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(レポ&写真) [K-1] 10.11 大阪:サップ&ボタ、相次ぐ反則。ベスト8に新世代揃う

FEG "アルゼ K-1 WORLD GP 2003 開幕戦 ALL STARS"
2003年10月11日(土) 大阪・大阪ドーム  観衆・31,700人

  レポート:井田英登,井原芳徳  写真:井田英登
  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板スレッド]

◆12.6東京ドーム決勝進出者はボンヤスキー、アビディ、レコ、アーツ、イグナショフ、グラハム、セフォー、武蔵に決定。14日の抽選会で組合せ決定。
 


第8試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
×ボブ・サップ(米国/チームビースト)
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム)
2R 2'20" 失格(サップの反則攻撃による)


短期決戦を目論んでひたすら突進してくるサップに対し、ボンヤスキーはハイで迎撃。バランスを崩してトップロープから転げ落ちそうになるボンヤスキーを、相撲まがいに押しだそうとするサップ。開始早々、喧嘩マッチの緊張感がリング上に満ちる。だがサップの有無をいわさぬ突進を、がっちりガードを固めて受け流したボンヤスキーが、ローと早いパンチのコンビネーションでサップに確実にダメージを与えると、サップの足がぴたりと止まる。かくて1R後半から、既にガソリン切れの気配を見せ始めたサップは、試合の合間に荒い呼吸で天を仰ぐシーンが目立つ。なんとかロープに押し込んで、左右の横降りフックを打つものの、ボンヤスキーのガードも固い。押し込んでのヒザも見せるものの、ボンヤスキーは隙を突いて早いフックで切り返し、顔面にハイをぶちこんでいく。

2Rもガンガン押し込んでくるサップだが、ボンヤスキーは必殺の飛びヒザを見舞うなど押せ押せムード。ボンヤスキーのハイがカスって足を止め半身にアタマを抱えるサップ。すかさず右ストレートを被せたボンヤスキーの追撃を食って、開始52秒にして、サップはがっくりマットにヒザを突く。なんとか立ち上がって再度突進攻撃を仕掛けるサップだが、ボンヤスキーのガードも固い。ボンヤスキー優勢の空気に動揺したわけでもないだろうが、胸へのパンチでロープに飛ばされて腰を落としたボンヤスキーの顔面に、追撃のパンチを放ってしまうサップ。

セミのボタに続いての凶行に会場は白けた空気に包まれるが、アビディとちがってボンヤスキーはダメージが見えるものの、まだ戦闘意欲を失っていない様子で、ふらふらしながらも試合続行の意志を見せる。角田競技ディレクターも「度々の反則行為ですが、流れの中での反則行為ではありますが、意図的な反則であり悪質です。ただ、回復の時間を与えて、ボンヤスキー選手に試合続行の意志があるかどうか聞いたうえで、続行するか判断したいと思います」とマイクで告知する。しかし、その後もボンヤスキーに回復の気配が見えず、自軍コーナーに移動するにもふらつく始末。「ボンヤスキー選手はファイターの本能で試合を続行する意志をみせていますが、このような状況で冷静な判断を下せるのはドクターだけです。ドクターは選手の生命を守るべき立場からこの状態で試合を続行すべきでないと判断しております。したがってサップ選手の反則負けとしたいと思います」と角田ディレクターの判定が下り、サップは東京ドームへのチケットを失うことになった。

「自分の中で天使と悪魔が争った。これで東京ドームに行けると悪魔が囁き、ファイターとしてこんな結果でいいのかと天使が言う。でも結果として東京ドームに行けることになって良かったかなと思う」と若者らしいちゃめっ気で決勝トーナメント進出を語ったボンヤスキー。「もしサップとの再戦があれば受けて立つ」と語り、今回の不完全燃焼の決着を望む発言もあったが、谷川FEG社長は「今のサップは今日闘った誰にも勝てないと思う。練習環境を変えるべきでしょうね。東京ドームは判らないですね。ボタはもっと観たかった。スーパーファイトを考えています」と語っており、ドームへの起用はあまり考えていないという意思表示をみせている。サップ当人も「この結果に納得はしていないが、来年への糧にしたい。今日完全燃焼できなかった分を二日後の新日本プロレスで発揮したい」と気持ちの切り替えは終わった様子であった。

