(続報) [Dynamite!] ホイス陣営の要求は却下。吉田のKO勝利で確定
▼ (9/11 up) DSEは11日の記者会見で、8月28日に国立競技場で開催されたDynamite!の第7試合・吉田秀彦 vs. ホイス・グレイシーの裁定について、「無効試合」への変更を求めるグレイシー陣営の異議を退け、当初の発表どおり「ホイスの失神KO負け」という裁定を維持することを発表した。島田裕二ルールディレクター名義で発行された報告書の全文は下記の通り。この報告の内容は9日、主催者側である石井和義・大会総合プロデューサー、DSE、TBSの三者による検証会で承認された。 報告書によると、この試合を裁いた野口大輔レフェリーは試合での自身の行動について「選手の生命の安全確保の観点から、両選手を引き離す動き」だったとし、そもそも「レフェリーストップに値する行動ではなかった」と説明。島田ディレクターもこの行動を「たとえどんなルールになったとしても、必ず持ち合わせなくてはいけないレフェリーとしての最低限のモラルであり、絶対的な判断基準であると考えます」と評価している。 会見に出席した森下社長は「問題が起きたことは決していいことではないが、ホイスが死んだということで皆が集まらないといけない事態になるよりは、はるかにいい結果が得られたんじゃないかと思う」「これはルールだから、これは契約だからということで、人が死んでもいいということはありえない」と語り、ルールの条文よりも人命尊重の大義を優先したことを力説した。 また、トラブルの元となったルール設定の今後の対策について、島田ディレクターは「こういう大きなイベントでこういうことが起こってしまったことは、ルールディレクターとして今後も慎重にならざるをえないと思いました。レフェリー、ジャッジを含め、自分達のスキルアップを目指します」とコメント。一方の森下社長は「今回の裁定はレフェリーストップではない」という観点を強調し、「レフェリーストップが無いルールが、今後もあるかもしれません。ただ、命を守るのはレフェリーで、決定的なダメージや命を奪うような行為に関しては、レフェリーストップが無いルールでも当然止めるべきだと思います」との見解を繰り返した。 グレイシー陣営にも同様の内容が文書で伝えられる。だが、吉田戦で野口レフェリーが判断したよりも重度の失神が、ブラジリアン柔術の試合ではよく起こっているのが実情。柔術家の感覚からすれば反発は必至だ。いわば状況証拠だけで失神KOと判断されたこともグレイシーが認めるとは考えにくい。 森下社長は「ホイス選手に意志があれば、吉田選手との再戦の場を作ることに誠心誠意力を尽す」と述べたが、「DSEとしては(再戦は)現時点では考えていない」「一番大切にしたいのはお客さんの気持ち」とし、「今の段階では社長としてはお客さんはそれほど再戦を要求していないだろうと?」という質問にも「…じゃないかなと思ってるんですけど」と同調している。(井原芳徳)
ホイス×吉田戦に関するご報告 大会後、ルールディレクターである私島田を中心に、当日レフェリーを務めた野口レフェリーの事情聴取に始まり、試合の模様を収録した映像による考察、当日リングサイドにいた有識者の意見等を総合的な判断材料とし、今回ホイス選手サイドからの試合結果に対する異議の申し入れに対し、検討をしてきました。その結果、以下のような裁定を下すに至りましたので、ここにご報告します。
まず、吉田選手がホイス選手を袖車締めに捕らえている時点での野口レフェリーの行動に対し、ホイス選手からはレフェリーストップだとの申し入れがありましたが、野口レフェリーの試合後の事情聴取によると、野口レフェリーは、あくまでもホイス選手が絞め落とされたとの判断(一時的にしろ失神KO状態にあるとの判断)から、必要以上に選手に肉体的ダメージを負わせない為、選手の生命の安全確保の観点から、両選手を引き離す動きであり、どちらかの選手がKOされた状態にない試合を、どちらか一方が決定的に優勢だからといって止めるレフェリーストップに値する行動ではなかったとの説明を受けました。
野口レフェリーは、以下の4点により、ホイス選手が失神KOされたと判断しました。
- 完全に吉田選手のホイス選手への袖車絞めが入っていると見受けられた
- ホイス選手の左手と右足の動きが緩慢で、力が抜けて行く様に見受けられた
