ感じはしない。とはいえライト級でも後半スタミナ切れすることの多かったペンは、無尽蔵のスタミナを誇るヒューズ相手に、速攻勝負を仕掛ける。スタンドで軽く右を当てると、少しひるんだヒューズの脇を抱え、テイクダウンに成功。
下からヒューズがアームロックを狙うが、ペンは回り込んで早くもバックを奪取してみせる。これはガードポジションに戻されてしまうが、その後も試合をコントロールするのはペン。
じわじわプレッシャーをかけパスガードに成功すると、またもヒューズの背後に回り込み、今度はきっちりとスリーパーを極め、まさかのフィニッシュ。元柔術世界王者のペンが、レスラーのヒューズに何もさせることなく、柔術テクニックで王座を奪取した。
勝ち名乗りを受けたペンは「憧れの選手に勝ててうれしい」と叫び涙。6度目の防衛を逃したヒューズは「プレッシャーから解放されてホッとしている」と語ったが、ペンをなめていたようにも思える。
第7試合 スイングバウト ウェルター級 5分3R ×カーロス・ニュートン(カナダ/ウォリアー・マーシャルアーツセンター) ○ヘナート・ベヒーシモ(米国/BJペンMMA) 判定0-3
「スイングバウト」とは、PPVの中継時間の長さに配慮し、セミまでの進行次第ではメインの後に移動する試合のこと。幸いセミまで短時間決着が続いたため、予定どおりセミの後に行われた。ベヒーシモは弟子のペンの王座奪取の勢いを受けるように、序盤からニュートンを圧倒。ガードポジションからパンチでプレッシャーをかけながら三角絞めを狙い、まるで教則ビデオのようにスイープからそのままマウントを奪取。さらには長い足でガッチリとバックマウントをキープし、ニュートンを苦しめる。
寝技では互角に思われたが、意外や圧倒的不利となったニュートン。1R終了時点で早くも疲れの色を見せる。試合後ベヒーシモの強さを認めたニュートンだが、減量ミスも敗因の一つに上げた。実際PRIDEでのニュートンは、ヘンゾやペレといったUFCミドル級相当の選手と戦っている。UFCウェルター級だと絞り過ぎになってしまうようだ。2Rもニュートンは終盤にバックを奪われピンチ。3Rにはベヒーシモの伸びのあるストレートで苦しむ場面も。ようやく3R後半にサイドポジションを取るも攻めあぐねてしまい、逆に上を取られた状態で試合終了。ベヒーシモの完勝だった。
第8試合 メインイベント UFCライトヘビー級タイトルマッチ 5分5R ×ランディ・クートゥア(米国/チーム・クエスト/王者) ○ビクトー・ベウフォート(ブラジル/ブラジル・ファイトクラブ/挑戦者) 1R 0'49" TKO (ドクターストップ:左目の負傷) ※ベウフォートが新王者に
ベウフォートは20日前から行方不明の姉・プリシラさんの顔写真をプリントしたTシャツを着て入場。悲愴感が漂っている。開始すぐ、クートゥアは左ローの後にパンチで突進。ベウフォートが左フックを当て、金網に押し込む。すると突然クートゥアが左目の痛みを訴える。ドクターチェックでクートゥアの左目のすぐ下に深い傷ができていることが判明し、試合終了。あまりにもあっけない幕切れに観客からはブーイングが起こった。どうやらベウフォートが左フックを放った際にグローブか指がかすり、傷ができた模様。試合直後は金網によじのぼり大喜びだったベウフォートだが、マイクを向けられるとアクシデントによる勝利と認め、「僕も納得できない。再戦したい」と語った。ダナ・ホワイトUFC代表もクートゥアの傷が治り次第再戦させる意向を示している。
第5試合 ヘビー級 5分3R ○フランク・ミア(米国/ヒカルド・ペレス柔術) ×ウェス・シムズ(米国/ハンマーハウス) 2R 4'21" KO (左フック)
昨年6月のUFC 43の再戦。前回はシムズが金網をつかみながら反則のストンピングを放ち、試合続行不可能となってしまった。入場したシムズに観客はブーイング。チンピラのようにニヤニヤし、田舎臭い雰囲気を醸し出しているのも観客の反感を買う理由だろう。 試合は前回同様ミアのペース。1分足らずでマウントを奪い、2分過ぎには肩固めに。されるがままのシムズは、手を上げ中指を立て「効いてないぜ」とばかりアピールするだけ。極まりが浅く、肩固めをあきらめたミアはマウントから肘を落とし、シムズの右目尻から出血を誘う。
2R、ミアがローでバランスを崩し、シムズが上に。ようやくチャンスが訪れたかに思えたが、ミアはすぐに下からタックルで抱え上げて体勢を入れ替える。しかしミアのスタミナは切れ、膠着ブレイク。立ち上がっても金網に押し込むだけの状態。シムズもスタミナ切れで倒されるような状態で、両者グラウンドでダラダラと膠着する。結局ミアが首相撲からの膝蹴りとパンチの連続攻撃でシムズをマットに沈めたが、低迷するUFCヘビー級を象徴するような一戦となってしまった。
第4試合 ミドル級 5分3R ×ホルヘ・リベラ(米国/チーム・エリート) ○リー・マーレイ(イギリス/ピーコックジム) 1R 1'45" 腕ひしぎ三角固め
ティト・オーティスにケンカで勝ったことのあるマーレイ。試合でもペレをKOしており、ストライカーのイメージが強かったが、グラウンドで下になると華麗な柔術テクニックを披露。リベラからタップを奪い、単なるケンカ屋のイメージを払拭した。試合後はティトとマイク合戦を繰り広げ、オクタゴンでの決戦を約束。体格差はあるが、マーレイは対戦に乗り気だ。ヒューズとBJのタイトルマッチの直後にも、次回UFC 47のティト×チャック・リデルを煽るマイク合戦が行われたが、最近のUFCはプロレスのWWE的な演出が色濃くなりつつある。
第3試合 ウェルター級 5分3R ×カロ・パリジャン(米国/フリー) ○ジョルジュ・サンピエール(カナダ/TKOマネージメント) 判定3-0
パリジャンがタックルを捕まえての回転アームロックで相変わらずいい味を出しまくるが、サンピエールのパウンドで顔から出血したことが響き判定負け。
第2試合 ライト級 5分3R ×エルメス・フランカ(米国/アメリカン・トップチーム) ○ジョシュ・トムソン(米国/チーム・シャムロック) 判定0-2
トムソンが積極的な打撃とテイクダウンで勝り僅差の白星。だがレフェリーが攻撃を妨げる場面があったとして、フランカ陣営が抗議している。
第1試合 ライト級 5分3R ○マット・セラ(米国/ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー) ×ジェフ・カラン(米国/チーム・エクストリーム) 判定3-0
セラの相手は当初から二転三転。ジェラルド・ストレベントの急遽欠場により出場したカランも、本来5kg軽い階級で戦っている選手。体格に勝る強豪のセラが上を制すなど主導権を握り続け快勝した。カランは3月のZST GT-Fトーナメントに出場する。
Last Update : 02/17
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