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Interview : 井田英登
「ありゃー、今日写真も撮りますの?」
席についた後藤は、僕が傍らに置いていたカメラを見て、苦笑いを浮かべた。
「今日、二日酔いでね。顔パンパンなんですよぉ」
後藤のインタビュウを行ったのは、修斗大阪大会の翌日だった。
メインイベントを務めた、桜井“マッハ”速人と後藤は大の親友。夕べは朝まで飲んでいたそうで、午後一番の取材であるこのインタビュウまで、後藤はずっと眠っていたのだという。
「起き抜けでよく来れましたね」と言うと、店の窓から見える通天閣を指して笑う。「僕の家すぐそこなんですわ」
まさに大阪のど真ん中で生まれた浪速っ子の後藤。
気さくで人懐っこい笑顔を浮かべる好漢だが、ここまで歩んできた道のりはけっして平坦ではない。格闘技人口の薄い大阪では、一人前の選手になるための育成環境がなかなか見つからない。後藤もその例に漏れず、所属ジムに関してはずっと苦労を重ねている。 同じ才能をもった人間なら、圧倒的に東京が有利だ。練習する方が環境にしても、情報にしても東京の豊富さ、選択肢の多さは大阪の比ではない。試合一つするにも、この距離がハンデになる。ちゃちな選手ならそれだけでキャリアを断念してしまうような状況である。しかし、けっして後藤自身はその環境を苦しいとも、恨めしいとも感じてはいない。“好奇心のかたまり”と自ら言うだけあって、必要ならば好奇心の赴くままタイでも東京でもオランダでも行きたいところに行く。どうしてでも逢いたい人間が居ればすぐにでも会いに行く。ルールが許せば関節も取るし、ヴァーリトゥードにも興味津々で、寝技の練習もちょこちょこやっていたりする。どこにも、何の不自由もない。
大阪にいるのは、ただそこで生まれて、出ていく理由もないから。
全くシンプルであり、自然だ。
そして、後藤の視線は既に東京を飛び越して世界に向いている。
そういう生き方はまさに東京の一極支配に縛られない、大阪という町の自由闊達な気風そのものでもある。
K-1参戦を熱望し、来年は世界で名前を売りたいという、この浪速男の生き様を通して、大阪という町の生み出すグルーブ感、そして延び延びとした人生観を感じて欲しい。
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- TABLE OF CONTENTS
- ■ 最初は安全志向の格闘家!
- ■ デビュー戦は徹夜のドライブで東京入り
- ■ シュートボクシングに傾いていく気持ち
- ■ 転機は隅田川花火大会
- ■ バーリ・トゥードは一回だけやってみたい
- ■ 今のMAで俺に勝てるウェルター居ないじゃないですか
- ■ K-1に出たい!
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