第7試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
○シリル・アビディ(フランス/チャレンジボクシング・マルセイユ)
×フランソワ・“ザ・ホワイトバッファロー”・ボタ(南アフリカ/スティーブズジム)
1R 0'19" 失格(ボタの反則攻撃による)


試合開始早々ローを飛ばしてくるアビディに対して、ボタは突進しての接近戦で距離を殺してキックを封じる戦法。「一発目のキック(右ロー)を浴びて逆上した。ボクシングでも反則行為なのはわかっていたが、あの時は止めることが出来なかった」というボタは二度目のコンタクトでも、一気にロープまでアビディを吹き飛ばし、倒れこんでマットに腰を落としたアビディに強烈なアッパーブローをぶち込む。試合はわずか19秒で停止。IBF世界王者のK1初参戦に期待したファンは完全に置き去りにされた形になった。

「レフェリーの制止の後の攻撃であることと、倒れた相手に対する攻撃で明らかな反則行為です」と告げる角田競技ディレクター。リングに呼び上げられた審判団との協議を経て、すっかり戦意をうしなってしゃがみこむアビディの態度もあって、再度マイクをとると、「先ほどのフランソワ・ボタ選手の攻撃は、明らかに意図的な反則行為であり、悪質であるため、残念ですが反則負けとしたいと思います」と宣告。競技としてのK-1の厳密性を優先し、ボクシング界のスーパースターの東京ドームへの進路を塞いだこの判断は、興行的には大きな痛手となったが、今後のボクシング界との交流という意味では、正しかったと言えるのではないだろうか。

第6試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
×フランシスコ・フィリォ(ブラジル/極真会館)
○ステファン・“ブリッツ”・レコ(クロアチア/ゴールデングローリー)
判定3-0 (中川28-30,朝武29-30,後川28-29)


 フィリォが左ローを何発も当て、ブラジリアンキック、バックキックを出す等、1Rは好調な動きを見せる。2Rも開始早々の右ハイでレコをヒヤリとさせたが、レコはスピーディーな動きから繰り出す右ストレートで反撃。3発ほどクリーンヒットさせ、フィリォを苦しめる。フィリォの左ローでレコは嫌そうな表情を見せるが、フィリォは次第にスピードダウンし、とどめのローが出せない。一方疲れ知らずのレコはスピードが落ちず、バックハンドとワンツーの連打、ボディ、右ハイと手数で圧倒。防戦一方のフィリォはレコのローでコケるようにスリップしてしまう場面も。結局3Rの攻勢で確実にポイントをものにしたレコが完勝。本命不在のGP戦線での大活躍を期待させる試合内容だった。

 

※休憩前にボクシングヘビー級ランカーのシャノン・ブリッグスがリングにあがりK-1参戦を表明した。「年内は無理としても、早い段階でK-1に参戦したい」と語った。

ブリッグスは1998年3月にレノックス・ルイスの保持していたWBC王座に挑戦して敗れたのがボクサーとしてのキャリアのピークだが、翌年8月にはボタと対戦してドローの戦績を残しており、またここ二年は地元のジムでキック、柔術などの練習も重ねているとのこと。ボクシングとの対抗路線を取るK-1にとっては、また楽しみな人材が増えたと言えるだろう。

第5試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
○ピーター・アーツ(オランダ/チーム・ピーター)
×ジェレル・ヴェネチアン(オランダ/ボスジム)
判定3-0 (御座岡30-29,朝武30-29,大成30-28)


 アーツがパンチで前に出て、ヴェネチアンが下がりながら蹴りを打つ展開が多くなったこの試合。終盤疲れを見せたアーツに対し、ヴェネチアンが若干手数で優勢にも見えるが、両者に大きな差はない。延長戦になるかとも思われたが、1Rのアーツの右ストレートで、ヴェネチアンがダウン気味にスリップしたのが評価材料となったようで、アーツが僅差ながらも勝利をものにした。

