だから、ハンの打撃は、決して付け焼き刃ではない。

　
　開始早々、そのハンの厳しい打撃が炸裂する。踵落とし、右下段。

　ズーエフも回し蹴り、そして掌底で対応しようとするが、打撃のレベルの差は覆い隠しようもない。突っ込んできたところをハンが掌底で迎撃し、いきなりのダウンを奪われてしまう。

　更に下段、裏拳で追いつめていくハン。１勝３敗という苦手意識を払拭しようというのか、相手の出方を伺いながらじっくりと翻弄していこうという、かつてのハンの闘い方はまるで見られない。

　
　勿論、これで終わるズーエフではない。アキレス狙いかと思えば腕十字へとめまぐるしく動く切り返し合戦を制し、エスケープ・ポイントを奪う。だが、ハンも、ずるずると後退はしない。グラウンドでも、遊びなく、次々と極めにもっていこうとする。

　そして、互いに相手の足を取り、腕を狙い合う智恵の輪状態がとけた後、ハンは、まずズーエフの足を自らの足に絡めて固定し、後ろから首をとって思いきり締め上げた。プロレスでいう鎌固めに似た体勢だ。

　体の上下を固定されたズーエフは、もはや、ぴくりとも動くことがかなわない。

　今までの戦績が嘘かと思われるようなハンの完勝だった。

（山名尚志）

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取材：山名尚志　薮本直美　カメラ：井田英登　薮本直美
HTML編集：井原芳徳