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(レポ) [K-1 WGP] 5.2 ラスベガス:角田が引退。トーナメントは伏兵が征す

K-1 "アルゼ K-1 WORLD GP 2003 in Las Vegas (Enter The Beast)"
2003年5月2日(金) 米国ネバダ州ラスベガス・ミラージュホテル  観衆:5,385人(超満員)

  レポート:井原芳徳  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板・K-1ヘビー級スレッド]


【ネバダ流の採点方法について】
 日本のK-1の場合、ジャッジのポイントの合計の端数は29.5の場合は29に繰り下げ、28.5または27.5の場合は29または28に繰り上げられる。だが今回はネバダ州アスレチックコミッションの管轄のため独自の採点方法となり、端数の処理はなく、0.5ポイント差でもどちらかの選手が勝ちと評価される。


<スーパーファイト>



第11試合 角田信朗引退試合 3分3R
×角田信朗(日本/正道会館)
○武蔵(日本/正道会館)
判定0-3 (23-30,23.5-30,23.5-30)


 「オリャ!」「ハッ!」と掛け声を出しながら打撃技を繰り出す角田と武蔵。まるで昔の正道会館での空手の稽古を懐かしんでいるかのようで、ラスベガスとは思えない浪花節的な雰囲気がミラージュのホールを包む。
 2R前半までは静かな展開。だが武蔵の強烈な左ミドルが炸裂し角田が後退したところから試合がヒートアップ。感傷的な気分を吹き飛ばすかのような武蔵の左ハイが命中し、角田は膝をつき最初のダウン。今度は左ミドルを脇腹にもらい、またも角田は苦しそうにマットに倒れるが、なんとか立ち上がり同時にラウンド終了。
 3Rは角田が先にパンチでラッシュを仕掛けるが、完璧にブロックした武蔵は左膝一発で角田をマットに沈める。それでも立ち上がり角田は攻めるものの、武蔵のカウンターの右フックで2度目のダウン。あと1ダウンで負けとなる角田は、「オリャ!」と己を鼓舞。武蔵の膝とパンチを浴び続けスリップを繰り返すが、それでもすぐに立ち上がる。最後は武蔵の左ハイを顔面にモロにもらい後ろに倒れそうになるが、なんとかこらえてダウンを免れ、不屈の闘志を発揮した。
 残念ながらご当地ではトーナメント決勝がメインイベントだったため、ほとんどの米国人客が帰ってしまっていたが、それでも日本人だけでなく残っていた米国人客も角田の熱いファイトに歓声と拍手を送っていた。勝者がコールされる時には島田裕二レフェリーまでもが感涙。テレビ中継のゲストのボブ・サップも、リングに上がり角田の奮闘を讃えた。
 マイクを持った角田は、全編流暢な英語で「武蔵は次世代のK-1チャンピオンになると信じてます。だからみんな武蔵とK-1をサポートしてください。日本で応援してくれたファン、今日の試合を会場で見てくれた家族に感謝します。アイラブユー!」などとアピール。最後はグローブをマットに置いてリングを降り、夫人と娘・息子と抱き合った。
 「ジャパンは賞味期限切れ」「武蔵はファイターとしての哲学を変えない限り、一生変わらない」という角田の4.6山形大会での発言を受け、「体で教えてもらう」と引退戦の相手に志願した武蔵。公私に渡って長年付き合いがあるため、さすがに非情に徹しきれなかったが、何度も何度も立ち上がる角田の姿を目の前にして、多くの物を得たのではないだろうか? 武蔵の次の試合は6月29日(日) K-1 JAPAN(さいたまスーパーアリーナ)か7月13日(日) K-1 WORLD GPワンマッチ大会(マリンメッセ福岡)になりそうだが、そこでニュー武蔵が見られるのか? 角田の言う「昇段試験」は次の試合なのかもしれない。

第10試合 3分5R
○ステファン・“ブリッツ”・レコ(ドイツ/ゴールデングローリー)
×グレート草津(日本/チーム・アンディ)
2R 2'44" KO (3ノックダウン:右フック)


 1R草津の攻撃を受け切ったレコは、2Rから勝負を仕掛け、コーナーに詰めてのパンチの連打で最初のダウンを奪う。それでも草津の闘志は衰えず、バックハンドブローを出しはしたが、パンチの連打で攻めこまれ、右ストレートで2度目のダウン。最後はコンビネーションからの右フックでレコがKO勝ちをおさめ完勝した。

第8試合 3分5R
○マーク・ハント(ニュージーランド/リバープール・キックボクシングジム)
×ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー)
判定3-0 (50-45.5,49-45.5,49.5-46)


 「KO必至!剛腕対決」というテロップがフジテレビの中継では終始映し出されていたこの試合だが、両者とも単調な打ち合いに終始。ハントは一昨年のGP優勝の副賞の世界一周旅行帰りで、なおかつ左膝を痛めていたため調整不足。グッドリッジは最近身に付けた正当派のキックボクシングスタイルを2Rまでこそ披露していたが、3Rには突然失速し、両手で顔面をブロックし防戦一方に。4R残り30秒にはパンチの連打でハントをサンドバッグ状態にしてチャンスを迎えるが、これでダウンを奪おうという覇気がさほど感じられない。5Rも静かな展開。結局ハントが大差の判定勝ちをおさめたが、どちらも持ち味が出ない試合となってしまった。

第5試合 3分3R
○カン・リー(米国)
×スコット・シェーリー(米国)
2R 1'13" TKO (レフェリーストップ)




