ＶＴＪのジョン・ホーキ戦で負傷して以来１年。ついに元東大生シューターの巽宇宙の復帰戦が行われる。判定は多いものの、ＶＴＪの１分を除けば、後は７ 戦全勝。ブランクがあるため今はライト級の２位だが、その実力は、まだ底を見せ ていない。

　相手となるのは、修斗と関係の深いＵＳＷＦライト級チャンピオンのエリック・ ペイン。修斗には初出場だが、こちらも、ＵＳＷＦでは無敗を誇っている。

　リングの上で相手をねめつける巽。

　その目は殆ど切れかかっている。

　試合はスピーディなグラウンド戦となった。

　いきなり組み合って倒しに入るペイン。だが、うまく転がった巽は上にのっかっ ていく。ペインはガード。素早くパスした巽は、横四方から上四方。そこからバッ クに回るが、ペインが巧く体を回転させて反対に上に乗る。

　しかし、ガードから足をペインの首にかける巽。このまま絞め上げれば三角が極 められる。回転を続けて何とか外そうとするペイン。足のフックを決して緩めない巽。最後はペインが巽に覆い被さるようにしてどうにか逃れたが、その時には既に 巽はバックに回っていた。

　ぎりぎりとスリーパーでペインの首を絞め上げていく。マウスピースを吐き出しそうになりながら、なんとかこらえようとするペイン。

　だが、巽の足が胴にからみついた時には、もはや、タップしかそこから逃れるすべはなかった。

　試合前とは一転して、殆ど泣きそうな顔で喜びを見せる巽。

　呆然とコーナー角にうずくまるペイン。

　リング上にk'zの面々が集まり、巽を胴上げする。ルミナや秋本じんたちが笑顔で巽を取り囲む。

　「見ての通り、内容的にはダメだったんですけど、今日だけは勝ったていう事実だけを味あわせてください。」

　「一位だったんですけれど、休んでいる間に二位に落ちちゃって。一位を倒し、 タイトルマッチをやりたいです。」

　勝利者インタビューで、巽はライト級戦線復帰、そしてノゲーラ、朝日ら上位陣への挑戦を 宣言した。

（山名尚志）

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