1998・11・27
Las Grandes Viajes 6
後楽園ホール

第4試合(ライトへビー級2回戦)

竹内出
判定
19-19
19-19
19-20
桜井隆太
K'z FACTORY 総合格闘技TOPS
1戦1敗 1戦1勝
[180cm,83.5kg] [178cm,85kg]

 日本アマ決勝で、パワーボム失神KO勝利。続いてプロデビュー戦では豪快なグラウンドパンチで、関西期待の星喜多将士を圧殺。いずれも修斗ファンの耳目を引き付けずにはおかない、ド派手な勝利で名前を売った桜井隆太。精悍なルックスに、プロレスラーばりのビルドアップされた褐色のボディは、アスリートの揃った修斗のリングでも異彩を放つほど。まさに、プロとしての”華”がある。そしてついにその桜井が修斗の聖地、後楽園に初見参である。はたしてこれまでの闘いがフロックであったのか、それとも沈滞気味のライトヘビー戦線に一機に火を付ける超新星となるかが量られる注目の一戦となった。セコンドには今でも一緒にスパーリングをする仲だという、ミドル級王者桜井速人の姿がある。一方、対する竹内も同じタウンホールデビュー組である。7月の"SHOOT GIG"では佐々木有生に判定で敗れ、白星デビューとなったものの、アマチュアでの実績は決して桜井には劣らない。トーナメント・オブJ97中量級では準決勝に進出、あの須田匡昇を向こうにまわして後一歩と言うところまで追い込み、アマリンでも後にリングスデビューした鹿糠と互角に闘い抜いた経歴を持つ。逆にここで桜井を食えば、一機に注目株に浮上する事ができる。


 ングと共に飛びだした桜井は、パンチの連打で竹内に襲い掛かる。あれよれとコーナーに押し込まれた竹内は、とにかく抱きついて桜井の火勢を押さえ込むのが精いっぱいだ。桜井にすれば、寝技で須田と渡りあった竹内にグラウンドでつきあいたくはない。すがる竹内をパンチで突き放すと、グラウンドにころがった所へパンチを落して一機火勢に勝負を付けに行く。しかし、竹内はすばやくオープンガード体勢で迎撃、サイドから回り込もうとした桜井のパンチを躱し、アリ−猪木体勢に持ち込む。


 うなると戦局は一機に竹内のフィールドになる。みすみす寝技に持ち込まれたくない桜井は、攻めの一歩が踏みだせず単発のローを打ち込むだけで、有効な後略策が見いだせない。クワガタの角のように突きだした、竹内の両足の周りをぐるぐる回るだけになる。小方レフェリーは、この状況を見きってブレイクを宣告。 リセットの瞬間的な緊張感の緩みを見逃さず、懐に飛び込んだ竹内。押しこんだ勢いのまま、一機に下からの十字で速攻を掛ける。昨年の須田戦を彷彿とさせるシーンだったが、桜井はパンチを連打しながら驚異的な地力で竹内のロックを引きずり上げ、ロックしたはずの腕を引き抜いてしまう。まさにパワーファイターの面目躍如。ここで1R終了。


 Rになっても、桜井は重いローとぶん回すようなロングフックで攻め込んでいく。しかし竹内も負けてはいない。突っ込んでくる桜井の突進をカウンターの左フックで捉え、一瞬棒立ちにさせる事に成功する。この隙をついてタックルに行く竹内。


 度は桜井がガードする番だが、ここでも下からパンチを打ち返していく。ただ寝技の切れでは格段に竹内が勝る。よっこらしょと言う感じでスピードの乗らない三角絞めをしかける桜井の両足を、振り捨てるようにサイドへ飛びだす。上四方から十字を狙う竹内だが、桜井は上半身を押し込みパワーでこの仕掛けを潰してしまう。立ち上がった桜井は、ふたたびアリ−猪木体勢で竹内と睨みあう事になった。


 技の竹内、パンチャーの桜井という組みあわせにおいては、この状況が一種のホメオスタシス(均衡状態)を迎えるポイントであるようだ。ローにパンチを織り交ぜながら、なんとかこの状況を打破したい桜井だが、オープンガードをパスできるテクニックの備蓄が足りない。一方竹内も下から、こつこつと関節蹴りを当てていくものの積極的に引き込んでいこうという姿勢は見えない。桜井のパワーは体感しているだけに立って勝負するのも分が悪い。かくして、千日手的な膠着状況が生まれる。第1ラウンドの小方レフェリーのブレイクはまさにその両者の能力の均衡状態を読みきった英断だったわけだが、最終ラウンドの残り時間わずかな局面では2度目のブレイクは宣告されることなく、両者は三すくみのように凍り付いた戦局のままゴングを聞くことになった。


 井はパワーファイターの片りんを垣間見せたものの、逆に大味な感も拭いきれない印象を残し、竹内もまたその雑ぱくさに飲まれた感がある。両者の後楽園デビュー戦はかくして苦いドロー判定で終った。

(井田英登)


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取材:山名尚志・岩田貴宏  カメラ:井田英登
HTML編集:井原芳徳