フリー選手団の体力測定と練習を取材!
多摩遠足日記
(後半)
この修士論文は、来年の体育学会で発表の予定。でも、嘉戸さんの興味は学会発表することよりも、とったデータの分析結果をどう活用するかの方に興味があるらしい。「選手にフィードバックしたいですよ。ナショナルチームなんて、グレコとフリーあわせても16人しかいないんですから。どういった体重の落とし方が効果的なのかとか、いろいろと選手個々に戻してあげたいですね。一般的にレスリング選手がどうなのか、ということより、もっと個人的なものを戻してあげたいです。」競技を科学的に分析するという意味では日本のレスリングはかなり世界に後れをとっているのが現状。嘉戸さんのような志の人が、レスリングの強化に携わっていってくれると嬉しいなあ。
今回の強化合宿、総評としてどんな感じだったのか高田祐司強化委員長に「一週間終わってどうでした?」と問うと、浮かない顔。そして続けて出て来た言葉が「あまりひどいからね、怒ったんですよ。自覚がないですね。」うわお。全日本チーム相手に中学の全校朝礼で生活指導の体育教師がやるような説教ですか。選手もコーチ陣もいい大人なのに、どっちもなにをしているのやら。(^-^;でも、前々から疑問だったんだけど、そんなに昔のスポ根マンガみたいな気合いの入れ方ばかり要求しなくてもいいんじゃないのかな。個人競技なんだから、集中力を高める方法はいろいろあって当然だと思うけど。
続けて高田委員長、「怪我も多いし。年齢が行ってるから、治りにくくて。悪循環ですね。」やっぱりずーっと浮かない顔。コーチ陣も不安そう。どん底の状態、と強化部みずからが言う現在の日本のレスリング事情。昨年の世界選手権では、グレコとフリー、両方見渡しても8位入賞がゼロ。来年はオリンピックイヤーで、今年の世界選手権はその出場権がかかった最初の大会。それなのに、確実に五輪出場だろうと言い切れる階級が一つもないと言っても過言ではない状態。選手も焦り、コーチも焦る。焦っている当事者どうしがお互いの焦りに気づいて思いやっている余裕などない。相手に自分の状態が理解されないことから、ますます焦燥感を募らせていく。それでも、勝ちたいという思いは共通のはず。目的は選手が勝つこと、これひとつなのだというプリミティブな事実に忠実であって下さい。
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取材・撮影:横森綾 HTML編集:井原芳徳 |