BoutReview wrestling

初日の27日には開会式と、学校対抗戦の2回戦までが行われた。

● 選抜開催県・新潟県勢の戦い〜第1日目
 

 開催県の新潟県からは、毎回3校が出場している。ところが今年出場の新潟工業、 新潟北高、そして新潟県1位の北越高ともに今回で3年連続、初戦敗退してしまった。
 埼玉栄高校と対戦した北越高校は、50kg級の稲生雄大選手がテクニカルフォール勝 ち、1-1で迎えた58kg級の小鈴選手は、2月に行われた関東選抜で同級1位だった田中雄次選手を判定で破るなど、この勢いでいくかと思われたが、結局76kg級の石沢幸佑 選手が大技を決め奮闘したにもかかわらず、130kg級選手を欠くなど不戦敗もあり、結果的に3-4で破れてしまった。


選手のお弁当(‥;)

 

● 学校団体戦、決勝への道のり〜第2日目
 

 そして2日目、3回戦から決勝までが行われた。実は開始時刻を少し間違えており、 会場に到着するのが10分ほど送れてしまうという取材根性のなさを埋めようと、その他の試合はすべてメモを取りーの、ビデオを撮影しーの、すっかり報道陣の一人としてうろうろしまくった。   優勝候補のそれぞれの学校の試合は、確かに目を見張るものがあったが、他の全国のいろい ろな学校の試合を見られる絶好のチャンスとあって、すべてのマットを観戦してまわった。そして感じたこと−それは、やはり上位に上がってくる学校の選手は、動きが違った。例えば役員K氏とのお話にも出てきた、熊本の玉名工業高校や香川の多度津工業高校などは、パワーと勢いで相手校を次々に破って準々決勝にまで進んでおり、今後が楽しみなチームであることがうかがえた。
 まだまだ高校レスリングの世界の知識が不足がちな、一個人としての意見にすぎないのだが、とにかく印象的だったのが強豪・霞ヶ浦高校と当たっていたすべての高校チームの監督のかけ声やアドバイス(・・というのだろうか)は、どの学校もすさまじいものだった。 結果的に大差で負けてしまった学校がほとんどだったのだが、余裕すら感じられた霞ヶ浦高校の選手に比べると、日野高(滋賀)も秋田商業(秋田)も多度津工業(香川)のどの選手も、かなりの気迫がみなぎっているのが近くを通り過ぎるだけで感じられた。 優勝候補を相手にするとこんなにも緊張感がみなぎるものなのだ。


立命館宇治×鹿屋中央

 

● 霞ヶ浦高校と鹿屋中央高校の対戦〜第2日目
 

 その優勝候補でもある霞ヶ浦高校、そして昨年と同じく決勝にあがってきたのは、鹿児島県の鹿屋中央高校であった。かなりの余裕ペースで勝ちあがってきた霞ヶ浦高校に比べ、鹿屋中央は、のちの個人戦で好成績を残すことになる立命館宇治(京都)とあたるなど途中若干の疲れを見せてはいたが、それでもチームのまとまりと底力で決勝へ駒を進めた。
 霞ヶ浦高校は、50kg級の臼井啓、54kg級の江上剛が続けて判定勝ち、途中58kg級、 69kg級と落としてしまったが、3-2で迎えた76kg級、主将の藤岡裕士がタックルなど で攻めまくり、テクニカルフォール勝ち、チームの優勝を決定づけた。対する鹿屋中央高校は、58kg級の新村敏和が余裕の判定勝ち、69kg級の森山誠はフォール勝ち、 130kg級の前田耕一も判定勝ちをするなど、2年連続で決勝まであがってくるだけの 力を堂々見せつけた。
  私立霞ヶ浦高校は、レスリング初心者が見ていても選手一人一人がかなりパワフルで あることが印象的なチームだ。ただの運だけでは、全国選抜6年連続12回の優勝インターハイにおいては10年連続13回というような輝かしい記録はうちたてられないはずだ。とにかく「力強い」と言う言葉がピッタリな学校だった。その上、確かに細やかな技もしっ かりと決めてしまう。特に今年はけが人に泣かされたようだが、それでも初戦から飛ばしまくりであった。
 私立鹿屋中央高校は、鹿児島県の大隅半島南部に位置し、県都の鹿児島市からもかなり離れている鹿屋市というところにある。シラス台地とか、昔みなさん社会で習ったんではないだろうか?高速道路も10年後、JRに至ってはその昔、赤字ローカル線で廃止されてしまったというような場所である。そのせい、ということだけではないが、 練習試合が存分にできるような強豪校は、宮崎や熊本県までなどに何時間もかけて足 をのばさざるを得ない。にも関わらず、監督や選手の並々ならぬ努力で年々ここまで伸びているのは素晴らしいことではないだろうか。


