<大会総評> This is the SPORTS
VALE-TUDO.
山名尚志
Millennium
Combine、代々木第二体育館大会。
リングスにとっては、壮大な実験プロジェクトであったKOKを受けての、初めてのレギュラー・シリーズということになる。宴の後、果たしてファンはついてくるのか。また、選手は、新ルール、新体制の中で力を発揮できるのか。
結論から言えば、「新生」リングスは、実に見事な滑り出しを見せてくれた。まず客入り。代々木第二は、かつてのリングスの実力で見れば、決して集客に苦労する規模の会場ではない。だが、それでも、KOK以前の状況であれば不安は残っていた。
それが、雨降りの平日にも関わらず、ほぼ満杯。
タイトル・マッチこそあれ、外部から著名な選手を担ぎ出すなどの特別な仕掛けがなかったこと、更には「KOK疲れ」や他興行との競合を考えると、これは、十分な成功と言えるだろう。リングスの新路線は「認められた」のである。
興行内容はどうだろうか。
実は、KOKに関しては、些か興行上の疑念もあった。それは、判定試合の比率が、トーナメントが進む毎にどんどんと増えていってしまったことである。
トーナメントが進めば残るのは実力者ばかり。接戦となる以上、判定が増えるのは致し方ないことでもある。だが、そういう客観的な事実があったとしても、すっきりとした結末を望むのは観客の性であり、それに答えるのがプロ・スポーツの論理である。
この問題に、リングスは、KOKルールの微調整という解答を用意していた。同じ2ラウンドといっても、1ラウンド目を5分ではなく、10分に延長したのである(タイトル・マッチのみは1R目15分)。
時間の延長は、完全決着の機会の増大を生む。しかも1ラウンド目だけで10分もある。5分なら持つ集中力も、10分となると、隙が出てこないとは限らない。しかも、最初の10分は、ラウンド間の休憩で、ペースを取り戻し、戦略を練り直すこともできない。
そのままいってしまう、いかれてしまう確率も高いのだ。
実際、今回の興行では、7試合中3試合が1ラウンド後半での決着となった。
満杯の観客、すっきりした決着。さらに今回の大会がすばらしかたのは、試合経過自体もスピーディで迫力満点のものとなっていたことだ。
相手の攻撃を密着して封じ込めてしまえば、すぐにブレイク。このため、膠着と感じられるシーンが極めて少なく、激しい攻防が幾度となく繰り返される。ある意味ゲーム的ではあるが、にも関わらず、バーリ・トゥードを見慣れている人間が見てもさほどの違和感は感じられない。
理由は簡単だ。
バーリ・トゥードで「有効」な技術の殆どが、このリングス新ルールでも「有効」だから、だ。
グラウンドでの顔面パンチがもたらす陰惨さと、延々と続く膠着シーン。VTの鬼門とも言えるこの二つの欠点をうまく避けながら、技術を、迫力を、選手の個々のキャラと魅力を見せていく。
坂田の、強気な性格がそのままでた、切れのあるサブミッション。
どつきまくるボビー・ホフマン。
どこまでもイキがいいアローナのタックルとポジショニング。
そして、まさに暴風としかいいようのない、アイブルのノン・ストップ・ストライキング。
ディス・イズ・「スポーツ」・バーリ・トゥード。
リングスの新世紀がここに始まる。