K-1 JAPAN'99 RISING SUN

2. 3 代々木第２体育館

　一方マイケル・マクドナルドはアンディ・フグのスパーリング・パートナーであり、K-1BUSHIDOでは右ローキックの一撃だけでマイク・ベルナルドの弟カールの臑を切り裂きドクターストップに追い込んだ。実力は未だ未知数だが、そのスピードは注目に値する選手である。K-1Japanシリーズの目的として日本人選手の育成と共に、大舞台に成りすぎたK-1本戦に代わって才能ある新人の発掘を行う、ということがある。K-1王者相手にマクドナルドがどういう内容を見せるか、機会がチャンスにも地獄にも成りうるのはJapanシリーズに参戦する日本人選手達も新顔の外国人選手達も同様である。

　決してコンディションは上々とは言えないという話だったが、少なくともリング上のアーツの体は、12月のK-1決勝の時から緩んだ様子は無い。K-1決勝後、絶っていた酒はどうしたのか、と問われても笑いながら「呑んでない、呑んでない」と答えていたところを見ると、少なくとも生活を乱して調整に失敗したりした様子は見受けられない。

　いざ試合が始まってみると、アーツが歩幅狭くアップライトに構えるのに対してマクドナルドが広い歩幅でクラウチング気味の構え方をするためだろうか、両者の体格差が数字以上に大きく思われた。アーツの左右のパンチはいずれも打ち下ろしのチョッピング気味にマクドナルドの頭部を襲い、アーツ独特の空手的な叩き割るようなローキックがマクドナルドの大腿に鈍い音を響かせる。マクドナルドはステップを使って細かく動き、揺さぶりながらインサイドに入っていくチャンスを窺うが、飛び込み際には最近のアーツのトレードマークになりつつある重い膝蹴りのカウンターが待っているため、なかなか踏み込んでパンチを当てる機会は得られない。入れば入ったで頭一つ大きいアーツが首相撲から膝の展開。どうしてもプレッシャーでマクドナルドが下がり気味になるのはやむを得ないところだろう。

（アーツ：マクドナルド　10-10、10-10、10-10）

　ラウンド開始と同時にK-1王者のプレッシャーをはね除け、マクドナルドがサム・グレコばりのパンチのラッシュでアーツを一気にロープ際まで押し込む。これには場内からも大きな歓声が挙がるが、王者アーツは落ち着いた様子で一旦マクドナルドを抱え込んでそのリズムを分断してしまう。そこから先はまたＲ１同様のアーツ有利の展開。特にこのラウンドはアーツがマクドナルドを掴まえて首相撲から膝を当てていくシーンが目立つ。たとえ膝そのものを貰わなくても、これだけ体格差のある相手に捕まって振り回されれば、マクドナルドのスタミナの消費は相当のものがあっただろう。

　離れれば重い右ローを主軸にしたコンビネーション、入ろうとすればカウンターの膝、踏み込めば首相撲と、まるで手詰まりの状態に相手を追い込み、最後はショートレンジからの右アッパー一撃でアーツはマクドナルドを沈める。前に崩れ落ちるマクドナルドに追い打ちの膝も飛び出したが、既にそれ以前にマクドナルドの意識は途切れていた。

（高田敏洋）

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