 

第4試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
○アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
×マイク・ベルナルド(南アフリカ/オーランドチーム)
2R 2'11" KO (右ストレート)


 イグナショフの鋭く重い右ローにベルナルドは攻め手をはばまれる。1R終盤こそ左右の重いフックで反撃したが、2Rもイグナショフが左右のミドルとローで優勢。最後は伸びのある右ストレートでベルナルドのアゴを撃ち抜き、さらに右ローをかぶせベルナルドをマットに沈めた。
 最近イグナショフは膝主体のムエタイスタイルからK-1向けのスタイルに序々に変わってきていたが、その一つの到達点がこの試合で見られた気がした。試合運びもクレバーで、ホースト不在のGPの台風の目となるだろう。

 

第3試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
×サム・グレコ(オーストラリア/正道会館)
○ピーター・グラハム(オーストラリア/ムンダイズジム)
2R 0'30" TKO (タオル投入)


 ホースト欠場の影響で、サップのトレーナーとして来日していたグレコがスクランブル出場。だが1年前に断裂した左膝のじん帯が完治しておらず、グラハムの右ローを何度も受けるうちにクリンチが増える。1R終了間際にはイエローカードをもらってしまう。空手着のズボンを履いているためダメージの程はわかりにくかったが、2Rもグラハムのローを数発もらうと、セコンドがタオルを投入。すっきりしない結末だが、新鋭グラハムが決勝戦への切符を獲得した。

 

第2試合 GP開幕戦 3分3R(延長2R)
○レイ・セフォー(ニュージーランド/ファイトアカデミー)
×カーター・ウィリアムス(米国/チーム・ブードゥーUSA)
2R 1'54" 判定2-0 (中川20-19,朝武20-10,後川19-19)


 パンチの打ち合いとなるが、意外にも新鋭ウィリアムスが右ストレートをクリーンヒットさせるなど優勢。セフォーの右目の周りが大きく腫れ上がる。2Rになると苦戦気味のセフォーは「フォー」と声を上げウィリアムスを挑発するようになる。ウィリアムスの膝蹴りがローブローとなりイエローカードが出され、タイムストップ。だがセフォーの回復を待つというよりも、大半が右目の腫れのドクターチェックに費やされる。再開後もウィリアムスのラッシュは止まらなかったが、またも膝がローブローとなりイエロー。再びタイムストップ後、再スタートすると、今度はウィリアムスはラッシュの最中に肘打ちの反則。これで3度目のイエローとなり減点1。だがセフォーは右眼窩底骨折の疑いがありドクターストップがかかってしまう。
 結局トーナメントルールでは1R終了時点で試合が成立しているため、2R途中までの内容でジャッジが集計される。ウィリアムスの減点1が響き、僅差ながらもセフォーが勝利。もちろんセフォーに喜びはなく、観客にお辞儀をしてリングを降りた。

 

第1試合 スーパーファイト 3分3R
×マイケル・マクドナルド(カナダ/フリー)
○ビヨン・ブレギー(スイス/ボスジム)
1R 2'50" KO (3ノックダウン)


 頭一つ分大柄なブレギーが、体格を活かした豪快なファイトでマクドナルドを圧倒。開始1分と経たないうちに、軽い当りだがカウンターの右フックをクリーンヒットさせ最初のダウンを奪う。テクニシャンのマクドナルドも接近戦でパンチを返す場面があったが、ブレギーは伸びるストレートと膝ですぐ勢いを取り戻し、再び右フックでダウンを奪取。あとはブレギーのワンサイド。ロー、膝でマクドナルドを痛めつけ、最後はマクドナルドが自らマットにうずくまるような格好でダウンし試合終了。GPエントリーこそ逃したが、来年のブレギーは要注意だ。

 

Last Update : 10/12

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