- 闘っている相手である吉田選手が「落ちた!落ちた!」と叫んだこと
- 野口レフェリー本人が、ホイス選手の手に触れたとき、動きを感じられなかった
この説明を受け、試合の模様を収録した映像により考察し、有識者の意見等をヒヤリングしてみた結果、確かに上記4点のポイントが見受けられました。野口レフェリーの取った選手の肉体・生命の安全確保の為、失神している選手への必要以上の攻撃を防ぐ為の行動は、今回のような総合の試合が、競技であり、スポーツであり、多く人々に見せる状況下で行われる以上、たとえどんなルールになったとしても、必ず持ち合わせなくてはいけないレフェリーとしての最低限のモラルであり、絶対的な判断基準であると考えます。今回の試合でホイス選手は、一時的であれ失神状態になったとの判断は、正しいものであると考えます。よって裁定通りの結果が、正しい裁定であるという考えに至りました。PRIDEルールディレクター/島田裕二
吉田×ホイスのルール全文。レフェリーストップの条項はなし
▼ (8/30 up) 8月28日に国立競技場で開催されたDynamite!の第7試合・吉田秀彦 vs. ホイス・グレイシーは、吉田の絞めによるレフェリーストップ勝ちに終ったが、ホイス陣営は契約にはレフェリーストップは無かったとして審判団に猛抗議していた。そのため、ルールの全文を本誌にも下記の通り掲載する。
第7条には勝敗の決定方法が定められているが、ホイス陣営の指摘どおりレフェリーストップの条項がない。吉田 vs. ホイスのためだけに定められたこのルールは、言葉遣いからもPRIDEオフィシャルルールをベースにしていることがわかる。比較してみると、PRIDEルールのテクニカルノックアウトの条項の中にあったレフェリーストップの項目が、吉田 vs. ホイスのルールからはそのまま消えているという格好だ。 唯一レフェリーストップが適用できるとも考えられるのは、第14条の「選手とセコンドはレフェリーの判定及び指示には絶対服従する」という条文だが、これもPRIDEオフィシャルルール第15条に同じく存在する条文だ。テクニカルノックアウトの条項の中からレフェリーストップの項目が外されている以上、吉田 vs. ホイスの第14条を拡大解釈し、レフェリーストップが可能とするには難しいと思われる。(井原芳徳)
「吉田 vs ホイス ジャケット特別ルール」- 第1条
- 選手の選択により、ニーパッド、エルボーパッド、シンガード、テーピング、アンクルサポーターを使用してもよい。但し、必ずレフェリーのチェックを受けるものとする。また、マウスピース、ファウルカップは必ず使用する。拳のテーピング、バンデージは使用不可であるが、指へのテーピングは試合前にレフェリーチェックを受けるものとする。
- 第2条
- 両選手は主催者及びルールディレクターが認定した道着を必ず着用しなければならない。
- 第3条
- 選手は身体にいかなる物も(オイル、ワセリン、痛み止め、マッサージ用のクリーム、整髪料等)試合前及び試合中に一切塗布してはならない。万一、塗布している事が確認された場合は、試合放棄とみなされる場合もある。
- 第4条
- シューズを着用してのキック攻撃は、一切禁止とする。
- 第5条
- リングは7m四方の正方形で主催者が認定したものを使用する。
- 第6条
- 試合形式は、2ラウンド制とする。1ラウンドを10分間とし、延長戦は行わない。なお、ラウンド間のインターバルは2分間とする。
- 第7条
- 試合の勝敗は下記の結果で決定する。
- 一本勝ち
ギブアップ、戦意喪失の意思表示は、口頭で行うかマットまたは相手の体を3回以上叩いた場合とする - テクニカルノックアウト
- ドクターストップ
相手選手の正当な攻撃を受けて、けがを負った場合、リングドクターが診断し、試合続行不可能と診断したとき、その選手は敗者となる。但し、反則攻撃によるけがの場合は反則を犯したものが敗者となる。なお、リングドクターによるドクターチェックの際は、サブレフェリーがチーフセコンドをニュートラルコーナーまで導き、ドクターの診断及び指示を伝達する。診断の結果、ドクターストップになった場合は、ストップと判断した診断の内容をサブレフェリーよりチーフセコンドに説明をする。 - 試合放棄
