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(レポ&写真) [修斗] 12.14 NK:因縁の二大タイトルマッチ白熱。マッハ復帰戦に波乱

サステイン "プロフェッショナル修斗公式戦"
2002年12月14日(土)千葉・東京ベイNKホール

  Photo & Text: 井田英登

  【→大会前のカード紹介記事】
  [→掲示板・修斗スレッド]


第7試合 ウェルター級チャンピオンシップ 5分3R
○五味隆典(日本/木口道場レスリング教室/王者)
×三島☆ド根性ノ助(日本/総合格闘技道場コブラ会/1位)
2R 0'52" TKO

「道化師の涙」

※この記事のオリジナル全長版「かくて贖罪の時は終われり」がAll About.comで公開されています。あわせて御覧ください。

 大会のオープニングセレモニーでリングに上がった三島は、目に涙を浮かべていた。試合が終わった後ならいかなる理由でも落涙することはありえるだろう。しかし、これから試合を、それもタイトルマッチという大一番を迎えようという選手が涙ぐむというのは、相当奇妙な情景だと言わねばなるまい。

 大会後の共同インタビュウで三島は「これだけの人がこの試合を楽しみにしてくれていたのかと思ったら、うるっと来てしまいました」と応えていたが、実際の所を分析してみると、三島の神経はストレスで相当切迫した状態にあったと思われる。オープニングの涙はその切迫した心理の現れではなかったのだろうか。

 昨年夏の対戦中止事件から一年半、ようやく実現にこぎ着けたこのカードは、まさに修斗現有勢力の中でも屈指の切り札的なカードだ。しかし対戦をすっぽかされた五味の反発はマスコミを通じて大々的に報じられ、ファンの反応もアゲンスト気味。自らの不注意で負った怪我が原因とはいえ、ある意味洪水の様な責め苦であったのは間違えないだろう。メンタル的に繊細な三島は、対戦以前の段階ですでにかなり精神的疲労を抱えていたのである。

 サングラスにおもちゃの王冠を被って入場する三島のおどけた姿にそんな繊細な感情を見いだす人は多くは無いだろう。しかし、「怪我が怖くてロクな練習も出来なかった」という三島は、道化の仮面で必死に脆い内面を覆い隠そうしていたのだ。酷な言い方だが、このときの三島はすでに試合をする前に、自らの内部の葛藤に飲まれていたと言ってもいい。“もうこんな重圧から早く逃げ出したい”そう思い詰めていた矢先に、開幕式にこぎつけたことでその緊張の糸がほつれそうになったのが、あの涙の意味ではなかっただろうか。

 最初の一撃を放ったのは三島だった。しかし、その大振りの右は大きく空を切り、バランスを崩した三島そのままロープ際までよろめいていく。まさに空転する気負いの象徴のようなシーンだ。逆に五味は目の前の獲物である三島にぴたりと焦点を合わせ、細かな動きにも的確に反応してくる。じわじわとパンチの距離でプレッシャーをかける五味。ローを蹴りながらも、三島は下がる一方だ。

 早い右のジャブを当てると、五味はノーガードで両手を上げ、自分のあごを叩くパフォーマンスまで見せる。体重を残した早い左右のフックを振り、三島をそのパンチの制空権に入れない。切り返しに三島も同じく左右を出すが、これは組みに行くための“見せパンチ”。だが組むために三島のステップは前のめりとなり、バランスが悪い。五味はバックステップでこれをひらりと躱して崩し、逆にあごを狙ったフォローのパンチを振る余裕さえ見せる。よく相手が見えている。下がりながらロープに飛んでその反動でパンチを放つという三島らしい奇襲攻撃も、完全に見切られて功を奏さない。

 ようやく三島らしさがみえたのは、五味の右フックが空を切った直後。カウンターで胴タックルを仕掛け、コーナーに押し込んで右を差すことに成功する。如何に混迷する気持ちの真っただ中とはいえ何千回何万回と繰り返した動作は体が覚えている。きれいな足払いでようやく最初のテイクダウンに成功する三島。ハーフながらがっちりとおさえこんで頭部にパンチをぶち込んでいく。

 だが五味にはやはり攻められながらも余裕がある。攻めきれなかったと見たか、三島が自ら立ち上がって、五味のボディにパンチを落とした直後にゴングが鳴った。

 第二ラウンド。五味の右ストレートが視線を落とした三島の顔面を襲う。ガードした三島は、ハイキックを放つ。左のショートジャブ、右のアッパーと繋いで踏み込んだ三島だが、そこで左の顔面が空く。バックステップで躱した五味の反射的な右のカウンターのショートがそれを射抜く。
 
 頭から倒れこんだ三島は、立ち上がってカウントを聞く最中も腰がふらつくほどのダメージを食らっていた。ふらつく三島はいきなりタックルで逃げようとしたが、もろにアッパーで迎撃を受ける。膝をついたところに顔面へ膝が入る。再び胴タックルで抱きついて、払い腰に行こうとす三島。しかしこれをこらえて潰した五味は、そのまま半身で倒れた三島の顔面に嵐のようにパンチを振り込んでいった。
 
 レフェリーストップ。
 
 迷いと苦悩でロクに練習も出来ない状態にもかかわらず、リングにあがった三島には、最初から勝目がなかったのかもしれない。ファンの期待、王座の重み、対戦者からのプレッシャーこそが、この日の三島の敵だったのだから。

ファイターとしての三島の資質は、五味に勝るとも劣らないのは周知のとおりである。応援してくれるすべての人々の期待をエネルギーに変えた王者と、そのプレッシャーに耐えきれなかった挑戦者。
 「王」と「道化師」
 その信念の違いがこの試合の明暗を分けたと言ってもいいだろう。

 これで五味はプロデビュー以来の11連勝。王座決定戦から数えて4連勝。大会後には、ついに公式の場でUFC参戦を視野に入れると公言。来年は世界を股に掛けて、「王たる者」の真価を問うことになりそうだ。

第6試合 ライト級チャンピオンシップ 5分3R
○アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(ブラジル/ワールド・ファイト・センター/王者)
×阿部裕幸(日本/AACC/1位)
1R 3'53" スリーパーホールド


 

 

第5試合 ミドル級 5分3R
×桜井“マッハ”速人(日本/GUTSMAN・修斗道場/1位)
○ジェイク・シールズ(米国/シーザー・グレイシー・アカデミー)
判定0-3(28-30,28-30,28-30)

 

 

第4試合 ウェルター級 5分3R
×川尻達也(日本/総合格闘技TOPS/5位)
○ヴィトー・ヒベイル(ブラジル/ノヴァ・ウニオン/7位)
判定0-3(30-27,30-26,30-26)

 

 

第3試合 フェザー級 5分3R
×池田久雄(日本/PUREBRED大宮/2位)
○塩沢正人(日本/和術慧舟會/9位)
3R 4'14" TKO

 


第2試合 ウェルター級 5分3R
×タクミ(日本/パレストラ東京/8位)
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/スカンジナビアンBJJアカデミー・オスロ)
判定0-2(27-28,26-28,28-28)




第1試合 ミドル級 5分3R
○弘中邦佳(日本/SSSアカデミー/9位)
×ニック・ディアス(米国/シーザー・グレイシー・アカデミー)
判定2-1(29-28,29-28,27-28)



Last Update : 12/15

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