12.11 U-DREAM 富山大会 参戦直前
エンセン井上 に真意を聞く!

“コロス”じゃなくて“極め”に行くヨ!


  ンセン井上の肩には「修斗」の文字がタトゥーとして刻まれている。修斗に身を捧げ、修斗に殉ずるといったイメージでこれまで捉えられていたそのエンセンが、エスケープルールを採用するU系プロモーション「U−DREAM」に参戦すると発表されて約1週間。修斗離脱か、それともエンセンに何かがあったのか?ネット上では色々な憶測が流れ、一種の混乱状況となった。

 一方で、12月に入って、U−DREAM側はエンセンの試合に突如“エキシビジョン”のタイトルを打ったため、いよいよ状況は錯綜するに至った。もし本当にこの試合がエキシビジョンに過ぎないのであれば、わざわざエンセンのファイト見たさに会場に足を運ぶファンは、その期待を裏切られる事になりかねない。しかし、ただのエキシビジョンマッチに、30分1本勝負の設定は奇妙であるし、エスケープ5ありのヴァーリトゥードルールと銘打たれているのもおかしい。

 BoutReviewではこの混乱状況に終止符をうつべく、STG大宮ジムで練習に励むエンセンを直撃してみた。


BoutReview「11日にU−DREAMに参戦するということで、インターネットじゃ大騒ぎになってるよ。なんで、こういうことになったの?」

エンセン「キングダムの鈴木さんから誘われたヨ。私、東京じゃないプロレスのお客さんにシューティング紹介したいネ。だから、私、キングダムのルール断って、シューティングのルールにしてくれって頼んだネ。エスケープあるんだけど、試合する相手の彼も、私もエスケープしないから。」


BoutReview「じゃ、事実上シューティングの試合だと・・」

エンセン「え、何?」

BoutReview「うーん・・・だから、いつもどおりの試合をするのね」

エンセン「いつもどおりじゃないヨ。エキシビジョンだから」

BoutReview「え、じゃ試合じゃないの?」

エンセン「ん、そうだネー、殺しに行かないから。いつもとは違うヨ。真剣勝負の試合はするヨ。真剣勝負だけど、準備と体と心が80パーセント。私、いつもヴァーリトゥードの試合するとき110パーセントだから。いつも殺しに行くの気持でリング上がるけど、“コロス”じゃなくて今回は“極め”に行くの気持で試合するから。相手の彼も今度シューティングしたいって言ってるんだけど、シューティング呼ぶ前に私、彼の心見たいと思うネ。ちゃんと戦えるか、私と戦って逃げないで戦えるか、見たいよ」


BoutReview「彼の試合は見たことある?」

エンセン「あるよ。彼はグアムの選手なんだけど、スバーンと試合したの見た。彼も体大きくて、スバーンにマウントされてもちゃんと返して、立ったりできる。かなり力はあるとおもう。ただ心が弱い。それ見るために、“コロス”か“コロサレル”かじゃなくて、倒しに行く試合して見るよ。一番ちがうのは私の心80パーセントだから」

BoutReview「じゃあ、修斗のプロモーションだと思っていい?」

エンセン「そうネー。お金いいのもあるんだけど(笑)むこうのお客さんにもシューティングわかってもらうチャンスね」

BoutReview「これで、エンセンが外でもやれるとわかって他所からも誘いが来たらどうする?」

エンセン「そうね。私、どこでも試合したいよ。リングスもパンクラスも、シューティングルールでやらせてくれるならどこでも出たいネ。声かかるかな?(笑)それでもっとシューティング知ってもらいたい。これがはじまりネ。ユーも(U−DREAMの取材に)来るの?」

BoutReview「うん、行きます。エンセンの80パーセント見たいからね(笑)」

エンセン「うん、そうだね。じゃむこうでね。聞いてくれてアリガト」



  んで頂いて判るとおり、“エキシビジョン”という括りは、今回の試合はエンセンにとって真剣勝負であるが、いわゆるスポーツマッチの範疇で行なわれる試合になると解釈すればいいのだろう。普段から異常なまでの集中力で試合に向かうエンセンが、その心境を「コロス」という言葉で表現してきたのは有名な話である。確かにホームグラウンドを離れて、ビジターとしての肩の力を抜いた試合になる以上、そこまでの集中はできないというのも正直なところだろう。そう言った部分で、社交辞令を言わず本音を語るエンセンの姿勢は支持していいだろう。

  無論、どこのリングに上がるときにでも、全力投球して欲しいというのはファンの望みである。しかし、抜き所をわきまえながら現役生活を走りきるのも、プロ選手の一つの有り様だ。それで結果が残せれば、それは選手の実力なのだから。ただ、これで星をとりこぼしたりすれば「エキシビジョンだったから」という言い訳は許されない。現にクートゥアが、VTJで当のエンセン相手に星を落して、世界王者としての権威を失墜させられてしまった事を忘れないで欲しい。勝って兜の緒を締めよ。エンセンには100パーセントの試合を、富山でも見せて欲しいと願うばかりである。


(1998年12月5日 電話インタビュー:井田英登)