霞ヶ浦主将・藤岡、勝ちの瞬間

 

● 個人戦で活躍する全国の学校〜第三日目(最終日)
 

 3日目、個人戦の日がやってきた。この個人戦にかけるために前日までの団体戦に 出なかったり、1試合しか出ていなかった選手もいたり、あるいはもっと小さい単位 での全国のいろいろな学校の選手をみることができたりと、楽しみが多い日でもあっ た。
 まずは50kg級。この級では、チビレスのときからの活躍から優勝候補とされていた 関宿高校(千葉)の和田宗法が各試合完璧に勝ちを奪い、こちらも順調に勝ち進んで きた玉名工業(熊本)の吉田久人を破って優勝した。
 54kg級では、それまでの4戦のうち3戦をフォール勝ちしてきた網野高校(京都)の 織田康博が、決勝で当たった斉藤将士に判定で敗れた。途中織田選手が、それまでの 疲れと痛めた部分の我慢の限界があったのか、一時動けない場面もあった。これを斉藤選手が大声を上げて牽制するという場面もあった。
 58kg級では、鴻城(山口)の黒田竜也が順調に駒を進めていたのだが、決勝で立命館宇治(京都)の橋井巧佑にテクニカルフォールで破れた。疲れが出てしまったのか、思うように自分から積極的に技を決めていけなかったようだ。
 63kg級ではすごい結末になった。2グループから勝ち進み、決勝で当たったのが同じ京都立命館高校どうしの二人であった。3年の佐藤秀一は、初戦の舟場(鹿屋中央・ 鹿児島)にこそ苦戦を強いられたが、あとは決勝まで自分のペースで勝ち進んだ。対する2年生の鈴木崇之は、フォールやテクニカルフォールなどで余裕の勝ち方を見せ、決勝では先輩佐藤に堂々のフォール勝ちをおさめ優勝した。このときの先輩佐藤は、まだがんばれそうな動きを見せていたにもかかわらず、記者の主観からして「力つきて負けに伏せた」ように映った。同じ学校同士というのはどういうものだろうか。普段の部活動の練習の中で、先輩後輩の仲もさることながら、相手の手の内をよく知っ ているからこそ逆に難しかったのではないだろうか。


北越もがんばりを見せ、次回はさらに上を狙う

 69kg級。開催県の新潟・三条工の萱森浩輝が準決勝にまで進んだが、惜しくも鳥羽(三重)の山下雄也にフォール負けしてしまった。決勝では初戦から圧倒的な強さだった中筋裕太(吹田・大阪)が山下をフォールで破った。山下も順調な勝ちを見せてい たが、最後の最後に踏ん張れなかったのが残念だった。
 76kg級。このくらいの級になると、目の前に選手が吹っ飛んでくるとかなり恐怖である。ビデオ撮影していた時、バッテリーを長持ちさせるためあえてファインダーを 覗き込んで撮影していた。すると、ズームも多用していたために距離感覚がつかめなくなり、タックルされてこっちに飛ばされてくる選手がいても、まさか自分に当たるとは思わずに、「動かざる石」のごとく撮影し続けていた。ドドッという音と風、そして妙に人の体温を感じたとき初めて自分の数センチ先に選手がごろごろしていたり、レフェリーが「大丈夫?」と声をかけてくれたことに気がついたのであった。ファインダー越しに試合の進行がわかっていても、普段テレビを見ているのと同じ感覚だったのであった・・・。そんなことが4回もあった。76kg級は、ちょうど報道席の目の前のマットだったのでよく見れた。学校対抗戦にはいなかった学校の選手が目立った。 関東勢がねばりを見せ、準々決勝までに青木良三(大森工業・東京)や森口俊幸(飯 能南・東京)が残っていた。最終的には中村友之(足利工附・栃木)が加藤陽輔(秋田商業・秋田)をテクニカルフォールで破ったが、準決勝で中村選手に当たった吉川将太郎(高岡工業・富山)がねばり強い試合を見せていた。



霞ヶ浦、インターハイも楽しみ

準優勝にとどまり残念・・・鹿屋中央