試合進行中、セコンドがタオルをリングに投入した場合。レフェリーがこれに気付かない場合には、ジャッジが試合終了の合図をさせることができる。
- 失格
反則を犯した場合、またはレフェリーの指示に従わなかった場合『注意1』が課せられ、『注意3』で失格となる。ただし悪質な反則をした場合や故意に反則を繰り返す場合は、レフェリーの判断により即失格となる場合もある。 - ノーコンテスト(無効試合)
選手双方がルール違反を犯した場合、偶発性の事故により審判団及び主催者が試合続行不可能と判断した場合、その試合はノーコンテストとなる。2ラウンドで決着がつかない場合はドローとする。
- 第8条
- 下記の行為を反則とする。この反則を犯した選手は、レフェリーに『注意1』を宣告され、判定の減点材料となり、『注意3』で失格となる。また、注意1回につきファイトマネーの10%の罰金をプロモーターに支払なければならない。イエローカードを出された場合はリング中央より両者スタンドポジションにて再開する。
- 噛みつき
- 目潰し及び目突き
- 頭突き
- 金的攻撃
- 頭髪を掴む
- 気管を押しつぶす、のどをつかむなど、手指でののどへ対する直接的な攻撃
- 後頭部・延髄・脊髄への打撃攻撃(後頭部とは、頭の真後ろのことをいい、側面、耳の周りは後頭部とはみなさない)
- 頭部・顔面へのあらゆる打撃攻撃(パンチ、キック、膝蹴り、肘打ち等)
- 故意にロープを掴んで離さない、また故意にロープに手、足を引っかけてはならない。上腕部分をロープに引っかける行為は即、注意とする。
- リング外へ逃げる
- 相手をリング外へ投げる
- 帯で直接首を絞める攻撃
- 道着または相手の体に触れずに、自らグラウンド状態に座る、寝転ぶなどの行為
- 第9条
- 打撃攻撃に関しては、両者スタンド状態の場合、首から下への打撃は有効となる。両者グラウンドの場合、打撃は一切禁止とする。また一方がスタンド、一方がグラウンドの場合は顔面以外の打撃攻撃は有効である。(この場合のグラウンドとは3点以上が接地していることを意味する)
- 第10条
- スタンド、グラウンドいずれの状態で、レフェリーによる「Action!」のコールがあった場合でも両者に有効な攻撃や動きが認められず膠着した場合(約30秒)、レフェリーの判断によりブレイクとなり、スタンドポジションから試合を再開するものとする。
- 第11条
- 反則攻撃により反則を受けた選手が甚大なダメージを被った場合、レフェリーとリングドクターの判断により、十分に回復を待って試合再開となる。但し、第7条2項に準じ、リングドクターが試合続行不可能と判断した場合のみ、反則攻撃を行った選手を失格とする。
- 第12条
- 双方の選手がリングから落ちそうになったときは、レフェリーが“Stop. Don't move”とコールする。選手は即刻動きを止め、レフェリーの指示に従ってリングから転落する恐れのない位置に移動し、動きを止める直前の状態からレフェリーの合図で試合再開となる。
- 第13条
- 選手がリング外に出た場合は速やかにリング内に戻り、リングセンターにてスタンディングポジションから試合を再開する。
- 第14条
- 選手とセコンドはレフェリーの判定及び指示には絶対服従する。選手あるいはセコンドがレフェリーの判定に意義を申し立てる場合は、試合終了2週問以内に文書の形で行うものとする。また、選手・セコンド以外の第三者がレフェリー及びジャッジの判定に一切介入してはならない。なお、この条項が遵守されない場合、ペナルティーとしてファイトマネーの10%の罰金をプロモーターに支払わなければならない。
- 第15条
- 選手に付き添うセコンドは4名までとし、試合中は自コーナーを離れてはならない。また、試合中の選手に対してセコンドは、いかなる場合でも直接接触してはならない。万一、それに違反した場合はペナルティーとしてファイトマネーの10%の罰金をプロモーターに支払わなければならない。
- 第16条
- 選手は本大会当目の試合前、会場にてドクターチェックを受ける。
以上。 (平成14年8月26日)
Last Update : 09/11
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