<K-1 WORLD GP 2003アメリカ大陸地域予選トーナメント>



第1試合 トーナメント1回戦 第1試合 3分3R
×マイケル・マクドナルド(カナダ/フリー)
○カーター・ウィリアムス(米国)
判定1-2 (28.5-29.5,29.5-29,29-29.5)


 ウィリアムスは23才の黒人で、分厚く均整の取れた体から繰り出される打撃はスピーディーで重みがある。3Rこそマクドナルドの左フックとローに苦しみクリンチが増えてしまったが、1、2Rの手数が評価され僅差の判定勝ちをおさめた。日本でならドロー裁定となるところだが、トーナメント本命のベテラン・マクドナルドがネバダルールの餌食となり、一回戦で敗退する番狂わせが起こった。

第2試合 トーナメント1回戦 第2試合 3分3R
×デューウィー・クーパー(米国)
○藤本祐介(日本/MONSTER FACTORY)
判定0-2 (28-28,28.5-29,28.5-29)


 パワーファイトで押し気味だった藤本だが、1R残り30秒、ロープを背にしたクーパーが体を入れ替え左フック一撃。スリップ気味ながら藤本がダウンを喫する。だが2Rは重い右ミドルで反撃。3Rもパンチの連打からの右ハイのコンビネーション等で優位に試合を運ぶ。ウィリアムス同様ネバダルールに助けられ、藤本が準決勝に駒を進めた。

第3試合 トーナメント1回戦 第3試合 3分3R
○リック・ルーファス(米国/フリー)
×エドアルド・マイオリノ(ブラジル/チャンピオンズ・ファクトリー・アルトゥール・マリアノ)
1R 2'54" KO (2ノックダウン:左ストレート)


 華やかな舞台に緊張気味のマイオリノが自らの蹴りでスリップしていたのに対し、ベテランのルーファスは終始リラックス。序盤から振り回していた左フックでファーストダウンを奪うと、さらにマイオリノの右ミドルのカウンターで左ストレートをクリーンヒット。3ノックダウン制と勘違いしたレフェリーがカウントを数えマイオリノが立ち上がり、試合が続行してしまうハプニングがあったが、ルーファスがさらに攻めたところでようやくゴングが鳴り響き試合が止まった。

第4試合 トーナメント1回戦 第4試合 3分3R
○モーリス・スミス(米国/モーリス・スミス キックボクシングセンター)
×ギセップ・デナテイル(カナダ)
判定3-0 (30-27.5,30-28,29.5-28.5)


 ベテランのスミスが有効打こそ少ないものの押し気味に試合を進める。3Rこそデナテイルの右フックと膝蹴りの連続攻撃にヒヤリとする場面があったが、残り30秒を切ったところでアッパー、ストレートでラッシュ。大きなダメージはなく準決勝進出を果たした。

第6試合 トーナメント準決勝 第1試合 3分3R
×藤本祐介(日本/MONSTER FACTORY)
○カーター・ウィリアムス(米国)
2R 2'26" KO (2ノックダウン:右フック)


 ウィリアムスが藤本勝りのパワーファイトで圧倒。1R2分過ぎ、ウィリアムスの前蹴りで藤本が尻餅で倒れスリップかとも思われたが、レフェリーはダウンを宣告。2R序盤、ウィリアムスの左ハイで藤本がバランスを崩したところに、さらにウィリアムスが一回転してから左ミドルを放ち、藤本のアゴにクリーンヒット。今度は完璧なダウンとなる。それでも藤本は立ち上がりパンチで応戦し続けたが、最後はウィリアムスが豪快な右フック。藤本は前のめりでマットに沈んだ。

第7試合 トーナメント準決勝 第2試合 3分3R
×モーリス・スミス(米国/モーリス・スミス キックボクシングセンター)
○リック・ルーファス(米国/フリー)
判定0-3 (26.5-30,26.5-30,27.5-29.5)


 ルーファスが空振りながらもカカト落としやバックハンドといったトリッキーな動きでスミスを翻弄。スミスも途中で構えをスイッチするなど老かいなファイトを繰り広げる。だが2R2分過ぎ、スミスの右ミドルのカウンターでルーファスが得意の左ロングフックを合わせ、ダウンを奪取。3Rはバックステップで逃げ切り、ベテラン対決を制した。

第9試合 トーナメント決勝戦 3分3R
○カーター・ウィリアムス(米国)
×リック・ルーファス(米国/フリー)
1R 2'24" KO (右フック)
※ウィリアムスが優勝


 試合開始早々、右フックで突進したルーファスの顔面にウィリアムスのカウンターの右がクリーンヒット。さらに左、右のパンチを畳み掛け、左ハイでダウンを奪う。あとはウィリアムスがパンチで前進を続け、最後もルーファスの右フックに合わせてのカウンターの右フック。もろにアゴにもらったルーファスは立ち上がる事が出来ず、ウィリアムスの優勝が決まった。
 まだまだ初々しさの残る23才のウィリアムスは、勝利者インタビューでも「信じられない」と舞い上がりっぱなし。今大会は全米でペイパービュー中継されたため、一気にカーター・ウィリアムスの名が全米の格闘技ファンに知れ渡ることとなった。10月11日大阪ドームで開催されるワールドGP開幕戦でも、ウィリアムスの右フックが猛威を振るうことだろう。ウィリアムスは総合格闘技の経験も3試合ほどあり、今年2月のグラジエーターチャレンジ大会の8人トーナメントにも出場し1勝している。今後K-1と総合を股に掛けての活躍が期待できる。

Last Update : 05/03

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