Serialize Vol.5

「インターネットという危うさ」

Text by 井田英登

 

週の週刊ファイト誌には、見過ごしには出来ないとんでもない記事が掲載されている。

10月16日にブラジルで行なわれた「アルティメット・ブラジル」関連の記事なのだが、「次回の1月大会で高阪VSルッテン戦がおこなわれるという説がインターネットを中心に流れている」という記述があるのだ。当のインターネットで情報を発信している側にとって、なんという迂遠で厭味ったらしい書き方だろうか。ここで言われる”インターネット”という言葉を巡るニュアンスは、「いつも推測だけで噂を垂れ流すいい加減なメディア」というものであって、この記事を意訳するとこうなる。

「いつも流言飛語を垂れ流すインターネットでは、こんないい加減なうわさが流れている。読者の皆さんはせいぜい騙されないようにね」

ふざけるな!

読者の皆さんはご存知のとおり、この大会を取材するために本誌では、直接記者を派遣して取材に当たっている。日本のマスコミで、この大会に記者を出しているのはベースボールマガジン社とウチだけである。もちろん、ファイト誌は記者など出していない。

ウチは確かに速報記事で、「次回1月大会で、高阪VSルッテンが予定されている」と書いた。他所にどんなHPがあって、どういう扱いをしているかは知らないが、恐らくこの内容について世界で最初に書いたのはウチのはずだ。

UFCの公式HPはもちろん、世界有数のスピードと情報量を誇るフルコンタクトファイターでもまだこの件については報道していない。要するに、この件についてファイトが「インターネットを中心に」と書いているならば、それはBoutReviewを名指しにしているに等しい。

それならそうで結構!

どうせ書くなら、「インターネットを中心に」などという胡乱な書き方はやめろっつーの。正面から「BoutReviewとかいうどこの馬の骨ともつかない連中がが偉そうに、与太を飛ばしている」と書けばいい。その方がまだしもすっきりする、と言うものだ。

だが、ここではっきりしておきたい。

BoutReviewがこの件について記事にしたのは、きっちりとした直接取材を行った結果であって、ファイトの記事が揶揄するような推測によるものではない。会場にゲストとして訪れていたルッテンに取材し、次回1月の大会に出場する契約を結んだという証言を得、その相手としてこの日行なわれた高阪VSピート・ウィリアムスになるだろう、ということまで聞きだしているのである。別のUFC関係者にも確認したところ、その一戦は恐らくランディ・クートゥアからはく奪される”であろう”ヘビー級王座の決定戦になるだろう、という証言も得た。

いわば、本誌の記事はそれだけの検証作業を経ているのである。

現場にも行って居ない連中に、与太扱いされる筋合いなどまったくない。

要するに、推測でモノを書いているのは、ファイトの方だ、と言うことなのである。

我々は確かに、新興のメディアに乗った、アフターカマーである。

それは認める。

インターネットというメディアは、基本的に読者が即書き手に変われる、極めて危ういメディアである。それが単なる妄想であっても、確固たる事実であっても、その差異を明確にする物差しはどこにもない。全ては等価の”情報”として世界にぶちまけられ、消費されていく。真摯な学者が、数十年を費やして積み重ねてきた研究データと、幼稚な白昼夢に酔った人間がまき散らす妄想が同一線上に並べられてしまう危険と言うものがあり、ファイトがほのめかすような”危うさ”は確かにないではない。

だが、それは活字メディアだって同じことではないのか?

情報の検証作業を怠れば、活字メディアであろうと、映像メディアであろうと、事実ではない情報は幾らでも垂れ流しになる。事実これまででも、でっち上げやヤラセが横行してきた事実はヤマほどあったではないか。天につばを吐けばおのずとその報いは、頭の上に降ってくる仕掛になっている。今回の件で、ファイト誌は逆に自分たちの取材力を問われているということにご注目いただきたい。

我々は、どこにも恥じることなく、きちんと裏取り作業を行って、情報を出しているのだ。逆に彼らの今回の記事は我々の基盤が、インターネットであるというだけで差別し、色眼鏡で見て書いた推測記事にすぎない。

得権を持つ原住民は、とかく変化を嫌う。ニューカマーを”異物”として排除し、時代をいつまでも元居た場所に釘付けにしようとする性質を持つものである。

今回のファイトの記事が、全面的にばうれび潰しを意図した悪質な記事であると断定するつもりはない。

もし単純な事実誤認であるなら、笑って矛を収めよう。

しかし、それが仮に”インターネット”だから、”相手は新参者だから”という見くびりから発生する、差別的なニュアンスで書かれた記事であるならば、全面的にその真意を追求していくつもりである。

今回の件の相手側が、仮に相手が週プロなり、ゴングなりといった、同じ活字メディアの媒体であったなら、彼らはあんな記事を書いたであろうか?「週刊某誌に掲載されている記事はあやしい」と書いているに等しい記事を。(ちなみに同じく現地で取材活動を行った、ベースボールマガジン社の安西記者の記事にも、やはり高阪vsルッテン戦の可能性を示唆する記述があることを、果たしてこの記事を書いた記者は知っているのだろうか?)

ファイトの編集長および当該記事の担当者に告ぐ。

我々を、BoutReviewを、「馬の骨」扱いするなら、いつでも受けて立つ。一億円の札束を準備して、記者会見でもなんでも開いて見せてみやがれってんだ!